夢の音楽フェスはなぜ大失敗してしまったのか | Netflixのドキュメンタリー『FYRE/夢に終わった史上最高のパーティー』が解き明かすその実態

2017年に開催され、史上最悪の大失敗に終わった音楽フェス『Fyre Festival』の実態を追ったドキュメンタリー『FYRE/夢に終わった史上最高のパーティー』がNetflixにて配信されている。

『Fyre Festivel』はラッパーのJa Ruleが企画に参加し、Kendall JennerやBella Hadidなどの人気モデルを起用した広告をきっかけに大きな注目を集めた。

イベントはバハマの島を貸し切り、豪華な宿泊施設やグルメ、マリンスポーツ、そして音楽を楽しめるという触れ込み。出演陣はG.O.O.D. MusicのアーティストやMajor Lazer、MIgos、Disclosure、Lil Yachty、Blink-182、Kaytranadaなどが当初予定されており、多数の著名人を媒介にした巧みなマーケティングで100万を超える高額なチケットも完売となった。しかし実際は粗末な食事や設備、相次ぐアーティストのキャンセル、そしてあまりにも杜撰な運営が問題となりフェスは中止に。主催者である起業家のBilly McFarlandは詐欺罪で実刑判決を受けた。

ドキュメンタリーでは、最高のフェスになるはずであった『Fyre Festival』がなぜ最悪の結末を迎えてしまったのかが克明に描かれている。優秀なビジネスマンと才能のあるスタッフが集結したはずが、最初から何かの歯車が食い違ってしまっていることが伝わって来る。トップモデルを集めて行われるトレイラーの撮影はまさに乱痴気騒ぎ。美女たちを囲い酒とマリファナを楽しむMcFarlandとJa Ruleの様子を見て、イベントの成功を信じる者はいないはずだ。幾度も繰り返されたミーティングでは様々なジャンルのエキスパートたちが問題点を指摘するが、McFarlandは彼らの意見を聞き入れようとしない。彼の頭の中にあるのはイベントが成功するビジョン、そしてその功績によって名声を得る計画のみなのだ。冷静な視点を持つスタッフたちは続々と解雇され、彼の周りにはイエスマンのみが集まるようになってしまう。そのような病理を抱える組織は必ず崩壊するのが世の常だが、『Fyre Festival』はその典型的な例と言える。

フェスの本番が刻一刻と迫っていく中、準備は突貫工事で進められてゆく。当初予定していた島の使用は不可能となったため近隣の島の一部を借り、Photoshopであたかも一つの島であるかのように加工した。来場者が泊まれるはずだったヴィラも用意出来なかったため、防災用のテントにベッドを設置して代用(後に雨でびしょ濡れに)。観客が島を訪れるために乗るはずだったプライベートジェットも用意できなかったため、普通のジェット機に「FYRE」のロゴを入れることでなんとかごまかした。しかし実情がチケット購入者の伝えられることはなく、当初の広告が立派な詐欺と言える域にまで突入してしまう。そのような行き詰まった状況の中、なんとか期日までにフェスをでっちあげようとするスタッフたちの懸命な努力が泣かせる。とうとう迎えたイベント当日、何も知らずに詰め掛けた観客は一体どうなってしまうのか…。

イベントの企画や運営に関わったことがある人、なんらかの組織をまとめる立場にある人がこの作品を見れば胃が痛くなるに違いない。

そして今作で最も痛烈に批判されているのは、消費者の欲求に働きかけて実体の無い虚像を売りつけるインフルエンサーマーケティングの構造である。調査や計算が不十分なままイメージだけを先に提示して失敗した『Fyre Festival』、ひいてはビジネスでの成功やラグジュアリーなフェスの構想を描く内に自らを見失ってしまったMcFarlandを、作中のある人物は「インスタの実現」だと評する。イベントの顛末を通じて、「『Fyre Festival』的な現象は我々の身近なところで今も進行を続けているのではないか?」という疑問を今作は投げかけているのだろう。

ちなみに、イベントの共同主催者であるJa Ruleはドキュメンタリーの配信を受けて、自身のTwitterにて「俺も被害者の一人だ」「俺のビジョンは間違っていなかった」といった主張を繰り返している。

2年前に終わったはずの『Fyre Festival』だが、ここからまた何か一悶着起こる気配だ。

単なる音楽フェスの失敗談には止まらない『FYRE/夢に終わった史上最高のパーティー』は、現在Netflixにて配信中。予告編はこちらから観ることが出来る。

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