【インタビュー】lil beamz|自分を認めて光となる

トラップを下敷きとして多様なスタイルを持つラッパーたちが次々と登場する現在の日本のシーンに、“MICHIKO LONDON”、“ZENITSU”といった楽曲を携えて鮮烈に登場したlil beamz。兵庫県・加古川出身であり、Shurkn Papを始め多くのラッパーを輩出してきたHLGB Studioを拠点に活動する彼は、エモーショナルなトラップビートから四つ打ちやドラムンベースまで幅広いビートを自在に、自身の色に染め上げながら乗りこなす。自分自身の内面をリアルに吐露したリリックをファッションやアニメといったトピックに織り交ぜる感覚も、まさにオリジナルな物であると言ってよい。

先月末には、HLGB STUDIOを運営するプロデューサーユニットKNOTTと共に強力なシングル“Light Speed DIO”をリリースしたばかり。今回FNMNLでは、そんなlil beamzにZoomでのオンライン取材を敢行した。存在感と勢いを増し続ける彼が今後どのような景色を見せてくれるのか、期待が更に膨らむようなインタビューとなっている。

取材・構成:山本輝洋

 - まず、初めて音楽を好きになったきっかけを教えてください。

lil beamz - 一番最初に聴いたのは嵐ですね。確か小学校の5、6年生の時にベストアルバムが出て、それが初めて買ったCDです。ちょっと流行に置いて行かれたくない、っていうマインドが自分にはあって、中学に入ったら流行ってたのがレゲエだったんですよ。それで中学一年の頃はずっとレゲエ聴いてたんですけど。後はRADWIMPSとかですね。流行ってるものを取り敢えず聴く、みたいな感じだったのが初めて音楽に触れたきっかけですね。

 - そこからヒップホップを聴くようになったのはどのような経緯で?

lil beamz - そのまま流行っているのを追っていくと、その時ぐらいにKOHHが出てきたんですよ。“Junji Takada”とかを、めっちゃ好きやった女の子が聴いてたから、その子に置いていかれないように聴いたのがきっかけでしたね(笑)

- Waffling TVのインタビューで「だんだん“自分なら絶対いける”と思うようになった」とおっしゃっていましたが、そこから自分でもラップを始めようと思ったきっかけはどんなものだったのでしょうか?

lil beamz - やってみようと思ったのは結構最近、初めてちゃんとレコーディングしたのも、ちょうど1年ぐらい前なんですよ。昔から基本的に人と被りたくないっていうのがあって。でも、それを表現するのが苦手で。だから、学生時代とかも目立つようなタイプではなかったし、ずっと普通に生きてきたんだけど、内心はそういう反骨精神みたいなのがあって。で、高校卒業して社会人になったときに、DJとか色んなことやってる友達に出会って、「ああ、こういう子もおるんや」って、感化されて、「僕もこのままだったら置いていかれるな」と思って。で、「やるならラップしかないな」と思って始めたのがきっかけです。

 - じゃあ、ラップを始めたときのマインドと、音楽を聴き始めたときのマインドは結構共通していたんですね。

lil beamz - そうですね、変わってないと思います。ずっとどこかで表現したかったので。

 - ラップを始めるきっかけとなった友達とは神戸の服屋さんで出会ったとのことですが、その人たちはどういう方々だったんですか?

lil beamz - 全員僕と同い年で。たまたま僕が一人でMuktaっていう服屋に行ってたんですけど、そこの店員さんにめちゃくちゃ僕も良くしてもらってて。そのタイミングで僕と同い年の子たちが来て、その子たちを紹介してもらったんですけど。僕はめちゃくちゃ人見知りなんで、最初は結構キツいなと思ってたんですけど、その中の一人の子がめっちゃグイグイ来てくれて。その子がその日に「飯行こや」って誘ってくれて、そこからずっと仲が良いです。

 - その人たちもラップやDJなどをされていたんですよね。

lil beamz - その時はまだみんな何もしてなかったんですけど。そこからみんなでいる内にDJやり出したりとか、服作ったりとか。それこそ、今アートワークを描いてくれてるWhoiskosukeもその中の一人で。そういう子たちでイベントに行ったら、同い年で色々やってる人がいるっていうのを見て。それで「やりたいな」って思った感じですね。

 - そこから、最初に曲を作ったのは大体いつ頃になりますか?

lil beamz - 本当に一番最初にやってたのはiPhoneのアプリで、Garage Bandとかで作ってて。その時が、多分去年の3月とか。で、初めてHLGB STUDIOで録ったのが4月か5月ぐらいですね。

- 1年程度でここまで来るのは凄いスピードですよね。

lil beamz - いや、自分でもびっくりしてますね。

 - 僕が最初にlil beamzさんを知ったのは“ZENITSU”の時だったんですが、最初に聴いたときから「凄い人が出てきたな」って印象を持っていて。

lil beamz - 確かに結構ヤバい奴ですよね(笑)

 - 他には無い雰囲気を持っていて、トラックの感じも独特でヤバいなと思っていて。マンガのキャラクターとご自身をなぞらえたリリックを、速めの四つ打ちのビートに乗せる感覚が斬新だなと感じました。

lil beamz - ありがとうございます(笑)

 - HLGB STUDIOで制作をするようになった経緯はどういった物なのでしょうか?

lil beamz - それこそFNMNLで、KNOTTのDa.Iさんのインタビューを読んだのがきっかけですね。そこから即行で行こうと思って。

 - 実際に行かれてみて、最初はどのような印象でしたか?

lil beamz - めちゃくちゃ緊張しましたね。今でも一番最初の曲を聴いたりすると、全然声出てないし。でもその時は曲が出来てめちゃめちゃ感動して、「うわ、こんな違うんや」と思って。帰りの電車でその曲を1時間ぐらいずっと聴いて。その時はすげえ興奮したっすね。

 - 最初に作った曲はどれになるんですか?

lil beamz - “Let's go lil beamz”っていう、シングルで出してる曲ですね。

 - そこでのレコーディングで手応えを感じて、その後も曲を作り続けるようになったという感じでしょうか?

lil beamz - そうですね、手応えは別に無かったんですけど、もう一回曲を作りたいなって。このクオリティで曲を作りたいと思いました。

 - じゃあ実際にやってみて、作るという行為が好きだって気づいたんですね。

lil beamz - 多分そうだと思います。めちゃくちゃ楽しかったので。

 - 『anti BEAMS organization』がその後リリースされますが、あのEPはHLGB STUDIOに出入りして作った曲をまとめて完成した作品ということですか?

lil beamz - そうです。あの時はあまり何も考えず曲だけバーっと録って、「まとまったからEP出そう」みたいなノリでしたね。だから、別にそこまでテーマとか曲に対する深い意味とかも無くて。

 - なるほど。話は前後しますが、ラッパーとしての名義をlil beamzにした理由はBEAMSで働いていたからなんですよね。BEAMSはあまりお好きじゃなかったとのことですが、それを敢えてご自身の名義にした理由は何だったんでしょうか?

lil beamz - そうですね、好きじゃないというか...(笑)BEAMSの服があまり好きじゃなくて。大手なので、万人受けするあまりカッコよくない服が多くて。名前は完全にネタなんですけど、iPhoneで曲を作ってSoundCloudに出してた時は別の名義でやってて。Muktaにお世話になってる方がいて、その方と飲みに行った帰りに「名前変えたいんですよね」って言ったら、「BEAMS入れたらええんちゃう?」みたいな(笑)それで「BEAMS...なるほど。それいいっすね」って感じのノリです。

 - 初期の頃から今に至るまでファッションをテーマにした曲が沢山ありますが、最初に注目を集めた曲は“MICHIKO LONDON”ですよね。改めて“MICHIKO LONDON”を作った経緯を教えていただけますか?

lil beamz - その当時はBEAMSで働いてたんですけど、BEAMSの中でめっちゃ嫌なことがあって。人間関係というか、上の人とごちゃごちゃしてて。めちゃめちゃイラついてて、その帰りにイライラしたままMuktaやってたポップアップショップに行ったんですよ。東京にあるSummer Of Loveってショップのポップアップで。そのイライラマインドで行って、MICHIKO LONDONのジャケットを「これヤバいな」と思ってすぐ買って。「こんなん着てるやつおらんやろな」と思って、そのバイブスで“MICHIKO LONDON”ってタイトルの曲を作ろうと思ったんです。「この今のイライラバイブスを全部乗せて書いたろ」と思ってトラックをディグって、そしたらあのタイミングで四つ打ちのトラックを見つけて、「これヤバいやん」と思って。「このトラックで“MICHIKO LONDON”って曲やったら絶対ヤバいやん」と思って、その時のマインドを全部書いたというか。ノリとイライラですね。「クソな大人もLoveをあげるよ」っていうのも、「俺は全然余裕でラブをあげられるよ」っていう。自分は特別だっていうのを乗せたかったというか。

 - MICHIKO LONDONというブランド自体も、今めちゃくちゃ流行ってる訳ではないけど独特な雰囲気がありますよね。その感じとlil beamzさんの「人と被りたくない」という理念が合致しているというか、一つのコンセプトとして成立していますよね。

lil beamz - そうなんですよ。MICHIKO LONDONと別に、僕がずっと曲に出してるDIOっていう原付があるんですけど、それもそういう感じで。別にDIOをカッコいいと思って乗ってるわけじゃなくて、DIOをネタにしてるわけでもなくて。ガチでDIOに乗ってるし、けどそれをカッコいいとは思わない。でも、それが自分やってことを歌いたいというか。だから歌詞に入れてます。概念みたいな感じで。「lil beamzはDIOやし、DIOはlil beamz」ってノリで。聴いてくれてる人にあまり勘違いして欲しくないのは、別にDIOをカッコいいと思ってるわけでもないし、ネタとして使ってるわけでもない。DIOをDIOとして見て欲しくないというか。それは思います。

 - これが自分をRepするものだ、というニュアンスですよね。

lil beamz - そうですね。

 - トラックの話も伺いたいんですが、最初に“MICHIKO LONDON”を聴いたときに「こんなトラックを使う人がいるのか」という衝撃があって。他にもダンスミュージック寄りのビートを使った曲は多いですが、トラックはSoundCloudで探しているんですか?

lil beamz - そうですね、今はその方が多いかもしれないです。

 - 四つ打ちのビートは、あまり他に使っている人がいないものを探しているという感じでしょうか。

lil beamz - やっぱり自分に合ってたっていうのはあると思います。四つ打ちというか、メロディが効いてる物の方がやりやすいっていうのもあるし。それは昔から変わってないと思います。それをもっと特徴的にしたいと思い始めたんですけど。

 - 先述のインタビューではSUPERCARとHave A Nice Day!がお好きだと話していましたが、その両者もメロディが効いた上物に四つ打ちのビートが入る曲が多いですよね。そこはやはり影響された部分というか、そういった物が好きになる原点だったのでしょうか?

lil beamz - 音的には影響を受けてると思います。ハバナイ(Have A Nice Day!)とSUPERCARに影響受けてるのはあくまで音の話なんですけど、リリックとかはそれこそRADとか。バンドに近いようなリリックの書き方かなと思います。ヒップホップとかトラップに拘って、そういう歌詞を歌ったりはしないです。「金稼いでランボルギーニ」とか。あと、あんまり適当なことを歌いたくないというのもある。

 - lil beamzさんのリリックは一貫して良い意味での少年性と「青春感」みたいなものが強いと感じていて、そこが好きな部分でもあるんですよ。そういった部分はご自身のテーマとして持っているということでしょうか?

lil beamz - めっちゃ嬉しいです。テーマというか、自分のコンプレックスやと思うんですけど、僕は大学行ってないし、小中高と内気だった。でも内面には「目立ちたい」っていうマインドがずっとあって。その青春を取り返すというか、この歳になって青春を取り戻したくて。僕のファンもそういう人が多いんじゃないかなって。

 - 僕も含め、恐らくそうだと思います(笑)分かりますね。

lil beamz - みんなで青春を取り返そう、というか。最近気づいたんですけど、僕の一番の目標は、イケてない奴を救い出したいっていうことなんです。だからみんなで「Let's go lil beamz」しよう、って感じですかね(笑)

 - そういう一種のヒーロー感みたいなものはありますよね。

lil beamz - いや、伝わってるのが知れてめっちゃ嬉しいですね。

 - その「少年性」という部分で言うと、“Blue Vroom”のMVとシングルのアートワークで『FLCL』(編注:『新世紀エヴァンゲリオン』などで知られるGAINAXから2000年に発売されたOVAシリーズ。現在までカルト的な人気を誇っており、海外のファンも多い)をオマージュしていますよね。『FLCL』というアニメも「子供」と「大人」というテーマを両面から描いているものだと思いますが、そこに共感してサンプリングしたという感じでしょうか?

lil beamz - そうですね。最初観たときはマジで意味分からなかったんですけど、ああいう独特な演出とかが面白くて。あとちょっと、狙ってたのは海外でも人気があるし。「やっぱこういう作品好きやな」と思って、感覚的にというか、そこをオマージュしたら面白いかなと思って。

 - アニメのトピックが多いこともユニークな点だと思いますが、ご自身が好きになるアニメはどういう作品が多いですか?

lil beamz - そうですね、やっぱリアルなものが好きというか。例えば、僕は『ソードアート・オンライン』(編注:仮想空間を舞台としたゲームに閉じ込められた主人公とヒロインの戦いを描くライトノベル・テレビアニメシリーズ)があまり好きじゃなくて。主人公のキリトがめっちゃ嫌いなんですよ。

 - (笑)

lil beamz - あんなオタクがあんなにイケイケな訳ないし。

 - 実際のところ、引きこもってゲームしてるだけの人ですからね。

lil beamz - その癖カッコつけたりするのはリアルじゃないし。そこはちょっと自分の中のヒップホップと繋がるところがあって、ヒップホップってリアルなもので、それが不良とかギャングとか、向こうではそれが始まりだったかもしれないですけど、根本的なマインドは「リアルなもの」ってところがあって。だから、僕もそういうのに感化されて、「ダメな自分を受け入れる」というか、ダメな自分も自分やし、DIO乗ってるのもダサいけど、それが今の自分やから、それを歌うしかないというか。それで嘘をついても、それはヒップホップじゃないし。ちょっと愚痴みたいになりますけど、今はそういう人が多くて、それはリアルじゃないというか。リアルじゃないって、「自分を認めてない」ってことだと思うんですよ。ダサい自分でも受け入れて作るっていうのが一番決めてるところですね。それもアニメに影響されたところかもしれないです。

 - あくまで等身大の、実際の自分を出していくという。

lil beamz - そうですね。

 - 今の話を聞いていて「なるほどな」と思ったのが、例えば“ASAHI ABI ABI”で『Re:ゼロから始める異世界生活』(編注:異世界に突如として召喚されてしまった主人公スバルが、多くの失敗を重ねながら様々な困難に立ち向かっていく様を描いたライトノベル・テレビアニメシリーズ。『ソードアート・オンライン』の主人公キリトが作中屈指の強さを誇る存在として描かれるのに対し、こちらの主人公は基本的に強い力を持たないという違いがある)のレムの声をサンプリングしているじゃないですか。

lil beamz - はい(笑)

  - 『Re:ゼロから始める異世界生活』が好きだとインタビューでも話していましたが、『SAO』が苦手で『リゼロ』が好きだというのも今のお話で理解出来たというか(笑)あれも、別に強い訳じゃない主人公が頑張る話でもあって。

lil beamz - そうですね。リアルにあんなことになったらスバルもああいう顔するよな、って思いますもん。絶望しかないし。絶望というか、悲しい話が好きなんですよ。エモいって言ったらあれですけど。

 - 曲にも切ないテイストが含まれているものが多いですが、それもそういった物が好きな部分から出ているということなんでしょうか。

lil beamz - そうかもしれないですね。やっぱりちょっと悲しいものが好きなんですよ。自分の弱さを全力で出してるものが好きというか。自分を認めてる奴の音楽が好きで。中3か高1の時にLil Peepを聴いて、それが自分の中でデカくて。初めてガッツリハマったUSのラッパーというか。聴いただけで「こいつめっちゃ悲しいやん」ってなって。自分が好きなものがそこで決まったというか、「自分はこういう音楽が好きなんやろな」っていうのを、初めてLil Peepを聴いて実感したところはありますね。

 - Lil Peepも、当時は「ラッパーでこういうことをするのか」という衝撃がありましたからね。

lil beamz - そうですね、当時はめっちゃ新しかったっすよね。

 - Lil Peepの他にYung Leanも凄く好きだということですが、Yung Leanも似たような部分が刺さったということですか?

lil beamz - そうだと思います。音的には遠いかもしれないですけど、やっぱ曲を聴いて「こいつ、暗いな~」っていう雰囲気が分かるというか。

 - 話は変わりますが、曲をリリースする時にInstagramの方にティザーのビジュアルやビデオをあげていますよね。楽曲と同様にアニメなどからの影響を感じさせる作品でしたが、あれはどういう経緯で制作されたのでしょうか?

lil beamz - 『LIL BEAMZ 2,0』をいざ出すってなった時にスタジオの人と話して、自分の中で「人と違うことがしたい」っていうマインドもあったし、スタジオの人が最初「キービジュアル作ったらいいんじゃない」ってことを言ってくれて。アニメ好きやし。やっぱ、そんなん誰もやってないじゃないですか。「それいいっすね」ってなって。スタジオの人の存在がデカいですね。で、『2,0』の時は街中にポスター貼ってるようにコラージュで見せたりとか。“Light Speed DIO”の時は実写で行きたいなって。キービジュアルは変わらず作ったんですけど、プロモーションの流れで、またもっと新しいことをしようかなって。それもスタジオの人と相談しながらやったって感じですね。基本的には「人と被ってない」ってことと、「新しいことがしたい」っていう感じですね。

 

この投稿をInstagramで見る

 

あと4日

✨?lil beamz?✨(@lil_beamz)がシェアした投稿 -

 

この投稿をInstagramで見る

 

あと3日

✨?lil beamz?✨(@lil_beamz)がシェアした投稿 -

 

この投稿をInstagramで見る

 

あと2日

✨?lil beamz?✨(@lil_beamz)がシェアした投稿 -

 

この投稿をInstagramで見る

 

Tonight CHAPTER1 20XX年 lil beamzは自室で変わらない暮らしを嘆いてた。 愛飲しているユウヒ スーパードライの空き缶が部屋の片隅で山のようになっている頃、玄関のベルが鳴る。差出人に「KNOTT」とだけ書かれた箱を受け取る。思い当たる節もない荷物をめんどくさそうに開けると、そこには、一枚のDISCとヘッドセットが入っていた。 「なんだよこれ。新手の嫌がらせか?」 怪しげに思いながらも、箱の中からそれぞれ取り出していると、底から一通のメモ書きのようなものが見つかる。 「変えたいかい?未来」 メモは続く。 「そのDISCをSOMYのPS8に入れて、ヘッドセットを装着するんだ」 普段自分が見ているアニメのような展開に「そんなわけ...」と思いつつも、胸が高鳴っていることに気が付くlil beamz。 部屋のカーテンと鍵を全て閉める。 「俺は期待しているのか?」 不安と希望に伸びる指先。 青白いランプが暗闇に光る。DISCが回る音が部屋に響いた。 「 L E T ' S G O L I L B E A M Z 光 リ ト 成 レ ! 」

✨?lil beamz?✨(@lil_beamz)がシェアした投稿 -

 - 書いてあるテキストも最高ですよね。普通の人が、運命に導かれていくというストーリーで。

lil beamz - そうなんですよね。最初の方から今までの流れとかもあまり計算してやってなかったんですけど、『lil beamz 1,0』『lil beamz 2,0』までは「光を探して」みたいな流れで。何かを探しているというか、そういうマインドで作ってて、キービジュアルも「光をさがして、走れ」でやってて。

 

この投稿をInstagramで見る

 

??LIL BEAMZ 2,0??. よりキービジュアルを公開 ?5/3 release? Art by @whoiskosuke

✨?lil beamz?✨(@lil_beamz)がシェアした投稿 -

それまでが、結構病んじゃったりとかネガティブなマインドで。特に『1,0』にはそういう曲が多くなっちゃってたんです。でも『2,0』を出した後にみんなの反応とかを見て、それがちょっと光に見えたんです。「じゃあ、もう俺が光になるしかないな」って。光を探すんじゃなくて、俺が光になればいいって。その時にちょうど“Light Speed DIO”を作ろうってなって、KNOTTの人と「じゃあもうこのテーマじゃない?」って。「光の速さで、DIOに乗って光になって走っちゃえばいいんじゃない?」ってなって、「それでやりましょう」ってなりました。それで、あの超最強な曲が出来た。

 - 確かに、“Light Speed DIO”はもう一つ上のステージに上がった印象を与える曲ですよね。それはご自身の中の感覚としてもありましたか?

lil beamz - ありました。『2,0』を作ってる途中ぐらいから、「もうネガティブになるのやめよう」って思って。リリースした後のみんなの反応を見てマインドが変わったというのもありますし、単純に曲を作るのが上手くなったっていうのもあると思うし。で、やっぱあのトラック来たらかますしかなくて。トラック送られてきてすぐリリック書いて、浮かんだっすね。「ヤバいな、これ絶対イケる」って。自分の波長とも凄く合ってたトラックやったと思うし、今のベストが全部出せたっていう感じですね。

 - 時系列が少し前後してしまいますが、“Light Speed DIO”以前のlil beamzさんにとって、それまでのご自身をまとめたような曲が“かえりみち”だったとおっしゃってましたよね。“かえりみち”はどのような曲でしたか?

lil beamz - 『1,0』で“MICHIKO LONDON”を出して、『2,0』で“BLUE VROOM”や“ASAHI ABI ABI”のような特徴的なトラックを使いつつも、“かえりみち”のようなシンプルなトラックの上で、超素直なリリックが書きたかったというか。何も気にせず、自分を一番認めながら書いた曲というか。リリックを考えるのが、いつも原付の上というか、駅から自宅までの帰り道なんですよ。それで浮かぶことが結構多くて。帰り道は自分の始まりでもあるし。一番素直になって書いた曲が“かえりみち”ですね。それまでは服のことやアニメのこともあったんですけど、それを全て無しにして、今の自分を歌うというか。そういう面で「まとめ」というか、自分が一番しっくり来た曲ですね。

 - 曝け出せる部分を全て曝け出したということですね。

lil beamz - そうですね。だから、自分は一番“かえりみち”が好きですね。

 - 『2,0』では“かえりみち”の次に"ASAHI ABI ABI”が来る流れも印象的ですよね。“ASAHI ABI ABI”はハッピーハードコアのようなトラックが途中ジャングルのように展開する凄い曲ですけど、あのトラックを最初に聴いたときはどのような印象でしたか?

lil beamz - 最初「これでやったら結構ヤバいかもな」って思ってたんですけど、「これラップ乗せる曲でもないしな」って思ってて(笑)どうしようかと思いましたけど、一つパンチの効いた曲が欲しくて、「これ使うか」ってチャレンジのような感じでやったというか。Menace無を入れたのは、Menace無を初めて聴いた時に「めっちゃ天才やん」って思って。「この人だったらワンチャンいけるかもしれない」と思って、フィーチャリングをお願いした感じですね。

 - Menace無さんとはどのような経緯で繋がったのでしょうか?

lil beamz - Kamuiさんの『MUDDLY EXTRA』の時に、Kamuiさんが「Menaceが“MICHIKO LONDON”ヤバいって言ってたよ」みたいに言ってくれて。「マジか」と思って、それでワンチャンやってくれるかなって。

 - トラックにも完璧にマッチしていましたよね。

lil beamz - あのトラックであの感じのメロディー出せるのはMenace無しかいないと思いますね。

 - 音楽的な側面で言うと、“ASAHI ABI ABI”のあの感じが“Light Speed DIO”に繋がっていったのかな、という印象も受けました。

lil beamz - そうですね。“Light Speed DIO”をやる時に、KNOTTの人が「ドラムンでやったらヤバくない?」みたいな感じで言ってくれて。“ASAHI ABI ABI”は自分で選んだトラックですけど、“Light Speed DIO”はKNOTTにお任せしてたんですけど、やっぱこういう曲をここで掴んだような気持ちもあって。別に“ASAHI ABI ABI”をやったから“Light Speed DIO”を作ろうってなった訳じゃないんですけど、KNOTTも俺のことをめちゃくちゃ理解してくれてるんで。そういう面で「lil beamzがやったらヤバいでしょ」っていうのは、KNOTTも思ってくれたんだと思います。

 - ここでドラムンベース的なトラックが来るのは納得感もありつつ、同時にヤバいなと。S亜TOHとの“逃げちゃダメだ”もリリースされましたが、あの曲でのコラボはどういった経緯で実現したのでしょうか?

lil beamz - 最初はS亜TOHのLingnaくんから連絡を貰って。その時にもう“ガバじゃなきゃ”で僕も知ってたんで、やりたいなと思って。「絶対ヤバいの出来るやろ」と思って、すぐ「やりましょう」って言って作った感じですね。

 - 7月5日には『AVYSS GAZE』に出演されますが、バーチャルでのライブに向けた気持ちはどのような感じでしょうか?

lil beamz - AVYSSはめっちゃ好きなメディアで、それこそ新しいことをやるな、っていうのもあるし。だからめちゃめちゃ楽しみではあるっすね。普通のライブとはまた違った、僕の良さを出せる場でもあるかな、というか。

 - なるほど。今はライブなどは厳しい状況だと思いますが、生活に変化などはありますか?

lil beamz - そうですね...BEAMSを辞めてから結構な期間ニートしてるんですけど、だから僕自身の生活にはあまり変わりなくて。ずっと家におるというか。でもコロナがあってからみんなも家にいないといけない状況になって、逆に気が楽になって(笑)それまでニートやってた時の方がめちゃめちゃしんどかったですね。「他みんなやってるのに、自分何やってるんやろ」みたいな。でもコロナがあったからこそマインドの変化も自分の中であって、逆に良いマインドになれたというか。

- 最後に、今後制作などで予定されていることはありますか?

lil beamz - 一応、まだ全然決まってはないんですけど、“Light Speed DIO”の衝撃のまま新しいEPを制作中です。結構短いスパンで出したいので、8月の頭ぐらいにEPを5、6曲ぐらいで考えてます。光になった後のlil beamzを、EPで出せたら良いですね。

 - ありがとうございました。

RELATED

【インタビュー】Koshy | 日本の音楽シーンに合わせようって気持ちがなかった

国内のヒップホップシーンにおいて2024年最大のバイラルヒットとなっている千葉雄喜の"チーム友達"、そしてその千葉雄喜も参加したMegan Thee Stallionの"MAMUSHI、さらにWatsonの1stアルバム『Soul Quake』やNENEの2ndソロアルバム『激アツ』。その全てのプロデュースを手がけているのがKoshyだ。

【インタビュー】MIKADO 『Re:Born Tape』 | 今は楽しいだけでやってる

和歌山・築港出身のラッパーMIKADOの勢いが上がっている。

【インタビュー】Whoopee Bomb "Yogibo" | クオリティを求めて

 『ラップスタア誕生 2023』に出場し、最後の8人まで残り一躍注目を浴びた東京出身のラッパーWhoopee Bomb。奇抜なファッションスタイルと同時にメロディックなフロウや、Rageなどのサウンドを取り入れたその音楽性でも注目されている。

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

Floating Pointsが選ぶ日本産のベストレコードと日本のベストレコード・ショップ

Floating Pointsは昨年11月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Elaenia』を引っ提げたワールドツアーを敢行中だ。日本でも10/7の渋谷WWW Xと翌日の朝霧JAMで、評判の高いバンドでのライブセットを披露した。