古着探訪 Vol.1|徳利

近年若年層を中心に古着ブームが再来している。服好きにとって古着は元々親しみのあるものだが、最近では「安さ」や「個性」などを求めた古着需要が高まり、古着屋の店舗も増加の一途を辿っている。

FNMNLでは、そんな古着にフォーカスを当てた企画を遂行。古着が好きなアーティストやクリエイターに、行きつけのお店や土地に赴き古着を購入し、予算1万円以内で自由にコーディネートを組んでもらう。

第1回目にはユーモアに富んだラップや、SNSでの存在感で注目を集めているアーティスト・徳利が登場。彼らしいセレクトのお店とアイテムには要注目である。また、古着に纏わるエピソードやファッションについてのこだわりなど興味深い話を色々訊かせてくれた。

取材・構成:島田舞

写真:小林万里

訪れたお店:Taurus 清澄白河

徳利のコーディネート その1

徳利のコーディネート その2

- Taurusを知ったきっかけは何だったんでしょうか?

徳利 - 5、6年前に福岡に住んでいた時、清澄白河に来る機会があって。たまたま散策していて前を通りかかって「なんだこのお店は」という感じでした。気になって入ってみたら面白いものがあって、そこから東京に来る度に寄るようになりました。実際こっちに引っ越してきてからも、休みの日に見に行く感じです。

- 福岡にいた時もリサイクルショップはお好きでしたか?

徳利 - 西海岸っていうアメリカのスリフトみたいなお店が福岡の郊外に何店舗かあるんですよ。それを自転車で、元気な時は50キロぐらい漕いで回って。一日3、4店舗ぐらいが限界なんですけど。一つ一つが何キロも離れてたりするから。そういうことをやってました。

- 今はリサイクルショップでカップルがデートしたりしてますよね。

徳利 - 大分様子が変わりましたね。「こんなとこ誰も来ないだろうな」っていう感じの場所も多かったんですけど、今は若い子も普通にいたりしますね。

小林万里 - 僕も結構好きで、古いスポーツ用品店とか回ってて。この間2000年初頭のDUNKがめちゃくちゃ出てきて、「まだあるんだ」みたいな。

徳利 - そういう存在は相当レアですよね。

- 若い頃は何を求めて探してたんですか?

徳利 - 今はアリになっちゃったものがまだアリじゃない時に、そういうものを探してました。いっぱい有りすぎて思い出せないですけど、とにかくヤバいプリントのTシャツ。

- 『オタク in tha hood』で、そういうTシャツ紹介してましたね。

徳利 - あんな感じです。特に松坂のファンではないんですけど、不穏なデッカい顔のプリントがあるTシャツとか。「Tシャツにするならもっと良いところを抜けばいいのに、売る気ないだろ」みたいな。

- あれはヤバかったですね(笑)。売ったり整理したりはしないんですか?

徳利 - 基本的には所有してたいっていう気持ちが強くて。今のところあんまり手放したくはないですね。ただでさえもう世の中に無くなってきてるものなので。

- それだと増えていく一方ですね。

徳利 - そうですね。だいぶ抑えるようにはなりました。前はもっと買うことへのハードルが低かったので。今は本当に厳選して、よっぽどじゃないとブチ上がらないというか。

- 今日のお買い物はどうでしたか?

徳利 - テーマ的に、基本見てブチ上がるっていうところに則って買ったつもりなので、そういう意味じゃ普通に満足いく買い物が出来ました。

- セットアップはヤバかったですね。

徳利 - サイズもちょうど良かったし。今日のためにあったようなものじゃないですか?

- ああいう、どこのブランドか出所も分からないような謎の服は良いですよね。

徳利 - 「何のために作ったの?」とか「何コレ?」みたいな。けど、「自分じゃ作れないな」みたいなものが一番良いですね。

- 物への愛があるんですね。今日買った中で一番のお気に入りはどれですか?

徳利 - シルクハット、良いですね。あんまり普通の古着屋さんに無いから。結構被り物が好きなので、そのコレクションの一つにあれが増えて良かったなと思います。

- 他にお気に入りの被りものはありますか?

徳利 - いっぱいあるんですけど、ウエスタン系のハットとかも気に入ってます。全然被らないんですけどね。いざという時用に。

- 普段もああいうシルクハットみたいな、奇抜なものは身につけるんですか?

徳利 - 普段は結構地味なんですよ。テンションが上がったらそういう格好もするんですけど、別にいつもするわけじゃなくて。なんか気合を入れて「徳利をやるぞ」っていう時にそういう格好をするというか。

- やはりそういう意識はされてるんですね。

徳利 - そうですね。でも、そういうのも自由っていうか、基本的に古着が面白いからって感じですね。

- 徳利さんが思い描く「徳利をやるぞ」みたいなものはいつ頃から出てきたものなんでしょうか?

徳利 - さっき当たり前のように言ったんですけど意味わからないですよね。でもやっぱりライブとか、Instagramに上げる動画とか、結構衣装用に買うものと、「着れるな」って思うもののグラデーションが微妙というか。「どっちもいけるな」と思いながら買ってるから、それで増えちゃうんですよね。普通の人って、「衣装」と思って買わないので。「これいつか使えるかも」っていうので買っちゃうから。シルクハットもそっち系ですけど。軍モノのヘルメットとかも買っちゃうんですけど、そんなの絶対にいらないのし嵩張るし(笑)。グラディエーターみたいな鎧も買ったことがあるんですよ。4万円ぐらいして。オシャレな古道具屋さんで知り合いが「いいのあるよ」って教えてくれて、現物見たら欲しくなっちゃって。それが今まで買った普段使い出来ないものの中で一番高かったです。そういうのもキリがないので、本当は我慢しなきゃいけないんですけど。

- やっぱり「所有欲」が強いんですね。

徳利 - そうですね。物欲が凄まじいんでしょうね、多分。

- 所有欲は服以外にもありますか?

徳利 - いや、ほぼ服ですね。昔はCDとかも結構買ってたんですけど、服のみにしました。もう場所が無いので。普段着る用ももちろんですけど、インスタライブとかライブとか動画で使ったらおもしろいかな、みたいな感じでどんどん増えちゃって。

- 衣装を理由にどんどん買っちゃうんですね。

徳利 - そうです。だから、「全部いける」みたいになっちゃって。普通無いですよね、「インスタライブ用」って。「何それ?」みたいな。

- 確かに(笑)。

徳利 - しかも、別に「インスタライブ用」って自分では言ってるけど、見てる人はそこを見てないかもしれないし。自分で納得させるためだけの落とし所。でも「そういう用」と思って買ってライブとかするとテンションが上がるので、やっぱり衣装って大事だなと。

- そうですよね。あと、徳利さんといえばタンクトップのイメージが強いですよね。

徳利 - 結局タンクトップになってるんですよ。汗かきなんで。そうすると全部脱いじゃって。でも、中山きんに君じゃないですけど、ああいう状態が一番試されるっていうか。あれで何が出来るかが一番究極だとは思ってるんで。だから、「本当は服いらない説」が......。

- ハハハ(笑)。

徳利 - 本当は服いらないんですよ......(笑)。服いらないというか、服が無い状態でも面白いことが出来るのが理想なんですよ。今は恐れがあるから着てるのかもしれないですね。服に助けてもらってる。

- 確かに、徳利さんのライブとかで「まず服で笑う」みたいなところあるじゃないですか。

徳利 - うん、出オチなんですけどね。

- でも、掴みとしては完璧ですよね。

徳利 - ちょっと面白がってもらいたいというか。そこはあるかもしれないですね。最近YouTubeでMichael Jacksonを見てたんですけど、やっぱり衣装がカッコいいんですよ。めちゃくちゃお金かかってるし。やっぱりあれは大事だと思うんですよね。Michael Jacksonが上裸とかだったらちょっと違うというか。あの人は相当こだわってたと思うんですけど。あの美意識はカッコいいなって改めて思いましたね。ラッパーの人とかも色々なタイプがいるじゃないですか。基本上裸とか、暑くても厚着するのがカッコいいって人もいるし。だから、全部やりたいって感じですね。裸でもいいし、着ててもいい。で、「着ててもいい」っていうモードの時用に服を持っておくというか。

- 買ったものを全部SNSに上げてるわけじゃないですよね。

徳利 - 昔はヤバいのがあったらすぐに見せたいと思ってたんですけど、だんだんシェアしたいっていう気持ちが......服だけじゃなくてツイートとかもそうなんですけど、自分の中だけに留めておきたいって気持ちが年々大きくなってて。今って何でも見せるのが多いですけど。人知れずというか、自分の中だけで終わらせてるものが増えてますね。

小林万里 - 最近は何でもかんでもSNSにアップする人もいますよね。

徳利 - 昔は「ウケたらいい」って感じだったんですけど、そこは結構心境が変わりましたね。「下手に見せたくない」ぐらいの感じになってきました。コレクター心みたいなものが昔より強くなっちゃったからかもしれないですけど。コレクター的な話をすると、出しちゃうと「あ、こういうのがあるんだ」ってライバルが増えちゃうので。ってなると、何にも着れなくなっちゃいますけど(笑)。だから自分のTシャツを着てる。

小林万里 - 僕も自分や友人のブランド、あとは無地Tばかり着ています。

徳利 - いやでも、それが一番良いと思います。自分の場合は人前に出る時があるので、無地でカッコよくても良いと思うんですけど、まだちょっと見せたい気持ちもあって。そこは臨機応変にやってますね。だから、「〇〇用」っていうのがめちゃくちゃ自分の中にあると思うんですよ。「ヤバくて見せる用」と「ヤバくても見せない用」と、あと「普通」と。それを同時進行でいくから部屋がヤバいことになる。

小林万里 - 後は、見せるタイミングもありますよね。ここぞという時に。寝かせるというか。

徳利 - でも、自分でヤバいと思ってても全然ウケない時もあるんですよ(笑)。最近FCバルセロナのユニフォームを着ただけの写真をInstagramに上げたら凄くウケたんですよ。でも「これそんなにウケるか?もうちょい頑張ったの他にあるけど」みたいな。それも結局「なんでバルセロナなん?」っていうのがウケるのかもしれないし。未だにそれは分からないですね。SNSは10年以上やってますけど。何がウケるっていうのもあまり気にしなくなってきました。......いや、めちゃくちゃ気にしてるかもしれない(笑)。強がりですね。

- そもそもファッションを好きになったきっかけは何だったんでしょうか?

徳利 - 服自体は高校ぐらいから好きだったんですよ。高校時代は熊本にいたんですけど、熊本がその時局地的に古着ブームだったんです。結構、全国的にも有名だったんですけど。本当に古着屋の向かいに古着屋があるような感じで、一気にめちゃくちゃ出来て。高校生もみんな古着を着てて。今の古着の着方と違ってもっとコテコテなんですけど。オールドStussyにヴィンテージのDUNKをデカ履き、それでBMXに乗ってるみたいな。高校生でそういう格好をしてる奴が結構いたんですよね。オシャレかどうかは分からないですけど、服にお金を使う高校生がいっぱいいて。それでローカル雑誌のファッションスナップに載るのがかっこいいみたいな。そういう時に自分も高校生だったから、学校帰りに古着屋に行って買ったりしてました。でも、大学に行ってからはあんまり古着とか着なくなっちゃって。大学を卒業して福岡に戻って、特にお金も無かったので服に使えない状況になって。そうやって過ごしてたんですけど、徳利をやりだして、それで知り合った森光光子さんって人がいるんですけど、その人が当時リサイクルショップにめちゃくちゃ行ってて。「一緒に行く?」みたいな感じで言ってもらって。八王子とかその辺を車で回って、それで目覚めた感じですね。8年ぐらい前です。まだ全然掘られてない時に、そういうのを見つける面白さに気づかせてくれた。本当にオシャレなのに今は服に興味が無くなっちゃって、おじいちゃんみたいな格好をしてるんですよ。それはそれでオシャレなんですけど。リサイクルショップに行ったら、おじいちゃんに「オシャレですね」って褒められるらしいです。でも、森光さんがいなかったらリサイクルショップを回る面白さは分からなかったですね。

- 師匠みたいな。

徳利 - そうですね。今でもたまに家に遊びに行ってます。元々服は好きだったんですけど、もう一個上の段階というか、「変なのもアリ」みたいなのは森光さんから教えてもらいました。後は、「リサイクルショップにこんな良いものがあるんだ」っていう。

小林万里 - 熊本は日本一のファッションタウンと言われていたとも聞いたことがあります。

徳利 - 今は古着屋とかは殆ど無くなっちゃったんですけどね。当時は異常でしたね。DJして古着も着て、お金かかりまくるんですよ。レコ屋の袋持ってBMX乗って、全身良い古着着てるのが一番カッコいいっていう。

- 小物が大事なんですね。

徳利 - 大事ですね、トータルなので。それでママチャリだったらカッコつかないんですよ。後はAudio Technicaのゴツいヘッドホンをしてたり。

小林万里 - ヘッドホンしてましたね~。

徳利 - 最近また若い子に流行ってますよね。

- 話は変わりますが、今イケてるなと思うファッションや参考にしているアーティストなどはいらっしゃいますか?

徳利 - いた方が面白いと思うんですけど、結構自分が服装を真似したくなる瞬間って、なんとなく見てる映画とかに出てる人の格好だったりするんですよ。だから「これ」って人があんまりいないんですよね。参考にしてるのは......特に無いですね。

- 自分の直感が多いですか?

徳利 - 直感ですね。でも、Kanyeとかは見てますけど。もうKanye Westってことにしておきます(笑)。でも、本当に見てるんですよ。「あ、今Kanyeこんな感じなんだ」っていう。結構面白いっていうか。あの人なんてめちゃくちゃブチ上がれるものを常に探してると思うんですよ。

- 昨年待望のアルバムをリリースされましたが、今後の動きも気になります。

徳利 - 具体的なプロジェクトは無いですね。でも、やる気はあります。

- アルバムめちゃくちゃ聴かせて頂いて、全部印象に残るというか。“MORISHIT”もヤバいし、“Nicolas”も。

徳利 - ニコラス・ケイジの絵は、今部屋が汚すぎて飾れてないんですよね。

- また新曲も聴きたいです。

徳利 - やるつもりではあるので、めちゃくちゃテンションが上がったら一気に出来るかもしれないです。アップダウンが激しいんですよ。情緒不安定というか。カウンセリングみたいになってますけど(笑)。テンションが上がると白目剥いちゃうんですけど、基本はずっとローなんですよ。Instagramに上げる写真とか、さっきの撮影してる時とか、あの瞬間はガーンと上がって。古着を見てる時も結構そうですね。結局そのアドレナリンを求めてるんです。

- じゃあ、ライブしてる時のテンションと結構近いんですね。

徳利 - 近いですね。だから、それを着てライブするとダブルで上がる。食べ物とかと違って、取っておいて使えるっていう意味で、服は自分の中で趣味としても実用性としても理にかなってるというか。けどまあ、最終的には裸で出来たら良いと思ってますね。でも、モノとしても好きなんですよ。ウケるためだけじゃなくて。その愛がどんどん強くなってきたから、全部見せるって感じじゃなくなってきたというか。前はウケ重視みたいなところがありましたね。

- 徳利さんとしては、やっぱりウケたいっていう気持ちが強い?

徳利 - もう、あの、基本は「ウケたい」しか無いですね。「面白い」って言われるのが一番嬉しいです。よく言うじゃないですか。「なんか面白いことしようよ」みたいな。あれは本当にずっと思ってますね。本気で。

- ありがとうございました。

Info

徳利

Twitter:https://twitter.com/leetok_2

Instagram:https://www.instagram.com/lxxtok

『REVOLUTION』配信リンク:https://linkco.re/YAfg7u1S

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