YGやLil BabyらがBLMデモの模様を取り入れたミュージックビデオを発表
先日、ミネアポリスでアフリカ系アメリカ人男性ジョージ・フロイドさんが警察によって不当な取り調べを受けた末に窒息死させられた事件を契機に全世界で大きな盛り上がりを見せている「Black Lives Matter」デモ。ヒップホップシーンにとって避けては通れない問題である人種差別に対する抗議運動には多くのラッパーも参加、もしくはサポートを表明していたが、抗議の意思やここ最近のデモの様子を楽曲やMVに盛り込むラッパーも徐々に現れてきているようだ。
これまでもNipsey Hussleとのコラボ曲”FDT“でトランプ大統領を痛烈に批判するなどポリティカルな楽曲も発表してきたYGは、先日新たに“FTP”(Fuck the Police)と題した楽曲をリリース。MVが先週末に公開された。
MVには実際のデモの映像が使用されており、またフックの「Fuck The Police」という部分に実際のデモのシュプレヒコールの音声が挿入される作りとなっている。YGのInstagramには撮影の様子が投稿されている他、今回のMVの意図を説明するメッセージが綴られている。「“FTP”と聞いて、彼らは俺が自分の街を燃やすと思ってる。だから俺たちは正しいことをして、間違いを証明したんだ。本当の話は、俺とBlack Lives Matterが5万人を集めて、団結と変化を求めて平和的に抗議したってことだ。この歌を聴いて、暴力的だと思われていた人々が共通の目的のために集まって、平和的に抗議したことを記録したかった。それが歴史だ」という言葉から、MVにデモの様子を使用することで「暴力的」とのイメージをなすりつけられたデモ隊が実際は平和的な抗議活動を行っていること、またそれを警察が暴力的に取り締まっているという事実を記録することが目的だったことが分かる。
YGだけでなく、Lil Babyも警察官による暴力や人種差別に反対するメッセージを歌った新曲“The Bigger Picture”を先週金曜日にリリース。MVにはリリックの内容と連動するように「Black Lives Matter」デモの模様や実際のニュース映像が使用されている。
他にもTerrace Martin、Denzel Curry、Kamasi Washingtonらが警察による暴力に抗議するメッセージを歌った新曲“PIG FEET”を今月初めに発表。MVは冒頭に「この楽曲のビデオは、今あなたの窓の外で起こっていることです」というテロップが表示され、実際のデモや暴動の模様が映し出される。Gardianの記事によればこの楽曲のリリックはジョージ・フロイドさんの一件と共にDenzel Curryの実の弟であるTreon Johnsonが2014年に警察によってテーザー銃で撃たれ、催涙ガスを浴びせられ収監された末に死亡した出来事を踏まえて歌われている。
実際の人種差別に対する抗議活動の盛り上がりと呼応するように、ヒップホップシーンでも抗議のメッセージを歌う楽曲やデモの様子を映したMVが次々と発表されるここ最近。ありとあらゆる人々にとって無関係ではない今回の問題について、ラッパーたちの楽曲やMVをきっかけにコミットしてゆく動きがさらに広がれば何よりだ。