【インタビュー】Sound's Deli 『OUT NOW』 | 新しい季節の始まり

G YARD、Gypsy Well、Kaleido、Moon Jam、Tim Pepperoniの5人によるヒップホップコレクティブSound's Deliが新作EP『OUT NOW』をリリースした。2020年に"Sound's Deli"で鮮烈にシーンに登場した彼らは、『POP YOURS』や『FUJI ROCK Festival』にも出演するなど着実にステージを大きくしてきた。

本作ではそういった経験から得た自信や経験が全曲に全員が参加するという形で、多彩に表現されているが、一方でこれまでの作品よりもメンバーの想いや焦燥感なども素直に出ている。絶大な信頼を置くプロデューサーのMETとPuckafallによるトレンドと個性が両立するビートの上で、一段階高く跳ぼうとしているSound's Deliの軌跡が刻み込まれている。

今回はSound's Deliのメンバーが拠点とするスタジオで、メンバー全員に話を訊くことができた。

取材・構成 : 和田哲郎

撮影 : 雨宮透貴

- 今作は「再出発を宣言」と謳っていますが、Sound's Deliはデビュー以来精力的に活動していたので感覚的に意外でした。再出発というのはなんでだったのでしょうか?

G YARD - 言葉の綾と言いますか。

Kaleido - 前作のPuckafallとの『Puckadeli』は自主でリリースをしたのもあって、今回はSPACE SHOWER MUSICとタッグを組んだので、そこで新しい始まりって感じもあります。

Moon Jam - この1年くらいで気持ち的な変化もあったかもしれないですね。

G YARD - 年齢とかもあるし、キャリアをスタートしてからわりかし上り調子だったんですけど、去年一年間は自分たちの感覚も平行線になったので、また覚悟決めてやっていくぞって。

Moon Jam - "Polyp"でも「25歳までにはこれで食う」って歌ってるんですけど、年齢的な部分も再出発につながるのかなって。

- キャリアの方向性の話はみんなでよくするんですか?

Gypsy Well - もちろん定期的にします。

- なるほど。そういうことで言うと、今作はリリックも、そういう皆の気持ちが前面にでたのかなと思っていて。焦燥感もあるかなと思いますし。

G YARD - そういうリリックしかみんな書けない時期になってた。

Moon Jam - 前作と比べてすごく内省的にもなった。ライブもぶち上げるぞって感じじゃないし。

Tim Pepperoni - ぶっちゃけ見栄えだけでそんなに良い生活もしてないし、世間が思っている俺らの像とギャップもあって、もっと次のステージにいきたいなっていう。

Moon Jam - めっちゃリアルっていうのを意識した作品かなと思います。

Gypsy Well - 等身大だよね。

G YARD - 悪いだけなのがリアルじゃないしね。

Tim Pepperoni - 武勇伝もないけど、今の俺らの状況の中で何かを生み出そうとしているっていうのが詰まったEPになっていると思います。

- コロナの時期でもあったしちょっと落ちていたというのもあるんですか。

Gypsy Well - 周りにも迷惑かけた部分もあるしね。

Kaleido - 普通に仕事している25歳だったら、段々給料も上がってきてるし、家庭がある人もいるしもっと頑張らなきゃなって。

Tim Pepperoni - 飛び抜けて頭がいいとか起業をしているわけでもないんで、普通の25歳なんですよね。だから、そういう人が共鳴してくれたらいいなって思いますね。

- でもそういう焦りとかある中で、じゃあもう辞めちゃおうみたいなのはなかったんですか?

Tim Pepperoni - (喧嘩は)ちょいちょいあるよね。

G YARD- でも完全に辞めようみたいなのは一度もないよね。

Tim Pepperoni - でもいつまでやるんだろうっていうのは、この作品を作ってる時はずっと思ってました。『MADE IN TOKYO BANG』の時はそういう感情はなかったと思う。今回のリリックで皆そういうことを言ってるので、気持ちが出てきてるんだと思う。

- 気持ちの変化もしっかり歌詞で反映されているし、音楽的な強度も高い作品になっていると思いました。そこはもうやるしかないという感じで振り切ったのでしょうか?

G YARD - 音楽を取ったら、何もないわけじゃないかもしれないけど、まあなんもないなって思ってて。

Tim Pepperoni - ずっと自分たちは音楽に向き合ってきて音楽性を保ちつつ言いたいことを歌うってことをしてきたからこそ、そこが反映できてるんだと思います。これまでの曲作りのおかげかなって。

- しかも今作は楽曲ごとにテーマがしっかりあるのかなって思ったんですよね。

Gypsy Well - でも作り出す時に、これはこうしようとかの決まりもなかったよね。

Moon Jam - 自然とまとまったのかな。

Tim Pepperoni - 今回の制作からみんなで集まって作るようになったよね。『Puckadeli』はバラバラで作っていて、各々でレコーディングに入ったんですけど、今回はDAWに起こして、このパート誰がやるって感じでしたね。

Gypsy Well - レコーディングもここで一緒にやる。

Kaleido - 前もしていなかったわけじゃないけど、全曲5人でやる。

Moon Jam - 今回のテーマが “全曲5人でやる” だったんですよね。5人で1曲を一緒にやるのってめっちゃ難しいんですよ。

G YARD - 全曲5人で一緒にやった作品は初めてなので。

- それはかなり大きい変化ですね。

Tim Pepperoni - 俺らの武器ってなんなのかなって思った時に、5人が1曲に収まって聴けるっていうのはあるから、その武器を磨こうってなった。

G YARD - これからずっとそうじゃないとは思うけど、今回は5人でやってみた感じ。

- 5人でやってみてどうでした?

Tim Pepperoni - 未来がちょっと見えたよね。なんかこうテンプレートな形からちょっとハミ出せたかなって。

- その辺りは自分も感じましたね。5人だからこそ多彩な構成が聴ける作品になってますよね。それも一緒に作ったからこそってところはあるんですかね?

Kaleido - うん、まず普通にやると同じ構成になっちゃうことにすごい悩んでたんですよね。

G YARD - マイクリレーみたいな。

Kaleido - それを打破するために試行錯誤して、色々できた作品になったかなと。

- 具体的に楽曲の話を聞いていけたらと思うんですけど、最初にできたのはどの曲だったんですか?

Kaleido - "LOWKEY LIKE"。

G YARD - これは3年前の曲で。

Moon Jam - 『MADE IN TOKYO BANG』に入る予定の曲だった。

Tim Pepperoni - 今作には合ってるんですけど、前作には合ってなくて入らなかった。

Kaleido - 前作に入れるにはクールな曲かなって。

Tim Pepperoni - あと 『MADE IN TOKYO BANG』を作ってるときに、一回データが消えちゃってうまくOKテイクが再現できなかったんですよね。で3年越しに録り直したって感じです。

Gypsy Well - 全員リテイク。

G YARD - ノリ的にも1曲だけ昔のバイブスっていうのはあるかもしれないですね。

- よりシンプルな感じがしますよね。

Gypsy Well - A$AP ROCKYとRihannaの仲も公認になったしね。

Tim Pepperoni - その時は付き合ってるって噂レベルだったから「LOWKEY」なんですよね。今と照らし合わせるとあんまり上手いことかかってない(笑)。

- 録り直してみて、これでいけるなって感じになったんですね。

Tim Pepperoni - でも声が変わってるっすね。

Gypsy Well - 俺は特に当時は挑戦してたのかな。まだ自分の声が作りきれてなかったけど、今回はがっちりできた。

Moon Jam - 3年前よりみんなラップが上手くなった。レコーディングもスムーズにいった気がします。

Kaleido - 次が"Polyp"ができたのかな。

G YARD - "CHEESE BANGER"を作ってる途中くらいに"Polyp"ができた。"CHEESE BANGER"はわりかし時間がかかったもんね。"CHEESE BANGER"は2回くらい全部変えた。最初は全然違った。

Tim Pepperoni - フックが(歌いながら)「Talk Too Much, Talk Too Much」ってリリックだった。Puckafallに聴かせたら、「うん、ちゃうな、ドリルやでドリル」って言われて、フックの間を空けようってなって、変えたんだよね。

Gypsy Well - あとフックの英語だよね。

Kaleido - そうですね、フックは自分なんですけど、全部英語っていうのは初めてで。

Tim Pepperoni - 当時KaleidoはA$AP Fergみたいにラップに力が入っちゃう傾向にあって、もっとリラックスして緩くやった方がいいんじゃないかってなって、あれになった。

Kaleido - 割とローテンションなラップは珍しいかもしれないですね。

- そういう感じでお互いのラップに対して指摘をするっていうのは結構あるんですか?

Gypsy Well - とりあえずみんな自分のテイクを録ってみて、そこから足したり削ったりですね。

Kaleido - "CHEESE BANGER"は自分がフック、フック前、最後のバースで結構テンションを使い分けてるので、時間がかかった。

- バースの順番は最初から決めてるんですか?

G YARD - "CHEESE BANGER"は書き終わった順じゃなかったっけ。

Moon Jam - そういう時もあれば、録ってみて考える時もあるね。

Tim Pepperoni - ラップの色が近い人はあえて離したり、近づけたりもしますね。この曲が去年の12月くらいにできましたね。

- "CHEESE BANGER"と同時期に"Polyp"ができたんですね。この曲はこれまでのSound's Deliの中ではエモーショナルな曲なのかなと。

Moon Jam - ビートだけ先にできてて。

Kaleido - METくんのストックのビートを聴いていたら、みんな「何これやばいじゃん」ってなって。

- 変則的なビートですよね。ジャージーといえばジャージーだけど。

Gypsy Well - よくわかんない。

Tim Pepperoni - "CHEESE BANGER"もジャンルは謎だしね。

- Sound's Deliはデビューした時は正統派なヒップホップって言われてたと思うんですが、どんどん自由になってますね。

G YARD - その枠ははみ出したいって思ってた。

Tim Pepperoni - トラップ、ブームバップ、ハイパーポップ、ドリル、ジャージーの全部。

- 前に話を聞いた時もBROCKHAMPTONの話とかが出ていたので、そう考えるとすごくわかるんですけど。でもみんなストレートにヒップホップが好きですよね。

Tim Pepperoni - みんなJET LIFEとかPRO ERAとかから始まってるんで。

G YARD - でも聴いてる音楽が今はみんな違うからね。

Tim Pepperoni - 僕だったらヒップホップ主体で普通にボカロとかも聴きますね。ヒップホップだったらKid Cudiとか。

Kaleido - Kid Cudiのこの間のシングルヤバかった。自分はDJでもよくR&Bもかけたりするし、聴きますね。

Gypsy Well - 自分は最近UKの音楽をよくチェックしてますね。

Tim Pepperoni - G-YARDは結構日本のヒップホップに強いですね。

G YARD - 普段聴きはしないんですけど、YouTubeをチェックするのが好きでずっと見てますね。

Gypsy Well - アップカミングな若手を教えてくれる。

G-YARD - Watsonとかも教えてたもんね。みんなその時は全然しらなかったんだけど、やっぱきたじゃんって。

Moon Jam - 僕は2年くらい前からオルタナも聴くようになりましたね。それまではヒップホップばっかりでしたけど。

Tim Pepperoni - 俺とMoonは結構似てるっす。

- でもそうなるとビート選びもみんな一致して良いってなるのは難しそうですよね。

G YARD - "Polyp"は満場一致だったよね。

Moon Jam - 満場一致じゃないとやらないかもしれないですね。そうじゃなくても作るは作るけど、ボツになることが多い。

- それで選ぶのがこういう方向性のビートになるのは面白いですよね。

Tim Pepperoni - METとPuckafall、プロデューサーの2人に助けられているっていうのはあります。彼らなりに今のトレンドを昇華しつつ、オリジナルのものにしてくれてるんで。

Kaleido - 2人ともひねくれてるから、人と同じことはやらない。

Moon Jam - 僕らも若干捻くれてるのかもしれないですね。

- クルーの近くにビートメイカーがいるのも今は珍しいですよね。

Tim Pepperoni - でも最近そういう流れがきてる気がするんですよね。この間福岡に行った時に会ったクルーはメンバーにビートメイカーがいた。

G YARD - 逆にMETは最近、色んなプロデューサーとやった方がいいよって言ってる。そっちの方が鍛えられるからって。一緒にいるのが長い分、なんとなくやりたいこととかが分かるけど、また別のとこから自分たちで良いものを作るのも必要だよねって。それは確かにねって。

Kaleido - "Polyp"はこれまでやったことがないタイプのビートでしたけど、その時のみんなの気持ちがガッて一致した感じでしたね。

Tim Pepperoni - その時京都に行ってたんですけど、その時の空気を思い出すんですよね。

Kaleido - バースもみんな書くの早かったよね。

Moon Jam - 気持ちの曲ですね。

Tim Pepperoni - やばいですよね。友達に聴かせたら「卒業式やん」って言われました。

Moon Jam - 節目っていうか、再出発に相応しい曲になってると思います。

- 最後のバースは全員が参加してます。

Gypsy Well - 16小節をみんなで考えて書きましたね。

G YARD - 最初は違うやり方でやろうってなってたんですけど、みんなで集まって1小節ずつ書いていきましたね。

- この曲が顕著ですがリリックも意味合いが強調されるものになってきてますよね。

Kaleido - 自然にそうなったよね。

Moon Jam - 逆に昔のノリで書けないですけどね。

Tim Pepperoni - 文章的になるのが悩みなんだけど。

Moon Jam - わかる。

Tim Pepperoni - わかるっしょ。もうちょっと言葉遊びをしたいんですけど。

G YARD - 前のスタイルの面白さもあるもんね、わけわかんないというか。

- そこのバランスはあるかもしれないですよね。で次にできた曲は

Tim Pepperoni - ここからやばいよね。あとの3曲は1ヶ月以内でできた曲ですね。

G YARD - 最後の2曲なんて締め切りの2日前にできた。

Tim Pepperoni - 没曲はいっぱいあるけどね。

- なんで期間が空いちゃったんですか?

Tim Pepperoni - 修行シーズンに入っちゃった。

Moon Jam - むじい(難しい)なみたいな。

Kaleido - この3曲ができてハードルが上がっちゃった。

Moon Jam - 内容が似ちゃうとかビート選びも難しかったよね。

Tim Pepperoni - で、この次にできたのが"High Life"ですね。このビートは1年前くらいのビートでね。

- しかもビートはMETさんとPuckafallさんの共作なんですね。

Moon Jam - たまたま一緒に遊んでいて。

Kaleido - で、時間が空いて聴いたらこのビートいいねってなって。

Tim Pepperoni - 俺はずっと頭の中にビートが残ってて、ていうことは良いビートなんじゃないかって。

Kaleido - この曲もビートの構成が変わってて。ドラムがどんどん変わっていくみたいな。

Moon Jam - 前半のドラムがPuckafallだった気がする。

G YARD - これも1日でできたよね。

Tim Pepperoni - トラジ(Gypsy Well)のフックは久々だよね。

Gypsy Well - ラップっぽいフックを目指して作った。

- これがサクッとできて乗ってきた?

Moon Jam - 上がってきたけど、この後も何曲か没曲がある。

Tim Pepperoni - METのやつもあるし、Puckafallのやつでもあるよね。

Gypsy Well - 1~2ヶ月で結構作ったんだよね。

Moon Jam - それが全部うーんって感じになって、最後3日間くらいで2曲。没曲も悪くはなかったんですけど、今回のEPに入れるかっていうとうーんみたいな。

G YARD - めちゃパーティーチューンだったりね。

Tim Pepperoni - とりあえず全方位打ってるなこいつらって思われる。"High Life"と"Polyp"と"Blaze Up"は内容的に繋がってるよね。

- この3曲は内面をさらけ出すようなバースが印象的です。

Tim Pepperoni - っていう意味で『OUT NOW』です。

G YARD - 初めて聞いた(笑)。

Kaleido - あと情勢的にもライブをするのが難しかったりしたので、溜まっていた分自分たちも外に出ていくぞって。聴いてくれて、外に出ようって思ってくれる人がいてもいいなという思いで『OUT NOW』です。

- 今回改めてデビュー曲の"Sound's Deli"がリリースされたのが2020年だったんだって気づいて。もう少し前だと勘違いしてたんですよね。

Kaleido - そうなんですよ。出た瞬間にコロナになったんで。

G YARD - 長かったな(笑)。

Tim Pepperoni - 青春時代をもろコロナの中で過ごした世代。

- でもせっかく出てきた中で、コロナの状況っていうのは気持ちとしても辛い部分もあったのかなって。

Moon Jam - まあ恵まれてはいましたけどね。

G YARD - 当時は別になんとも思ってなかったけどね。

Moon Jam - Fuji RockもPOP YOURSも出させてもらって。

Tim Pepperoni - SEEDAさんと漢さんともたまたま曲を作れて。

G YARD - コロナで不便な以上にいっぱいいいこともあったから、そんな悲しいとかはないですね。

Tim Pepperoni - コロナが終わって時代が変わる感じがするからこそ、自分たちも内面的に考える部分もあるのかなって思いますね。キラキラした時代が終わるというか、自分たちがバッと出て行った時代が一旦終わって、ネクストシーズンに入る感じがする。

- "Blaze Up"も"High Life"も自分たちの立ち位置を意識したようなリリックも出てきてますね。

G YARD - "Blaze Up"を作った日は、ちょうどラップスタア 誕生の決勝の日だったんですけど。

Tim Pepperoni - 仲良いVICTORが優勝して嬉しい気持ちと。がっつり同世代なんで。

- だからG-YARDくんのリリックに出てくるんですね。

G YARD - みんなが来る前にabemaで放送を観ながら書きましたね。

- 客観的には見れないと思うんですけど、Sound's Deliのシーンでの立ち位置ってどう捉えてますか?

Gypsy Well - 何者なんだろうな俺らって。

G YARD - それがわかんないんですよね。あんまり近い人はいないなって感じなんですけど。

Moon Jam - クラブに行っても結局5人でいるみたいなのが多くて。フィーチャリングも全然やってないし。

G YARD - 逆に武器というか、自分たちの居場所を作りたいよね。

Tim Pepperoni - 地域を代表してるわけじゃないしね。

G YARD - 地元もバラバラだしね。

- 自分もSound's Deliはどこにいるんだろうって思って聞いてみたんですよね。

G YARD - デカいイベントとかで、全然違う界隈の中にポンっと俺らだけいるみたいな。楽屋とかも気まずいしね(笑)

Kaleido - Flat Line Classicsは同い年で仲良いけど、音楽性は違いますからね。

Gypsy Well - 気にしたこともあんまないけどね。

G YARD - それでよかったと思うけどね。

Tim Pepperoni - ラップを始めた時はヒップホップも今ほど流行ってなかったからね。今だったらどんなサウンドでやろうかなって選べるじゃん。例えばドリルやろうかなとか。そういうのもなくて、何やってもよかったので、なんでもやってました。

- 流行ってる分、サブジャンルがカテゴライズされやすくなってるのかもしれないですね。

Gypsy Well - 当時はラップ始めましたって言って、1曲目でトラップをやる人はいなかったよね。それはだいぶ変わったなって思う。とりあえずはイナたいトラックからラップし出す感じだった。それで基盤ができたのかもしれないけどね。スキルはつくと思うんですよ。当時はフロウとか気にしたことなかった。韻とリリックだけ。

G YARD - 韻踏むの楽しかったよね。

Tim Pepperoni - 俺とトラジは昔クルーを組んでて、ずっと電車とかでも広告を見て、これで韻を踏もうって探してた。

Gypsy Well - そう思うと時代が変わったっすよね。

- でもヒップホップシーンが早すぎると思いますけどね。まだデビューして3年で一回りした感覚があるというのは他のシーンではないかなと。かなり話が逸れてしまったけど、EPに戻ると最後にできたのがタイトル曲なんですね。

Tim Pepperoni - "OUT NOW"やっぱり面白いよね。今日も来るときに聴いてきた。

Moon Jam - Puckafallがビートを持ってきて、それまでに何曲かボツにしちゃったりしていて、締め切り最後の日にね。

Tim Pepperoni - しかもめっちゃ面白いのがデータで送ってくれたらいいのに、いつもわざわざPCを持ってきてくれる。

Moon Jam - 流した瞬間満場一致で。

G YARD - その反応が見たいらしいです。

Moon Jam - 夏っぽいバイブスもあるしEPの足りてないところ。

Kaleido - Puckafallにめっちゃいいビートできたねって。ワクワクするようなイントロからビートが入って一気に外に出たくなるような感じが。

Tim Pepperoni - イントロがロックっぽくて、新しいと思ってそこにG-YARDのブームバップぽいノリがバチっとハマって。

Moon Jam - Kaleidoが速攻でフックを入れて、めっちゃいいフックだねってなって。それでバースの内容もあんま話してないけど、みんな揃うみたいな。

G YARD - イントロから一気に盛り上がる感じじゃないのがいいよね。肩の荷が降りた。

Gypsy Well - 自分のテイクを録り終わった時に「はあー」ってなるよね。

Moon Jam - 本当に背水の陣だったので。強制的にみんな同じ方向を向いた。できると思わなかったよね。

Tim Pepperoni - "Blaze Up"と"Out Now"が同日にできた。いつもは飲まないストゼロを入れて。

G YARD - トラジは一旦沈没してね。寝て起きてまたすぐ飲まされたもんね。

Tim Pepperoni - ストゼロのバイブスあるよね。

G-YARD - ビデオも撮りたいなってなってる。

- 改めてEP全体についてできてみてどうですか?

Gypsy Well - 気に入ってるっすね。捨て曲が無いなと思ってます。バランスも頭からケツまで詰まってる。

Kaleido - まとまってるようで型破りなところもあるのかな。それぞれ既存のフォーマットからは外れていて。ビートも『MADE IN TOKYO BANG』ならMETくん、『Puckadeli』ならPuckafallって感じだったんですけど、今回は2人がいて、共作もあって色んな要素が合わさったいい作品になったかな。

Tim Pepperoni - 8月にWWWでリリースパーティーをやるんですけど、その規模感に見合うような人気をつけたいですね。前はSolfaで150人くらいでパンパンだったんですけど、今回は倍ってこともあって。全てを倍々くらいにしていきたいですね。

G YARD - WWWも挑戦だもんね。別に当たり前の規模感じゃない。

Gypsy Well - あと今作がリリースされたら人間味とかも知られるんじゃないかな。これまではノリ重視の曲が多かったから。知ってほしいよね。

Moon Jam - 人間としても成長した感じがするから。

G YARD - 大人になった感じがするよ。今回は内省的な曲ばっかりやったから、また次はアホな曲も作りたいね。

Tim Pepperoni - 次はアルバムですね。SPACE SHOWER MUSICとガッツリ作りたい。ビッグマネーもめっちゃ欲しいですけど、僕たち一歩ずつのスタイルだから。

Moon Jam - チャレンジをずっとし続けたいですね。今回も面白いことができたし。

- 続くのが一番のチャレンジですしね。

G YARD - 先のことを考えてもキリがないからね、やれることをやるしかないよね。

Tim Pepperoni - 今は5人が音楽だけで食えるようになれたらいいですね。

G YARD - 今年はソロでもみんなやっていて食い扶持を増やしていくよね。頑張ろう、まだやっとスタートラインくらいだ。シーンの一員じゃないけど、遊びでやってるところからは抜け出せたかな。

Info

Sound’s Deli (サウンズ・デリ)
Digital EP『OUT NOW』
2023.7.5 Release
配信リンク:https://ssm.lnk.to/OUTNOW

1. OUT NOW (Prod. Puckafall)
2. High Life (Prod. MET as MTHA2 & Puckafall)
3. LOWKEY LIKE (Prod. MET as MTHA2)
4. Blaze Up (Prod. MET as MTHA2)
5. CHEESE BANGER (Prod. Puckafall)
6. Polyp (Prod. MET as MTHA2)

Sound’s Deli “OUT NOW” Release Party

会場:渋谷 WWW
公演日時:2023 年 8 月 4 日(金) 

開場時間:18:30/開演時間:19:30
料金:ADV ¥3,000/DOOR ¥3,500 

チケット購入リンク : e+【https://eplus.jp/outnow0804/

出演: -LIVE- 

Sound’s Deli 

OMSB

Showy

-DJ-
MET as MTHA2

RELATED

【インタビュー】JAKOPS | XGと僕は狼

11月8日に、セカンドミニアルバム『AWE』をリリースしたXG。

【インタビュー】JUBEE 『Liberation (Deluxe Edition)』| 泥臭く自分の場所を作る

2020年代における国内ストリートカルチャーの相関図を俯瞰した時に、いま最もハブとなっている一人がJUBEEであることに疑いの余地はないだろう。

【インタビュー】PAS TASTA 『GRAND POP』 │ おれたちの戦いはこれからだ

FUJI ROCKやSUMMER SONICをはじめ大きな舞台への出演を経験した6人組は、今度の2ndアルバム『GRAND POP』にて新たな挑戦を試みたようだ

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

WONKとThe Love ExperimentがチョイスするNYと日本の10曲

東京を拠点に活動するWONKと、NYのThe Love Experimentによる海を越えたコラボ作『BINARY』。11月にリリースされた同作を記念して、ツアーが1月8日(月・祝)にブルーノート東京、1月10日(水)にビルボードライブ大阪、そして1月11日(木)に名古屋ブルーノートにて行われる。