フォト&インタビュー 脳腫瘍摘出手術を行ったDJ 行松陽介のこれから
7月8日、東京代官山のUNITでデイイベントとして開催された、音楽とアートを通じて広く選挙への意識を啓発するためのイベント「Don't Trash Your Vote」に出演予定であった大阪のDJ、行松陽介は、その日現場に現れなかった。
7月7日未明、行松陽介は自宅で倒れ、およそ12時間以上意識を失っていた。8日の午後8時頃、連絡もなくイベント会場に姿を表さない行松を不安に思った共演者たちは、安否を確認するべく行松に何度も電話を掛け、行松の意識を取り戻した。大阪の友人たちが彼の家に駆けつけ、行松はすぐさま病院に搬送され、一命を取り留めた。
その後の検査で行松の脳に腫瘍が見つかり、2度の腫瘍摘出手術を受けた。彼はこれから本格的に腫瘍の治療を行う予定だ。
行松は開頭手術の跡が鮮明に残る写真をSNSにアップロードし、「鉄男みたい。アーティスト写真を撮りたい」とツイート。ならば、ということで抜糸前日、そのホチキスのようなものが頭に残った行松を写真におさめるべく大阪に向かった。
Interview and Photography by Jun Yokoyama
手術中の意識は、めちゃくちゃ鮮明だった。ずっと話しかけられながら手術を受けた。言語野に近い部分に腫瘍があったから、看護士や医者は自分に話かけながら、摘出作業。脳を傷つけていないか確認してた。
ずっと脳みそを触られてる感覚はあった。話さなくなったら向こうが心配するから、手術中はひたすら話した。運良く言語野を傷つけることもなく、手術自体は無事に終わった。今、その腫瘍を検査してる。2回目に入院したのは、亡くなった母が以前臨床検査技師として勤め、そしてガンと診断された病院。だから何か縁があるのかも。
原因は、睡眠不足とお酒が原因だって医者に言われた。心当たりあるのは睡眠不足。グリオーマっていう脳のガンって呼ばれてる病気で、そもそもそれになる人は少ない。1000万人に3人だったかな。
DJやってても、朝にイベント終わってから仕事に行く毎日。いわゆるブラック企業。毎週週末に休める雰囲気はない。遠征の時だけ、始発で帰っても仕事に間に合わない時だけ休んでる。
入院している間、真夏の部屋にあるレコードが一番心配だった。友達に家の鍵を渡して、30度でエアコンをつけっぱなしにしてもらった。レコードが曲がってしまわないかが一番の心配だった。
出演出来るイベントは出ないとね。もう今までの肉体労働の仕事ができない分、稼がないと。
これからDJは良くなると思う。この何年もDJの練習なんてちゃんとできてなかった。毎回パーティによってDJを変えるけど、選曲で精一杯。練習する時間がなくて、ぶっつけ本番。みんなには、ずっと気づかれてるのかな、さすがに気付くよなとは思ってた。
病気になって、音楽の何が変わるか。仕事ができなくなって、DJの練習ができるようになるってことかな。
仕事は辞めて、友達のレコード屋さんを手伝いながら、生活や音楽活動をすると思う。けどレコードを買う量は減らさなくちゃいけない。これからはレコードを聞き込みながら、自分の方向性を決めていくことになるのかな。たとえば、自分の家にあるDam-Funkのコンピとか、聴いたらめちゃいいって思うんやけど、そういうのどうしようって思う。そういう音楽も持ってるのが自分のいいとこでもあるから。難しい。
スピリチュアルな体験って言うのかわからないけど、倒れた日がUNITの出演の日で。そのイベントが無かったら倒れてるのも気づかれなかったかもしれないっていう意味では、スピリチュアルな体験になるのかもしれない。巡り合わせというか。
(倒れた)前日は、仕事終わって、ぷらっとこだまのチケットを取って、それから家で選曲してた。1週間くらいはそれに向けて準備はしてたから、あまり準備することもなかったけど。前々日から興奮してたのかな。UNITで共演するNobuくんから電話があったから、プレイ内容について電話で話した。
その後、何してたか覚えていない。腫瘍が原因でてんかんが起こったんだと思うけど、その後倒れてた。てんかんなんか起こったことなかったんだけど。
翌日の午後8時にUNITのイベントに関わる人から電話がかかってきた。電話で起きたんだけど、それの受け答えがおかしくて。もう自分も何が分かってないというか。だから大阪の知人に連絡が行って、救急車で運ばれた。
2回目の入院をする前に、大阪にある山本製菓というギャラリーで働いている友達にお守りをもらった。チベタンターコイズとアポフィライトっていう2種類のパワーストーン。チベタンターコイズは大切な人に持たせる石。アポフィライトっていうパワーストーンは脳細胞を活性化させるって言われてる石。まさに自分にぴったり。
アポフィライトは先端が水晶みたいに透明になっていて、そこに光を通すと虹が見える。その様子がPink Floydの『The Dark Side of the Moon』のアルバムのジャケットに見えた。その話をしながらアルバムのWikipediaを見たら、そのアルバムに"Brain Damage"っていう曲が入ってるのを見付けた。それでまたスピりそうになった。
だから入院生活は『The Dark Side of the Moon』を聞きながら。
10年以上ぶりの夏休み。もう同じような仕事をすることはもうない。やっと納得がいった。ああいう働き方は身体に悪い。周りには言われていたけど、けど自分はタフだから続けていけると思ってた。
じゃあ読んでくれている人へのメッセージはもちろん…
DJをした次の日、そのまま仕事へ行ったらダメです。脳腫瘍になります。(笑)
(笑) ありがとうございました。
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< 行松陽介 Live Info >
2016/9/22 Versions at Unit, Tokyo
RA event page
盟友、日野浩志郎の新プロジェクトHino Koshiro plays Virginal Variationsの公演に出演。
2016/9/23 Zone Unknown IV Feat.Aisha Devi at Circus Osaka
RA event page
ミスティック・インダストリアルの才媛Aïsha DeviをYPY、ECIV_TAKIZUMIと共に迎え撃つ。
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撮影場所: 山本製菓
撮影協力: UC EAST、Simon Fowler、山本製菓ギャラリースタッフ、ギギ