【対談】坂東祐大 × STUTS 『大豆田とわ子と三人の元夫』 | テレビだからというリミットを外して生まれたもの

先頃放送が終了したドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』。ドラマの内容は元より、主題歌やサウンドトラックにここまで注目が集まるドラマがあっただろうか。STUTS & 松たか子 with 3exesが担当した主題歌は、俳優陣と共にKID FRESINO、BIM、NENE、Daichi Yamamoto、T-Pablowというラッパー陣が週替わりで登場し、エクスクルーシブなエンディング映像は本編と同じくらいSNSを騒がせていた。最終回後には全員が参加したリミックスバージョンや、制作にも参加したbutajiがボーカルをとったバージョンなども収録したアルバムもリリースされた。

一方本編のサウンドトラックを担当したのはクラシックや現代音楽を基盤にしつつも独創的な作品で活躍の幅を広げている坂東祐大。グレッチェン・パーラトやBIGYUKIなどをはじめマイカ・ルブテなどの豪華アーティストが参加していることは元より、選曲家を坂東自身が兼務したことで本編ともリンクしつつ楽曲としても卓越したサントラが出来上がった。

FNMNLではまだ制作の佳境にいた坂東祐大とSTUTSへの対談を敢行。2人はまず自由にクリエイティブに取り組める環境を作ってくれた制作陣への感謝を述べた。

取材・構成: 和田哲郎

撮影: Cho Ongo

- 『大豆田とわ子と三人の元夫』のように、ここまでサントラや主題歌が話題になるドラマもなかなか珍しいと思いますし、「こんなサントラの作り方や主題歌の作り方を真似できると思って欲しくない」と仰ってましたね(笑)。

坂東祐大 (以下 坂東) - この方法がスタンダードになったら本当に大変だと思います(笑)。

STUTS - 大変だけど、その方が面白い世の中になる気はしますけどね(笑)。凄く任せていただけたし、やりたいことをやらせてもらえて感謝の気持ちでいっぱいです。

坂東 - プロデューサーの佐野亜裕美さんに全ておんぶに抱っこというか、本当に思う存分クリエイションをさせて頂いて。忖度無しにクリエイションが出来るし「どんどんやってみよう」って思えたし信頼して下さったことをリスペクトしています。

- 坂東さんのコメントでも、佐野さんと濃い打ち合わせをして作っていくようになったとお話しされていましたね。そもそもいつ頃に話が来たんでしょうか?

坂東 - 去年の5月か6月の春先ぐらいに、佐野さんと自分の共通の友人の岩崎太整さんからご紹介いただいて。オーケストラを用いたいと脚本の坂元裕二さんが仰ったそうで、それで佐野さんが太整さんに相談したところ「坂東くんがいいんじゃないかな」と推薦してくださったそうで。その後、実際に脚本の前の企画書をいただき、そちらが凄く面白かったんです。キャラクターの詳細なプロフィールが書かれていて「なるほど!」と。もちろんその時点ではまだ曲とかのお話は無かったんですが、昨年の年末よりもう少し前ぐらいに準備稿いただいて、12月ぐらいに本格的に作曲が始まりました。

 - 決まってから実際に作り始めるまではタイムラグがあったんですね。STUTSさんは?

STUTS - 僕は藤井健太郎さんと別の機会でお会いした時に、坂元裕二さん脚本
で佐野さんプロデュースのドラマがあって、「エンディングテーマをラップ曲にする企画があるんだけどどう思う?」って言われて、「自分がもしやらせて頂けるなら挑戦してみたいです」とお伝えしたら、その後に正式オファーをもらったんです。実際に坂元さんと佐野さんと藤井さんと僕とマネージャーの平川さんでミーティングしたのが去年の12月で。そこから色々どういうものにするのかとか、具体的なアイデアとかを考えていった感じですね。

左: 坂東祐大 右: STUTS

 - ただ1曲を作るのも大変だと思いますが、週替わりでアーティストが変わって、しかもトラックは同じものを使わなきゃいけないというのは難題ですよね。

STUTS - 同じトラックという縛りは無かったんですけど、フックを松さんに歌ってもらうならそこは毎回同じにして、視聴者に曲の印象がちゃんと残るようにしたほうがいいのかなと考えたり、後は歌ってもらうラッパーの皆さんにとっても平等になったほうが良いなと思ったりもしたので、同じトラックでやろうと。

 - 同じトラックで全然個性が異なるラッパーが、聴かせて貰うとそれぞれの色がしっかり出ていて、しかもちゃんと松さんのボーカルも活かしてるって意味だと、STUTSさんの懐の広さというか。

STUTS - ありがとうございます(笑)。今回オファーさせて貰ったラッパーさんは、自分が別のベクトルでみんな大好きなラッパーさんでそれぞれが最高なものを仕上げて下さったので、凄く良い感じになって本当に嬉しいです。劇伴をサンプリングして欲しいという相談が元々あったので、坂東さんから劇伴のデモを送っていただいたのが今年の1月で、そこから4パターンぐらいトラックを作ったんですけど、その中で一番発展しそうだし乗るラッパーによって違う曲になりそうだなと直感的に思ったのが今のトラックで。その直感が当たった感じがして良かったなと思います。

 - 今回はサントラと主題歌の共通する感じとして、リッチな感じというか、戦前のハリウッド映画のサントラのような華麗さがあるなと思ったんです。

坂東 - 前の話とも共通するんですが、坂元さんがオーケストラを使いたいと仰っていた理由が、「とわ子はプリンセスだ」っていうことで。ただ、とわ子はドレスを着てヨーロッパのお城の中に住んでいるっていうプリンセスではないし、そうなるとこの現代の日本の社会の中で信念を持って、しなやかに生きられる人がプリンセスなんだろうなと解釈しました。とわ子の経歴や履歴書を読むと、やっぱりその点が合致しているなと。そういうイノベーターみたいなところと、松さんが演じられるっていうことが最初から頭にあって。昔のクラシックシネマを想起させるような気分と、シンセやサンプリングによると快適な気分の二つをマッシュアップしたと思いました。

STUTS - ちなみに、「渋谷感」っていうものを表現するために、渋谷系みたいなものは参照しましたか?なんとなくメインテーマのコーラスがスウィングジャズっぽくなって女性コーラスが入るところとか、ちょっと渋谷系を感じさせる感じがして。フレンチポップ的な。

坂東 - フレンチポップはちょっと意識しました。フレンチポッププラスゴージャスなオーケストラで、かつSTUTSさんがサンプリングしてくださるってことを知っていたので、なるべくシームレスにSTUTSさんにもバトンを渡せるように思って。

STUTS - そうなんですね!

坂東 - ただもちろんグルーヴがある音楽にしたくて、オーケストラだけだとその感じは出ないので、ドラムの石若駿くんにまるでサンプリングしたかのように演奏してもらったりして。あと、STUTSさんと異なるアプローチでサンプリングすることをやりたくて。オーケストラサンプリングパートみたいな、自前オーケストラヒットみたいなのがあって。それは色々MPCのようにサンプラーツールに入れて遊んでたりしていました。

STUTS - とても面白いですね。いっぱい良いフレーズがあって、色んなサンプリングの方法が考えられましたし、曲として本当に素敵な楽曲でした。

 - サントラって、もちろん一曲ではあるんですけど、それをドラマの中で活かされなきゃいけないっていうもので、曲として際立ちすぎることにも気を使うのかなと思いました。その辺りのバランス感はどうやってチューニングされているんですか?

坂東 - 劇伴って色んなスタイルがあって、実は絶対的な正解って無いんですよね。でもそこに演出の意図が入ってくると正解がある程度導き出されて、「こう見せたい」とか「キャラクターのこういう気持ちに寄り添いたい」ってところに寄り添った時に、どういう手を使うかっていうのは、最初から共有してると作りやすくて。監督や佐野さんとそういった話を細かくすり合わせできたので、そこから決まっていった気がします。随時曲を坂元さんに送ってくださっていたらしくて、間接的にですが、途中からまるでキャッチボールみたいになってとても楽しかったです。あと、ドラマって普通は選曲家さんがいるんですが、今回は無理言って自分が選曲させていただいていて。映像の仮編集されたものをいただいて、貼っていく。で、足りないと自分の曲を新しく作りつつ(笑)。今週(取材時点では第8話)は確か10分ぐらい新たに作ったと思うんですけど。で、今ちょうど明日MAで。実は宅録でプレーヤーの方に遠隔レコーディングをお願いしていただいていたり。それはサントラに入らないっていう(笑)。

 - そこまでやってしまうのは凄いですね。

坂東 - キャストの皆さんのお芝居を見てから決めたいっていうのがあったんです。後は、このシーンはこの曲というパターン化をなるべくしたくなくて。あんまり型に嵌めずにやりたいなっていうのが最初から思ってたところで。そういう意味で、違和感はあまり無いようにしたいと思いつつ、状況そのままぴったりつけると、それはそれでスムーズすぎる流れになってしまって、メリハリがなくなってしまったりして。でも、僕が良いなと思う劇伴は敢えて外してるやつが好きだったりするんです。「普通に常套手段ならこっちをやるけど、敢えてこっち」みたいなのを色々と実験させて頂きました。

STUTS - そういう感じが凄く出てると思います。最初に1話目を観させて頂いた時に、音楽の入り方が凄く綺麗というか、音だけを聴いてもドラマ全編通して楽しめる感じがして。後はダイナミクスの付け方というか、音量をある場所でグッと上げるとか、セリフとかとのバランスが本当に素晴らしくて。それは劇伴を作曲されている方が選曲しているから、よりそう感じられるんだろうなと思って。さっきもセッションファイルを見せて貰って、「なるほど!」と納得しましたね。ここまで自分でやられているからこそのグッと来る感じなんだなと。もちろん作曲されている方と選曲される方がいてやっているものの素晴らしさもあると思いますけど、今回は作っている方がやっているからこその良さがあると思いました。

坂東 - ありがとうございます! 毎週、映画を作っているみたいな感覚です(笑)MAに立ち会わせて頂いて発見もあって、その後も凄く面白いんですよ。凄くクリエイティブなんです。今までは映画は別としてMAには立ち会っていなかったんですが、「セリフの一音一音をこうやって立たせたい」ってことを監督が仰ってて。そういうところから音楽もつけていくと、チームなので全体像がより分かってくる。最初凄く大変だったんですけど、やればやるほど良くなってくるのが分かったので、勉強させて頂いてるのと同時に仕事ではあるんですけど半分自分の楽しみ(笑)。

 - 別で選曲家がいるのがドラマでは一般的とのことですが、兼務することになったのは?

坂東 - 僕が「やらせてください」って言ったんです。サウンドスタッフの方でも、監督とか座組みが今回は映画の人が多かったんです。「選曲家って何?」から始まってたらしくて、「じゃあいいじゃん」みたいなところですんなり決めてくださったみたいで。佐野さんだし坂元さんだし『とわ子』だから、やればやるほど面白くなって。

 -ちなみに、サントラの中で繰り返し使われているメロディやバリエーションがありますよね。あれはどうして繰り返し使おうと思ったんですか?

坂東 - あくまで僕の考えなのですが、総理大臣でも無い限り普通の人の仕事って日常の積み重ねだと思うんですよね。「今日これを選択しないと大勢の人がが右往左往する」みたいなことって、普通そんなに毎日は起こらないと思うんです。週に一回あれば大ごとで。もちろんそういう立場の方もいらっしゃいますし、とわ子は社長だからどちらかというとある方だと思うんですけど。でも日々の生活は同じことの繰り返しなんだけど、そこには常にちょっとした変化があるなと思っていて。坂元さんの脚本から僕がそれを感じることがあって、同じメロディが色んな形で変奏されるのは、それを僕なりに解釈させていただいて。

 - だから統一感が出てくるんですね。サントラの作り方とか、それがどうドラマに乗っていくかっていうのはドラマを観ている人でも知らないと思うので興味深いです。

坂東 - 他にも、『とわ子』のオープニングで「今週あったこと」をダイジェストで見せていく。もちろん色んな事件が起こるんですけど、そういう部分を一貫して見せたいっていうのがあって。それを最初のオープニングとエンディングで包んであげるっていう円環、関連性みたいなことを考えていて。物語がそれを要求しているというか。必要だったら時間の許す限りやろうという感じです。

 - しかも、それを許してもらえる環境ってことですよね。

坂東 - そうなんですよ。普通許されないですよね。だって、前日までレコーディングしているなんて普通は絶対許されないので!(笑)。自由にクリエイションさせていただいた佐野さんに本当に感謝しています。

 - 主題歌"Presence"はどのように進んでいったのでしょうか?

STUTS - 佐野さんと坂元さんの中で決まってたのは、ラッパーさんがいっぱいというよりは週替わりでラップする役者さんが変わっていくっていうことで。一番最初は自己紹介ラップをやるっていう感じだったみたいで。その相談を藤井健太郎さんが受けられて、「それだったら週替わりでラッパーが変わっていったら面白いんじゃない」っていうことで、その段階で僕に話が来て。考えていくうちに、毎話ラッパーは変わっていくのも面白いと思うんですけど、ちゃんと曲として成立するものにしたいっていうのがあって。なおかつ週替わりでエンディングが変わるっていうのをどうしたらいいか考えた時に、一曲を1ヴァース目と2ヴァース目で分割して、それで二話分のエンディングにすることを考えついて。それで「だったら全十話あるなら五曲分作ろう」って考えて、5人のラッパーさんにオファーしようっていう枠組みを考えて、今みたいな形に落ち着いたっていう感じで。だから、ふわっとしたところから、それをどのように実現させていくかというところから考えさせてもらったという感じです。

- 松さんのボーカルが入ったものを聴いていかがでしたか?

STUTS - 本当に素晴らしかったです。これもいっぱい話すことがあるんですけど、そもそもそういう座組みが決まった時に「フックどうしようか」となって、「松さんにフック歌って貰う感じがいいよね」ってことを藤井さんと話していて。最初自分でメロディを作ることも考えたんですけど、今回はヒップホップを知らない方も聴く機会が多いプロジェクトなので、メロディ単体で聴いても印象に残るような大きなメロディ、歌謡曲的なメロディを書ける方にお願いしたいねってところで、平川さん(※STUTSの担当A&R)が「butajiさんとかどう?」って提案して下さって、butajiさんの音楽を聴いたら凄く良いものを作れそうだなと思って。歌謡曲的なメロディが書けて、なおかつトラックものに対してメロディをつけられる方は本当に少なくて。完全にbutajiさんに一任するっていうよりは、一緒に作っていくっていう感じでした。butajiさんが書いて下さったメロディを、よりトラックに対してグルーヴするように譜割りを調整したり、松さんにどう歌ってもらうかということも一緒に考えて、それで松さんに歌って貰ったんです。

松さんにも「こういう感じで歌ってもらいたい」っていうのを考えるときに、松さんには最初『アナ雪』だったり『明日春が来たら』みたいに日本語をハッキリ発音される歌みたいな印象があったんですけど、『カルテット』のエンディングの“大人の掟”は割と流れるような感じで歌われていて、「色んな歌い方が出来る方なんだな」っていうのをまず思って。今回も日本語をハッキリというよりは流れる感じで歌ってもらいたいってことを最初にお願いして。それで細かい部分のピッチのニュアンスや、「この歌詞の部分はこういう感情で」っていう要望を出して、そしたらそれを松さんなりに解釈して下さって、とっても素晴らしい表現をしてくださったというか。感銘を受けましたね。松さんにどうやったら一番ハマるかっていうのはめちゃくちゃ考えたのでよかったです。

坂東 - めちゃくちゃ難しいですよね。

STUTS - でも一緒に作ってみて、凄く色んな表現が出来る方なんだなっていうのはとても思いました。この曲でしか出ていないような表現もあって。

- それがしっかり出てますね。アルバムにはbutajiさんバージョンもあって、それもめちゃくちゃ良いですね。

STUTS - ものすごく気に入ってます。butajiさんは作家じゃなくてシンガーソングライターなので、butajiさんバージョンを作りたいよねって話をして。それでbutajiさんに提案して作ることになったのが今年の4月とかで、ちゃんと形になって、それも受け入れてもらえたのもありがたかったですね。

 - プロデューサーの佐野さんからは「かっこよければなんでもいい」と言われていたということですが、それに応えるのは一番大変なことだと思います。

坂東 - でも、それはクリエイターとしては一番ありがたい。

STUTS - めちゃくちゃ恵まれてますよね。普通だったら主題歌って口出されたりするものだと思うので。サンプリングもそのままサンプリングじゃなくて、サンプリングのクリエイティブさや面白さが伝わるものにしたいなというのもあったので、メインテーマの印象的なリフを物凄くピッチダウンして、それに違うコード進行を当てて作ったんです。どうやってサンプリングしたかみたいな動画アップしたいんです。

坂東 - 素敵です!。僕のProToolsセッションとかも提供しますよ!

STUTS - 本当ですか。サンプルした質感に合わせて色んな音を当てはめていったので、そのデモの質感が一番良かったって部分があって。改めてサンプリングって面白いなと思いました。そういう意味でも、色んな部分でヒップホップの面白さや楽しさが表れた楽曲になっていれば良いなと思ってます。

坂東 - なんで藤井健太郎さんってあんなにヒップホップにお詳しいんですか?

STUTS - 藤井さんがヒップホップ大好きな方で。

坂東 - すごく面白そうなイベントもされていましたよね。あんなにお忙しい方なのに。

STUTS - 藤井さんにも本当に感謝しています。最初に話を振って頂いたのは藤井さんですし、今回ここまで攻めたこと出来たのも、色々間に入ってくださったり、考えてくださったからこそなので。

 - T-Pablowさんは藤井さんからの提案だったとか。

STUTS - 最初の4名は自分と藤井さんと平川さんで考えて決めたんですけど、最後の一人どうしようって感じになって、藤井さんに相談したら「T-Pablowさんとかどう?」って言われて。自分としても、色んなベクトルで自分が大好きな人でお願いしたいってことと、せっかく多くの方にヒップホップが聴かれる機会なので、自分がやったこと無い方ともご一緒させて頂いて、広い感じに出来たら良いなと思って。とは言っても実験的なプロジェクトなので色々バランスも必要で。T-Pablowさんは、もしやっていただけるならぜひご一緒したいという思いだったので、受けて貰えた時はとても嬉しかったですね。

- リリースされたリミックスバージョンもまさか違うバースのものだとは思っていなかったです。

STUTS - 普段会う機会がない五人が一堂に会するので、面白いことが出来たら良いなっていうのがあって。リミックスのヴァースも最初からお声がけする時にお願いしました。組み合わせも順番も面白い感じにできたかなと思います。T-PablowさんからDaichiくん、NENEさんからBIMくん、そして最後のCメロの部分にKID FRESINOくんが来る感じで。マイクリレーも皆さんが素晴らしいものを書いて下さったので、自分が大好きな方々と良い感じに曲に作れて、嬉しさしか無いですね。マイクリレーの面白さも提示出来た気がしていて。リミックスについてラッパーの皆さんにお願いしたのは、ドラマ全体の物語をインプットした上で、自分の大切な存在や「Presence」っていうテーマについて書いてもらいたいっていうフワッとしたお題で。物語をちゃんとインプットした上で、よりそれぞれのラッパーが歌っている感じが出るようなリリックを書いてもらおうと思いました。今回の楽曲は、リミックスも含めて“Presence I”からドラマを見てない方でも共感出来る内容にしたいっていうのがあったので、脚本のキーワードを入れるっていうのは佐野さんの要望にもあったんですけど、ドラマを見ていない方でも曲として楽しめるぐらいの抽象度にしたいっていうリクエストに対して、皆さんがそれぞれの解釈でやってくれたので嬉しいですね。最初に話が来たときは光栄な反面、不安もあったんですけど。

- しかも、テレビでのラップの消費のされ方とかもみてしまうと余計にですよね。

STUTS - そんな話を頂いたことが光栄だったんですけど、ちゃんと自分なりの音楽としてカッコいいものにしたいっていうのがあって。そこは佐野さんの素晴らしいところで。

坂東 - テレビで消費されるっていうのは音楽自体にも思うことがあって。「テレビだからこのぐらいでいいでしょ」みたいなのは絶対にやめたいと思ったんです。少なくとも『とわ子』に関してはそれを考えるのは絶対にやめようと。もちろんSTUTSさんもそうだと思うんですけど、僕の場合はクラシックや現代音楽をきちんと紹介したいっていうのがあって、そこを「テレビだからこんなもんでいい」っていうのは考えたくないというか、そんなことを考える奴がいたらこの場から出ていってくれ、みたいな(笑)。それは佐野さんの情熱に応えたい部分もあって。

STUTS - 僕も同じようなスタンスで。

 - だからこそ坂東さんの劇伴の方にも凄く豪華なゲストたちが。

STUTS - 最初クレジット見た時びっくりしました。

坂東 - 音楽的に、この方にお願いしたい、という当て書きの延長で、というところだったので、個人的には自然な流れだったのですが、何より今回はグレッチェン・パーラトさんが引き受けて下さったことが僕の中では一番嬉しかったです。そして、原詩を坂元さんが書いて下さったのが嬉しくて。ただどの曲も最初からここに使いたいっていう訳じゃ無くて、正直ハマらなかったらそれでいいや、ぐらいの気持ちで作ってたんです。でも1話も経て「あ、ハマった!」っていう感じになって(笑)。

STUTS - 最初に一話を見て、その後二話を見た時は「こういうフォーマットで進んだのかな」と思うぐらい、挿入歌があってエンディングに繋がる感じ、みたいに思ったぐらいハマってて。

坂東 - 一話の映像が完成してから「いけるかもしれない」みたいな感じでした。

 -今日話を聞いて、改めてテンプレを取っ払って0から作ってみようというものだったというのがわかりました。

STUTS - そういうことだったと思います。

坂東 - そこに面白さがあると思うんですよね。そういうところから新しい展開が生まれた方が全員ハッピーなのかなって。まだギリギリで粘っているのですが(笑)

- テレビに対してのネガティブなイメージが、チームによっては全然そんなことないってことが今日の話を聞いてわかりました。

坂東 - 僕も藤井さんの作られる番組が大好きで。まさかご一緒できると思っていなかったので、お話を伺った時に本当に嬉しくて(笑)。

STUTS - 改めて佐野さんと藤井さんに本当に感謝です。お二人がいなかったら今回みたいな感じにはできなかっただろうなと思います。

Info

【アルバムリリース情報】
6月23日(水)発売
STUTS & 松たか子 with 3exes 
「Presence」 初回仕様通常盤
価格:2750円(税込) 品番:BVCL-1129 全10曲収録

https://VA.lnk.to/M6W1VOPZ

【収録曲】

  1. Presence I (feat. KID FRESINO)
  2. Presence II (feat. BIM, 岡田将生)
  3. Presence III (feat. NENE, 角田晃広)
  4. Best Party of My Life
  5. Presence IV (feat. Daichi Yamamoto, 松田龍平)
  6. Presence V (feat. T-Pablow)
  7. Presence Remix (feat. T-Pablow, Daichi Yamamoto, NENE, BIM, KID FRESINO)
  8. Shapes
  9. Presence Reprise (feat. butaji)
  10. Presence (instrumental)
    発売元:ソニー・ミュージックレーベルズ
    各CDショップはこちら → https://va.lnk.to/w2EHwG
    特典はこちら → https://www.sonymusic.co.jp/artist/matsu_takako/info/530294

「Towako's Diary - from “大豆田とわ子と三人の元夫”」

坂東祐大

1.Ils parlent de moi - プロムナード編 feat. マイカ・ルブテ with 林 正樹
2.♭Tuning Up with Banksia Trio
3.#まめ夫 序曲 〜「大豆田とわ子と三人の元夫」 with Ensemble FOVE, Banksia Trio
4.Monday (Variation 1) with Banksia Trio
5.Morning (Variation Theme) feat. グレッチェン・パーラト
6.Falling in Love
7.鹿太郎のワルツ - オフィス編 with 鈴木 舞, Ensemble FOVE
8.Password 1 with グレイ理沙
9.Password 2 with 菅沼起一
10.みんな、色々ある with 鈴木大介
11.Attachments feat. LEO今井 with 鈴木大介, 佐藤采香, 大家一将
12.Siesta (Variation 2)  with 安達真理, 東 紗衣
13.嘘とタンゴ
14.Have a nice day! (Variation 3) with 大家一将, 真砂陽地
15.かごめのお気に入り with 町田 匡, 真砂陽地, 中 ヒデヒト, 佐々木貴之
16.しゃっくりが止まらない with 町田 匡
17.Break time (Variation 4) with 菅沼起一
18.Suddenly, comedy, fantasy with 多久潤一朗
19.Ils parlent de moi - ほろ酔い編 feat. マイカ・ルブテ with Banksia Trio
20.Focus
21.Evil dream
22.Table talk (Variation 5) with 安達真理, 東 紗衣
23.夜を徹して
24.from RISTORANTE "OPERETTA" (ReWork 01) with BIGYUKI
25.from RISTORANTE "OPERETTA" (ReWork 02) with BIGYUKI
26.鹿太郎のワルツ - 回想編 with 上野耕平, Ensemble FOVE
27.Good night(Variation 6) with 内門卓也
28.All The Same feat. グレッチェン・パーラト, BIGYUKI with 須川崇志, 石若 駿, Ensemble FOVE

https://columbia.jp/prod-info/COCQ-85525/

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