【メールインタビュー】YOSA & TAAR『MODERN DISCO TOURS』|ジャンルやシーンにとらわれない、ハッピーなダンスミュージック

渋谷SOUND MUSEUM VISIONで開催されているパーティMODERN DISCOを主催するYOSAとTAARの二人が、YOSA & TAARとしてアルバム『MODERN DISCO TOURS』をリリースした。

ディスコ、ハウス、2ステップ、トラップなどを行き来し、まるで世界各地を旅するような高揚感のある作品を完成させた二人に、FNMNLではメールインタビューを敢行。

アルバムを作る過程やインスピレーション、お気に入りのアーティストなど、興味深い話を聞くことが出来た。

取材・構成 : 山本輝洋

- 『MODERN DISCO TOURS』というアルバムタイトルの通りイベントMODERN DISCOの存在が今作の下敷きになっていると思いますが、イベントの理念が今作のどのような部分に影響を与えていますか?

YOSA - このアルバムにはバラエティに富んだ様々なスタイルのダンスミュージックが収録されていますが、どの曲も作っているときに思い描いていたのはいつもイベントとしてのModern Discoでの風景でした。Modern Discoはタイトルにディスコという言葉を使っているのでディスコイベントだと勘違いされやすいのですが、テクノもハウスもかかるし、R&Bやヒップホップもかかるイベントなんです。ただ共通しているのは、どこかハッピーなニュアンスがあるということ。それはかかっている曲がというより、お客さんも含めたイベント全体の雰囲気がそう聴こえさせているんだと思います。細かいジャンルやシーンにとらわれないハッピーなダンスミュージックというのが、このアルバムにも色濃く出ているのではないかと思います。

- 2ステップを取り入れた“Fever”やAttractionsのTaroをフィーチャーした“Perfect Fire”などからはUKの影響を強く感じますが、現在のUKのシーンにどのような魅力を感じていますか?

TAAR -2ステップはUK発祥の音楽スタイルだけど自然なぐらい日本に根付いてると思います。なので意識的にUKのシーンを踏襲したつもりはあまり無いのですが、僕もYOSAもUKに留学していた事があるので無意識的に影響があったのかもしれない。UKの現在のシーンはReel Peopleが往年のDisco boogieのカバーアルバムを出したのは個人的にグッと来ました。

- “Slave of Love”のマスタリング、ミキシングはMETAFIVEの砂原良徳とゴンドウトモヒコが手がけていますが、二人が作るサウンドのどのような部分が好きですか?

TAAR - 砂原さんとゴンドウさんのペアで、お願いする事に僕らは意味を感じていました。完全に印象論なんですが、セオリーとは違うアプローチから楽曲に対して最善手のアプローチを叩き出し続けるところが最高にカッコいいです。

- 踊Foot WorksやSNEEZEなど幅広いジャンルのゲストをフィーチャーしていますが、今回のフィーチャリングアーティストを選んだ基準はなんですか?

YOSA - とにかく自分たちが純粋にファンで、今一緒にやりたいと思った方々にお声がけさせていただきました。結果ものすごく豪華なラインナップになってしまい恐縮なのですが・・・。皆さん素晴らしい個性を持ったアーティストなので、その個性をオリジナルとは違う方向で活かせるように努めたつもりです。おっしゃる通り幅広いジャンルのゲストですが、このアルバムで聴いてみると統一感が出ている気がするので、努力した甲斐があったと思います(笑)

- MVが公開されている先行シングル2曲はどちらもエモーショナルな恋愛の歌詞ですが、二人でトラックを作るときもそのような情景をイメージして制作していますか?

TAAR - いつもの『Moden Disco』をいつものようにDJブースから眺めてる光景。細部まで思い起こし、追体験しながら今作の曲達のフロアでの機能を想像の中ですが確認しながら作りました。

- 二人で楽曲制作をするときはどのようなプロセスで曲を作りますか?お二人それぞれに役割などはありますか?

YOSA - このプロジェクトをスタートするまでは、お互いここまでしっかりと誰かと共同作業をすることがなかったので、はじめは役割をどう分担すればいいのかを理解するまでに時間がかかりました。部活動の合宿みたいに一週間のうち何日も一緒にスタジオに入ってデモを作ってみたりとか色々試したのですが、結果その時に作ったたくさんのデモは一曲も採用されていません(笑)。試行錯誤を経た結果出た答えが、必ずしも作業の割合を50/50にしなくてもいいんだということ。曲によっては、作業の部分はお互い一人で完結させたものもあります。それでもほぼ毎日コミュニケーションを取りながら作ったものなので、結果ソロで作るものとは違うものができるんですよね。実作業を分担するだけが共作ではないということに気づいてからは、かなりスピード感をもって制作が進みました。

- 『Modern Disco』で招聘していたゲストはFKJ、Dimitri from Paris、Dariusなどそれぞれにメロディへの強いこだわりを感じさせるアーティストが多いですよね。今作もメロディアスでポップなアルバムとなっていますが、今後東京のダンスミュージックシーンの潮流もそのような方向に進んで行くと思いますか?

TAAR - どうなんでしょう…サブスクで自由に音楽を聴く事が出来るから、音楽を聴く最小単位が一人っていう事を強く再認識しはじめててトレンドやカウンターとか関係なく「良いから聴く」。クオリティが高いか低いかそういう音楽家にとってはシビアな審美眼に取捨選択されたものが生き残るシーンになっていくと思います。

- “Under Water City”と“Rain Down”の2曲はアルバムの他の楽曲と比べBPMも遅めのトラップを取り入れた楽曲ですが、現行のヒップホップやトラップでお二人が注目しているアーティストや好きなアーティストはいますか?

YOSA - 僕は普段、どちらかというとハウスやディスコよりもヒップホップをよく聴いていて、トラックやラッパーのフロウなど音楽的な部分はもちろん、そのリリックや生き様に影響を受けることも多々ありますし、はたまたUSヒップホップアーティストのマーケティングの手法にもすごく興味があります。最近好きなアーティストはTaeyong Boy、Tohji、Leon Fanourakis、それからお会いしたことはないのですが同じレーベルメイト(bpm tokyo)であるGOBLIN LANDとDos Monosはめちゃくちゃ気になっています。特にGOBLIN LANDの“KANSAI SEKAI”がでた時は久しぶりに衝撃で腰砕けました(笑)ちなみに個人的四半期ベストはTaeyong Boyの“DOGS feat. WILYWNKA”です。Chakiさん最高!

TAAR - 実は、"Under Water City"は 4/4でBPM120だったり実はそんなに遅いBPMじゃない。むしろヒップホップ的解釈だと早かったりする曲でして。もし遅く聞こえるのであれば、狙い通りでとても嬉しいです。新しいビート感っていうのを出せたと思いますし勝手にビートジャックしてラップ乗っけてくれたら嬉しいかも。

- アルバムタイトルや“Take Off”で始まり“Transit”で終わる構成など、「旅」をテーマした構造の作品になっていますよね。#5、#6のタイトルにはそれぞれロルシュとカスバという都市の名前が含まれていますが、その2つの都市をタイトルにしたのはどうしてですか?

YOSA - 三十路にもなってあまりにもファンタジックで壮大なコンセプトで恥ずかしいのですが(笑)、ミラーボールに乗って様々な世界・異世界を旅するというのがアルバムのテーマになっています。”Work in Lorche”は、僕が大好きなDJであるGerd Jansonが運営しているRunning Backというレーベルの本拠地が元ネタです。曲調としてもそのレーベルの音にだいぶ影響を受けたので。

TAAR - “Dance in Casbah”はご存知The Clashの名曲 “Rock in Casbah”から来てます。そもそもこの曲自体がRockとDiscoの架け橋になってる曲だったり、16世紀北アフリカのイスラム要塞都市で富の象徴だったり。“Perfect Fire”で出てくる”Kingdom”という歌詞所から着想を得てたり。色んなインスピレーションの中から作った曲です。

- 今作に続いてYOSA & TAARでアルバムを作るとしたら、次のアルバムはどのようなものにしたいと思いますか?

TAAR - 先ほどの答えの続きの様になりますが、今も昔も変わらず良いものを作り続けたいです。そういうアルバムを作ります。

- ありがとうございました。

インタビューにあわせて、アルバム制作にあたり影響を受けた楽曲を収録したSpotifyプレイリストも公開となっている。こちらもあわせてチェック。

INFO

タイトル:Modern Disco Tours

品番:BPMT-1016

レーベル:OMAKE CLUB / PARK / bpm Tokyo

発売日:2019/03/27

Track List:

01. Take Off

02. Red ft. eill

03. Slave of Love ft. 向井太一 & MINMI

04. Perfect Fire ft. Taro from Attractions

05. Work in Lorsch

06. Dance in Casbah

07. Under Water City

08. Rain Down ft. SNEEEZE

09. Fever ft. SIRUP

10. HIKARI ft. 踊Foot Works

11. Transit

 

SNS

・YOSA & TAAR
YouTube : https://www.youtube.com/channel/UCKwtTqb2Sfh-9xbN3967mAQ

・YOSA
Twitter : https://twitter.com/YOSA_TOKYO
Instagram : https://www.instagram.com/yosatokyo/

・TAAR
Twitter : https://twitter.com/TAAR88
Instagram : https://www.instagram.com/taar88/

RELATED

【インタビュー】JAKOPS | XGと僕は狼

11月8日に、セカンドミニアルバム『AWE』をリリースしたXG。

【インタビュー】JUBEE 『Liberation (Deluxe Edition)』| 泥臭く自分の場所を作る

2020年代における国内ストリートカルチャーの相関図を俯瞰した時に、いま最もハブとなっている一人がJUBEEであることに疑いの余地はないだろう。

【インタビュー】PAS TASTA 『GRAND POP』 │ おれたちの戦いはこれからだ

FUJI ROCKやSUMMER SONICをはじめ大きな舞台への出演を経験した6人組は、今度の2ndアルバム『GRAND POP』にて新たな挑戦を試みたようだ

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

WONKとThe Love ExperimentがチョイスするNYと日本の10曲

東京を拠点に活動するWONKと、NYのThe Love Experimentによる海を越えたコラボ作『BINARY』。11月にリリースされた同作を記念して、ツアーが1月8日(月・祝)にブルーノート東京、1月10日(水)にビルボードライブ大阪、そして1月11日(木)に名古屋ブルーノートにて行われる。