【Interview】映画館をライブハウスに! UPLINKが目指す、新しい場所作りとは?
渋谷にあるUPLINKは映画館を中心に、ギャラリー、レストランなどが集まった多目的スペースだ。UPLINKはこれまでも映画館という概念にとらわれることなく、様々な企画を行ってきた。そして今週末10/29(土)に新しい試みとして『LIVE HOUSE UPLINK』がスタートする。これは映画館を1日限定でオールスタンディングのライブハウスにしてしまおうという企画で、第1回目にはライブでラッパーのERAや粗悪ビーツ+DEKISHI、ゆるふわギャング、尾崎友直、DJに荏開津広が登場する。ミニシアターの閉鎖などが相次ぐ中、挑戦を続けるUPLINK。企画をおこなったUPLINKの石井雅之に、LIVE HOUSE UPLINKについてや、新しい時代の場所のありかたなどを聞いた。
取材・構成 : 和田哲郎
- そもそもLIVE HOUSE UPLINKの企画自体はいつからスタートしたんですか?
石井 - 構想自体は2~3年前からあって、劇場の可能性みたいなことをずっと考えていたんですよね。今は映画の上映を中心にしてますけど、映画館がいきなりクルッと違う場所に変わるって、すごいドキドキするなっていうのが自分の中であったんです。これまでもアーティストライブはやってきてたんですけど、それは映画上映に付随したミニライブが多かったし、ライブメインにしても着席した状態で。
僕はUplinkを純粋な映画館だとは思っていなくて、映画もやるし、演劇もやるし、落語もやるし、トークイベントもやるし、カルチャースペースとしていかに多様で楽しいことができるかっていうのを考えてやっているので、その一環としてスタンディングでライブをやってみたいなっていうのは思ってました。東京でいま1番かっこいいと思う人たちを呼んで、ライブをやりたいと。それを2~3年位前から考え始めてて、どうやったらできるのかなって実現に向けて動き始めたのが、去年中頃くらいですかね。
- 構想と同時に今回の出演メンツというのは、頭にあったんですか?
石井 - 個人的にECDをかっこいいアーティストだと思ってて、去年の春に、Liquidroomで行われたP-VINEの40周年記念&キングギドラ『空からの力』リリース20周年イベントを観にいきました。フロントアクトがECD+Illicit Tsuboiで、全部新曲をやったんですよ。しかもMCで「"ロンリーガール"やってって言われて、断った。つかリリック覚えてねえよ」って言ってて、超かっこいいなと思ったんですよね。あんな大ベテランで、求められてることもわかってるのに常にフレッシュな姿勢で立ち向かうっていうのは、制作側の姿勢として、あのときのECDのパフォーマンスは忘れちゃいけないなって思ったんですよね。
なのでECDには、このイベントの姿勢を表明する上で重要だと思い、出演をお願いしました。その後治療入院の報せを受けて、イベント自体の延期も考えたんですけど、開催を決断したのはECDが出れなくても最高のパーティーにすることがポジティブだし、石田さんに少しでも前向きなメッセージとして届けたいというのがあったからでした。
出演アーティストに関しては、東京で今いちばんかっこいいと僕が思っている人たちに声をかけました。それがERAであって、ゆるふわギャングであって、粗悪ビーツ+溺死で。あと、いわゆる「ヒップホップ」だけにはしたくなかったので、荏開津さんには構想の段階から相談させてもらっていて、久しぶりにDJとして復活してもらいます、後ひとり、ギタリストでラップをする尾崎友直さんにも出演をお願いしました。
- 石井さんは元々ヒップホップが好きだったんですか?
石井 - どっちかっていうと、高校や大学の頃とかはロックとかハードコアでしたね。ヒップホップには2000年代後半位からだと思うんですけど、それまでもハードコアと親和性の高いキミドリやECDは大好きだったんですが、あるときヒップホップのフィジカルな魅力に気づいて。それからですね。それで色々聴いていったら、ストリートから出てきてるラッパーたちがフィジカルな言葉でラップしていて、ホントかよってのめりこんでいきました。でもめちゃくちゃヒップホップにハマってるかというと、そうじゃなくてある程度色々なジャンルを見渡してる感じですかね。
- 石井さんがUPLINKに入られたきっかけを教えてください。
石井 - 僕は元々高校まで体育会系で野球部で、運良く甲子園に行ったんですけど。そこで実力の差をまざまざと感じたというか、おれは全然プロにいく素質じゃないなと思って、結構打ちのめされたんですよね。それでそこから先の道を想像したんですけどなんとなく見えるんですよ。野球で大学入って、社会人野球いって、昼会社いって午後から練習して、休日は高級車のワックスとか塗ってるのかなって絵がみえて、すごい気持ち悪くなったんですよね。それで全部辞めちゃったんですよ。
でも今まで野球しかしてこなかったから、全然なにやったらいいかわからなかったし、なにをやっても夢中になれなかった。大学の頃はなにも夢中になれなくて、そのまま卒業して、バイトしかしてなかったんですよね。それじゃまずいと思って、バイトで貯めた金で1年間くらいイギリスに行ったんですよね。イギリスにICAっていう、ギャラリーと劇場とライブハウスがあって、真ん中にバーがあってみたいなカルチャーセンターがあるんです。そこが面白くて、よく遊びに行くようになって、こういう場所を作るのはいいなと思ったんですよね。行くだけでワクワクするというか、何か生まれそうな気がするぞっていうのがICAに行ったときにあったんですよね。
それで日本にこういうところがあればいいのになって思って、東京に行ったらUPLINKがあった、ああここだって。それが2005年くらいですね。で、UPLINKに入って、最初は映画配給部で映画の宣伝をして、その後劇場の編成・企画をやるようになりましたね。
- これまでにはどういう企画をやられてきたんですか?
石井 - 思い出深いのは、インドネシアのパンクバンドのドキュメンタリー『マージナル=ジャカルタ・パンク』で、インドネシアから来日したパンクバンド・マージナルとShing02、テニスコーツのセッションライブ付き上映を企画したり、学生団体SEALDsのドキュメンタリーでデモについてのトーク付き上映を企画したり、今回のような企画に近いものだと落語で「ニューラクゴパラダイス』って企画をやってますね。落語もスクリーンの前に高座を組んで座布団を置いてやっているんですよね。
でも普通に落語をやっても全然ひねりがないから、もうちょっとニューウェーブな落語会にしたいなと思って、出演している落語家さんは同世代で、見てきたものも近くて、彼らは伝統芸能とも言える落語家だけど、エッジでクリエイティブなことをしている人たちと一緒にやっても面白いんじゃないのかなと思って、それでアニメーション作家を呼んできて、あるお題をもとにアニメーション作家は紙芝居を、落語家は新作落語をやってもらったり、映画を見て、それをお題に落語してもらうとか。そういうちょっと変わった企画をして、自分が興味を持っていることに新たな発見をしたり、いままでと違った興味を持つチャンスになればいいなと思ってやってますね。
- 元々UPLINKは自由度の高い企画をやられてますよね、ライブハウスの企画を通して、どういった場所にしていきたいでしょうか?
石井 - 映画ってお客さんの年齢層が幅広くて、10代から60代以上のシニアの方までが同じ空間で同じものを観て共有し、でもそれぞれ違う感覚を持ち帰ると思うんですけど、それってすごく素敵なことだと思うんです。だから常にそういう場を作りたいっていうのはあります。あとは来る人たちを驚かせたいんですよね。昨日までこんな会場だったのに今日は全然違うじゃんとか、そういう常に驚いてもらえて楽しんでもらえる場所にしていきたいと思っています。
- 今回ライブをやるに当たって、ステージと客席の関係はどうなるんでしょうか?
石井 - まだ悩んでるんですよね、フラットにするかステージを作るか。うちの劇場は元々フラットで、そこに平台を積み、段差をつけて椅子をおいてるんですよ。まず椅子は全部取りますよね。平台を移動して、ちょっとだけ高いステージができる予定です。どうですか?フラットの方が良かったりしますか?観にくかったりする心配もあるんですが。
- でも一体感はフラットの方が出やすいのかなって思ったりしますね。
石井 - あーそうかライブハウスだとステージありきだから。
- それに柵とかもあったりするので、お客さんにとって新鮮なのはフラットな方かなと。
石井 - なるほど (笑)そうですよね、開催ギリギリまで考えますね。
- スピーカーも映画館用とライブハウスの音響は違いますよね。
石井 - 元々劇場にはライブ用のスピーカーがあるんですよ、映画は映画で5.1chのスピーカーがあって、どっちも使えるんですよね。なのでその辺は問題ないなと。
- 1回目をやって、今後2回目~3回目も続けていく予定はあるんですか?
石井 - あります、あります。1回やるだけだと会社に企画通らないので(笑)
- 今回の企画でUPLINKを知って、こういう映画とかやってるんだって知る、ヒップホップ好きの人もいると思うんですよね。
石井 - そうなって欲しいですね。繋がるっていうか、音楽好きな人がアーティスト目当てで来て、今度映画でも観に行こうかなみたいな、そういうきっかけの場になればいいですよね。2年前に、ANARCHYの『DANCHI NO YUME』を上映したときに、今まで来たことがないような人たちが、劇場に来てくれて嬉しかったんですよね。上映前に他作品映画の予告かけても普段と違うリアクションが起こったりとかがあって、ANARCHY大好きで映画見に来て、全然違う映画を知るきっかけになるって超いいなと思って。LIVE HOUSE UPLINKはそういう場所になるといいですよね。
- 今渋谷だと単館系の映画館は軒並み閉まっていってるじゃないですか、でも石井さんはまだ映画館という場所で、色々やっていくことで可能性はまだあると思っていますか?
石井 - めちゃめちゃあると思いますよ、「ミニシアターが軒並み閉館して大変じゃないですか?」ってよく言われるんですけど、実際はそんなに状況は暗くないです、今は逆に時代にフィットしている気もします。うちは小さい劇場なので色々なことを不利な状況で戦ってきました。
年末に『見逃した映画特集』という、その年に公開された作品を30本くらいピックアップして、特集上映をしているんですけど、おかげさまで3年やって、成功って言っていいくらい人が入っています。でもこの企画自体、元々は弱者の発想というか、逆転の発想というか、上映作品って公開したタイミングではうちで上映できないことが多いんですよ。もっと大きい映画館で上映されていて、ようやく年末にうちで上映できるんですよ。公開のタイミングでは上映したくてもできない。でも負けたくないじゃないですか、その発想で出来た特集なんですよね。公開のタイミングで上映できない作品、全部集めようぜって発想で始まったんですよね。
そもそも小さいというところでハンディキャップを負っているから、大きい映画館でできないこととか、やらないことってなんだろうって常に考えてやってます。それが根幹にはあると思います。インディペンデントスピリットみたいなのは持っていないとっていう気概はありますよね。今年はほんとにLIVE HOUSE UPLINKを実現させたかったので、それをやって見える景色、その景色をとりあえず見てみたいですね。当日をワクワクして待ってますね、どんな景色になるんだろうなって。しがらみとか常識とか、そういうのは外して、これからも自分のワクワクする気持ちに正直にやっていきたいなと思いますね。
<Info>
LIVE HOUSE UPLINK vol.1
日時2016/10/29(土)19:30開場/開演
料金前売¥2800(ドリンク代別途¥500)/当日¥3300(ドリンク代別途¥500)
会場FACTORY(1F)
ERA
粗悪ビーツ+DEKISHI
ゆるふわギャング
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DJ荏開津広
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