【インタビュー】BudaMunk & Fitz Ambrose | 『BudaBrose 2』- 都市のビートを紡ぐ
Sick TeamやGreen Butterなどのユニットとしても活動しつつ、ソロアーティストとしても精力的なリリースを続けるビートメーカーBudaMunkと、カナダ出身で現在は東京を拠点に5lackや仙人掌にもビートを提供するFitz Ambroseが、ユニットBudaBroseとして2作目のアルバム『BudaBrose 2』を、本日6/10にリリースした。
90'sのR&Bを全編でネタで使用し、メロウなテイストが漂いつつ、差し込まれるサウンドコラージュなどが、都市のエネルギッシュな空気を喚起させてくれる今作。ビートメーカーとしてのルーツとなる、聴いてきた音楽のベースは共通しつつも、制作のアプローチは異なる2人の柔らかくもソリッドなまとまりを作り上げた作品となっている。
それぞれソロでも活躍する2人にコラボワークの醍醐味や、どのように作品を作り上げていったかを聞いた。
取材・構成 : 和田哲郎
Fitz Ambrose - 大体水曜日に集まって曲を作ってたと思う。
BudaMunk - 今回の作品のためには4回くらいセッションして、その中でできたビートをFitzがまとめた感じですかね。
- 去年『BudaBrose』をリリースしていて、そこからペースも早いと思うんですが。初めて2人で作ったのはいつ頃なんですか?
BudaMunk - 『BudaBrose』はNYのレーベルからは2015年に最初にリリースされてるんで、その前2014年くらいから一緒に作ってたと思いますね。ずっと仲良い友達なんで、よく遊んでたんですよ。その流れで一緒に作るようになったって感じですかね。Dibia$eって奴がLAから来てたときに、うちにずっと泊まってたんですけど、うちで一緒にビートを作ってて、その時にFitzも遊びに来てて一緒に作ったのが最初とかですかね。でもその前の2011年にFitzがリリースしたリミックスアルバムには、おれも参加してるし、Dibia$eもMndsgnも参加してますね。実際会って作るっていうのは2014年くらいから。
- 会って作業する時は、どういう感じで進めていくんですか?
BudaMunk - 『BudaBrose』の時は、うちにFitzが来て作ってたんですけど、その時はおれのMPC2000XLで作っていて、今回の『BudaBrose 2』は、おれがFitzの家に行って作ったんです。FitzはMPC1000を持っているんで、それで全部作りました。曲を作る流れはサンプルを決めて、サンプルをチョップするのはFitzがやって、それでドラムはおれかFitzが付け足していく感じですかね。
- 作品の中でサウンドコラージュっぽくなる部分があるじゃないですか、フィールドレコーディングの音だったり、ビートボックスの音も挿入されたり、それはどちらのアイディアだったんですか?
BudaMunk - それはFitzですね、おれはFitzの家でひたすらビートを作っただけで、あとはFitzに任せて。それでFitzがフィールドレコーディングをしたりとか、ドロップとかエフェクトを足して、作品としてまとめてくれた感じですね。
Fitz Ambrose - 自分の曲もそんな感じだね。ビートを作って、エディットして、ドロップをいっぱい入れて。
BudaMunk - Fitzのスタイルでミックスをまとめてもらった感じですね。おれは作ることだけに専念して。
Fitz Ambrose - エディットに関しては色んなアイディアが浮かぶんだ。フィールドレコーディングもiPhoneでするね。自分でもするし、フランスに住んでる友達とNYの友達もフィールドレコーディングをするから録った素材を送ってくれる。
- そういうスタイルってあんまりないと思うんですよね。
BudaMunk - Fitzのオリジナルのスタイルだと思いますね。
- ビートはディープな鳴りをしつつ、メロウなテイストが共通しているなと思って。あとはベースもすごい動いてるのが多くて。
BudaMunk - ドラムとベースはほとんどおれがやってるのが多いですかね、でも音自体はFitzのMPCに入ってる音でやってる。いつも使ってるおれの音と違うし、アルバムにまとまりがあるのは、ほとんど全部90年代のR&Bのサンプルを使ってるんですよ。2人とも90年代のR&Bがすごい好きで、当時聴いてたんで、いまそれを使って新しいものを作ったら面白いなと思ったんで。サンプルもFitzの家でレコードを聴いて、そこで使うサンプルを決めてって感じでしたね。
- 他の人の機材でやるのはどうでしたか?
BudaMunk - 作るだけのところまでは設定してくれてるので、でも音は自分の持ってる2000XLとは全然違うんで、おれからしたら面白かったですね。
- お互いのビートメイカーとして、どのような部分が違うと感じていますか?
BudaMunk - 口で説明するのは難しいですけど、共通点もあれば全然違うところもありますね。この作品を聴いて、お互いの作品を聴き比べてもらえたら面白いかもしれません。
Fitz Ambrose - ベースの部分は似てるけど、作り方は全然違う。
- あとビートとビートの間の使い方とかも印象的でした。
Fitz Ambrose - そういう手法を使うときは、特に考えてないで、自然なフィーリングだけでやってるね。
- なるほど、あと音作りをする上でインスパイアされるものってありますか?
Fitz Ambrose - いろいろあるね、1番はサンプルの元ネタ。すごいエネルギーが入ってる。けど視覚的なものからもインスパイアされる。おれはデザインとアート、それに映画や写真、それに昔の雑誌がめちゃくちゃ好きなんだ。あと日本のバブル時代の雰囲気が好きで、当時建てられた高層ビルとか車のデザインも好きだね。
- そういう80年代のものとかはどうやってディグしたんですか?
Fitz Ambrose - おれはどこでもディグするよ。下北沢、高円寺、あと神保町の古本屋街も行ってる。綺麗なデザインの本がいっぱいあるからね。そこからフィーリングを得るね。
-Budaさんはいかがですか?
BudaMunk - おれも自然に生活の中からインスパイアは受けてると思うんで、東京っぽいバイブスはすごい意識はしますね。今回の作品で特に意識してっていうことはないですけど、自然にそうなってる部分もあると思うし、東京で作ってるだけで。やっぱりシティーっぽい空気感はありますよね。
- Fitzさんは東京に来る前と来た後では、サウンドのスタイルは変わりましたか?
Fitz Ambrose - ちょっとずつは変わってるとは思う。でももっと新しいスタイルを試したいし、色んなスタイルで作っていきたいね。今はコラボとかもすごいやっていきたい、楽しいね。今はアメリカ出身で群馬に住んでいるビートメーカーで写真家のRepeat Patternと一緒に作ってる。
BudaMunk - このアー写を撮ってくれた人ですね。
Fitz Ambrose - 写真の仕事もいろいろしているんだよね。Ta-Kuと一緒に自分のレーベルもやっていて、そのレーベルからはビートメーカーのYotaroとかYagiの作品もリリースした。Ta-Kuも写真を撮るし。
- 5lackが参加したのは?とても自然な流れだとは思いますが。
BudaMunk - Fitzは最初会った時、日本語ラップはアメリカのラップとフロウが違うので、「あまり聴かない」って言ってたんですけど、5lackと一緒に作った『Budaspace』を初めて聴かせたときに、「これはヤバい」って言ってて。5lackにもFitzのビートやばいよって聞かせたりしてて、その後5lackもFitzのビートをアルバムで使って。今回は日本人のMCを1人入れようって話をしてたので、じゃあ5lackがいいのかなってなりましたね。
- Fitzさんが他の日本人ラッパーと5lackが違うと思ったのはどういう点ですか?
Fitz Ambrose - 声とフロウだね、すごいオリジナル。あと時々5lackはメロディーも歌うし、5lackのフックは大体かっこいいね。
- 5lackを聴いてから、他の日本のラッパーは聴いたりしてますか?
Fitz Ambrose - ちょっとだけ(笑)
BudaMunk - 仙人掌のビートもFitzは作ってるし。
Fitz Ambrose - みんな聴いてみたいけど、おれは好きなラッパーはちょっとだけなんだよね。アメリカには昔のラッパーも、今のラッパーも好きなラッパーはたくさんいるね。例えばアトランタのTHA GOD FAHIM、WestsideGunnも元々はNYだけど今はアトランタに住んでるから、アトランタはトラップだけじゃなくて、色々なラッパーが増えてるんだと思う。あと彼の兄弟のConwayとか、Roc Marcianoも。すごく有名なKendrick LamarもJ.Coleも好きだね。日本だとISSUGI, 仙人掌、5lack, あとBIMも好きだね。BIMは面白いね。あとKANDYTOWNのIOも好きだね。
- Budaさんは最近は?
BudaMunk - 自分の周りの奴が多いですね、ISSUGIくんの『7incTree』とか、あとはKOJOEとAaronのアルバム『ERY DAY FLO』も良かったですね。アメリカだとFitzが聴いてるのと似てる感じですね。あとEvidenceとかPlanet Asia周辺はずっとチェックしてますね。やっぱりトラディショナルなスタイルを今の時代にアップデートしたやつが好きですね。
- またコラボワークの話について聞きたいんですが、相性が良いからこそ一緒にやってるとは思うんですが、具体的にどういったポイントでフィーリングが合うんだと思いますか?
BudaMunk - 元々友達としては、仲よかったけど、やっぱり音楽の趣味ですかね。時代毎に聴いてきた音楽が似てるっていうのはあるっすね。Fitzは80年代から聴いてたし、おれは90年代にどっぷりハマったんですけど。当時は流行ってたヒップホップやR&Bを聴いてただけだと思うんですけど、そこから、コアなヒップホップにはまって。2000年くらいからは、ヒップホップがコマーシャルになってったら、今度はアンダーグラウンドのヒップホップがでかくなったときに、Fitzもおれもアンダーグラウンドのヒップホップをフォローしてて。ビートのシーンが流行ってきたときはもうお互いビートを作ってたので、そのシーンにいて、今に至るっていう感じなんで。それでコアなヒップホップを続けてる人を、おれもFitzもフォローしてるんで。
Fitz Ambrose - そうだね、でもおれはメジャーなヒップホップも好きだからね。90年代後半だったらBig Punとか。
BudaMunk - おれもメジャーでも良いやつは、もちろん聴いてたよ。
- いまアメリカではEDMのブームがひと段落して、またビルボードチャートにもヒップホップが戻ってきてますよね。
BudaMunk - ジャンルというより良い音楽が戻ってきてるのは間違いないと思いますね。Anderson .Paakとか普通にいけてる音楽作って売れてる人が増えてきてる。あとビートのシーンからもKnxwledgeとかMndsgnとかどんどん上にあがっていってるやつがいるんで。良い流れは出来てきてる気がしますね。
- Mndsgnもバンドセットとかでやったり、すごい進化してますよね。
BudaMunk - そうですよね、めっちゃ聴いてますね。
福田(BudaBroseマネージャー) - Fitzのルーツはカリビアンなんだよね。
Fitz Ambrose - おれのママのお母さんはバルバドス出身でパパのお父さんもバルバドス出身だね。だからルーツはバルバドス。バルバドスではレゲエが人気でみんなジャマイカのレゲエを聴いてる。バルバドス出身で一番有名なアーティストはもちろんRihannaだね。
- 最近はカリビアンなテイストの曲も流行ってますよね。
Fitz Ambrose - おれはあんまり作らないけど、聴いてるね。
BudaMunk - カナダもヒップホップのアーティストたくさんいますからね。
Fitz Ambrose - トロントはカナダで一番大きくて、ジャマイカ移民がいっぱいいるから。Drakeとかもレゲエっぽい曲をだすしね。それにNYとも近いからね。
BudaMunk - カナダ出身でアメリカでスターのアーティストはたくさんいるね。
- Fitzさんからは今後のプランは先ほど聞けたので、Budaさんは今後の予定はありますか?
BudaMunk - 特に作品としてまとめてるものというよりは、色んな人と作ってるのがあるので、それをちょっとずつまとめていければ。楽器を弾ける人と作ってるのが多いかもしれないですね。バンドというよりはビートなんですけど、弾いてる部分が多いっていう感じですかね。あとはプロデューサー同士で作ってるのもあるし、Yotaroとの作品はできたのがあるので、あと自分のビートテープもまとめられたらまとめつつって感じですかね。あと16Flipと作ってるのもあるし。とりあえずまとまったやつから出してくって感じですかね。人と作ってるやつは自分のペースだけで進められるわけではないんで、作りためておいて、あとその時間の合間に自分のって感じですかね。
- 2人での共同作業は今後も続けていく?
BudaMunk - そうですね、もう一作出せる分くらいはあると思うし、あとはあるやつの編集作業ですかね。今回の作品は最近作りためたやつの半分くらいだと思うんで、残りもあるし、また足していいの選んで、まとめてって感じですかね。次の作品は色んなアーティストが参加する形になればと思いますね。Onraが来たときも一緒に作ったし、Mndsgn、Swarvy、Keiferと一緒にやったのもあるし。一緒に曲を作るのはプロデューサー同士だと2人が作りやすいかもしれないですね。3人だと楽器を弾ける人がいると、またさらに膨らむ感じはありますね。MndsgnもSwarvyもKeiferもみんな弾けるんで、すごいふくらみましたね。
Fitz Ambrose - 僕の部屋ですごい狭い中でね。そのときは結構作ったね。
BudaMunk - 5~6曲くらい。おれは別で彼らが泊まってたところにも行って、作ってたんで、結構いろいろできましたね。弾ける人がいたら、おれとかFitzはベースかドラム、あとはサンプルに専念して、作った土台に音を足してもらったりしますね。
- 今後コラボしてみたい相手などはいますか?
Fitz Ambrose - いろいろだね、Drake、J.Cole、Kendrick..
BudaMunk - (笑)
Fitz Ambrose - 日本でもコラボしたいね、5lackと仙人掌との仕事はすごくいい経験になった。
BudaMunk - おれはSwarvyとかとタイミングがあえばもっと作りたいですね。その周辺の人たちはイケてると思うので。あとさっき言ったようなMCとできたらやばいですね。
- ありがとうございます。
本日6/10に『BudaBrose 2』発売記念インストアライヴが下北沢のJazzy Sport Shimokitazawa で開催!2人に加えAaron Choulai、WATTER、さらにNORA&FOOL(Jazzy Sport Dancers)によるダンスセッションも行われる。入場無料となっているので、インタビューを読んだ方は足を伸ばしてみては?
BudaBrose “BudaBrose 2” 発売記念インストアライヴ
開催日:2017年6月10日(土)
時間:17:30-21:00
場所:Jazzy Sport Shimokitazawa
入場無料
出演:
Artists : BudaBrose, Aaron Choulai, WATTER
Dance Session: NORA&FOOL(Jazzy Sport Dancers)
〈お問い合わせ〉
Jazzy Sport Shimokitazawa
〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-19-17 3F-A
TEL. 03-6453-2278
Release Info
BudaBrose (BudaMunk & Fitz Ambrose) - BudaBrose 2
Label : King Tone Records / Jazzy Sport,
Cat No : KTRCD-011,
JAN CODE : 4582202051166
File Under : Hip Hop,
Price:2,000 yen (Without TAX)
Track List
01. hitchu / 02. ill tone / 03. fillet / 04. rolli / 05. ice wishes 06. jass fonk / 07. the lavish / 08. bad doe / 09. four barz 10. scully / 11. reppin same thing / 12. we gone / 13. wavetree 14. wavery (ft. 5lack)