【インタビュー】 Ryohu『Ten Twenty』 | 過去と未来が、今の自分の現在地

KANDYTOWNのメンバーであるRyohuがミックステープ『Ten Twenty』をリリースした。この作品には、IO、KEIJU、MUD、GottzらのKANDYTOWNメンバーはもちろん、Campanella、in-dといったラッパー、シンガーではWONKからKento NAGATSUKA、AAAMYYY、MALIYA、ビートメイカーとしてEVISBEATS、OMSBが参加することが発表され、リリース前から大きな話題を集めていた。ミックステープ『Ten Twenty』のタイトルについて、Ryohuはこう話す。

10コードっていうアメリカの無線機で使われる暗号があって。その中で10-20(Ten Twenty)が、現在地を知らせるコードなんですよ。そのコードが、今の自分のやってることに合ってるなって。過去を振り返って、未来を見ている、それが今の自分。

去年リリースしたEP『Blur』では客演などなく、トラック作りまでもひとりでこなしてきたRyohu。そんなRyohuがなぜ、多くのアーティストとコラボレーションしたミックステープ『Ten Twenty』をリリースしたのか。今回、ミックステープ『Ten Twenty』の話はもちろん、自身の音楽制作へのこだわりについてなどを、昭和の街並みが残りつつも再開発が進んでいる街、渋谷の桜ヶ丘で話を聞いた。

取材・構成・写真 : 宮本徹

- 『Ten Twenty』をミックステープ形式でリリースした経緯を教えてください。

Ryohu - 去年、EP『Blur』をリリースしたときに、短い制作期間だったせいか、不完全燃焼というか、もうちょっとやれたかなって思ってたんです。自分の中での平均点を上の方に設定してたんで、上回らなかったというか。それもあって、この状態でフルアルバムを出すのは嫌だなって思っていました。あと、EPをリリースしてから、ソロでのライブも増えて、よりライブ構成を意識するようにもなりました。『Blur』は7曲のEPで、曲数的にライブが成立しないから、それより前の過去曲もライブでやったときに、「この曲はもっと爆音で流したい」、「音的に今っぽくしたい」とかライブしながら思うようになったんです。『Blur』の曲自体も「こういう風に流したい」とか。それも含めて、アルバムを出す前のものとして、過去曲をリアレンジしたものや新曲を含めたもの、『Blur』に入れなかった曲を出したいなって。名称はEPでも良かったんですが、16曲になってしまって。けど、過去曲やKANDYTOWNのリメイクもあるから、フルアルバムとは言われたくなかったんですよね。それでミックステープって言い方に。

- なるほど。『Ten Twenty』には複数のアーティストが参加されることで話題になっていましたが、今までソロの作品をひとりで作ってきたRyohuくんがアーティストとコラボレーションすることには個人的に驚きました。

Ryohu - 俺も驚いてます。今までトラックは自分で作って、客演なしでやってたんですが、ミックステープではもっと色んな人も入れたら面白いかなって。他の方の作品に参加することには抵抗ないんですが、いざ自分の作品になったとき、明らかに異質なものになるというか。けど、今回のミックステープでは、人のビートだとどうなるんだろうというのを試せるしというか、挑戦できる機会だなって。ミックステープに参加してもらった方々は、自分の近いとこや紹介してもらった人たちですね。

- 『Ten Twenty』と先行配信した3枚のシングルのジャケットの文字を切り貼りしたデザインも印象的でした。

Ryohu - 『Blur』もなんですけど、今回もCYDERHOUSEの岡本ユウジくんにお願いしました。ミックステープのイメージやこういう感じで作ってるってことを伝えて。それを元にアイデア持ってきてもらいながら進めました。俺からは具体的なことは特に言ってないですね。ある程度、作品のテーマと俺の気持ちだけは伝えました。それを組んで上がってきたものに対して、意見を言って仕上がりました。

-『Ten Twenty』から“All in One (Remix) [feat. IO & KEIJU]”、“Nothing But A Blur feat. MALIYA”、“Where the Hood At feat. in-d & Campanella”の3曲を先行配信した理由などはあったのですか?

Ryohu - 先行配信した3曲については、これがいいと思って出しました。実を言うと、1曲目に先行配信した“All in One (Remix)”はシングルと『Ten Twenty』に入ってるものとは内容変えてるんですよ。エンジニアさんがそれぞれ違うので、聴き比べると面白いです。

Ryohu - 2曲目に先行配信した“Nothing But A Blur”は前作のEP『Blur』に入れようとしたんです。そのときMALIYAは入ってなくて、俺がフックを歌って、トラックも全然違いました。けど、なんかハマらなくて。今回のミックステープで出したいから、トラックも打ち込み方を変えたりして、もう一度フックに挑戦したんですけど、うまくいかなくて。じゃあ、ラッパーかシンガーを入れようって思いました。それを考え始めたときに、なんとなく女性の声が良いなって。それでMALIYAにお願いしました。「俺は二度挑戦しましたが、できませんでした」って。過去に作ったのも、MALIYAに聴かせたりして、今の “Nothing But A Blur”ができた感じですね。

Ryohu - 3曲目に先行配信した “Where the Hood At”は「結局地元だよね」って曲で。『Blur』を作ったときに、トラックとフックはできてたんですよ。この曲は、当初から何人か客演を入れてやってみたいと思ってて。今回、ミックステープを作ることになって、ラッパーを入れてやろうと思いましたね。ラッパーの中で最初に決まったのがCampanellaさん。Campanellaさんとは、この曲をやるまでにKANDYTOWNでの名古屋のツアー以来だったんですけど、曲ももちろん知ってたし、良いなって思っててお願いしましたね。ふたり目はどうしようかなって、地元の二子玉川で歩きながら考えてたとき、in-dにたまたま会ったんですよ。そのときはお互いの近況とか他愛もない話をしただけなんですけど、in-dは地元の藤沢が好きだし、会ったのも何かの縁だなって思って、その翌日にはお願いしてましたね。

Ryohu - この曲はCarhartt WIPに衣装協力してもらって、MVを撮りました。俺の地元の二子玉川、Campanellaさんの地元の名古屋、in-dの地元の藤沢で。名古屋は弾丸で、撮影の日にCampanellaさんと会うのが二度目だったんですよ。一緒にいる時間が長かったんで、すごい話して。このまま遊び行きたいっすねってなりましたね。in-dの地元の藤沢は海の方で撮ったんですが、めちゃくちゃ天気が良くて、気持ち良かった。この曲やって、音楽で人と繋がるのは良いなって純粋に思いました。人とやるのは楽しいって気づきましたね。MVはもうすぐ公開されますよ。

- 今回、自身の過去曲やKANDYTOWNの曲もリアレンジされていますよね。

Ryohu - リアレンジした過去の曲はどれも時期が違うから、トラックも言ってるワードも、本当に古いのだと5年前とか。20歳前後に作った曲とかあったから、当時の俺が歌ってるリリックのワードがかわいかったり。中にはガラっと変えるものもあったけど、原曲とあまり変えないように意識しました。過去の曲を探すのが、自分のおもちゃ箱を漁る感じで面白かったですね。見つけた曲を、ちょっとだけ綺麗にして作り直すみたいな。例えば、“Call Your Name ('18)”は最初の部分にアコースティックライヴの録音を入れたりしましたね。

Ryohu - “Song in Blue(Interlude)”ではKANDYTOWNの“Song in Blue”での俺のリリックをAAAMYYYに歌ってもらいました。この曲に関してはディレクション的な感じでの参加ですね。曲もコードだけは同じで弾き方を変えてもらったりしました。

Ryohu - KANDYTOWNの“Ain't No Holding Back”は自分が作った曲だけど、フックを歌うだけだったので、“Ain't No Holding Back(Solo)”で作り直しちゃいました。ポップまではいかないけど、全然違う感じになったと思います。

- KANDYTOWNの中で、Ryohuくんはヒップホップというジャンルを超えて活動していて、異質な感じがするのですが、RyohuくんにとってのKANDYTOWNはどういう存在なんですか?

Ryohu - KANDYTOWNのみんなと同じだと思いますね。KANDYTOWNの一部であり、自分自身がヒップホップであることを納得させられるというか、改めて感じられる場所。存在として、ありがたみの方が大きいですね。KANDYTOWNの中で、俺のアーティスト的な活動の仕方は異質かもしれないです。ヒップホップ以外の人とやったりすることが多いので。逆を言うと、俺がヒップホップの曲に参加していないってのもありますよね。このインタビューを読んだ方は、ぜひお待ちしてます。良いと思ったものは、ジャンル関係なく聴くんで。

- 『Ten Twenty』でのシンガー陣には、ジャンルを超えてAAAMYYYさん、MALIYAさんの他にWONKのボーカルのKentoくんも参加されてますね。

Ryohu - 今回の作品にはKentoにも入ってもらいたいって思ってたんですよ。“8 Money”は、Kentoが絶対やらなそうな曲なんで、異質な仕上がりになって良かったです。“8 Money”自体は割と後半にできた曲ですね。もともと、この曲で書きたいことは決めてたんでスムーズでした。

- トラックメイカーにはOMSBさんとEVISBEATSさんが参加。

Ryohu - 客演の他にもビートメイカーの人にも出てもらいたいと思いました。とはいえ、たくさんの人とはやりたくないなって。それで、オムス(OMSB)とエビスさん(EVISBEATS)にお願いしました。オムスの“Vibes”はもうビートがやばいんで、ゴリゴリにラップしてやりました。

Ryohu - エビスさんは、オムスとは対照的なやり方で時間もかけました。エビスさんからは、いくつかビートも送ってもらって、結果、今の“Keep Your Eyes Open”になりました。すごいバッチリですね。

- 制作に時間がかかった曲とかはなかったのですか?

Ryohu - 新曲が5曲くらいあって、オムスとエビスさんのはすぐ書けて。MUDとの“Lux”はレゲエ調なのを作ろうって決めてて、落ち着いたのが、あのサウンドなんですけど、リリックはすぐ書けましたね。

Ryohu - さっき話した“Nothing But A Blur”のMALIYAの話もそうですけど、解決策が見つかると早かったですね。うまくいかないときは何かが間違ってるというか。一度良い意味で諦めて、俯瞰すると答えが見えてくる。今回のミックステープでリリックで時間かかったとかはなかったですね。リリックは、いつもスタジオでノートに書いてるんですが、今回もそうでした。ノートだと書いたやつを残しておけるから、あとになって見返せるので良いんですよ。歌い方とかで勢いがないようにしたり、わざと気だるく歌ったりとか、そういうのは繰り返しましたね。最終的にはエンジニアさんとの時間がいちばんかかりましたね。同い年の佐藤慎太郎くんにやってもらってるんですが、その子の功績はでかいです。あと、TENDREの太朗ちゃん(河原太朗)とAAAMYYYには『Blur』に引き続き、曲作りに参加してもらったんですが、これ作ってるときふたりとも忙しかったぽくて。「時間ない中、すいませんでした」って感じです。ふたりとはいつも一緒にやってるんで、すぐ伝わるから良いんですよね。

- この作品には、Ryohuくんが人と何かを作ることへの挑戦もあったと思うのですが、作り終わってみて、作る前と今では考え方とか変わったりしましたか?

Ryohu - 人とやるのって、ハマるときは超ハマるんですけど、コントロールできないときもあるかなって。人のディレクションまでやるのがめんどくさいって思ってました。相手がそのつもりで来れば良いんですけど、相手のバースに合わせてトラックはこうしようとかが、なんかめんどくさいなって。だから避けてたっていうわけじゃないけど、気持ちをフラットにして、あまり考えすぎずにミックステープ『Ten Twenty』をやってみて、人とやるのが面白いって思いましたね。今回、俺がテーマと構成をある程度投げてスタートしたけど、次は最初の段階から、より密接な形でやれたらなって。どんな形になるかは分からないけど、次の作品に関してはそれができたら良いなって思います。『Ten Twenty』もシリーズ化して頻繁には出さないかもしれないけど、『Ten Twenty vol.2』みたいな感じでやれたら面白いかもなって。この作品を通して、改めて変わらないなってことは、誰かに全てを任せることは無理ですね。クリエイティヴな部分は、自分でやってないと落ち着かないというか。それ以外のことには興味ないんですけどね。

- 最後に、今後の予定とかありますか?

Ryohu - 来年の2月からツアーが始まるんで、ぜひ来てほしいですね。グッズとかも新しいものを考えてます。

AWAでは、Ryohuがドライブするときのために作ったミックステープをプレイリスト『Someday Side A』として公開中。そちらも合わせて、ぜひチェックしてみてほしい。

Info

AWA ダウンロードURL:https://mf.awa.fm/2reXhXD

Ryohu’s playlist『Someday Side A』

[Track list]
01. Khalid「Location」
02. Oddisee「Rain Dance」
03. Rag'N'Bone Man「Your Way or the Rope」
04. Matt Martians feat. Syd & Steve Lacy「Dent Jusay」
05. Thundercat「Friend Zone」
06. Syd feat. Steve Lacy「Dollar Bills」
07. Migos「Bad and Boujee (feat. Lil Uzi Vert)」
08. DRAM「WiFi (feat. Erykah Badu)」
09. Little Simz「One In Rotation + Wide Awake」
10. BJ The Chicago Kid「All On Me」
11. J. COLE「Deja Vu」
12. Tinie Tempah「If You Know (feat. Tiggs Da Author)」
13. Joey Bada$$「DEVASTATED」
14. Wiley「U Were Always, Pt.2 (feat. Skepta & Belly)」
15. Rick Ross feat. Young Thug & Wale「Trap Trap Trap」
16. Drake「Fake Love」

[Playlist’s URL]
https://mf.awa.fm/2E5GC0V

Ryohu 『Ten Twenty』
2018.11.30. (fri) Release.
LESS-007 *Digital Only
Less+ Project.

01. Call Your Name ('18)
02. All in One (Remix) [feat. IO & KEIJU] *1st SG
03. Ain't No Holding Back (Solo)
04. Forever (Remix) [feat. MUD]
05. Lux (feat. MUD)
06. Nothing But A Blur (feat. MALIYA) **2nd SG
07. Wash (Put a Melody)
08. Downtown boyz 2.0 [feat. Gottz]
09. Shotgun Shuffle, Pt. 2
10. Song in Blue (Interlude) [feat. AAAMYYY]
11. 8 Money (feat. Kento NAGATSUKA)
12. Blue Rose (Dreams)
13. Kool Breeze 1.5
14. Where the Hood At (feat. in-d & Campanella) ***3rd SG
15. Vibes (prod. by OMSB)
16. Keep Your Eyes Open (prod. by EVISBEATS & MICHEL☆PUNCH)

http://www.ryohu.com/tentwentyspecial/

『Ten Twenty Tour 2019』

Ten Twenty Tour 大阪
2019.02.01.(fri)
Venue 梅田BananaHall
Open 18:30 / Start 19:00
Ticket ¥3,300 (ADV / + 1D order)
Act Ryohu
Special Guest 後日発表

お問い合せ:YUMEBANCHI 06-6341-3525 (平日11:00 ~ 19:00)

Ten Twenty Tour 名古屋
2019.02.03. (sun)
Venue 名古屋CLUB UPSET
Open 17:00 / Start 18:00
Ticket ¥3,300 (ADV / 1D別)
Act Ryohu
Special Guest 後日発表

JAILHOUSE HP

お問い合せ:JAILHOUSE 052-936-6041

Ten Twenty Tour 他公演
後日詳細発表

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