culture
西欧とアフリカを同時に見つめ返す"African-European"の視線——Namsa Leubaのポートレート写真
by Yuki Kobayashi
目に焼き付いてくるような原色で鋭角な模様と、既存のフレームを無視するポージングとコーディネート。Namsa Leubaのポートレートは、わたしたちが幾多の画像の中で見慣れてきた「アフリカ」の姿からの確信犯的なズレを見せつけてくる。
1982年、ギニア人の母とスイス人の父のもとに生まれたLeubaは、 自らのアイデンティティを"African-European"と呼ぶ。西洋とアフリカの間、撮る者と撮られる者の間で交差する視点を、そうした自身の出自への想いと折り重ねつつ、精力的に作品を発表しているフォトグラファーだ。
その写真は、被植民地であった地の人々が投げかけられてきた視線を逆手に取るように、過剰にデフォルメされた土着的で儀式的な要素がちりばめられている。
すでにその先鋭的な作品はI-D、Numero、Foam、Interview、Wallpaper*など多くの雑誌に掲載されている。また、Leuba自身も、グラフィックデザイナーHugo Hoppmannとのコラボで『V.U.C.A. magazine』という自費出版ZINEを発行するといった活動も行っている。日本でも、昨年10月に開催された東京国際写真祭への出展が記憶に新しいところだ。
撮影技術が先進国の主に富裕層に独占されてきた時代は写真史上長く続いたが、カメラテクノロジーとこうしたブラック・アイデンティティが交わる領域は、今、新たな感覚を写真表現にもたらしている。
これまで撮られる対象であった彼らが撮る主体へ変わるとき、「見る主体」の側では何が引き起こされてくるのだろうか。