【メールインタビュー】SebastiAn 『Thirst』|心から好奇心を持つこと

00年代後半よりフレンチエレクトロの一大ムーブメントを起こしたレーベルEd Bangerに所属し、SAINT LAURENTのコレクション音楽でも知られるSebastiAnが、デビュー作『Total』から8年ぶりとなるニューアルバム『Thirst』をリリースした。

Frank Oceanとのコラボレーションなどを経て、満を辞してリリースされた『Thirst』では、これまでの彼の代名詞であったアッパーなエレクトロサウンドに加えLootaやBaker、Sydなどの新たな才能を多く招き、新機軸を作り出している。そんな同作をリリース直後のSebastiAnに、FNMNLがメールインタビューを敢行した。

取材・構成 : 山本輝洋
写真 : Ella Herme

 - 今回はインタビューにお応え頂きありがとうございます。今作のサウンドは今までのSebastiAnらしいアッパーさもありつつ、現行のトレンドとリンクしアップデートされているように感じます。まず始めに、今回のアルバムタイトル『Thirst』はどのような意図で付けられたものですか?

SebastiAn - 僕は「一般的な」テーマが好きなんだ。言葉が、様々な違った意味を持つことが出来るようなね。のどの渇き、力、愛への渇望…そういったフィーリングが好きなんだよ。

 - 今作ではSydやBaker、また日本からはLootaなど若手のアーティストがフィーチャーされていますが、それぞれどのような理由でゲストに呼んだのか教えてください。

SebastiAn - 彼らを選んだことにある程度の意図はあったかもしれないけど、実際に「決定」をした訳ではないんだ。それは単に旅をして、アーティストたちと出会う中で起こったことだ。ビートを作り始めて、コラボレーションを始めた時は、これがアルバムになるとは思わなかった。何曲か完成した後、アルバムが形になりそうだと気付いた。それから、大好きなアーティストたちに会いに行ったんだよ。

 - 前作『Total』のアートワークは二人のSebastiAnがキスをしている印象的な写真ですが、今作では一転して自分が自分を殴る写真となっています。この変化にはどのような意味が込められているのでしょうか。

SebastiAn - 『Total』の時は、アーティストの「エゴ」をアイロニックに表現したかったんだ。Facebookが始まって、エゴは何処でも育って来ていると感じた。それから8年が経って、僕たちはTwitterやInstagramを手にいれた…自分を愛しすぎると、最後に悪い結末が待っている可能性があるという事実を表現したかったんだ。最初から繋がっているってことは「楽しい」だけの物ではないし、実生活においても、これらのエゴは全て重くなっていくからね。

- 前作から今作の間の大きな出来事として、Frank Oceanのアルバム『blonde』への参加がありますよね。彼との制作はどのようなものでしたか?また、その経験が今作に影響を与えた部分はありますか?

SebastiAn - Frankと仕事をしたことは、制作の違った方法を知ることやユニークな人と会うための素晴らしい機会だったよ。彼はクリエイションの過程において、信じられないほど自由な人だと感じた。その感覚は、確実に僕にも影響を与えたね。

 - あなたのレーベルメイトのJusticeや、同時期に活動したBoys Noizeも最近Frank Oceanとコラボしてますよね。また、フレンチエレクトロのプロデューサーが現行のトラップに接近する例や、反対に今の若いヒップホップ/R&Bアーティストがフレンチエレクトロをフェイバリットに挙げることもあります。あなたも含むフレンチエレクトロのアーティストが、長いキャリアの中で最先端のサウンドを作り続けることが出来る理由はどのようなものだと思いますか?

SebastiAn - 特別な理由は無いよ。心から好奇心を持っていること、多分それで十分なんだ。

 - 現在のフレンチエレクトロのシーンはどのようなものになっていると感じますか?

SebastiAn - まず、僕自身は今のフランスの若い世代がどんな方向に向かっているかよく分からないんだ。僕の世代にとっては、全てをただ楽しんで、少し本能的になったって感じかな。

 - 普段楽曲を作る際はどのようなものからインスピレーションを感じますか?

SebastiAn - それが分かってしまったら、曲を作ることはしないと思うね。誰も知らない方が良いものが出来る。ただ自然に「出てくる」だけなんだ。

 - 今年の5月にはギャスパー・ノエ監督による“Thirst”のMVも公開されました。あなた自身もカメオ出演されていますが、ビデオの撮影はいかがでしたか?

SebastiAn - ギャスパー・ノエは10年来の友達だよ。彼の仕事はいつも信じられないくらい素晴らしいよね。撮影はクレイジーで、殴り合いをしている役のうち何人かは本物の格闘家なんだ。最初の撮影では顔に酷いパンチが入る緊急事態が発生したんだよ。本当に楽しかった!パンチを受けた人さえ一緒に、みんなで大笑いしたよ。

 - 今回の『Thirst』は8年ぶりのアルバムとなりましたが、次回作に向けたプランなどはありますか?

SebastiAn - サプライズだよ…。

 - 今後コラボしたいアーティストがいれば教えてください。

SebastiAn - 特にはいないかな。素晴らしい人と出会うように、サウンドと出会うことが好きなんだ。

 - ありがとうございました。

SebastiAn - ありがとう!

Info

SebastiAn『Thirst』2019.11.8 on sale 輸入盤&デジタルのみ

【tracklist】

1. Thirst
2. Doorman ft. Syd
3. Movement
4. Better Now ft. Mayer Hawthorne
5. Pleasant ft. Charlotte Gainsbourg
6. Yebo ft. Allan Kingdom
7. Sev ft. Sevdaliza
8. Sweet ft. Loota
9. Sober ft. Bakar
10. Time to Talk ft. Sunni Colòn
11. Beograd
12. Handcuffed to a Parking Meter ft. Sparks
13. Devoyka
14. Run for Me ft. Gallant

related

【インタビュー】Crystal Lake 『CURSE』| アメリカのヒップホップの真逆のことをやる

日本を代表するラウドミュージックバンドとして、世界中で評価されているバンド・Crystal Lake。初期の楽曲を新しいアレンジでレコーディングし直した前作『The Voyages』から約11ヶ月ぶりとなるシングル『CURSE』がリリースされた。

【インタビュー】DYGL 『A Daze In A Haze』|とにかく良い音楽であればいい、シンプルで

このたびDYGLは、内省と音楽的冒険の季節をへて、これまでにないほどオープンで快活、ユーフォリックとさえいえるサウンドを手にした新作『A Daze In The Haze』を発表する。何はともあれまずは、制作の終盤にかけこみで完成させたという“Half of Me”を聴いてほしい。今いる環境に留まりたい気持ちをなんとか断ち切って、「次のところ」へと向かわんとするまさにその瞬間をレジュメした本ナンバーは、コロナ禍でなかなか聴くことの叶わなかったアップリフリティングな「ポップス」である。ノスタルジアに対する否定ではない、むしろ未練を残したような「half of me is still aching inside my head」というサビのラインに、時代精神のすべてが込められている。

【インタビュー】Elle Teresa|等身大の自分がクラシック

Elle Teresaの存在を知ったのは4年ほど前。バンドMs.Machineを始動し始めた頃「Elle Teresaってラッパーがいるんだけど超いいよ。SAI好きだと思う。」と教えてもらい、Youtubeで「ニートTOKYO」を見てみると、フリースタイルについて独自の持論を語る彼女がいた。いまだにマッチョな男社会でもあるヒップホップの世界で作り上げられた流儀について「興味ない」と一蹴する彼女に一瞬でハマってしまった。以後、自分のライブ前に彼女の曲を1人で聴いたり、たまに頼まれるDJで彼女の曲を流したりしたのを覚えている。

most popular

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

Floating Pointsが選ぶ日本産のベストレコードと日本のベストレコード・ショップ

Floating Pointsは昨年11月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Elaenia』を引っ提げたワールドツアーを敢行中だ。日本でも10/7の渋谷WWW Xと翌日の朝霧JAMで、評判の高いバンドでのライブセットを披露した。