【インタビュー】Buddy | LAの新星ラッパーとPharrell、コンプトン、ファッション

10月にPharrellのレーベルi am OTHERに所属するLAのラッパーBuddyが初来日を行った。今年リリースしたアルバム『Harlan & Alondra』では伝統的なGファンクのスタイルからR&B、そしてモダンなトラップ以降のラップチューンまで多彩なスタイルの中で、しっかりと地に足のついたスキルを披露していたBuddy。

アルバムの中からGuapdad 4000をフィーチャーした"Shameless"のミュージックビデオを公開したばかりの彼の、来日時のインタビューをお届けする。

質問作成 : Tetsuro Wada

通訳:Kana Muramatsu

- 10代の時にPharrellのレーベルi am OTHERとサインしたとのことですが、どのような出会いだったのでしょう?

Buddy - 友達のスコット・ヴェナーがPharrellに紹介してくれたんだ。それまで作り貯めていた曲をたくさん聴いてもらったら、カッコいいって、俺のことをマイアミまで連れて行ってくれて、契約して、一緒に音楽を作り始めたんだ。「ヤバイ、Pharrellだ!タイトにキメないと!」って思ったよ。クールに、冷静を保とうと必死だった。

- Pharrellとはあなたにとってどういう人物ですか?

Buddy - アーティストを育てるという雰囲気がすごかった。ありとあらゆる素晴らしいセッションの場にいさせてもらえて、たくさんのものを見て聴かせてもらった。Pharrellが数枚アルバムを作る工程も全て見せてもらったし、Pharrellは俺をたくさんのセレブや俺を成長させてくれることになったアーティスト達に紹介してくれた。自分を売り込むにはどうすればいいか、なんでも経験すべきだとか、本当にその世界に入らないとわからないことって多いだろ?この業界のことを理解する手助けをしてくれたんだ。シーンの裏側を覗き知るためのベールをはいでくれた、とでも言えばいいかな。

- アルバム『Harlan & Alondra』では地元のG-Funkスタイルから、モダンなR&B、ハードなラップチューンと様々なスタイルのあなたを楽しむことができますよね。どのようにこういった多彩な作品になっていったのですか?

Buddy - 自然の流れだよ。本当に素晴らしいプロデューサー達と一緒に作り上げていったんだ。ボローディ・ブラウン、Mike & Keys、ルーフィオー、1500 or Nothin’ (フィフティーンハンドレッド・オア・ ナッシン)。だから毎日ガンボを作ってる感じだった。スタジオに入って、その場の雰囲気やあるものから作り上げていく。絶対に間違いないと思える確信があって作り始めた気持ちのままに曲を完成させていく。アルバムに収録された曲は、絶対に収録されるべきだと確信した曲ばかり。収録されなかった曲はみんな中途半端なもの。たくさん曲を持ってた白人のプロデューサーとも作ったりしてたけど、他に完成させなきゃいけない曲があったりさ、結局お蔵入り。とにかく、「これだ!」と直感で思う曲ってあるもんなんだ。それを収録しただけ。何かを意図して作ったってことはないんだ。スタジオに入って、「今日はGファンク作るぞ!」とか「R&B、ヒップホップアルバムを作るぞ!」とか、そんな感じではなかった。ただ、みんなで曲を自然に作り始めただけ。

- OutKastに大きな影響を受けたとのことですが、あなたにとっての彼らの魅力とはどのようなものでしょうか?

Buddy - そうそう、Outkastはグループとしてすごく個性的だろ。Andre 3000はAndre 3000、Big BoiはBig Boi。それぞれ個性的だけど、まさにこの2人がOutkast。そういうところさ。

- カリフォルニアで生まれ育った中で、今思い浮かぶ最も印象的な楽曲はなんですか?その楽曲が思い浮かんだ理由を教えてください。

Buddy - 自分の”Trouble On Central”だね。まさにコンプトンのセントラル・アベニューであらゆることをした。毎日ガソリンを入れてたガソリンスタンド。ガソリン代がなければ、車壊したり、そこからすぐ側に住んでたし、警察に車を停めさせられたり、そのガソリンスタンドで仲間が死んでたり、セントラル(アベニュー)ではあらゆるトラブルがはびこってた。すぐにこの曲が浮かぶ。

- ”Black”はトランプ時代のアメリカにとって大きな意味を持つ楽曲かと思いますが、オバマ後のアメリカと比べてどのような変化が起こったと感じていますか?

Buddy - 正直、(それを語るには)無知すぎる気がしている。現状起こっていること全ては知らないし、インスタの俺のタイムラインで色んなことを教えてくれたり、話してくれたりする人達も多いけど、正直、今俺は自分のキャリアを築くので精一杯。世界中を回りながら、スケジュールをこなし、やるべきことをやるだけで時間が過ぎていっている。だから(その質問に答えるには)時間を作って、本当に何が起こっているのか探って知って知識をつけないと答えられないな。ただ(無知のまま)「トランプなんてクソ食らえ」とか「カニエが(トランプの)帽子被ってる」とかそんなことは言いたくないんだ。

- ヨガも行っているそうですが、瞑想などから楽曲のインスピレーションを得ることはありますか?

Buddy - 背中、腰は痛いし、肩も痛い(笑)。自分を正気に、自分の気持ちを落ち着かせるためにやってるんだ。腰痛いーって思いながらラップできないだろ?(笑)。いつでもどこでも身軽に動き回れるように準備しとかないと。背中も腰も痛くて、ボキボキいわせながら出来ないから。だから(パフォーマンスするのに)体が楽に動けるように準備するだけ。バースを考えるためにヨガをしてるわけじゃない。逆にヨガをしているときには、何も考えないようにしている。

- ファッションで気を使っているポイントはどこですか?

Buddy - とにかくクールなTシャツが欲しい。今、Tシャツを集めてんだ。Tシャツにパンツ。シンプルなのが最高さ。

- 日本のファッションには興味ある?

Buddy - すげぇ興味あるよ。ただなかなか手に入らないとこがな。オーダーしても届くのに時間かかったり、全く手に入らなかったり。入手困難なのが辛いけど、今は日本にいるからたくさん仕入れて帰りたいと思ってる。だってアメリカじゃ売ってないから。エクスクルーシヴって感じだろ!最高!YAY!

- 同世代やさらに下のラッパーなどはクラウトラッパーとも言われるSNSで派手に活動するタイプのアーティストも多いですが、あなたはそうしたアーティストとは一線を画しているように思えますが、SNSの功罪についてはどのように考えていますか?

Buddy - 自分と毎日のように会ったり、一緒に時間を過ごしたりすることが出来ない人達が、自分の素の表情だったり、パーソナリティを感じることが出来る素晴らしい機会を与えてくれる良いツールだと思う。でも悪いのは、それによって自分を見失うこと。ありのままの自分を隠して、全くの別人を作り上げて、偶像を見せるようになる可能性があること。そうやって自分を見失ってる奴ら本当に多いよな。最悪だよ。ヘアカラー、フェイス・タトゥー、グリルした奴らが下着姿で好き放題やったりさ。エンターテイメントだよね。楽しいだけ。リアリティTV覚えてる?前はTVの中だけだったのが、今はそれがリアリティ=現実になってる。みんながそのリアリティを生きてる。みんなフェイクばかり。自分の別人格を作り上げて、それを演じている。そういう連中はすぐにわかるよね。別に見たいわけじゃないけど、それが多くの人達のリアリティだから、目に入る。普通に歩いてる連中もみんなシットコムに出演中かと思うくらい。

- いま一番一緒に曲を作りたいアーティストは誰でしょうか?理由も教えてください。

Buddy -(即答で)Beyonce。彼女はファイア!Beyonceはすっげぇタイトだよ。

- ありがとうございました。

RELATED

【インタビュー】5lack 『report』| やるべき事は自分で決める

5lackが今月6曲入りの新作『report』をリリースした。

【インタビュー】BES 『WILL OF STEEL』| 初期衝動を忘れずに

SCARSやSWANKY SWIPEのメンバーとしても知られ、常にアクティヴにヒップホップと向き合い、コンスタントに作品をリリースしてきたレジェンドラッパー、BES。

【インタビュー】CreativeDrugStore 『Wisteria』| 11年目の前哨戦

BIM、in-d、VaVa、JUBEEのMC4名、そしてDJ/プロデューサーのdoooo、ビデオディレクターのHeiyuuからなるクルー、CreativeDrugStore(以下、CDS)による、結成11周年にして初となる1stアルバム『Wisteria』がついに発表された。

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

WONKとThe Love ExperimentがチョイスするNYと日本の10曲

東京を拠点に活動するWONKと、NYのThe Love Experimentによる海を越えたコラボ作『BINARY』。11月にリリースされた同作を記念して、ツアーが1月8日(月・祝)にブルーノート東京、1月10日(水)にビルボードライブ大阪、そして1月11日(木)に名古屋ブルーノートにて行われる。