【インタビュー】okudakun × lazydoll | 「パンピ」のままで承認されたい
SoundCloudを舞台に、フレッシュな感性が光る若き音楽シーンが誕生している。digicoreとも呼ばれるそのシーンでは、電子音を基調にしたトラップビート、声を変性させるオートチューンといった、ベッドルームを取り巻くデジタルな環境をことさらに主張するような楽曲で彩られている。国内では『Demonia』というイベントによって、オンライン空間から現場に表出しているようだ。
今回の記事では、『Demonia』の初回から出演し、シーンにおいていち早く数千のフォロワーを獲得したokudakunとlazydollに話を訊いた。SoundCloud上で人気を博すコレクティブtrash angelsの一員でもあり、プライベートでも親しいという二人の対談では、音楽的な経歴を辿りつつ、ゲーム実況やニコニコ動画、TikTokといったインターネット・コンテンツの話題も交えながら、ユニークなヒップホップやhyperpopへの見解も垣間見えた。
取材 : namahoge、和田哲郎
構成・撮影:namahoge
「ラッパー」と呼ばれたくない
okudakun - 今日、lazyと会ってからだいたい二年くらい経つねって話してたんです。
lazydoll - そうそう、ちょうど二年。
- 最初はどういった出会いだったんですか?
okudakun - 僕がビートを作りはじめてちょっとした頃に、サンクラの若手で活躍してる何人かにDMを送ったんです。そのうちの一人がlazyで、DM返してくれて、曲作って、みたいな。
lazydoll - okudakunからDMが来た時、メッセージのリクエストに気づかなくて3日くらい無視していたんですけど、聞いたら案外すごくて。今までの日本人のビートメイカーの中で普通に一番ドンピシャで。最初はホントに謎人物だったんですけど(笑)。
okudakun - その時3人くらい送っていて。ひとりひとり好きそうな感じを知るために、サンクラのいいね欄を掘って、これ聞くんだみたいな、それぞれ合わせて作っていました。
- okudakunとしては、lazydollくんにはどういうビートが合うと思ったんですか?
okudakun - なんだろうな……。
lazydoll - Hella Sketchyノリ?
okudakun - そうだね。なるべくUSサウンドって感じ。
lazydoll - めっちゃUSサウンドだった。
okudakun - ドラムの感じとかも、Internet moneyのNick Miraってビートメイカーがめっちゃ好きなんですけど、彼が使ってた808を使って、っていう。USのノリっていうのは意識してましたね。
- USノリというところは二人とも共通して重視している?
okudakun - 「それって何年前にアメリカで流行ったじゃん」って言われたくないんですよね。
lazydoll - 僕もかなり影響されていると思います。
- 音楽的な志向も一致して、そこからずっと仲良くしていると。
lazydoll - 一番仲いいよね。
okudakun - うん、一番仲いい(笑)。周りには「ニコイチ」って言われるんですよね、二人で。もともと住んでるところが近くてよく遊んでいました。最近だと僕が大学に入って引っ越したので遠くなったんですけど。
- 最初に会った時はどんな印象でしたか?
okudakun - ガリッガリだな、みたいな。
lazydoll - ビジュアルなんだ(笑)。
okudakun - いや、骨みたいな手をしてて(笑)。今もめっちゃ細いけど。
lazydoll - そうなんだ……。
okudakun - でも、僕が音楽を始めたてでちょうどlazyに出会って仲良くしてもらったのは、救われたと思っています。lazyは僕より早く音楽やっていて友達も多かったし、そこで界隈の一員になれたというのは大きかったですね。
- なるほど。お二人が音楽を始めたきっかけについても伺いたいです。
okudakun - 僕は、高1の冬頃にiPhoneのGarageBandでトラップっぽいのを作って、お遊び感覚でインスタのストーリーにあげたら、学校のラップをやっている先輩から「トラックメイカーやってみない?」と言われて、まじか、みたいな。それから先輩の家にめっちゃ入り浸って。パソコンを持っていないからFL Studio Mobileっていうので試行錯誤してやっていたんですけど、高2になってコロナが始まって。全然学校に行けないし、本格的にやってみるかと、ちゃんとパソコンとFL Studioを買って、そこから作曲の勉強というか練習をして、lazyに送って、という。
- コロナ禍を機に本腰を入れようと。そもそもビートを作ってみようというきっかけは何だったんですか?
okudakun - 昔から音楽は好きだったんですよ。小学校低学年くらいからかな。親が洋楽好きだったのでそういうのを聞いて、自分でもディグったりしていたんですけど、作ろうって考えは全然なくて。作るようになったのは高校一年生の頃、ちょうどLEXが1stアルバムを出して盛り上がってた時期で。当時は日本のヒップホップに全然興味がなくて海外のトラップばっかり聞いていたんですけど、LEXは僕の一個上でほぼ同世代で、こんなヤバい人いるんだって。それで気になって調べた時に、自分でビート打ってることを知ったのが大きかったと思います。
- USのヒップホップだと、例えば何を聴いていましたか?
lazydoll - Lil Moseyだよね。
okudakun - そう(笑)。信じられないってみんなに言われるんですけど、ほんとにLil Moseyが大好きで。あ、でもLil Moseyも自分でトラック作ってる曲が何曲かあって、そういうのを見て。やっぱ、ヒップホップってタイプビートのカルチャーが根強いじゃないですか。イキったことを言うと、全部俺はやれちゃうんだぜっていうマインドでやっていこうかなって。
- 最初はトラックメイカーとして始めたのが、今は自分でも歌っていますね。
okudakun - 本当に最初は歌う気あんまりなくて、トラック一本でやっていこうかなと思ったんですけど、トラックを作っている時に鼻歌でふんふんみたいな考えたりしている時に、やっぱり歌うのもありかなって。それで軽く乗せたら、周りの人からも結構いいじゃんって言われて、そのまま歌ってやろうかなって。
- なるほど。lazydollくんは2018年頃、14歳の時から始めたとのことですが、経緯を教えていただけますか?
lazydoll - 2018年はちょうど『TOKIO SHAMAN』が始まったり、Sleet MageさんとかGokou Kuytさんがばーっと出てきたくらいの頃で。まだオートチューン系のトラップが日本で流行っていなかったと思うんですけど、YouTubeで釈迦坊主さんとAnatomiaさんの曲を見つけて、めっちゃいいなって。親近感というか。サブカルっぽいのも好きだし、トラップも好きだったので、Cubaseを買って始めてみたという感じです。
- それ以前もトラップ系のヒップホップを聞いていたんですか?
lazydoll - 自分はEDMから入ったんですよね。ダブステップが好きで、Skrillexもよく聴いて聞いていたんです。EDM側でトラップというジャンルは知っていたので、ヒップホップにもトラップがあるのか、と。
okudakun - 洋楽のトラップリミックスとかね。
lazydoll - そうそう。
- その時ってまだ中学生くらいですか?
lazydoll - 小6とか。
- どうやってダブステップに出会ったんですか?
lazydoll - なんでだっけな……。ゲームの実況者が使ってたBGMだと思います。
okudakun - FPSの実況動画って最初にオープニングみたいなものがあるんですよ。3Dロゴを回して、EDMみたいな音でブオーンブオーンみたいな(笑)。たぶん、僕らちょうどそれの世代なんです。で、これやべ〜、みたいな。ディグって、「NCS(No Copyright Sounds)」みたいなEDMをあげてるチャンネルを見つけて。
lazydoll - めっちゃ分かる。
okudakun - 結構僕ら似てるんですよね、土台が。
- ゲーム実況からトラップを知るというルートがあるんですね。
okudakun - ゲームの話で言うと、二人とも「ゆっくり実況」をやってたんですよ。
lazydoll - そう。ゆっくり実況あがりなんです。
- やってた、というのは?
okudakun - 自分でゲームの動画撮って、ゆっくりの声を付けて投稿して。
lazydoll - 「こんにちは〜」みたいな。
- 二人とも「ゆっくり実況」を作っていた……?
okudakun - たまたまですけど(笑)。小学生の頃、FPSとかマイクラの実況となると「ゆっくり実況」だったんですよね。
- すごい共通点ですね(笑)。お二人と世代が離れている自分からすると、ニコニコ動画のカルチャーが今の十代にも引き継がれていることに驚きがあります。
okudakun - あ、でも東方はめっちゃ好きでした。ゲームはやったことはないけど曲は大好き、みたいな。
lazydoll - 実際ニコニコ動画はそんな通っていなくて、YouTubeに転載されたコメント付きの動画とか見てましたね。
- 完全に個人的な関心なんですけど、ニコニコ動画ってどういう風に見えているんですか?
lazydoll - けっこう僕は、青春じゃないけど……ムズいな。
okudakun - なんなんだろうね、あれ(笑)。よく分かんない、ニコニコって。一番意味わかんない(笑)。
lazydoll - 意味分かんないけど、存在としてはデカい。
okudakun - 「歌ってみた」とかも結構好きだったんですよね。ボカロも好きだったし。
- ナード的な感性のルーツの一つにはなっている。ステレオタイプなヒップホップ像とは距離がありますよね。
okudakun - それでいうと、まず「ラッパー」って言われたくない。
lazydoll - そう! ラッパーって言われたくない。めっちゃそう。
okudakun - ラップじゃねーもん、って(笑)。大きく見たらトラップの枠に納められるかもしれないけど。
lazydoll - 一応トラップっていう枠組みの中で、どれだけ自分の個性を表現できるのかっていうところはあります。
- あえて何か使われたい呼称ってあるんですか? たとえば「シンガーソングライター」みたいな。
lazydoll - なんだろうね……。呼ばれ方マジでわかんない。
okudakun - okudakunはokudakunってジャンルが欲しい(笑)。
lazydoll - そういう音楽っていうね。
- ジャンルとか関係なくオリジナリティで聴いてほしい、という感覚ですか?
lazydoll - 僕の場合、もともとタイプビートでやっている人たちが好きだったんですけど、最近になってサンクラで増えてきたから、そこで負けたくないなみたいなプライドがでてきて、自分でもビートを打ってみようというのがあって。徐々にタイプビートのノリからフェードアウトしようとしてます(笑)。
- 『Demonia』に出演するような、同世代の人たちも同じような感覚があるのでしょうか?
lazydoll - 特にサンクラの人はヒップホップに対するカウンターみたいな意識ありますよね。
okudakun - 尖ってる。てか逆張りだよね(笑)。
lazydoll - そう(笑)。みんな逆張りの精神。
「hyperpop」が投影される、雑居ビル、MONSTER、馬
- ゲームっぽい音をビートに入れたり、リリックに「8bit」というワードや「バグる」という表現が使われていたりなど、お二人には共通してゲーム的な発想があるように思います。
lazydoll - デジタル感は好きですね。
okudakun - 最近のサンクラの流れは、デジタルなんだけどネイチャーみたいな。
lazydoll - 「デジタルネイチャー」ね。その感じマジある。
- というと、どういうことでしょう?
lazydoll - 電子っぽさと自然の融合みたいな。glaiveとかlieuとか、その辺の人たちはらのジャケットが自然っぽい風景写真なんですよね。でも音自体は電子っぽい。そこのギャップがいいなと思いますね。
okudakun - 僕も自分で撮影した自然っぽい写真をジャケットに使ってますね。やっぱり海外のサンクラ勢がやっていたので、僕も自然っぽくしてみようと。
- 「デジタルネイチャー」の流れはhyperpopやdigicoreシーンで起きていると。
okudakun - そうですね。でも、こないだ話してたんですけど、hyperpopすらもよくわかんないみたいな。
lazydoll - そうそう、もう分かんなくなってきた。
okudakun - 1年前だったらhyperpopやってる人ってそんなにいなかったんですよ、ゆうても。でも、最近増えたんです、hyperpopの母数が。その中でどういうことをすればいいのかなって。だからもうhyperpopじゃなくてもいっか、みたいな。
lazydoll - そう、逆張りの逆張り。ここまできちゃったなら。
okudakun - 逆にブーンバップやってもいいんじゃね、みたいな(笑)。
lazydoll - このタイミングで(笑)。
- お二人の作るブーンバップはそれはそれとして聞いてみたいですけどね(笑)。ちなみに、hyperpopやdigicoreという言葉の違いについてどう考えていますか?
lazydoll - hyperpopよりdigicoreの方が……
okudakun - かっこいいよね。
- (笑)。
lazydoll - digicoreの方が人間性も含まれているような気がするというか、hyperpopって音だけ。digicoreっていうとサンクラの投稿少ない系っていう印象。
okudakun - hyperpopって音だけじゃなくない? 逆にhyperpopはマインドじゃないかって。ふたりでよく町を歩いてて、めっちゃいい感じの景色を見て「これってhyperpopじゃん」みたいに言うじゃん。
lazydoll - ああ〜、あるね。
okudakun - なんでもhyperpopっていえばどうにかなる(笑)。そういう感じじゃない? 音楽越えて、マインドみたいな。
lazydoll - そうか。hyperpopはマインド。
okudakun - 人それぞれhyperpopのマインドが違うんですよ。
- ちなみにどういう景色を見るとhyperpopと思うんですか?
okudakun - いろんな種類があって。「韓国 hyperpop」とか、いろいろあるんですよ。
lazydoll - わかるわかる。
okudakun - たとえば雑居ビルとか見たら、韓国hyperpop。
lazydoll - 韓国のアーティストのジャケ写の感じ。
- そうなんですか(笑)。ではdigicoreという言葉をどう捉えているか伺えますか?
okudakun - digicoreはもう、音楽って感じが強いですね、僕的には。その道極めた人。
lazydoll - たしかに、digicoreは「極めた」に近い。
okudakun - hyperpopを極めた先にdigicoreがある。極めないとdigicoreは語っちゃダメ。
- hyperpopがファッションなども含めたカルチャー的なもので、その中の音楽的なジャンルとしてdigicoreがある、という認識だとして、お二人はどのような距離感で「hyperpop」と接しているのでしょうか? たとえば、意識的にhyperpop的なファッションをするとか、hyperpop的なライフスタイルを実践するとか。
lazydoll - 意識してやることもあるし、たまたま僕の形成されてきた生活習慣がhyperpopだった、みたいなことは思いますね。たまたま一致したみたいな。
- 今日lazydollくんがMONSTERを片手にやって来たのはhyperpopっぽいなと思いました(笑)。これがRed Bullだったらちょっと違う。
lazydoll - Red Bullはhyperpopじゃないっすね(笑)。
okudakun - MONSTERの方がナード感あるよね。
- okudakunはどうですか?
okudakun - 僕も森に行ったり馬乗ったりすると、hyperpopだなと思いますね。
- そうなんですか??
okudakun - hyperpopです。
- マジすか(笑)。
okudakun - 僕、歴史がめっちゃ好きで、ネトフリでヨーロッパの時代モノのドラマとか見るんですけど。馬とか出てきて「うわ、かっけえ」ってなって。それで軽井沢まで飛んでって、馬に乗ってきました(笑)。
lazydoll - それ、hyperpopなの?
okudakun - hyperpopでしょ! このマインド。
lazydoll - うん、難しいっすね(笑)。
- okudakunの中では、馬は確固としてhyperpopであると。
okudakun - 馬や自然を感じながらFL触るみたいなことがhyperpopだなって。
- 「デジタルネイチャー」とも通じるところなんですかね。だとすると、VRヘッドセットを付けて大自然の風景を見る、みたいなこともhyperpopになるんですか?
okudakun - VRはやったことないです。
lazydoll - 僕もない。馴染みがないですね。
- hyperpopとして捉えられる対象にはVRも含まれてくるかと思ったのですが、そことは違う。
okudakun - 捉え方違うよね、hyperpopの。一般的な解釈と、僕らが思ってることは違うなっていうのはよく思うところです。もっとピカピカっていうイメージを持たれている気がします。でも実際、そんな光ってない。
lazydoll - うん。
okudakun - だからhyperpopって一括りにされちゃうと、STARKIDSも僕らも一緒かもしれないけど、その中にいろんな区分があって。みんなが思っているhyperpopはSTARKIDSみたいな感じしない? キラキラした感じというか。ファッションとかもアニメTシャツとかさ。
lazydoll - Y2Kとかね。
okudakun - ナードだけどキラキラしてる、みたいな。曲も4つ打ちとかさ。そういうノリを感じますね。
lazydoll - 僕たちがどれだけ一般人であるかというのを意識した方が、逆にhyperpop的にかっけえんじゃね、って思います。パンピ感。
okudakun - そう、超パンピなんですよ、僕ら。本当に一般の高校生と大学生(笑)。だけどそれが逆に重要っていうか。
lazydoll - 重要なんですよ。浮かれちゃダメみたいな。
- 重要というとどういうことですか?
okudakun - ラッパーって売れたら、高い服着てインスタ投稿する、みたいなことをするけど、僕らはいつまで経ってもこのままでありたい、みたいな。
- なるほど。仮にめちゃくちゃ売れたとしても、そういうボースティング的なことはしない?
okudakun - 僕は森に引っ越します。
- (笑)。ジュエリーとかにも興味ないですか?
lazydoll - 全然ないっす。
okudakun - でも、そういう価値観をかっこ悪いとか思っているわけではなくて、ビートを作るようになったのもトラップからですし、音楽としてはめっちゃ好きです。
lazydoll - カルチャーとしては理解していて、でも自分とは合わないな、馴染めないなって思う。
okudakun - うん。仲間で集まってクラブでショット飲んでイェー!みたいなものは違うっていうか、そういうのじゃない。僕らはこもってDAW触っていたい(笑)。
日陰の中で承認されたい「SNSとの付き合い方」
- SNSの運用に関して、ふたりともほとんど投稿がないですよね。ナード感がありつつも、ツイ廃みたいなところは全くない。
lazydoll - 僕はSNSも逆張りのスタイルでやってますね。
okudakun - なんも投稿しないっていうね(笑)。「okudakunの顔知らないけど曲めっちゃ聞いてる、私」みたいな、そんな感じでいきたいんですよね。
lazydoll - それぐらいがいい。
- 楽曲だけで勝負したいということですか?
okudakun - でもなんか、そういうわけでもないんですよね(笑)。
lazydoll - そうなんですよね。承認欲求自体はあるっちゃあるから(笑)。
- お二人は思春期からずっとSNSがあるわけですが、それってどういう感覚なんですか?
lazydoll - 僕はインターネットに対する憧れが強かったので、親の携帯から勝手にアカウント作ってTwitter始めたりしてたんですよね。小5くらいの時。Twitterやってる俺すげえみたいな、謎の浮かれが(笑)。
okudakun - えっ、小5でTwitterやってたの? はやっ。
- あまり分からない感覚なんですが、「小5でTwitter」というのは早いですか?
okudakun - 僕はインスタを始めたのが中3なんですよ。Twitterっていう文化は全然知らなくて。僕、卓球しかやってこなかったので。
lazydoll - (笑)。
- ちなみにお二人はSoundCloudの楽曲をかなり消されていますが、従来的な音楽の発表の方法とは異なっていて、それもSNS的なアーティストの在り方だなと思ったんですよね。
okudakun - なんだろ。素直にダサいから消してます(笑)。
- アップする時には消すことを念頭に置いているんですか?
lazydoll - それはあんま思ってないです(笑)。
okudakun - 消すこと含めて文化、みたいなこともある。ってかズルいんですよ、lazydoll。半年に一回くらい曲全部消すんですよ(笑)。
lazydoll - いや、最近してないよ(笑)。メンタル的にヘラっちゃった時に全曲消す癖があったんですけど、そろそろマズイぞとなって。最近は安定しているんですけど。でも、消すまで含めてカルチャーなんだろうなーって(笑)。
okudakun - そこがやっぱ一般人感というか。
- SNSでいうと、TikTokとはどういう距離感でいるんですか? たとえば自分の楽曲が使われたとしたら?
okudakun - かっこいい使われ方ならいいよね。
lazydoll - 使われたくない層はある(笑)。
okudakun - かっこいいTikTokerもいるけどさ、自撮りだけを目的にした人が多いから、そういう人のダシに使われたくないなって。
lazydoll - ひねくれた考えなんですけど、僕はキラキラしている層に自分の音楽が聞かれることに抵抗があって(笑)。自分と同じ境遇の人に聞かれたいっていう。ファッションとして捉えられたくない。
okudakun - やっぱ、hyperpopってファッションとして捉えられている部分が大きいから。hyperpopっぽいサンクラのジャケをストーリーに上げることをかっこいいと思ってる人がめっちゃ増えてるんですよね。そういう人にキャッチされるのは困るなって思います。
lazydoll - そういうのやだよね。
- たしかに、サンクラのアングラ感をある種のブランディングに繋げたいリスナーはいるのでしょうね。でも今後活動を続ければリスナーも増えて、きっとぶち当たっていくところですよね。
lazydoll - うーん、いい感じで売れていきたいです。
okudakun - バズるとか絶対やだよね。
lazydoll - そう、バズるっていうより、じわじわって。いい層に。
okudakun - ちまちまやっていきたいです(笑)。
- そうしたリスナーとの距離感もありつつ、『Demonia』以外でもライブイベントのブッキングが増えてきていますよね。それについてはどういう実感がありますか?
okudakun - 僕はライブというものに行ったことがないし、イベントに遊びに行くのも苦手なんですよね。だから出るってなると緊張して気持ち悪くなるし、ムズいなと思います。でも、大勢の前でかっこいいところを見せたいっていう気持ちも、それはそれとしてあります。
- もともとトラックメイカーを志していたくらいだから、人前に出ることが本意というわけではないと。
okudakun - サポートキャラみたいな感じになりたいなってずっと思っていて。ゲームでいうと、主人公ではないなと。回復魔法とか攻撃力を上げる魔法を使えるような、そっちタイプのキャラだなって思ってて。でもそいつがいないと成り立たないような存在になりたくて。
- ライブでは完全に主役になるわけですよね。それには違和感があると。
okudakun - 正直、自分たちにファンがいるっていう感覚が全然つかめないんです。Demoniaが大きくなって、ようやくファンがいるんだって思い始めました。
lazydoll - 最初は人も少なかったしね。
okudakun - 同業者の集まりって感じでした。
- 同業者(笑)。自身が目指しているキャラについて、lazydollくんはどう考えていますか?
lazydoll - 戦隊ヒーローでいう青色のキャラにめっちゃ憧れてたんですよ、音楽とは関係なしに、物心ついた頃から。赤が主人公じゃないですか。隣に青いキャラがいて、冷静だけどめっちゃかっけえみたいな(笑)。その立ち位置が本当に好きなので。人生の立ち位置として。
- 情熱ではなくて、理性を重視したい。
lazydoll - やっぱり承認欲求はあるから目立ちたいっていうのはあるんですけど、見せ方として冷静でありたい、みたいな。
okudakun - 美味しいとこ持っていきたいよね。
lazydoll - そう、美味しいとこもっていきたい。タチ悪い(笑)。
- 僧侶キャラと戦隊ヒーローの青、お二人の出す例がすごく共通しているように思えます。もう少し突っ込んでいくと、それは矢面に立ちたくない、みたいなことなんでしょうか?
lazydoll - 保険かも。隠れてやってる感。アンチとかめちゃくちゃ嫌ですもん。
okudakun - アンチ全然嫌だ、こないでほしい。人に嫌われるっていうのが大嫌い。ラッパーの人だとアンチ来いよっていうのがあるけど、めっちゃ気にするんですよね。
- なるほど……「いい感じに売れたい」というのも通づる話かもしれませんね。ちなみに今のリスナー層でいうと、海外からのリスナーもいますか?
lazydoll - やっぱり日本人が多いですけど、海外の人と作ってる曲もあるから聞いてくれる人もいますね。
- 国でいうとどこですか?
okudakun - アメリカと韓国じゃない?
lazydoll - うん。
- 韓国ですか。
okudakun - hyperpopはアメリカと韓国が二大巨頭。あとオーストラリアも。
lazydoll - ポーランドもすごいよね。
okudakun - Nosgovさんとかね。こないだ野崎りこんさんのアルバムにe5さんとフィーチャリングしてたんですけど、ポーランド人なんですよね。
- そうなんですね。やはりサンクラシーンはダイレクトに海外と繋がれるのがいい点だなと思っています。
okudakun - 海外の人にいいねされると嬉しいよね。でも、日本は聞く母数が多いんです。海外だとめっちゃレベルの高い曲でも伸びてないことが多くて。海外はヒップホップとhyperpopっていうのが離れてる気がするし、日本はヒップホップから派生したhyperpopってなってるから。
lazydoll - そうそう。ヒップホップ聞いてた人がhyperpopも聞いてるから、母数が多くなる。
- なるほど、勉強になります。最後に、今後の展望などについても教えていただけますか?
okudakun - SpotifyやApple Musicに音源をあげていきたいです。サンクラノリは卒業したいというか。これまで独学でやってきて音楽理論も楽器も分からなかったんですけど、今年音大に入ったので、一旦しごかれようと思います(笑)。正直、高校生で音楽やってるっていうブランディングがあったと思うんですけど、音大にいるなら当然っしょ、ってとこまでハードル上げてやってこうって。
lazydoll - サンクラだけだとお金もらえるわけじゃないからね。でも、僕はサンクラっぽい音に救われてきたところはあるので、そこを基盤に活動を広げたいなって。音楽でメシは食いたいけど、一般人感は消えないようにやってきたいです(笑)。
- 今後のご活躍を期待しております。お二人ともありがとうございました。