【インタビュー】legit goons | タレント揃いの韓国のシーンで我が道を歩む

分厚い層をほこる韓国ヒップホップ・シーンにおいて、2013年の登場以降、独立独歩で着実に作品リリースを重ね、認知を広めてきたクルーがlegit goonsだ。これまでに3枚のアルバムを数え、クルーというよりもはや「大所帯グループ」といえるほど密な関係性を築いている彼らは、現在Blnk-Time(ブレンタイム)、Bassagong(ベッサゴン)、Jayho、Jaedal(ジェダル)のMC4人に、Authentic、iDeal、Yosi(Hi-Lite Records所属)、Biglightbeatz、Code Kunst(AOMG所属)のプロデューサー5人に加え、映像クリエイターのAR FilmとCocky、フォトグラファーのイ・ドンゴン(……そして肩書きのない友人2人)の総勢14名。

絶妙にユルいリゾートムードを備えたトラック、MC陣の時にファニーなマイク回し――とびきり仲の良い彼らのじゃれ合いを見るかのような楽曲は、今や無二の存在感を放っている。

その結束の強さがあるからこそ、音源制作からMV制作、マーチャンダイズ制作に至るまで、すべてみずからの手で行うことを可能にしているのかもしれない。

そして、2018年2月に行われた、韓国を代表するヒップホップ情報メディア、HIPHOP LEとHIPHOPPLAYAの共同開催によるKOREAN HIPHOP AWARDS 2018では、2017年にリリースした最新アルバム『Junk Drunk Love』で「今年のヒップホップアルバム賞」を受賞。初めて名誉ある賞を獲得し、目に見える形で評価を得たlegit goonsはまた新たなフェイズに進んでいるのか、はたまた変わらずマイペースに我が道を突き進んでいるのか……。今回は、ソウルの小さなピザ店でクルー主催のフリーマーケットを行っていた彼らのもとにお邪魔し、MCのBassagongとJayho、プロデューサーのAuthentic、Yosi、iDealに、これまでとこれからのlegit goonsについて話を訊いた。

取材・構成 : 加藤直子

通訳 : soulitude

- legit goonsはMCのBlnk-TimeさんとプロデューサーのAuthenticさんが中心となって結成されたんですよね?

Authentic - Blnk-Timeは初めて一緒に音楽を作るようになった人の1人なんです。当時は他の音楽仲間を交えて遊んだりしていたけど、結局Blnk-Time以外の人たちとは音楽的に合わなくて。それで2人で酒を飲んでいるときに、その場のノリで一緒に音楽をやろうという話になって。その時点でクルーを作りたいという気持ちがお互いにありました。

- 各メンバーとも、legit goonsに加入する前から別のクルーやグループで活動していたりなど、個々に音楽活動は行っていましたよね。今のメンバーがlegit goonsとして集まったのはどういう経緯があったのでしょうか?

Jayho - そもそもは音楽を一緒にやろうというよりは、酒を飲んだりして遊んだりしていた仲間がそのままlegit goonsになった感じです。

Authentic - グループチャットで自分がみんなに勧めたい曲を紹介したりして。

Jayho - SoundCloudに無名の海外のミュージシャンがアップしていた曲をみんなでシェアしていましたね。Chance The RapperやGoldLinkあたりがSoundCloudで話題になっていた頃です。

- クルー名義での音源というと、シングルを単発で発表したり、ごくたまにクルー・コンピがリリースされるというイメージですが、legit goonsは2014年以降、クルー名義ですでにアルバムを3枚発表しています。もはやクルーというより大所帯グループのような印象があります。

Jayho - 僕たちは音楽だけで結ばれているわけではなく、そもそも友達というのが大きいと思います。みんなのケミストリーが合うから、コンセプトのしっかりしたものを作ることができる、音楽的な共通項もあるからひとつのグループのように感じられんじゃないかと。

- 確かにlegit goonsの作品は、どこか「夏休みの中学生グループ」のような、仲間とワイワイしながら作っていることが伝わるユルい雰囲気が魅力だと思います。その陽気なムードは、昨今のトレンドを逆行するスタイルですよね。

Jayho - トレンドのサウンドを排除したいわけではなくて、それが単純に僕たちではうまくできないだけです(笑)。なので、自分たちがやれることをやろうと。今後取り入れられたらやりたいけど、今は自分たちができる最大限のことをやってる感じですね。

Yosi - トラップっぽいトラックも持っていったことはあるけど、そんなにみんなの反応が良くなかったんですよね(笑)。

- でもそれが結果的にlegit goonsのカラーを作り上げている感じがします。クルーで作品を作るにあたって、こだわっているのはどんなことですか?

Authentic - アルバムや曲作りにおいて、誰かが主導するような形ではなく、テーマや全体の流れを最初からみんなで決めることですね。最初の段階からみんなの意見を反映させながら作っているから、そういったカラーや雰囲気も生まれるんだと思います。

- これまでのアルバム3枚は、初作の『Change The Mood』(2014年)はソウルフルなトラックが中心となったブーンバップの要素も含まれたアルバムで、『Camp』(2016年)、『Junk Drunk Love』(2017年)とレイドバック度が上がり、生楽器も取り入れるようになってサウンドのリッチさも増していっています。各アルバムで明確なテーマがあるんですか?

Bassagong - はい。『Change The Mood』は、当時の韓国ヒップホップでブーンバップをやっている人がいなかったので、その「ムードを変えよう」ということでブーンバップを中心にしました。『Camp』はメンバーで旅行に行って親しくなる過程をそのまま込めて、『Junk Drunk Love』はその言葉自体がクルーを表している感じで、それをテーマにアルバムを作ったんです。

iDeal - トラックはそのときのトレンドも自分たちなりに取り入れながら、それぞれのアルバムのカラーが出来上がっている感じですね。

Jayho - 人間としてもレベルアップしたいとみんなが思っているので、作品ごとに音楽的な実力も伸びていると思います。

- 最新作『Junk Drunk Love』からはJaedalさんが加入して、MCが4人体制になりました。ただ、これまでの3人による絶妙なマイクリレーにあった耳なじみの良さを崩さず、まるで以前からそこにいたような感じすらする馴染みっぷりです。

Authentic - ファーストのときはMCがBlnk-TimeとBassagongの2人(Jayhoは客演として参加している)、2作目ではJayhoが加入して3人になって新しいケミストリーが生まれ、アルバムの雰囲気が変化しました。そしてJaedalが入ったことで、また新たな良さが追加されているように思います。

- 次のアルバムではまた一人増えるかもしれませんね!

Jayho - そういう予定はありません(笑)。メンバーが増えると、そのぶんお金を分けなくちゃいけないので、それ以上はないと思います。

Bassagong - なので、次からは一人ずつ減っていくかもしれません(笑)。サバイバルみたいに……。

- ハハハ、おもしろいけど今のままでいてください(笑)。そして、legit goonsといえばミュージックビデオがとても魅力だと思います。こちらもこれまでクルーのメンバーの手で作られているからこそ、楽曲と合わせてクルーのムードがよく出ていますよね。

Bassagong - お金がなかったのでずっと自分たちで作っていたんですが、だからこそクルーのカラーを込めることができたから結果的に良かったし、良いものを作るセンスもあると思うから作ってきました。でも、今後状況が変わってきたら、クルー以外のディレクターと仕事をしたいと思っていますよ。

Authentic - アイデアはたくさんあるのですが、お金の問題で実現できなかったことも多くあるので、いずれそれを叶えられたらいいですね。

- 『Junk Drunk Love』が、「KOREAN HIPHOP AWARDS 2018」で「今年のヒップホップアルバム」賞を獲得しました。いわゆる確固たる評価をクルーとして初めて得たといえますが、その後、周辺状況に変化はありましたか?

Bassagong - 賞をもらったからといって、僕たち自身、そんなに状況が変わることに対して期待はしていなかったのですが、それにしてもあまりにも変化がなくてがっかりしています。

- ハハハ(笑)。そうなんですか?私は「ついにこのときが来たか!」と思いましたが。

Bassagong - 特に変わったことはなかったですね。でも、この賞をもらったことで、僕たちを応援してくれている人たちが喜んでくれる姿を見るのがうれしかったです。僕たちは大きく変わらず、これまで通り自分たちらしくやっていこうという感じです。

- Bassagongさんは先日2枚目のソロ作『탕아(Tang-A)』(※)をリリースされましたが、今後の皆さんの活動予定は?

Bassagong - 決まっているところだと、Jaedalのアルバムが間もなく出ます(9月14日にEP『Period』がリリース)。Code Kunstは引き続きシングルを出していく予定、Blank-Timeは年内に出ると思います。

※BASSAGONG『탕아(TANG-A)』は、AuthenticやiDeal、Code Kunst、Blnk-Timeといったクルーの面々がトラックを提供しているほか、Sultan Of The Discoのプロデュース曲、Paloalto参加曲も収録されている。

- 当面は個々での活動がメインになってくるんですね!では最後に、日本のリスナーにメッセージがありましたら……。

Bassagong - まだ僕たちは海外にファンがいること自体に慣れていませんが、今でもソウルでライブをやるときは日本の方が来てくれたりもしています。なので、さまざまな条件が整えば、今度は日本でライブをやる機会も持てればと思っています。今後は積極的に海外のファンに会いに行ったりしていきたいという気持ちです。いつか会えるのをお待ちしています!

RELATED

【インタビュー】Gottz 『SOUTHPARK』| KANDYTOWNらしさは意識していない

KANDYTOWNのメンバーであるGottzが10月にソロアルバム『SOUTHPARK』をリリースした。本作はGottzがもともと慣れ親しんでいたというトラップで曲を作りたいと思ったのがきっかけで動き出した。

【インタビュー】The Internatiiional | WELCOME TO ACID HOUSE!!! 韓国発ハウスラヴァーのためのストリートウェアブランド

突然ですが、ストリートって聞くとどんなイメージが浮かびますか?明治通りを滑走するスケーター?シュプの長蛇の列?ティンバ?ニューエラ?バスじゃモロ最後部な奴ら?

【インタビュー】Buddy | LAの新星ラッパーとPharrell、コンプトン、ファッション

10月にPharrellのレーベルi am OTHERに所属するLAのラッパーBuddyが初来日を行った。今年リリースしたアルバム『Harlan & Alondra』では伝統的なGファンクのスタイルからR&B、そしてモダンなトラップ以降のラップチューンまで多彩なスタイルの中で、しっかりと地に足のついたスキルを披露していたBuddy。

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

Floating Pointsが選ぶ日本産のベストレコードと日本のベストレコード・ショップ

Floating Pointsは昨年11月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Elaenia』を引っ提げたワールドツアーを敢行中だ。日本でも10/7の渋谷WWW Xと翌日の朝霧JAMで、評判の高いバンドでのライブセットを披露した。