【インタビュー】Nai Palm from Hiatus Kaiyote | 固定概念に逆らって遠くまで

Hiatus Kaiyoteはオーストラリアのメルボルン発の4人組バンドで、未来的なソウルサウンドが世界中で高く評価されている。前作ではグラミー賞にもノミネートされるなど、グループとしての活動も好調な中、ボーカルのNai Palmが昨年ソロアルバム『Needle Paw』をリリースした。

オリジナル曲はもちろん、Hiatus Kaiyoteの楽曲や、彼女に大きな影響を与えたRadioheadやDavid Bowieのカバーも収録した同作は、バンドの時よりもオーガニックな彼女の世界観に包み込まれるような仕上がりになっている。

そしてアルバムを引っさげてNai Palmが東京と京都で来日公演を開催。タトゥーや独創的なファッションセンスでも知られるNai Palmに来日前にメールインタビューを敢行した。

インタビュー : Hironori Hayasaka

- グループとソロでの作品作りに対する姿勢に何か違いはありますか?

Nai Palm - 私はソロでやるのと同じ方法で、Hiatus Kaiyoteでもたくさん曲を書いてる。そこには明確な区分はない。ひとつ違うのは自由なアレンジとひとつひとつのアイディアね。ソロでの活動を別ものとして考えるアーティストは多いけど、私にとってはただ作曲過程の別の部分を見るための窓なの。Hiatus Kaiyoteの曲はどのようなブロックが積み重なって形成されているかを、人々に見せるため。

- タトゥーやピアス、カラフルな服などのあなたのスタイルはどこから生まれたでしょうか?

Nai Palm - とても深くてパーソナルな質問ね。私は自分自身を“装飾”するという方法で直接的に私は何者なのかということを表現しているの。私のタトゥーは人生の日記なの。私はタトゥーを鎧のように身に着けている、私は世界のたくさんの異なる色や文化を敬愛しているし、とても興味がある。私が経験する世界が、直接私のスタイルに反映されているの。私は「個性」には価値があると思うし、人々の「これが私たちの限界だろう」という固定概念を打ち破りたいの。わたしたちの想像のできる限り遠くまでね。

- オーストラリアのメルボルン出身と言うことですが、オーストラリア国内で作品のインスピレーションを得たりする場所はありますか?

Nai Palm - オーストラリア中央砂漠がそうね。とても力に満ちあふれている場所。古来からの場所で自然の気品や知恵があふれている。私のベッドルームも。感傷的な宝物がたくさんあるわ。私は旅をたくさんしているから、曲を書くときに安心できる場所や逃げ込む場所をもつということはとても重要なの。

- 今回初のソロアルバムをひっさげての日本公演ですが、アルバムのアートワークは幻想的で耽美的だがどこか怪奇的な雰囲気があり、とてもあなたに合っていると思ういます。このアートワークはどのように作られたのですか?

580

Nai Palm - InstagramでJoey Masdammeというアーティストに出会ったの。私は強い女性を自分のまわりに増やして、一緒に働いていこうとしてる。特にアートの側面でね。私たち女性は時々弱ってしまうことがあると感じていて、私にとって「女性」を支持し、賛美することは大切なこと。私のソロアルバムに関しては特にそう。私は危険なものを孕んだ、猛烈に弱くて上品なものを欲している。Joeyはそれらの面をまさに体現している。私は彼女をいろんな面から尊敬していて、彼女のことを友達と呼べることがとても嬉しいわ。

- アルバムのタイトルである『Needle Paw』は直訳すると「針のような足」となりますが、どんな意味が込められていますか?

Nai Palm - 誰かが言った言葉をわたしが聞き間違えて、その聞き間違えが気に入ったの。私の頭にはすぐに「砂漠に咲く一輪の赤い花」が浮かんだわ。それは傷つくことと、自分自身を気にかけることの二重の意味も含んでいて、それが私にとってのこのアルバムなの。教えを思い出させるもの。

- 作品を作るにあたって、影響を受けたアーティストなどはいますか?

Nai Palm - それは言うまでもなく、このレコードに参加してくれたアーティストたちだよ。さらに言うと、ブルガリアの女性たちの聖歌隊、吉松隆、Björk、Lauryn Hill、そしてQuentin Tarantinoかな。

- このアルバムの中で1番気に入っている曲はなんですか?

Nai Palm - アルバムの最初と最後の曲である”Witij”ね。オーストラリアの先住民ガルプ族の儀式を行うJason Gurruwiwiが演奏しているわ。これは何千年も前の曲で、オーストラリアの豊かな文化の歴史からかけ離れたものなの。とても過小評価されすぎていると私は思うわ。生々しく、力であふれている。

- David BowieやJimi Hendrixをカバーしたのは?

Nai Palm - 私は真のミュージシャンたちに賛辞を送りたかったの。今のメインストリームの音楽はとてもとても空っぽで間に合わせのものになってしまっている。私はひとりのアーティストとして実際に楽器を演奏することを通して、既存の枠にとらわれないという情熱を伝えなければならないというリアルな責任を感じたの。David BowieとJimi Hendrixは2人とも彼らなりのやり方でとても創造的で象徴的だったわ。常に彼ら自身で革命を起こし、固定観念に逆らっていたわ。

- アルバム全編を通してグループでの楽曲よりもアコースティック色が強いと思いますが?

Nai Palm - アコースティックの意味がはっきりしないけど?私はエレキギターを弾いていて、それはアコースティック楽器ではないわ。楽器のアレンジやインティメイトは最小限だけど、作品の質の中には精密な意図が常にあるわ。後から付け足される装飾品じゃなくて、曲そのものの中にこそリアルな力が眠っていることを証明したかった。

- セルフカバーである"Atari"や新曲の"Haiku"など日本でも聞きなじみのある言葉がタイトルとなっていますが、なぜこのようなタイトルに?

Nai Palm - “Atari”というのはナイジェリアのヨルバの言葉で「頂点」や「その人個人の神」という意味があるの。この言葉は昔にゲーム機に使われていて、それがこの曲の内容なの。“Haiku”という曲は私と私の親友が書いたいくつかの俳句によって構成されている曲よ。世界には信じられないような優美さや文化がとてもたくさんあって、私はそれらを深く愛しているし、常に影響を受けているわ。日本は私の心の近くにいる。

- Verge Campusのインタビューで、料理を作るのが好きと言ってましたが、日本食はいかがですか?

Nai Palm - エビフライと豆腐とラーメンとお好み焼きが好きよ。ほとんど全部ね。日本は食べ物の世界的な領主ね、みんな知ってるわ。

- 日本のファッションや音楽についてはどう思いますか?

Nai Palm - 日本のファッションはとても最先端で、洗練されていて、優雅で、想像力豊かで、遊び心にあふれていると思うわ。違いの際立つものが隣り合わせになっているのに、安定したバランスを保っていることが好き。

- アルバムの最初と最後にアボリジニのシンガーをフィーチャーしていたり、“Atari”でのチャントなど民族的な要素を取り入れていますね。

Nai Palm - 世界には本当の魔法があるの。私はその真実を賞賛し、人々に思い出してもらうことを選んだわ。宮崎駿も同じ事をしているわ。私はただ世界の美しさに貢献したいと望んでいるの。それが私の目的よ。

Info

東 京 3/20(火)渋谷 WWW X
前売¥5,000(スタンディング・税込・1 ドリンク別) OPEN 18:30/ START 19:30
☎03-3444-6751 (SMASH)
TICKET====================================================
主催者先行予約:12/26(火) 11:00 ~ 1/1(月) 23:59 http://w.pia.jp/t/naipalm/ *先着受付・規定枚数に達し次第受付終了
1/13(土)10:00~ 下記にて一般発売開始!
ぴあ(P:103-340)/英語販売あり、e プラス( pre: 1/2-8)、ローソン(L: 75333)、iFLYER
CREDIT====================================================
協力:SONY MUSIC JAPAN INTERNATIONAL 総合問い合わせ:SMASH http://smash-jpn.com

京 都 3/21(水)京都 CLUB METRO
前売¥5,000(スタンディング・税込・1 ドリンク別) OPEN 18:30/ START 19:30
☎075-752-4765 (CLUB METRO)
主催者先行予約:12/26(火) 11:00~
一般発売:1/13(土)10:00~
詳細はこちら WEB : https://www.metro.ne.jp/single-post/180321a

RELATED

【インタビュー】DYGL 『Cut the Collar』| 楽しい場を作るという意味でのロック

DYGLが先ごろ発表したニューEP『Cut the Collar』は、自由を謳歌するバンドの現在地をそのまま鳴らしたかのような作品だ。

【インタビュー】maya ongaku 『Electronic Phantoms』| 亡霊 / AI / シンクロニシティ

GURUGURU BRAIN/BAYON PRODUCTIONから共同リリースされたデビュー・アルバム『Approach to Anima』が幅広いリスナーの評価を受け、ヨーロッパ・ツアーを含む積極的なライブ活動で数多くの観客を魅了してきたバンド、maya ongaku

【インタビュー】Minchanbaby | 活動終了について

Minchanbabyがラッパー活動を終了した。突如SNSで発表されたその情報は驚きをもって迎えられたが、それもそのはず、近年も彼は精力的にリリースを続けていたからだ。詳細も分からないまま活動終了となってから数か月が経ったある日、突然「誰か最後に活動を振り返ってインタビューしてくれるライターさんや...

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

Floating Pointsが選ぶ日本産のベストレコードと日本のベストレコード・ショップ

Floating Pointsは昨年11月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Elaenia』を引っ提げたワールドツアーを敢行中だ。日本でも10/7の渋谷WWW Xと翌日の朝霧JAMで、評判の高いバンドでのライブセットを披露した。