【インタビュー】Denzel Curry | 俺は俺である事を捨てることなくナンバーワンになれると信じてる

フロリダを拠点に精力的に活動するラッパー、Denzel Curryが今年FUJI ROCK FESTIVAL '23に出演し、約5年ぶりとなる日本でのライブを行った。彼が去年リリースしたスタジオアルバム『Melt My Eyez See Your Future』は日本文化の影響を色濃く感じさせる内容で、国内でも多くのリスナーを獲得。更に今回のライブの数日前には新曲『BLOOD ON MY NIKEZ』をリリースしている。そんな来日中の彼に、YouTubeチャンネル『ゲツマニぱん工場』にて海外のラップミュージックの解説動画などを投稿しているJがインタビューを実施。ライブの様子や日本文化との関わり方、新曲の内容、今後の活動などについて聞いた。

取材・構成 : J (ゲツマニぱん工場)

撮影 : 横山純

- 体調はいかがですか?良い感じですか?

Denzel Curry - うん、今はリラックスしてるよ。

- 疲れてないですか?

Denzel Curry - いや、昨日寝られたから大丈夫だよ。

- お〜良かったです。実はFUJI ROCKには行ったんですが、初日は参加出来ず、ライブを観られなかったんですよね。でもTwitterとかで動画を観たんですけど、素晴らしいライブをしてましたよね。しかもRage Against The Machineのカバーまで!

Denzel Curry - “Bulls On Parade”でしょ?

- そう!“Bulls On Parade”!あのカバーはいつも僕のプレイリストに入っていて、すごくお気に入りなんです。

Denzel Curry - ありがとう。あの曲はみんなのお気に入りだよね。人気のカバーだ。

- ライブは実際どうでしたか?

Denzel Curry - 上手く行ったよ!ちょっと大変だった部分を除けば、良いライブだったと思う。もっと上手く出来た気もするけど、とりあえずは凄く良かった。

- 観客の反応が良かったと感じる曲はありましたか?

Denzel Curry - 実際、いろんな曲で良い反応があったけどね。例えそこまで人気じゃない曲だったとしても、自分のラップの仕方とかもね、ライブだと映えることがあるんだ。しかもライブ映えすると思ってた曲がライブ映えしなかったり、クラブ映えすると思ってた曲がクラブ映えしなかったり、いつも驚かされるよ。だから結局やってみるしかないね。

- でもそれがライブをする上での楽しさだったりするのでしょうか?

Denzel Curry - 個人的にはそれは楽しさでもあるんだけど、同時に仕事は仕事だからね。でも俺の仕事は単純だよ。1時間会場にいて、カマして、帰って、シャワー、みたいなね。

- 日本のオーディエンスはどんな感じでしたか?

Denzel Curry - あー!凄く静かだったよ。自分が登場してエネルギーを伝えるまではね。でも一度こちらからエネルギーを投げかけると、みんなもエネルギーを投げ返してくれるから、それが日本のオーディエンスの好きなところかな。日本でライブするのは今回が初めてではなかったんだけどね。

- 前回は2019年でしたっけ?

Denzel Curry - 2018年だね。あの時が初めての日本で、ライブも最高だった。

- 今年の始めにも日本に来てましたよね?あれはFUJI ROCKのためだったんですか?

Denzel Curry - 違うんだ。あの辺りはちょうどタイに1ヶ月半くらい滞在してた時期で、その最後の週に、5時間くらいで日本に行けるってのを聞いたから、タイから日本に遊びに来たんだ。

- そうだったんですね。ちなみに前回は何をしたんですか?

Denzel Curry - えっとーRIZINファイターの平本蓮に会ったよ。彼はかなりクールだったね。友達が彼と繋いでくれたんだ。世界は本当に狭いよね。全員何らかの形で繋がってる。後はサーカスってクラブに行ったし、渡辺信一郎(アニメ『カウボーイビバップ』の監督)にも会った。レジェンドだね。日本をただただ満喫してるよ。超良い感じだね。

- この経験があなたの今後の活動に活きてくることを願ってます。

Denzel Curry - もちろんだよ。確実に何かあると思う。なんていったって、ここでは凄く受け入れられてる感じがするからね。だから日本に来るのが本当に好きなんだ。

- あなたの楽曲のことについて聞かせて下さい。去年『Melt My Eyez See Your Future』を出されたと思うのですが、僕がSNSを見ていたり、友達と話していたりすると、多くの日本のリスナーがあの作品を聴いていて、凄く気に入っていたように思えました。

Denzel Curry - うん、みんなあのアルバム大好きだよね(笑)。本当に凄いよ。なんとなくこうなる気はしてたんだけどね。ビデオにしても楽曲にしても、相当日本の文化に影響されているから。例えば、松田優作とかさ。今俺がこうやってバケットハットとサングラスのスタイルにワイルドな髪型をしてるのは彼の影響だから。

- だとすると「Zel Matsuda」というのは、次の新しい何かなんでしょうか?Instagramにポストしていましたよね。

Denzel Curry - うん、ポストしたね(笑)。いや、でもあれは松田優作がドープ過ぎるから、名前を取っただけなんだ。彼はめちゃくちゃイカしてると思ってて、”X-Wing”のビデオを観たら分かるんだけど、彼の最後の役である『ブラック・レイン』のキャラクターから衣装のアイディアをもらったんだ。そして、今の僕を見たら分かるように、このバケットハットとサングラスは『探偵物語』を含めて彼が色んな所でやっていたハットとサングラスのスタイリングから来てるんだよね。『探偵物語』は知ってるでしょ?日本のドラマの。

- はい、知ってます。

Denzel Curry - 今でも覚えてるのは、彼が出てた映画で『殺人遊戯』と何だっけな…。本当に作品多いね(笑)。あー『最も危険な遊戯』と『処刑遊戯』だ。この3つの映画で彼は同じ役をしていて、格好良い髪型とサングラスをしてるんだけど、それが俺の好きなアニメキャラクターのスパイク・スピーゲル(カウボーイビバップの主人公)に影響を与えてるんだよ。そして、俺も『Melt My Eyez See Your Future』の制作中に、曲作りだけじゃなくてムエタイもしてた(スパイク・スピーゲルもジークンドーをしている)。ムエタイはもう6年間やっていて、だからここに来る前にタイにいたんだ。

- 本当に日本について詳しいですね。私は1997年生まれなんですが、あなたは1995年生まれですよね。正直、僕達の世代だと今みたいな映像作品は知らない人が多いと思うんですね(笑)。ちょっと古過ぎるというか。もちろん僕はいくつか知っているものもありますが、あなたの作品やあなたの活動を理解するために僕達が改めて日本のことを勉強しないといけないのも事実です。ですので、あなたの動きにはかなり注目しています。

Denzel Curry - そうだね。だから変なことも起こるんだよ。前回、日本に来た時、みんなが俺がどこにいるかを突き止めてたんだ。「『Melt My Eyez See Your Future』のアルバムにサイン下さい。」って言って来るのが1週間で何回かあったよ。そういえば『Melt My Eyez See Your Future』のフォントは『新機動戦記ガンダムW』から取ってるんだ。

- うわーそこからなんですね!

Denzel Curry - あのアルバムには色んな要素が込められてるよ。”Walkin”は『スター・ウォーズ』と混ざったマカロニ・ウェスタンでしょ。というのもあのアルバムは基本的に『7人の侍』とか『乱』、『用心棒』、『椿三十郎』みたいな三船敏郎の映画から影響を受けてるんだ。実際に”Sanjuro”って曲もあるし、”Zatoichi”って曲もあるし、三十郎と座頭市は映画で共演してたりもするから、それをアルバムで表現したかったんだ。もっと言うとコロナの隔離期間の時に、俺はみんながこの世界で孤独なんだと感じたんだよね。だからちゃんとこの文字通り腐敗してて、不潔で、最低な世界を見せたかったし、同時にそんな世界で全てに立ち向かう1人の人間を描きたかったんだよ。それがこのアルバムなんだ。影響を受けたもの、参考にしたものを取り入れて、ただそのキャラクターを演じるだけじゃなく、俺の趣味であり、俺の好きなものを1つにまとめたかったんだよ。伝わるかな。

- なるほどです。個人的にずっと気になっていたのは、今趣味ともおっしゃってましたが、どうやって日本文化について学んだのでしょうか?凄く時間を費やしてるはずですよね。

Denzel Curry - えっと、基本的には1つのものから始まるんだ。自分が既に好きなものがきっかけになって、それが何に影響を受けたのか調べるんだよ。そして、「じゃあこれは何に影響を...これは...これは...」って感じで徐々にたどっていくんだ。『スター・ウォーズ』だとしたら「何が『スター・ウォーズ』に影響を与えたんだろう。あっマカロニ・ウェスタンか!じゃあ『続・夕陽のガンマン』、『荒野の用心棒』、『夕陽のガンマン』を観てみよう。」みたいなね。で、これって結局「ジェダイ」の感じでしょ?しかもジェダイは完全に侍文化だし。確か、George Lucus(『スター・ウォーズの作者』)がドキュメンタリーで「三船敏郎がオビ=ワン・ケノービを演じたがっていた」と言ってたんだ。それを観たのがきっかけで、三船敏郎の映画を全部観たんだよ。それでめっちゃヤバい映画じゃんってなったんだ。「シュッ、シュー(剣を振り回す仕草)」みたいな(笑)。

- (笑)。

Denzel Curry - つまり、そういうのを自分のビデオのセットとかに取り込んだわけだ。だから基本的には「何が何だったのか」を遡っていく作業なんだよね。ハン・ソロの前にはクリント・イーストウッドがいて、オビ=ワン・ケノービの前には三船敏郎がいて。セルジオ・レオーネと黒澤明は同じ時代の人達だけど、初期の『用心棒』と『荒野の用心棒』は同じ映画だったから、黒澤がSergio Leoneを訴えて勝ったんだ。それで黒澤が「何が問題だったの?」って聞かれた時に「良い映画なんだけど、唯一の問題はあれは俺の映画なんだ。」って答えた。こういう文脈を引用して1つにまとめたんだよ。そして、音楽的な話をすると、Soulquariansを参考にしたよ。QuestloveとかBlack Thoughtのグループ、The Rootsとか、Erykah Baduの『Mama’s Gun』とかも参考にした。Kanye Westの『Graduation』もかなりデカいね。あとは、もちろん90年代のブーンバップヒップホップもだね。更に言うとアニメの影響もあるよ。『サムライチャンプルー』とか『カウボーイビバップ』は楽曲制作において重要な役割を果たしてる。自分が日本文化に興味を持ったきっかけは、みんなと同じような感じで、アメリカの多くの黒人の子達ってアニメが凄く好きなんだ。何を感じてるのか分からないんだけど、ただめっちゃ好きなんだよね。日本の文化と黒人の関係って説明が難しいけど、俺達は手を取りあってるんだよ。『Boomdocks』とか『サムライチャンプルー』を観ても分かるよね。

- 『Melt My Eyez See Your Future』でお気に入りの曲はどれですか?

Denzel Curry - それは”X-Wing”だね。

- ”X-Wing”は凄く良いですよね。僕も好きです。個人的には、一番最初に聴いた時”Sanjuro”が凄く衝撃的でした。僕はMF DOOMが大好きで、正にKing Geedrah(キングギドラ)に関しても言及してましたよね。あれはMF DOOMに向けたものですか?

Denzel Curry - そうだね。MF DOOMの引用でもあるし、ゴジラシリーズのキングキドラっていう日本の要素でもあるよ。俺は5歳くらいの時から『ゴジラ』を観て育ったんだ。

- 5歳ですか。

Denzel Curry - そう、お父さんがテープを全部持ってたんだ。

- 多分僕は一つも見たことがない気がしますね…。

Denzel Curry - 『ゴジラ』一度も観たことないの!?

- いやいや、『ゴジラ』自体は観たことあるんですけど、実際のテープは…

Denzel Curry - 昔の『キングコング対ゴジラ』観たことないの?『ゴジラ対メガロ』に『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』、『ゴジラvsスペースゴジラ』、『ゴジラ2000』とか!

- 流石です(笑)。本当に好きなんですね。でもそれは何故なんでしょう?どうしてそんなにあなた達を惹きつけるのでしょうか?

Denzel Curry - それはゴジラが超ドープだからだよ!炎をスピットするからね!なんたって巨大放射性トカゲなんだから。

- 確かに。文字通り炎をスピットしますもんね。そのまま、Cold Blooded Soul Bandについてお聞きしたいんですが、実はあなたが『Melt My Eyez See Your Future』のExtended Versionを出した時、もしかしたらそもそもこれがやりたかったんじゃないかと思ったんですね。Cold Blooded Soulバージョンに繋げるためのノーマルバージョンだったと言いますか。

Denzel Curry - なるほどね。やっぱりジャズバージョンのアルバムを作りたかったんだよね。どういう風にアレンジ出来るのか試してみたくて。しかも実際上手くアレンジ出来た。実はこれは僕のアイディアで、最初は頭の片隅に置いてるだけだったんだ。でも、デラックスバージョンを作りたいってなった時に、正直このアルバムは完璧だと思ってるから、もうこれ以上いじりたくなかったんだけど...もう一回聴き直してみて、やっぱり欠点も無いし、丹精込めて作ったアルバムだからみんなにもっとしっかり聴いて欲しいと思って、Cold Blooded Soulバージョンを作ったんだ。しかも1日で作ったよ!

- 1日!?

Denzel Curry - そう、1日。全部、全曲、1日。

- えーそうだったんですね。曲の途中で「Oh this is so angelic(うわー超神々しい)」って言ってたりする部分があったりして、やけに凄く生感があるなと思っていました。

Denzel Curry - うん、曲をよく聴くと俺が結構喋ってたりするのが分かると思うよ。1日で作ったからね。しかも、SEABELTSの『「COWBOY BEBAP」オリジナルサウンドトラック』みたいな菅野よう子が作るオリジナルサウンドトラックっぽい雰囲気にしたくて。ちなみに彼女はアルバムに参加して欲しかった人物でもあるんだけど、アルバムジャケットが『カウボーイビバップ』のジャケットっぽくなってるのもそういうことなんだ。だから、あのBlue Noteのジャズアルバムのオマージュになってる帯も同じように端に付けたかったし、なんなら日本語の帯にしたかった。日本語にしたかった理由は、松田優作の映画と『ルパン三世』の音楽を手掛けてる大野雄二の影響だね。当時は、これらがインスピレーションだったんだ。日本のジャズはイカしてるよ。

- Cold Blooded Soul Bandで日本のバンドであるSHŌGUNのカバーをしたきっかけは何だったんでしょうか?『Live At The Electric Lady』の1曲目でカバーしてますよね?

Denzel Curry - えっあれって日本のバンドなの?俺があの曲をやったのは松田優作の『探偵物語』で使われてて格好良いと思ったからなんだ(笑)。

- じゃあ彼らが日本のバンドだとは知らなかったんですか?

Denzel Curry - サンフランシスコかどこかのバンドだと思ってたよ(笑)だって英語喋ってるから。

- あなたは『Melt My Eyez See Your Future』やあなた自身が見過ごされているとSNSでおっしゃってましたよね?なぜそう思ったのでしょうか?

Denzel Curry - だって、俺は完璧なアルバムをリリースしたのに話題はなんとなく過ぎ去っちゃったよね。そういうアルバムじゃないはずなんだけど。確かにみんなあのアルバムを好きだと思う。でも好きじゃないって人もいるし…よく分からないよね。今回は昔の盛り上がるスタイルとは反対のことをやったのにも関わらず、ライブチケットは全部売り切れたりもするし…そう考えるとあのアルバムはやっぱり完璧でそんなに見過ごされてるわけではないのかな。とりあえず、注目されるためには色んなハードルを乗り越えないといけないと思っていたんだけど、この作品を通して歌詞の力も凄くあるということが実感出来たよ。

- 今、前作は盛り上がるスタイルではないとおっしゃいましたが、ちょうど最近リリースされた”BLOOD ON MY NIKEZ”は盛り上がるスタイルですよね?あの曲を聴いて昔のスタイルに戻っているような印象を受けました。

Denzel Curry - あーこれは、盛り上がる系だね。でもとりあえず一時的だよ!これからどうするかは要相談だね。今となってはどんなスタイルでも出来ると思うから。

- 僕は”BLOOD ON MY NIKEZ”を聴いた時、不満や怒り、やる気と同時に「変化」というのも1つのテーマなのかなと感じました。「変化」は今のあなたが意識していることなのでしょうか。例えば「Change gon' come with this drum, please don't get involved(このドラムと共に変化は訪れる、お願いだ関わらないでくれ)」というラインもありましたよね。あれはどういう意味なのでしょう?

Denzel Curry - まあ、何事もいつかは変化していくものだからね。俺は今出来ることをやってみてるだけなんだ。そしてあのラインに関しては、純粋な言葉遊びだよ!まず「ドラム」ってのは「銃」のことでしょ。そしてその前に「I can make a sham shook, that chopper sing like Sam Cooke(俺はペテン師を震えさせることが出来る、あの銃はサムクックみたいに歌う)」ってラインもあると思うんだけど、Sam Cookeは”A Change is gonna come(変化は訪れる)”っていう曲も歌っているんだ。だから「ドラム(=銃)と共に変化は訪れる」と言ったんだ。「お願いだ関わらないでくれ」に関しては、銃はやっぱり人の人生を変えてしまうからね。そういうことだよ。

- なるほどです。実際にあの部分であなたはフローも変えていたりもしますし、個人的には印象強く残る部分でした。

Denzel Curry - そうだね。俺の切り札の1つはフローだからね。

- あなたは先日、InstagramやTwitter(X)でファンの方々に1位を取るための協力を仰いでいましたよね。あの動きにはどういう背景があったのでしょうか。

Denzel Curry - 俺はみんなで一緒にラリーを繫いで行きたいんだよ。そうすれば自分1人で頑張り過ぎなくて良いからね(笑)。何ていうか、「メインストリームに行かないとそれは出来ないよ」みたいなことを変えようとしてるんだ。なんでナンバーワンになるためにメインストリームである必要があるんだ?俺は俺である事を捨てることなくナンバーワンになれると信じてる。同じようなことは沢山あるよね。もし特定の見られ方をしたければ、何かを少しずつ犠牲にしなければならない。でもそうなると自分の制作が楽しくなくなる。それがアーティストってものでしょ?


- それはそうだと思います。具体的にファンの方々に何をして欲しいとかはありますか?

Denzel Curry - もうみんなはやってくれているよ。だからもし俺を応援してくれているなら、それを続けて欲しいんだ。基本的にはそういうことだね。でも俺はいつもTwitterで落ち込んで馬鹿なことを言ったり、いつも同じことばかりツイートしてファンを怒らせたりして、みんなを遠ざけてしまってる。だから、文句とか泣き言とか言い過ぎだってことで、いつ「あーもうこいつのことは好きじゃないわ」ってなってもおかしくないんだけど、でもそうなるのは俺がみんなのことを気にかけてるからなんだ。俺は気にし過ぎるんだよね。自分が発信したものに対して何が起こるのか相当注目してしまうし、それで上手く受け入れられなかったと感じた時、どう反応して良いのか分からなくなる。俺は凄く敏感なんだよ。つまり、俺には「いつも理解されてない」っていう感覚があって、それがキレてしまう原因なんだよね。よく「もっと上手く出来るよ…」とか言われることもあるんだけど、もしそれが俺への励ましだったとしても、俺に指示するなって思ってしまうんだ。でも同時にそれは、自分のことを良く思ってくれている人を差し置いて、ヘイトばかりに目を向けてしまってるってことでもあるよね。やっぱり俺はどうしてもそういう人達を一緒くたに見てしまうんだよ。だから多分俺は本当にただ曲をリリースして、その後は自分の生活を過ごすべきなんだと思う。

- 最近は精神的には良くなっていますか?楽曲制作は精神的な助けになるのでしょうか。

Denzel Curry - 精神面はね、いい感じだよ。不満もないし、精神的に苦しんでることもない。セラピーのあのたまごの殻の中に入っていくような感覚が嫌になって、自分の生きたいように生きようと思ったから、もうしばらくセラピーにも行ってないしね。音楽に関してはそうだね...音楽は良いと思うよ。でも俺は音楽をやり過ぎてる。もちろん音楽を作って楽しむことは好きなんだけど、曲をリリースしてしまうともうその曲は好きじゃない。もう聴きかえすことはないね。いつも自分だけしか聴くことが出来ないタイミングで聴いて、「あ〜めっちゃヤバいわ!」ってなってるんだけど、でも一度リリースしてしまうと、もうあんまり興味なくなっちゃうんだ(笑)。

- そろそろ新しいアルバムは聴けるのでしょうか?

Denzel Curry - それは言えないね。君の目論見は分かってるよ。ジャーナリズムのスキルだね。でもそうはいかないよ。俺はKanye Westを探してるんだ。どこにいるんだ?この辺(東京)にいるはずだよね。

- そうですか、わかりました(笑)。あっでは「ULTRAGROUND」についてお聞きしても良いですか?

Denzel Curry - おっ「ULTRAGROUND」は俺とKey Nyataで作ったコミュニティだよ。基本的には俺とKeyは音楽を作ってるんだけど、そこからファッションだったり、アート、スケート、格闘技だったりに派生する、凄く広いコミュニティなんだ。だから、活動は何でも良いからさ、俺達のことが好きなら一緒にやろうぜ。

- 僕があなたの活動スタイルの中で好きなポイントの1つが、新人アーティストとの動きなのですが、MIKE DIMESやArmani White、JELEEL!とかと楽曲を制作してますよね。実は今回が僕にとって人生で2度目のUSアーティストへのインタビューでして。そして、ちょうど数ヶ月前に行った初回の相手が、JELEEL!だったんです。

Denzel Curry - おっ彼日本に来てたの?

- いや、オンラインで実施しました。そして、実はそこで”SHOTS! (WITH DENZEL CURRY)”の話になりまして。彼はあなたのことをクールなやつだと言っていました。実際、あの楽曲では2人の化学反応が感じられましたよね。

Denzel Curry - JELEEL!は好きだね。JELEEL!は今まで会ってきた中でも相当クールなやつだよ。彼にmidwxstにMIKE DIMESもね…MIKE DIMESに関しては『Melt My Eyez See Your Future』のツアーに参加してもらったね。とりあえずJELEEL!は凄く良いやつだよ。彼とはジムで何回かスパーリングもしたし、クラブもスタジオも一緒に行ったよ。

- JELEEL!とスタジオに入るのはどんな感じでしたか?

Denzel Curry - いや!それがさ!JELEEL!とスタジオで音楽作るのは、まじで面白いよ(笑)。だって彼は最高すぎて、誰にも太刀打ちできないものがある。実は彼は音楽業界には慣れてないから、俺とか友達のShawn Kで助けてあげたりもしてるんだ。例えば、彼がリリース前にアルバムを聴かせてくれたことがあったんだけど、曲も全て格好良くて、アフロビーツにも挑戦しようとしていたから、「絶対やったほうが良いよ。他人の意見なんて聞かなくて良い。お前は多彩なんだから、そのレンジの広さを見せてやれよ。」って言ったりしたよ。

 - 最後に日本のファンへのメッセージがあれば頂けますか。

Denzel Curry - 俺は戻って来るよ!最高の状態で戻って来るつもりだ。ヤバいやつもっと持って来るから楽しみにしてて!みんな大好きだ、またね。こんにちはビ○チ達!

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