【インタビュー】VaVa『VVARP』| 一生音楽作って、一生ゲームして

ラッパー・ビートメイカーとして活動をするVaVaが、アルバムとしては約3年ぶりとなる3rdアルバム『VVARP』を6月にリリースした。ソロアーティストとして飛躍を遂げた前作『VVORLD』からの3年間、世界が不透明な状況になってしまった中でも、新しい自分と出会うためにVaVaは楽曲を作り続けた。

アルバムの前には『Cyver』(2019)、『Mevius』(2020)という2枚のEPをリリースしていたが、VaVaにとってはアルバムを作るということは全く違う経験であるという。表現方法を模索しつつ、辿り着いた新しいVaVaの世界がどのように出来上がったのかを訊いた。

取材・構成 : 和田哲郎

撮影 : 寺沢美遊

- 2年間大変な状況だったと思いますが、どうでしたか?

VaVa - なんだかんだ今作の制作は一番時間がかかったと思ってます。前作の『VVORLD』を出して、アルバムの前にEPの『Cyver』と『Mevius』をリリースするというのは増田さん(SUMMITのVaVa担当A&R)と決めてたんですよね。また、その最中でそれとは別にアルバム用の音源を作っていたんです。何故そうなったかって言うとアルバムとEPってやはりベースとして全然違うと思っていて、アルバムは僕の中で一貫した世界観があるものという認識があって、それに対してEPとかシングルに関してはその時にやりたいことをやる。だから久しぶりにアルバムモードで制作して楽しかったですね。とにかく今作を作れてよかったという気持ちがとても大きいです!

- EPやシングルでフロウなどもすごいチャレンジした結果がアルバムに反映されているというか、歌い方の幅の広がりっていうのをすごい感じたんですよね。

VaVa - それは確かにそうですね。『VVORLD』は全体的に低めのトーンで歌っていたので、言われてみればそうだと思います。

- そこは意識して取り組んだ部分だったんでしょうか?

VaVa - 新しい表現をどんどん試していくことで、自分で聴いてもテンションが上がるようにしたいっていうのはあると思います。段々自分の中でのハードルも上がっていってるので、いかに自分のテンションを上げるかっていうのは制作中は重要かもしれないですね。『Mevius』をリリースしたときは、まだ俺と増田さんもお互いアルバムの感じが見えてない状態で。アルバムの中で最初にできたのは”Mugen"で、2020年かもうちょっと前だったと思います。”Mugenは自分の中で新規軸だったので、あの曲ができてからアルバムモードになれましたね。『VVORLD』の時は”現実 Feelin’ On My MInd”ができたのが大きくて、ゲームとヒップホップの自分の好きな感じを混ぜて作れたと思っていて。最近はボカロをよく聴いていたので、その要素を落とし込めたから自分の中でテンションが上がったんだと思います。

増田 - 2020年の3月でしたね。"Mugen"だけで30バージョンくらいあると思います。

VaVa - 作ったのはもっとありますね。今回増田さんに送ったデモは全部で500曲くらいあると思います(笑)。

- へー!めちゃめちゃすごいですね。ちなみに今作の考えていた世界観とはどういうものだったんでしょうか?

VaVa - 自分のまた別の好きなテイストを落とし込めた気がしてまして。そこは『VVORLD』とも共通していると思います。自分が聴きたい世の中にない音楽って感じですかね。あと全国でライブをしたりして、人と曲を作ったりすると、どんどん運動神経だけだと済ませられなくなるなと、かなり考えるようになって煮詰まったりもしていたんです。煮詰まった時にやるのは結局またゲームだったりするんですけど。今回はなんだろうな。インタビュー久々なので、まだまとまってないところがあるんですよね(笑)。

- 喋ってるうちに思い出してくると思うので全然大丈夫です。でも煮詰まっていた時期もあったんですね。

VaVa - めちゃくちゃありましたね。

増田 - アルバムを出したいって言っていた時期も長かったですもんね。

VaVa - 正直焦ってはいて。『Mevius』を出した後もシングルじゃなくて、しっかりとした形で出したいなとは思っていたんです。でもお互い見えてない状態だったんで、スタートには時間がかかったんですよね。

増田 - おそらくですけど、コロナもめっちゃデカかったんですよね。ライブができなくて、やれることは曲作りしかなくて、その時期は特にめちゃくちゃ作ってたんで。

VaVa - あとコロナでしっかりしたリリースパーティーもできないから、まだアルバムを考えるのはもったいないんじゃないかって話もしてましたね。結局作るのに時間がかかったので結果としてはよかったです。

- 焦る気持ちというのはどういうところから来たものだったんですか?

VaVa - 周りを見てもBIMとか活発に動いていたし、常に刺激をもらってました。俺は性格的に自分を見て欲しいというか、自分が動かないと自分の人生をやってる感じがしないという欲深い人間なので、大人しくするのは本当に嫌でフラストレーションが無茶苦茶溜まってましたね。なんで曲こんな作ってるのに出せないんだろうって。

- "Mugen"ができて見えてきたなという感じはあったんですか?

VaVa - 増田さんと見えてきたなみたいなことは言ってなかったですけど、アルバム作ってもいいんじゃないですかねとかは話してたと思います。

増田 - 初めの構想はVaVaちゃんの趣味性が強く出たスタイルと、もう少し他の要素を混ぜたスタイルにも挑戦できたらという話はしてましたよね。

VaVa - 今回のアルバムには入らなかった曲がめっちゃあって。ミックスまでお願いしたけど、採用しなかったものもあるし、マスター入稿ギリギリのタイミングでアルバムに入れられなくなったものとか、本来お客さんの耳に届く予定だったものがたくさんある。曲を本当にたくさん増田さんに送るから、増田さんの中でもVaVaのハードルが上がってると思うし、自分もハードルが上がってる。

増田 - ビートが良いとさらにハードル上がりますもんね。特にサビとか。

VaVa - "夢のまた夢"とか聴き飽きるくらいパターンを作りましたね(笑)。"Type"も。"Mugen"は割と早かったな。なんでなんですかね。

増田 - "Mugen"も"In My Sight"も何も言ってないと思います。"Reloadin'"や"tAtu"、"夢のまた夢"とかは特にたくさんリトライしてもらった曲かもしれませんね。

VaVa - 時間がかかったものは本当にとてつもない時間がかかりました。

- あと聴いてて思ったんですが、これまでと歌詞の書き方って変わっていますか?

VaVa - あー変わってますね!

- 以前はもう少し歌詞が文章的だったと思うんですが、今回は発音も自由になっていたり、もう少し音としての聞き心地を重視したのかなと思いました。

VaVa - そこはさっきも言ったようにアルバムを作るのは挑戦の意味もあるので、制作中も意識してたのかなと思いますね。制作環境も以前は実家だったので、レコーディングであまり大きい声が出せなかったんですよね。だからああいうちょっと低めの発声になってた。でも今は自分のスタジオで大声出しても大丈夫だし、制作自体も自由になったんですよね。選択肢が広がったというか。

- なるほど。でも歌詞の書き方も変えたというのも気分を一新するためだったりするんですか?

VaVa - そうですね。VaVaの代表曲ってなると再生回数からしても"現実 Feelin' on my mind"とかだと思うんです。そういう曲ができると最初はめっちゃ嬉しいんですけど、段々その曲が自分のしがらみになってきて、こういう曲また作れるのかなって不安に思ってた時期もあって。だからといって似たような曲を作っても意味がないし、そんなものを作っても面白くはない。繰り返しになっちゃいますが、自分が聴いても新鮮でいかにアガれる曲を作れるかっていうのが基準として強くあるかもしれないです。そのために新しい表現にトライしていく。"Type"とかもそういう挑戦の曲ですね。アルバムだからこそできた曲というか、シングルになるとまた位置付けが変わってくるので、アルバムという作品の制作においては、新しい自分を見つけていくというのも一つの目的かもしれないです。

- その中でも"夢のまた夢"とかはリリックもシンプルでより強度を増してる感じがしますね。この曲はまたトラックもいいですよね。

VaVa - ZOT (ZOT on the WAVE)さんのスタジオにお邪魔して、色々ビート聴かせてもらってめちゃかっこいいビートがたくさんありましたね。やっぱりこの人めちゃくちゃすごいなって思いました。Zotさんのスタジオからの帰り道に、このビート、tofu (tofubeats)さんさんが合うんじゃないですかねって話になって、しかも全員プロデューサーっていうのも面白いなと思って、これはいいかも!ってなったんですよね。またtofuさんと制作ができてとても嬉しかったです!

- この曲で歌っているような、夢が実現したけどそれで満足するのじゃなくて、また次の夢を見据えてる姿勢はアルバムに通底するものなのかなと思いました。

VaVa - まさにそうですね。『VVORLD』の時はそういうことはあまり考えなかったんですけど、ライブとかをするようになって、自分が世の中にちょっと認知されているっていうのを知ってしまっているので、本来なかった壁ができた感じがあります。大人になったなとも思いますね。でもそういう壁も制作の後半ではどうでもいいかなーと思えたので、よかったですね。

増田 - そう言われると『VVORLD』の時は、ここにVaVaがいるんだっていう、改めてシーンにエントリーするっていう気持ちが伝わってきますよね。それ以降ライブが良いって言ってもらえる機会も増えて、だからこそ『VVORLD』以降の3年間は他人の中のVaVaというイメージに対して、どうリアクションするかという3年間だったかもしれないですね。

VaVa - リリースも頻繁にする方だったんで、お客さんの中のVaVaのイメージを変えたかったんですよね。だからアルバムでどの曲でMVを撮るかってなった時に"tAtu"にしようってなったんです。最初監督の小島央大くんに絵コンテを出してもらったんですけど、それもめっちゃよかったんですけど今までのVaVa感があって。ちゃんとこれまでのイメージを踏襲して考えていただいているので、とてもありがたいんですけど。どうしてもそのイメージを変えたくて、黒い水入りたいですってリクエストして、撮影翌日にめっちゃ風邪引くっていう(笑)。 それでこの曲をリリースしたら、VaVaのタトゥーを入れたファンがめっちゃ増えたんですよね。本当に嬉しいし、その人たちから僕も勇気を貰えました。本来関係なくやるタイプではあるんですけど、流石にファンを認識せざるを得ないなっていうのはなんか身をもって感じました!

- 今作の中で特に自分の中でチャレンジしたなという曲はどれですか?

VaVa - "Mugen”もですが”YANKEES"も挑戦ではあったかな。あとヒップホップ畑以外の人に、僕から声をかけて一緒に曲を作ったのもかなりありました。海外のラッパーのアルバムって1曲にビートメイカーがたくさん参加してるじゃないですか。日本のヒップホップはだいたい1人だから、アルバム全体のコンセプトとして色々な人と作った上でVaVaのフィルターを通したら、また新しいものになるんじゃないかなと思ったんですよね。そこは前作の『VVORLD』とは大きな違いかなと思います。これを最初に言うべきだった(笑)。Twitterで色んな方をナンパしましたね。言い方(笑)。"Type"のTKNさんもそうだし、"イノセント・エクスプレス"のあるふぁさんもそうだし。音ゲーとかボカロの作曲家の人と一緒に作ると、メロディーがいいのがとても多いので、それにヒップホップのフィルターを通して制作するのはとても面白かったです。"YANKEES"もそうだし。

- "YANKEES"は不思議なトラックですよね。

VaVa - Daehanさんは韓国のビートメイカーの方で、めちゃくちゃパラデータが多かったです。200トラックくらいあって。それで自分も色々いただいたデータを基にいじったりして、こういう曲になりました。やっぱり色んな人と曲を作るのはすごく楽しかったですね。

- 他の人とやろうと思ったというのは気持ち的に余裕が出てきたというのもあるんですかね。

VaVa - そうかもしれないですね。昔はなんでもかんでも自分の名義にしたいというのがあったんですけど(笑)、今はいい曲作れたらいいやって感じです!

- 他の人が関わったとしてもVaVaの世界観になるというのが分かった?

VaVa - はい。"Sekai"も"Biscuit"も他の人のトラックですし、自分の世界をそれでも作れるんだったら、もっとやってみてもいいかもって思ったんですよね。それをやった結果、『VVORLD』でも出せなかった部分を出せてると思うんですよね。昔の自分が聴いても、めっちゃ良いと思うだろうなと。自分だけでやるんじゃなくて、色んな人とやることで自分の好きな感じに辿り着けるんだなってのが更にわかりました。"Reloadin'"は元々自分の基盤のトラックがあって、自分はめっちゃいいと思ってたんですけど、増田さんは「うーむ。」って感じで、これを基盤に生演奏で鍵盤とトランペットを弾いていただくのはどうでしょう。って言ってくださったので、mabanuaさんと類家さんに参加していただいた感じです!

- リリックの話に戻るんですが、語感を大事にするってなった時に出てきている言葉のチョイスも面白いと思ったんですよね。10曲目の"夜/Hack"のフックとかで感じました。

VaVa - これは『.hack』というゲームがあってその語感を使ってるんですけど、何も考えてないで出てきたリリックだな、と今では思います(笑)。これに関しては運動神経強めですね。でも今までもそうなんですよね。"現実"もそうだし、"Biscuit"もそうだし、運動神経の曲が自分の曲ではめっちゃ多くて、フックができたから、バースでこういう曲だよなって書いて補強してる感じ。その補強するときのリリックの表現の幅は広がったのかもしれないですけどね。ずっと言ってますけど、だからめちゃくちゃハードル上げてましたね。

- それって結構しんどくないですか?

VaVa - しんどい時もあるんですけど、結局できた時はめっちゃ嬉しくてそれが正直に返ってくるので。なんだろう、自分がビートとか作れないならそういうことは意外と考えてないのかもしれないですね。ビートまで作れると自分次第になっちゃうところがあって、選択肢がめちゃ増えちゃうんですよね。どんどんやりたいことが出てきちゃう。前は自分の手数もやれることも少なかったし、インプットも少なかったので。

- 前に聴いてなかったけど、最近聴くようになったものって例えば何がありますか?

VaVa - それこそボカロとかは前は全然聴いてなかったですね。メロディーとか歌詞が良いのでよく聴くようになりました!あとは携帯で音ゲーをやったり、ゲーセンで音ゲーを聴いたりとか。あと最近だと中野のエロ同人PCゲームの店に売ってるソフトの中に、たまにサントラが入っていて、そういうのがめっちゃよかったりするんですよね。ソフトが欲しいわけじゃなくて、サントラ目当てで行ったりしてますね(笑)。そうやって色々自分の好きなものが増えたことが、顕著に音として出てる感じはありますね。

- でもそれもあえて好きなものを増やそうとやってるというよりは自然な行動ってことですよね。

VaVa - そうですね、ずっと家にいて同じゲームを延々とやっていても飽きちゃうので、色々遊びまくった結果、こういうモンスターに仕上がったという感じだと思います(笑)。ジャケもTSUNEさんにやっていただいて。最初書いていただいのはちょっと違うテイストの飛行機だったんですけど、もうちょっと宇宙船みたいな感じが良くてって言ったら、「それ以上言わなくていいよ」って言われてから、40分後くらいにきたんですよね。天才だと思いましたね(笑)TSUNEさんも僕が好きな機械の感じとかが好きなので、曲に関してもそうですけど楽しみながら出来ました!

- ゲストで言うと"ComFlex"でのVIGORMANさんの起用はちょっと意外でしたね。

VaVa - 確かに。増田さんとVIGORMANさんいいですよねって話を過去にしてたんですよね。色んな人を考えたんですけど、俺の感じなら新鮮なんじゃないかなと思ってオファーさせていただいた感じです。本当は呼びたいんですけど、あんまりフィーチャリングで色んな人を呼ぶタイプでもないので。でも今回はめっちゃ考えた上でtofuさんとVIGORMANさんだったっすね。

- "ComFlex"というタイトルはVaVaちゃんらしいなと思ったんですよね。

VaVa - あまりこういうこと言うのはもう控えようかなと思ってたんですけどね。でもVIGORMANさんもまさにComFlex"してるイメージがあったので、このテーマでいこうってすぐ思いついた感じですね。あと有村さん(=in the blue shirt)もめっちゃビートを送ってくれました。あとはOMSBくんとJJJくんともずっとゲームをしつつ励まされたり、SCRATCH NICEさんともゲームをしたりしてましたね。結局裏にはゲームがある。あと制作中パチンコをすごいやってましたね(笑)。

- はははは(笑)。

VaVa - コロナが猛威を振るってた時ですね。増田さんにデモを送ってダメでしたってなったら、コンニャロって行って3000円だけ打って帰ってくる。基本負けるんです。勝ったらラッキーくらいな感じ。勝っても全然嬉しくない。ライブのギャラとして同じ額もらうのと比べたら全く嬉しくないんですよね。だったら周りの人に還元しようと思って、「パチンコで買ったからラーメン奢るから住所送ってもらっていいですか?」って宅麺でラーメン頼んで結局手元に残さない(笑)。生き方不器用すぎてなんのためにやってたんだろうなって思ってたんですけど、今思うとただのストレス発散でしたね。一時期行きすぎてやばいってなって、自分の家にスロットを買いました。でも家でやってもつまらなさすぎて辞めて置物になってます(笑)。当たったらいい曲作った時の脳汁がすごいインスタントに味わえるから危険なんですよね。ゲーム実況は自分では流石に制作中はできなかったんだけど、見てはいましたね。でも楽しみにしてくれてる人がいるから、またやります!

- 実際に制作方法とかを変えていくのってどうやってやるのですか?身体に染み付いたものを変えるのって中々難しそうだと思うのですが。

VaVa - それはレコーディングを実験的に良い意味でデタラメにやってみたり、本当に色々試し続けるしかないんだと思います。僕は頭良くないですし。

- じゃあ本当にとにかく数をこなすということなんですね。

VaVa - とにかく数です。増田さんにほんとに送りまくってましたもんね。

増田 - ほんとに。返事を適当に返せないから聴いて意見をまとめるのにも時間がかかりましたね。

VaVa - 夜に送って、「後で聴きます」って返事がきて、翌日の昼までリアクションがないと「聴きましたか?」って追撃したり(笑)。でも増田さんが忙しいのは分かってるんで、大丈夫です(笑)

- レコーディングは実際にどうやってるんですか?

VaVa - 僕は基本的に家から出ないんで、寝る前に翌日やることを決めて、翌日はそのタスクをこなすという感じですね。例えば増田さんからこの曲のサビを変えてほしいってリクエストがきていたら、それを5パターンくらいやってみて、「どうですか?」って送って。「微妙です」って言われたら、めっちゃうぉーってなるんですけど、また5パターンくらい送って、「どうですか?」、「もっといけます」って返答がきて、マジっすかみたいな(笑) ヤバいなと思いつつも、それでムカついてもいい曲になるわけじゃないし、なんとなくダメって言われる理由もわかるんですよね。確かにまだいけるかもなって。そこで止まってたら、寝てるのと何も変わらないので、悪戦苦闘するしかない感じですね。シングルとかEPは意外とそういうのがなかったりするんで、アルバムを作ってると増田さんと作ってるなと思いますね。それを久しぶりに体験したから楽しかったけど、めっちゃ疲れました(笑)。それに『ODD TAXI』とか並行してやらなきゃいけない仕事もあったりしたので。

増田 - ただ歌い直すだけじゃなくて、「サビ全体は違うと思うけど、part3の5~6小節とpart7の9~10小節はめっちゃいいから、ここをエディットして繋げてみてくれませんか?」みたいなリクエストとかもよくしますね。曲の構成を宇宙語で作っていく流れの中で、歌詞の語感に制限が出てきて、歌詞に当てはめていくときに英語が増えたりとかはあったかもしれない。それで制作が終わった後に、次はこういうところも更に超えていけたらいいねって話もしましたね。やればやるほど改良できる面は増えていくから。

- 英語が増えたっていうのはなんでだったんですか?

VaVa - 海外の曲とかを聴いてて、おこがましいかもしれませんがなんか俺もできそうだと思って、増田さんにも「VaVaちゃんの英語の感じめっちゃ良さそうだから、全部英語の曲やってみたら」って言われて。それで"In My Sight"で意識してやってみたら、いい感じにできたんですよね。あとこれまでの僕のリリックは自分の気持ちとかをわかりやすく文章にしてたので、英語で表現してみるのも新鮮だなって感じて自分でも英語で書くのが楽しかったのでやってみましたね。

増田 - 『VVORLD』終わった後に、韻についても話しましたもんね。

VaVa - 『VVORLD』では全然踏んでなかったですもんね。

増田 - 和田さん的には違和感ありましたか?

- 違和感はなくて、前と比べて耳触りも良くなっていると思いますし、リリックも日本語がきて英語がきて、また日本語みたいな混ぜ方がすごい独特で面白かったです。

VaVa - それは嬉しいですね。

増田 - 耳触りの部分は良くなってると思いますね。その分メッセージの方が少しわかりづらくなってるかもしれないけど、今後はそれをさらに近づけられる様に詰めていけたら、さらに良いですよね。

VaVa - あと『VVORLD』の時はまだサブスクがメインじゃなかったから、今の方がみんな歌詞を見て聴いてるんですよね。だからちょっと挑戦してもいいのかなとも思ったんです。わかりやすい歌詞も、もちろんいいんですけどね。

-  でも話を聞いているとVaVaちゃんにとってライブはやはり特別なものなんですね。

VaVa - POP YOURSもそうですが、今まで知らなかったけど、完全にファンになりましたってDMを送ってくれる人が本当にたくさんいたので。1つのライブイベントでも120%かまさないと音楽生命が終わるなっていつでも思ってるし、かませば見てる方も楽しいしお互いにとって良いので。リリースして色んなプレイリストに入って、たくさんの人に聴かれるかもしれないですし、そこから知ってるもらえるのも嬉しいんですけど、ライブでかっこいいと思ってもらえるのってちゃんと自分を証明できてる感じがするんです。普段運動しないですけどめちゃくちゃフィジカル使うスタイルが伝わっているので嬉しいなと。

恵比寿・LIQUIDROOMで開催されたワンマンライブの一幕 (photo by cherry chill will.)

この前のワンマンもど平日なのにたくさんの人に来てもらえて、リリースパーティーをするとちゃんと作品が出たんだなって実感するんです。制作中は増田さんにしか聴かせないので、外に出すのが怖い部分ってやっぱりあって。でもちゃんと良い反応をもらえるとこの作品とVaVaを信じてよかったなという気持ちになるんですよね。東京と大阪でワンマンやって、昔から知ってくれてる人もいるわけじゃないですか。そういう人も今回の作品をいいって言ってくれたり、全く知らなかったのにライブで知って今回のアルバムをいいって言ってくれた人もいたので、本当に救われた感じがしましたね。コロナになって、そもそもライブに行くっていう選択肢が世の人々からなくなってたと思うので、不安だったんですけど今回のワンマンもしっかり去年のワンマンより人も増えて嬉しかったですね。自分の理想を作れてるなと、改めて思います。本当にありがたいです!

同上

- キャリア的にも中堅に差し掛かっていると思うんですけど、常にハングリーでいられるのはどうしてなんでしょうか

VaVa - 結局満足いってないからですね。今作もめっちゃいいアルバムだなと思うんですよ。でも結局満足いってない。人間ってずっとそうだと思うんですよね。それが続く限り永遠に曲を作るだろうなと思いますね。満足したいですよ(笑)。でも満足なんてできない。出してめっちゃ良いって言われてもそれは過去の曲なので。でも作るのはめっちゃ楽しいから問題ないんですよね。今このインタビューに来る時もずっとサンプルを探してました。一生音楽作って、一生ゲームして、配信します。多分それが僕の人生だし、そうありたいとずっと思ってます。こんな大人は世間にいたらダメな気もするので、このインタビューを読んでくれた方たちには僕を反面教師として扱ってほしいです(笑)。インタビューって楽しかったです!有難うございました!

Info

●アルバム情報

Artist : VaVa

Title : VVARP(ワープ)

Format : Digital Album

Release Date : 2022.6.1

No. : SMMT-180

Label : SUMMIT, Inc.

1. Mugen

 Produced by VaVa

2. In My Sight

 Produced by JJJ, SCRATCH NICE, Satori Kobayashi

3. 夢のまた夢 feat. tofubeats

 Produced by ZOT on the WAVE

4. tAtu *アルバムからの5/18(水)0時からの先行配信曲となります。

 Produced by VaVa

5. Reloadin’

 Produced by VaVa

 Piano by mabanua

 Trumpet by 類家心平

 Additional Arranged by The Anticipation Illicit Tsuboi

 mabanua appears by the courtesy of origami PRODUCTIONS

6. Type

 Produced by VaVa & TKN

7. YANKEES

 Produced by Daehan

8. イノセントエクスプレス

 Produced by VaVa & あるふぁ

9. ComFlex feat. VIGORMAN

 Produced by VaVa

10. 夜/Hack

 Produced by VaVa

11. Bad Day

 Produced by VaVa & Noli Stark

12. Gatsby

 Produced by in the blue shirt

 Strings Arranged by 町田匡 Strings Vn.町田匡 Va.萩谷金太郎 Vc.小林幸太郎

All Recorded by VaVa @ヴァヴァミュージックスタジオ

M1, 3, 4, 5, 8, 9, 11 Mixed by The Anticipation Illicit Tsuboi @ RDS Toritsudai 

M2, 6, 7, 10, 12 Mixed by D.O.I. for Daimonion Recordings

Mastered by Rick Essig @ REM Sound NJ

Cover Illustration & Design by TSUNE (Nozle Graphics)

A&R : Takeya "takeyan" Masuda (SUMMIT, Inc.)

℗© 2022 SUMMIT, Inc.

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