【インタビュー】Kaneee × STUTS | あの日の負けからの大舞台
5月に開催されたヒップホップフェス『POP YOURS』でのSTUTSのステージは、親交の深い実力者たちが客演で続々と登場するSTUTSらしい暖かい空間が作られていく。その最後に披露されたのが、新人アーティストKaneeeをフィーチャーした未発表曲"Canvas"だった。『ラップスタア誕生』でSTUTSのビートを使用したことがきっかけで、自然に両者の交流が始まりフェスティバル直前に楽曲が完成したという。
初披露ながらも大きな反響があった"Canvas"はフェス直後にリリースされ、既にSpotify上では100万回以上の再生回数となっている。今回のインタビューでは2人の出会いはもちろん、Kaneeeが音楽活動を始めたきっかけなどについても訊いた。
取材・構成 : 和田哲郎
撮影 : 三田村亮
- まずはサプライズで出演されたPOP YOURSについて、いかがでしたか?
STUTS - Kaneeeくんどうでした?
Kaneee - ライブも全然やったことない状態であのステージに立たせてもらって、最初言葉が出なかったっすね。「最高」って言葉で終わらせられないなって。言葉が出ないな……みたいな感じだったし、他の演者さんにもいっぱい会えたし。STUTSさんが後ろで叩いてくれたからこそ、緊張せずにカマせたと思います。
STUTS - よかったです。僕も後ろから見てて、これが3回目のライブとは思えないぐらい全然物怖じしていなくて。でもラップスタアのパフォーマンスも見てて、絶対大丈夫だろうなとは思ってたんですけど、やっぱり本番も最高で嬉しかったです(笑)。でも、サプライズな上に今までリリースしてなかった方とやるというのは初めてだったんで、Kaneeeくん自身は問題ないと思っていたけど、自分がうまくできるかなとかドキドキしながらやってました。
- その直後にサプライズリリースされた"Canvas"も、すごく反応が良さそうですね。
STUTS - (反応が)いいといいなあ。
Kaneee - (笑)。そうですね、まだ1週間しか経ってないんですけど、いろんな人が聞いてくれてますし、データを見ると日本だけじゃなく海外にも届いているみたいで、必要とされるところまで来たんだなって感じました。一番最初のシングルで。
STUTS - やあ、よかった。
Kaneee - ほんとによかった(笑)。
- "Canvas"の制作については後ほど伺いますので、まずはKaneeeくんのプロフィールから聞けたらなと。そもそも何年生まれなんですか?
Kaneee - 2000年です。今年23歳です。生まれ育ったのは札幌なんですけど、ちょくちょく海外に行ったりして、そこから東京にきて。
- 東京に来たのはいつ頃ですか?
Kaneee - 2019年なんで、4年前ですね。
- 東京に来た理由は?
Kaneee - まあ、本当の部分は大学なんですけど、自分の中で大学のためっていうよりかは、音楽で一番シーンが熱いのがやっぱり東京なので。人脈とか可能性とか音楽の幅とかもあるし、成功するんだったら東京に出るのが早いかなって思って、というのがメインの理由です。
- 札幌で学生の頃から音楽活動をしたいと考えていた。
Kaneee - もともと中学生からシンガーソングライターに近い形だったりバンドをかじっていて。その時から、音楽で食っていきたいとは思ってたっすね。
- そもそも音楽にはどうやって出会ったんですか?
Kaneee - 父親がすごく音楽好きでギターを教えてくれたり、母親もヒップホップのダンサーで、音楽一家ではありましたね。
- 家ではずっと音楽が流れていた?
Kaneee - そうですね。それこそ母親がUSのヒップホップを聴いてて、Eminemが流れてたんですよ。"Rap God"がちょうど僕が小6か中1ぐらいのタイミングで出た曲だと思うんですけど……ってか、その前にギネスブックが小学生の時にすごい流行っててそこで知ったんですよね。ギネスブックって小学校の時すげー流行ってて、図書館とかで借りてたんですけど、そこで「Eminem:世界一ラップが早い」ってのを見て、こういう人がいるんだなって。
STUTS - ギネスから知ったんだ(笑)。
Kaneee - そうですよ(笑)。で、母親が流してるので初めて聴いて「ラップってこんなのできるんだ、すっご」みたいな。ヒップホップと出会ったタイミングはそれですね。
- 日本のラップは聴いていたんですか?
Kaneee - 最初は聴いてなかったです。日本語ラップは自分が業界に入ってからで、どういう人がいるのかとか、日本のトレンドを知るためにいろいろ聴いてるんですけど、東京出てくるまではヒップホップよりロックとかR&Bが多かったですね。
- 東京に出てきて、ラップスタアまで3、4年ほど期間があると思うんですが、どのように?
Kaneee - 自分がプレイヤーとしてこの業界に入ったきっかけは今日も一緒にいる、Rayなんですけど。Rayともう一人COSMOSっていう仲間がいて、出会いは東京のクラブに遊びに行った時でした。一人でいたところを声かけてもらって、仲良くなって、ヒップホップを教えてもらったんですよね。それから自分もプレイヤーとしてやってみようと。そのきっかけというのも、僕の父親と弟が亡くなって、もうどん底のどん底までいっちゃって。這い上がる近道はやっぱ、音楽でカマすしかないなっていうのが一番最初。で、プロップスを得る土台づくりのためにラップスタアにエントリーしたっていう流れです。
- 出会ったクラブはどこだったんですか?
Ray - HARLEMです。
- Rayさんはなんで声をかけようと思ったんですか?
Ray - シンプルに見て、一人だなって、馴染んでないっていうか、あんまり来たことないのかなってわかって。この辺の子っぽくなかったですし、可哀想だなと思って(笑)。でも、短時間でまさかこんなことになるとは(笑)。
- そうですよね。初対面でウマがあった?
Ray - 回数を重ねるごとにだんだん。やっぱ好きな音楽とかお互い一緒だったんで。
STUTS - そもそもHARLEMに行こうと思った時点で結構ヒップホップが好きだったの?
Kaneee - どっぷり浸かってるっていうよりかはとりあえず有名な曲は知ってるみたいな。Chris Brownの”AYO”みたいな、あのレベルの、誰もが一度は耳にしたことあるヒップホップの曲とか。コアの部分は知らんかったです。
- それからどれくらいの頻度で会うようになった?
Ray - 僕はもとから裏方に回ってやりたいって気持ちがあったんで、いざ音楽やるぞってなったからより密接に関わるようになったかな。普通に遊ぶノリは変わってないんで、音楽関係なしでも仲良い友達ではあるんですけど。最近は仕事もあるからずっと一緒にいるっすね。
- じゃあ、一度どん底まで落ちて「音楽でカマすしかない」って決めたのはみんなで。
Ray - そうですね。今って、高校生ラップ選手権とか見ていた時よりもラッパーとしてデビューする道が増えたじゃないですか。バトルラッパーじゃなく、プレイヤーとしての道がある。僕もラップスタア見てましたし、しっかり準備してカマせば絶対いけるだろうって思ってて、そこから一緒にやるようになりました。
- 自分も一次審査をやってて、音源もビデオもしっかり練られているなと感じました。その辺りもみんなで決めたんですか?
Ray - ビデオは基本的に僕が考えて、こんな感じのラッパーがいたら気になるよねっていう僕の中のイメージを形にするように作りました。
- Kaneeeくんはラップの曲を録ったのは応募動画で何曲目になるんですか?
Kaneee - 5曲目とかじゃないですかね、たぶん。ちょうど始めたのが8月……これ覚えてるんですけど、去年の8月1日にラップを始めたんですよ。「今日から曲作っていこう」って、3曲くらい作ったんですけど結局ボツになって、すぐラップスタアでした。
- 8月1日を覚えているというのは、印象的な出来事があったんですか?
Kaneee - カナダに行ったんですよ、その日。海外でレコーディングするアーティストは多いじゃないですか。自分もそれをやってみたくて、8月1日のカナダ行きの便をとって向こうに行って、受け取ったファーストインプレッションで曲を作ろうと。向こうはカルチャーが全然違いますし、人も違いますし、街中を歩いていてもラッパーみたいな人もすごくいっぱいいますし、そういうのを見て、曲作るんだったら今日この日がいい、っていう。
STUTS - カナダで曲作ったんだ。
Kaneee - 向こうで3曲ぐらい作りました。
- それはタイプビートとかで?
Kaneee - そうです、YouTubeのタイプビートで。今と全然ジャンル違ったんですけど。
STUTS - どういう感じのタイプビートだったの?
Kaneee - 最初はハイパーポップ。
STUTS - そうなんだね(笑)。
Kaneee - オートチューンのつまみをマックスにして(笑)。でもその時は見本がなかったんですよ。LEXくんとかOnly Uくんみたいな感じの日本のタイプビートを使ってやってて、クオリティもそんなによくわかんなかったんですけど、最初は本当に何から始めればいいかわからなかった。
- そこから考えると、ラップスタアでSTUTSさんのビートを使うというのは方向性がかなり変わりましたね。
Kaneee - 一気にガラッと変わりましたね。
- それはどうしてですか?
Kaneee - ラップスタアのビートを一通り聞いて、STUTSさんのビートが一番良い曲を作れるなって思ったんです。シンプルに直感で「これヤバくなりそう」って思って選んだのと、どっちかっていうと特定のビートにこだわるより、ヤバいからこのビートに合うフロウで乗せてみようっていうタイプで。それでできたのが「Imma young boy」の曲。曲名ないんですけど(笑)。
- 作るのにどれくらい時間かかりました?
Kaneee - 3、4時間くらい?
Ray - 最初フリースタイルでフロウとリリックの大雑把な基盤を作ったのが3、4時間くらい。で、そこから細かく修正していって、1日か2日くらいで映像を撮ったっすね。
- ラップスタアの結果や反響について、率直な感想を教えてもらっていいですか?
Kaneee - 優勝できると思ってました。めちゃくちゃ自信がありました。自分もそうなんですけど、Rayも裏方でサポートしてくれてて、Rayはまだ知名度はないんですけどプロデューサーとしては日本でも結構強いと思うので、それもありきで優勝すると思ってました。ただ、優勝できなかったけど、今思えばいい機会を与えてもらったなって思います。僕らが欲しかったプロップスだったり知名度だったり、必要なものを得ることができたなって。STUTSさんにも会えましたし。ファイナルよりもヤバいPOP YOURSっていう舞台もあったし。結果オーライだったかな。経験不足も正直あったんですけど、審査員の方も言ってたように、結局その後の方が大事かなって思うので。
- STUTSさんはKaneeeくんの応募動画を見てどうでした?
STUTS - 気になってましたね。どんな感じの方なんだろうって。
Kaneee - (笑)。
STUTS - 言い方はあれですけど(笑)。ラップ始めて3ヶ月なんだ、みたいなのにまず驚いて。あと、自分のビートに乗せるなら「こう乗せてほしい」っていうのもやってくれた。それをさらに上回るような感じでやってらっしゃったので、すごいテンション上がって、嬉しかったんです。その後なんですけど、勇気出してインスタでメッセージ送ったんですよ。あんまり普段そういうことやらないけど、気になったので。別に一緒に曲作るとかじゃなくて、普通に話してみたいなと思ってメッセージお送りしたら返ってきて、会いましょうと。
- とりあえず会ってみようと。
STUTS - 普通にKaneeeくんの最近の状況とか、てか、そもそも僕もあの動画の情報しか知らなかったので、Kaneeeくんがどういう方なのかっていうのを知りたくて、お会いしてみたいなってところが最初でした。
- Kaneeeくんは_メッセージが来てどうでした?
Kaneee - そうすね……やばかった。
一同 - (笑)。
Kaneee - ちょうど仲間と集まってたんですよ。みんなでゲームやってる最中に僕がスマホいじってたら通知がきて、「え、待って?」って(笑)。1年後とか2年後とか、自分が作品出していったタイミングでそういうのって来るのかなって思ってたから。でも、ラップスタアの進行中にフォローいただいてたんで、そこからやべえってなってたんですけど、DMがすぐ来ると思わなかった。自分でもこれはチャンスかもしれないと、会ってお話して曲も作れたらヤバいことが起きるかもしれないって思ってました。
STUTS - それで会っていろいろ喋ってて、Kaneeeくんが最近作った曲とか聴かせてもらったりして、「この曲最初に出そうと思ってるんですよ」とか聞いて。ラップスタアの動画の印象よりも歌メロのものが多かったりして、こういうフロウならもしかすると合うビートあるかもって思って、その時に"Canvas"のビートを聞かせたんですよね。そしたらそのままフリースタイルが始まってセッションになって(笑)。もうその日に曲の原型がほぼできて、みたいな感じでした。
Kaneee - そう、すぐ始めましたね。ビート聞いてスマホでリリック書き出して。
- STUTSさんのビートだとメロディーとか浮かびやすい?
Kaneee - 浮かびやすいです。それこそ自分の得意分野のジャンルのビートだったので「来たな」って、「これいけるな」って思って(笑)。
STUTS - あの時も3、4時間でほぼ完成してたよね。
Kaneee - フロウとリリックはそれぐらいですかね。
STUTS - それから録音し直したりとか歌詞調整したりとかあったんですけど、ほぼほぼそのままで……こんなに早いんだって思って。
Kaneee - そこが売りです(笑)。
STUTS - 応募動画の印象とKaneeeくんのやりたいことの方向性がすごくいい意味で違ったというか、それこそ自分の音楽性に近い感じだったので、すごくびっくりした記憶があります。嬉しかったですね。境遇も聞いて、高校の頃から音楽作ってたりとか音楽のために上京したりとか、近いものを感じましたし。全部面白くて楽しい日でした。いい日だなって感じでしたね。
- STUTSさんから見たKaneeeくんのアーティストとしての魅力というと、どうですか?
STUTS - 本当にすごく柔軟で、あとメロディー……本人を前にして言うのもあれですけど(笑)、メロディーセンスがとても素敵で、声もすごく素敵で、歌詞もすごく直球で耳に入ってきて、でも心に残るものがある歌詞なので、とても素敵ですね。ラップスタアの動画の印象だと、最初は怖い人なのかなって。
一同 − (笑)。
- 応募動画が暗い部屋ですしね(笑)。
Kaneee - LEDだけ貼った暗い部屋でね。
STUTS - まあ怖いというか、イカつい感じ方なのかなと思っていたので、直接会ってお話したらその印象とは全然違って。
Kaneee - ……照れますね(笑)。
STUTS - でも本当に、メロディーもリリックも声も全部素敵で、また一緒に曲を作れたら嬉しいなって思います。
Kaneee - 光栄です、ありがとうございます。
- "Canvas"はKaneeeくん的にはどういうことを歌いたいと思って歌詞を書きましたか?
Kaneee - やっぱ一発目だったんで、一番底辺から最高のところまで駆け上がりたいし、駆け上がるしかないっていう状況だったので。今でもそうなんですけど。自分はここから上がっていくから、みんなついてきてっていう。で、前までは音楽やっててもダメだったし、バンド時代も売れなかったし、プロップスすらつかなかったっていう暗黒の時代を経てヒップホップに出会って。STUTSさんともやらせていただいて、っていうこの過程をそのままリリックにしたいなっていう感じでしたね。
- 〈あの日の負け〉っていうリリックがあるじゃないですか。あれはラップスタアのことなんですか?
Kaneee - まさにそうです(笑)。
STUTS - そこが抽象的な言葉なので、聞く人にとってはいろんなシチュエーションに捉えられると思います。
Kaneee - 「こういう境遇で苦しいんですけどその部分を聞いて元気になりました」みたいなDMとかもいただいていて。このリリックにしてよかったなって。
- それから"Canvas"が完成したのはいつですか?
STUTS - 会ったのが4月の下旬ぐらいで、5月の上旬くらいにできましたね。
Kaneee - 3週間ぐらいでなんだかんだレコーディングまで進めて。
STUTS - POP YOURSにギリギリで(笑)。
- そのタイミングでPOP YOURSで演ったというのはやっぱすごいですよね。
STUTS - でもやっぱ、Kaneeeくんの最初のリリースを自分の曲でやらせてもらえるなんて、本当すごく嬉しかったんで、Kaneeeくんにとって一番いい形になるように発表したいと考えました。
- 最初にその話を聞いた時はどうでした?
Kaneee - もともと自分、来年のPOP YOURSに個人枠で絶対出たいって思っていて。それに向けて今年一年カマしまくろうという矢先にいただいた話なので……いろいろ叶っていくんだなって。途中から「やべえ」っていうよりかは「口に出せば叶ってくんだ」みたいな。今までもずっとそうだったんですよ。YZERRさんに認めてもらうっていうのも、全部口で言ってたことですし、POP YOURSもそうですし、STUTSさんと一緒に曲作るっていうことも、みんなでずっと言い続けていたことだった。言って、行動すればいけるもんだなって思いました。
STUTS - もともとは別の曲を最初のリリースにしようっていう感じだったもんね。それで僕も聞かせてもらったりして、この曲も素敵だなって思いつつ、でも結局その日セッションすることになって、Kaneeeくんから「これ最初に出したいです」って言ってもらえたので、自分ができることならなんでもと思って。
Kaneee - めっちゃありがたかったです。助かりましたね。
STUTS - でも今まで作っていた曲もすごく素敵なので、ミックスとかで自分はお手伝いできることがあったらしたいなって思っていて。というか、むしろ最初に会った時はそういうことを思っていたんですよ。制作のサポートだったり。
- "Canvas"が出たことで後ろ倒しになっている曲も今後リリースされていく予定ですか?
Kaneee - 今、何曲かストックがあって、それをシングルでちょっとずつ出していこうかなと。
- 先ほど、来年のPOP YOURSで個人の枠で出るのが目標、と仰っていましたが、それをするために具体的にこういうことをしたいということは考えてあるんですか?
Kaneee - もう……カマすしかないっす。それでしかないんですけど、今回出た"Canvas"みたいな感じでシングルを出していって、常にグラフが右肩上がりになっていくような曲をどんどん出して、ライブでも常にカマして。今年のラッパーのアイコンはKaneeeだって言われるような感じでこれからやっていきたい。その通りに進めばいけると思います。
STUTS - すごい……。
Kaneee - (笑)。続けるだけかなって思ってますね。
- すごく前向きなマインドは、一回どん底を経験したからこそなんですか?
Kaneee - そうですね、背水の陣だったので。後ろ見たところで何もないから、ただ前見て夢追い続けるしか選択肢が残されてない。それで、自分がもともとやろうとしたこととか全部捨てて、やり直したって感じです。自分バカなんで。人間生きてるだけですごいから、そんないちいち浮き沈みしてても面白くないし、沈んだところで何もないじゃないですか。いいこともないければ悪いことしかない。僕はその一番悪いところを経験したと思ってて。なのでもう、くよくよしてらんねーなって。黙ってやるべきことをやって証明しようっていう考えしかなかった。それもバカだからだと思うんですけど(笑)。そういうネガティブな考えがあんま好きじゃないので、基本的に何かをやるときはすぐポジティブにやるっていうところが、たぶん性格上あると思う。
- ちなみに理想とするアーティスト像ってありますか?
Kaneee - XXXTentacionみたいになりたいです。まず音楽性が好きなんです。何でもやるじゃないですか。すっごいアコギの葬式みたいな曲もあれば、ライブでお客さんが暴れ狂うような曲もある。どのジャンルもできるし、本人も若かったじゃないですか。死んじゃった時も20歳とかだったと思うんですけど。まだ生きてた時、DrakeとXXXTentacionの二大巨頭がバチバチにやりあってどっちが上に行くみたいな感じで、伝説の若手ラッパーっていう扱われ方をして死んで、なおさら伝説になったと思うんですけど。自分は死にたくはないんですけど(笑)、伝説のラッパーって言われたいんで。自分のアイコンをXXXTentacionにして音楽作ってるっすね。どのジャンルでもカマせるっていうのも自分のやりたいことですし。
STUTS - さっき言った「柔軟さ」は結構それに近い感じが。聞かせてもらった曲も本当にいろんなタイプの曲があったので。
Kaneee - 期待しててください。
- STUTSさんからKaneeeくんにアドバイスありますか?
STUTS - アドバイス!僕はアドバイスできる人間でもないですよ。
Kaneee - 聞きたいっす(笑)。いただけるのであれば。
STUTS - そのままでとても素敵なんで、僕が変に言うことは何もないかなと思ってて。でもまあ、どうだろうな。ありのままの自分で柔軟にいろんなことをやっていったらいいんじゃないかな。もし僕がお力添えできることがあれば何でもサポートしますし。いろんなKaneeeくんを聞いてみたいなって思います。
Kaneee - めちゃくちゃ照れますね(笑)。これからもお世話になります、大先生。
STUTS - いやいやいや。
- STUTSさんにとっても、こうやって年齢の離れた人とやるのは初めてですかね?
STUTS - そうですね。自分にとっても新鮮というか、初めての経験でした。やっぱりプレッシャーをすごく感じてて。でも、Kaneeeくんと何回か話して、やっぱり思い描いてる方向性みたいなものが自分の音楽性にもリンクするようなことが多くて。自分も力になれるかなって。
Kaneee - 僕も基軸としていきたい音楽はR&Bとかだったりする。それなら絶対に合うなって思ったし、STUTSさんとやりたかったです。
STUTS - ありがとうございます、嬉しいです。いろんな心配があったんですよね、僕の中ではすごい。だいぶ肩の荷が降りて。5月中はずっとそのプレッシャーで。
- かたや緊張しまくっていて、かたや物怖じしてないKaneeeくん(笑)。
Kaneee - いや、僕も一瞬なりましたよ。ヤバい、来るぞ、みたいな。
STUTS - 全然感じなかったな。
Kaneee - やっぱそういうステージってYouTubeとかでしか見たことなかったし、裏にいる時はお客さんの顔も見えないんで、やべえってなったんですけど、いざステージに入って観客席を見た時に、みんなの顔がすっげーニコニコしてるし輝いてるんですよ。自分を歓迎してくれてる感じがあって。雰囲気もそうですし、イヤモニしてたからわかんないっすけど歓声もヤバかったらしいですし。それを全部考えると、失うものなんてないし、みんな楽しみに来てくれてるなら、「楽しませるしかない」ってスイッチが入ってカマせました。STUTSさんも後ろで叩いてくれてるし。後ろから温かい視線をすげー感じましたね。
STUTS - 見てましたね(笑)。
一同 - (笑)。
Kaneee - やっぱ温かい視線ってあるんだなって(笑)。なんで、やりやすかったっすね。
STUTS - 逆に今までライブ経験がそこまでなかったのもよかったかもしれないですね。
- クラブとかで慣れちゃうと、片耳外して音聞きたくなっちゃうこともありますね。
STUTS - 大きな会場でのライブとクラブでのライブって別物ですよね。むしろ小さい会場の方がお客さんが近くて、またいろんなフィーリングがあるから。
Kaneee - クラブでのライブももちろんやりたいです。いろんなとこでやりたいですね。
STUTS - でもやっぱ後ろから見て、すごく感慨深かったです。カマしてるなーって。
Kaneee - デビューを幕張でやらせてもらったこそ、他のステージも気楽にいけるかなって。もちろんカマしに行くっていうのは前提なんですけど、1万、2万人ぐらいのキャパ経験しちゃってるんで。自分は幕張のあの日から、ラップスタアっていうよりもアーティストってスイッチが入ったっす。早めにアーティストになれました(笑)。そういう意味ではよかったっすね。
STUTS - でも、ラップスタアの番組がなかったら出会えてなかったですし、本当にいい出会いの機会をいただけて感謝したいですね。
Kaneee - すごく感謝してます。
STUTS - これからもっと色々やっていきたいね。
Kaneee - どんどんカマしますね。
STUTS - カマしましょう。
Info
Digital Single 『Canvas』
Kaneee / Atik Sounds
https://Kaneee.lnk.to/Canvas