【インタビュー】PRIMAL『Nostalgie』 | ラップは自己主張

PRIMALは、現在のヒップホップ・ブームの前史となる00年代の国内のインディ・ラップの興隆を象徴するグループ、MSCのオリジナル・メンバーだ。そんな彼のラップについて私はかつてこう記した。「いくつもの問いがあふれ出しては、彷徨っている。そのことばの放浪が、PRIMALのフロウの核心ではないかと思う。(中略)脳内で延々とループする矛盾と逡巡が、オン・ビートとオフ・ビートの狭間でグルーヴを生み出し、独特の
リズムを前進させる。目的地を定めないがゆえのリズムのダイナミズムがある」。
この1978年度生まれのラッパーは、2007年に『眠る男』、2013年に『Proletariat』という2枚のソロ・アルバムを発表している。じつに12年ぶりとなる通算3作目『Nostalgie』は、2016年に東京から移住した釧路/札幌で制作された。声音やフロウのキレには驚くほど衰えがなく、リリックもライミングも相変わらず支離滅裂で面白い。それでも時代は移り変わり、PRIMALも年を重ねた。若いころにハードコアで鳴らした男はいま、労働者、家庭人、ラッパーという複数の自己のあいだで生じる葛藤や懊悩に、豊富な語彙力を駆使してさまざまな角度から切り込む。そのユーモラスで哀愁の漂うラップが本作の最大の魅力だ。
ハウス、ブーム・バップ、ローファイ・ヒップホップ、アンビエント要素のあるトラップなどトラックは多彩で、1曲を何百回、ときには何千回と聴いてリリックを書き、レコーディングしたという。札幌のヒップホップ・グループ、Mic Jack Production(以下、MJP)のビートメイカー、DOGG a.k.a. DJ PERROやHalt.、あるいはMichita、ながさきたけし、荒井優作らがビートを提供、YAS I AM、RUMI、漢 a.k.a. GAMI、BES、SAW
といったラッパーや、レゲエ・アーティストのMAD KOHが客演で参加している。カヴァーアートは、MSCのメンバーで、グラフィティ・ライターのTABOO1が手掛けた。
このインタヴューは、PRIMALと、彼の盟友、漢の対談動画の収録直後に、ふたりと仲間が青春時代を過ごした東京・高田馬場でおこなわれた。
取材・構成:二木信
写真:小原泰広
- 漢さんとの対談はどうでしたか?
PRIMAL - いまだからこそ話せる昔の話題が中心でしたね。俺も若かったから、漢やMSのメンバーに対して、強い言い方で自分の意見をぶつけていたんだろうなって思いました。でも、いまも昔も漢との関係性は変わらない。
- いまの漢さんの活動を見てどんなことを感じますか?
PRIMAL - 地に足をつけて、鎖グループを立ち上げた当初のヴィジョンを貫いているのがすごいと思う。漢は昔から「俺らはちゃんとやれば音楽で飯を食える」って言っていたから。
- ちょうど10年前に自分が企画・構成を担当したMC漢の自伝『ヒップホップ・ドリーム』が出ました。いろいろと物議を醸す内容でしたし、PRIMALさんはあの本に異論があるという話も人づてに聞いていました。
PRIMAL - まあ、そうですね(笑)。
- その話をPRIMALさんとはできないままでした。どんな感想を持ちましたか?
PRIMAL - あの本に書かれていることは本当のことだけど、みんなで秘密にしていたはずのことがたくさん書かれていたから、「それはどうなんだ?」とは思って。そのことを漢に伝えて、鎖グループで直接会って話し合いはしました。ただ、書かれていることは事実だし、そのことを漢が自伝で発信して広く知られるようになったことは結果的には良かったと思ってる。
- そう言ってもらえて良かったです。『Nostalgie』はじつに12年ぶりのアルバムになりますけど、Xで「釧路に移住した時はもう作品はないと思ってました」と書かれていて。そうだったのか! と驚きました。
PRIMAL - 釧路がどんな町かもまったくわからなかったし、東京を離れるときにラップは終止符とは考えていましたね。ただ、移住してから2カ月後ぐらいに二宮(慶介)くん(『DAWN』編集人)が釧路に帰って来たときに、「クラブに行きたいね」という話になって、すぐに電話したのが、釧路出身のDJ KENくん(MJP)だった。彼に紹介されたのが、元々はハウスDJのHARUさんがやっているクラブ、CHOICE。そこに行ってみたら、ヒップホップ好きな若い子たちがいて、「PRIMALさんが来るって聞いてました。もし今後ライヴをやれるならば、ぜひお願いします」と言ってくれて。
- それは嬉しいですね。
PRIMAL - いやあ、それは嬉しかったです。そこからまた自分の気持ちを上げていってライヴをちょこちょこやるようになって。“武闘宣言”や“支離滅裂”をやったり、“暴言”のヴァースをラップしたりしていたけど、全部昔の曲だからライヴのために新しい曲がほしくなって、そういうところから制作が始まりましたね。それが7、8年ぐらい前で、そこから少しずつ作りためた曲をアルバムにまとめた。だいたいは本格的にアルバムを仕上げるぞってなってからのここ1、2年の曲ですけど、“自我”や荒井優作くんとの“Slender”は釧路で7年前ぐらいに作った。ちなみに、CHOICEで出会った人がいまMISTYっていうクラブを釧路でやっていますね。
- “Slender”は荒井優作さんのビートが面白いですし、内容もなかなか赤裸々で。
PRIMAL - ははは。桑田佳祐の夏の歌のノリで(笑)。GOODMOODGOKUと荒井くんのEP『色』に影響を受けて、俺も荒井くんと作りたくなったけど、中途半端にはできないとは思いましたね。あの曲は俺としてもやり切った感があったから、どうしても出したかった。
- “囚われの身”をリード・シングルにしたのはなぜですか?
PRIMAL - 今回の制作のやる気を焚き付けてくれたのはDOGGで、そのDOGGが、「良いビートができた」って最初に渡してくれたのが、“囚われの身”だったから。「PRIMALのラップを聴きたい人はいるよ」ってだいぶ後押ししてくれて、自分を信じてやり切ることができた。
- MSCとMJPと言えば、00年代の国内のインディ・ラップをおおいに盛り上げた盟友ですよね。
PRIMAL - この5年ぐらい札幌で単身赴任だったんですよ。いまは釧路にもどってきたんですけど。5年前ぐらいからは同じ土地に住んでDOGGと制作できて。Halt.くんは札幌の隣町の江別でBIG BOY TOYZってお店をやっているから少し距離はあったけど、DOGGの札幌の家は近くて。しかも、DOGGのお母さんはピアノの先生で、レッスンに行くようになって。
- え!? ピアノのレッスン?
PRIMAL - 保育士だからピアノを弾かなきゃいけないときもあって。“チューリップ”とかそのレベルだけどさ。“ねこふんじゃった”は弾けないね(笑)。俺はホントに楽器できないから。昔、ギターをやろうとしてできなくて、それでラップしかねえなって始めているし。レッスンが終わったあとは、2階に住んでいるDOGGのところに行っていたね。

- 日々の保育士の仕事はどうですか?
PRIMAL - 学校の先生はいちばんなりたくない職業だったし、どちらかと言えば、嫌いだったから、自分が保育士になるとは思っていなかった。ただ、自分で金を出して保育士の養成学校に行って、幼児教育を学んで納得することもあって。向いていないこともたくさんあるけど、実際働いて子供の良さは知れたと思う。仕事が無限にあって、家でも仕事しているから、とにかくどんどんこなしていくしかない毎日。
- 「常に面倒なMindと戦争」(“自我”)とか「Brainイカれちゃってるよね」(“愛憎”)というリリックはPRIMALさんらしい懊悩やヒップホップ的に言うとイルさが表れていると思うんですが、仕事をしながら一般社会との軋轢や摩擦から自分のイルさを感じることはいまもあります?
PRIMAL - あると思う。妻も同じ仕事だから、俺が「あの人はこんなことを考えているんじゃないか」と言うと、「誰もそんなこと考えていないよ」って返されたり(笑)。でも実際、そういう人と仕事の現場でぶつかることもあるしね。
- 『Nostalgie』は、“自我”のリリックに「正規雇用労働者のつぶやき」とあるように、労働者、家庭人、アーティストとしての自己の、くんずほぐれつの葛藤をいろんな角度からラップしています。それが全体のテーマというか。
PRIMAL - 俺はガーッて考え過ぎるところがあるから、そこに持っていかれないようにキープして生活していますね。アーティストの比重が大きくなると、生活のバランスが悪くなるし、いまのベースは保育士の仕事をして生きていくことだから。ただ、“囚われの身”は、MVもいまの保育士とアーティストとのあいだの葛藤として描かれているけれど、じつは快楽に進んでいる自分から抜け出すっていうのがテーマの曲で。でも曲の解釈は人それぞれでいいと思うし、囚われというのはたしかに内面的な囚われのことでもあるから。仕事をすることでの肉体的な束縛については自分のなかで納得して生活しているけど。
- MSC時代やソロ作品を出していたころといまのラッパーとしてのあり方の整合性みたいなことについては考えることはありましたか? 特にMSCやPRIMALさんはリアルであることをとことん追求してきましたし、リアルは整合性と切り離せないものだと思いますし。
PRIMAL - かつてのMS時代は人生において貴重な時間でしたよ。その時代があったからこそいまもラッパーとして曲を作って、こうして作品を出せるわけだから。だけど実際、当時の自分といまの自分の整合性をどうするのか? というのは考えて。それでまとまったアルバムをいま出すのは難しいのかもしれないと思ったときもあった。でも、時代も俺の内面も変わってきているわけだから、いまの自分を歌うこと以外の選択肢はないと思って。
- “囚われの身”でも、「愛国精神なんてとっくに消えた 取っ組み合いができそうな今 家庭的なのが世間的Better」という、過去と現在の変化について綴ったリリックがあります。
PRIMAL - いまみたいに働いて家族を養う現実が常に迫ってきているなかで、昔抱いていた愛国精神はとっくに消えちゃったのかなっていう嘆き的なリリックですよね。それでいま今日何を話そうか思い出したけど、最近、九段理江の『東京都同情塔』っていう小説を読んで。たしか仕事の行き帰りの車のなかで聞いているNHKラジオで芥川賞を取った小説と紹介されて気になったんだと思う。いちどしか読んでいないから上手く説明できないけど、イラク出身の建築家のザハ・ハディトが設計した新国立競技場が建築される計画がありましたよね。その新国立競技場が建築された未来が舞台で、その近くの新宿御苑に犯罪者が快適に暮らせる高層タワーの刑務所を作った建築家が主人公なんです。
- ある意味では、寛容さが生む逆説的なソフトな管理社会をひとつのモチーフとした近未来SF作品と言えますかね。
PRIMAL - そうですね。じっさいにいまもそうやって管理された社会かもしれないし。俺が働いている保育業界も子供のありのままを受け入れて伸ばそうという幼児教育がいまは主流だけど、「何でもいい」という放任が行き過ぎると、自分の存在意義がわからなくなって怖くなることもある。何よりそういう放任の教育が子供や人間にとって果たして良いのかという疑問はありますよね。自分が親にどう育てられたかとか、自分の子育てを振り返っても、やみくもに怒るのは良くないけど、大人が叱るにはちゃんと理由があるし、大事なのは叱り方なんだと思う。
- 自分は、子供はいないですけど、身の回りの友人や知人の子育てを垣間見させてもらうときがあって、いまの時代に礼儀とか挨拶を子供に教えるのって難しい面もあるんだろうなって感じるときはありますね。
PRIMAL - いま教育の研修会とかに行くと、非認知能力を高めないといけないと盛んに言われるんです。その非認知能力のなかには人間関係を作るコミュニケーションの力も含まれるけど、そのためにはありのままで何でもいいだけではやっぱり難しくて、ある程度は叱られる経験がないと身に付かないこともある。俺が働いている保育園は礼儀や挨拶には厳しくて、それが教育目標のなかにもあって。それは立腰教育というものに基づいていて、義理の父親から借りたいろんな本を読むと、元をたどれば、その教育は禅的なものにつながっていく。自分は禅の流れをくむ駒澤大学にいたから、そこは理解して納得できるものもあって。まさに当時の“MSノリ”じゃないけど、歯止めのきかない社会のなかで、どう生きるかっていうのはいまも考え続けてますね。
- “MSノリ”ってどういうことですか?
PRIMAL - 昔もいまも社会は平等とか平和を重んじるけれど、生きるうえではどうしてもそうした理念だけでは通らない現実とのはギャップがあるじゃないですか。そのなかでどう生きるかをMSの頃も突き詰めていたから。たいていの人は学校や会社っていう組織のなかで生きて給料をもらって家族を養うわけで、そこから出て暮らすことは、極端に言えばアウトサイダーにならざるを得ない。若いころにそういうアウトサイダーの世界を垣間見ることはできたけど。どこの町に行っても、強い人が仕切る社会のシステムが強固にあって、普通の人はそこで働いて生きていかないといけない、そういうことを釧路と札幌に来てより実感したのはありますね。

- 釧路はどんな町ですか?
PRIMAL - 釧路は漁師町で労働者の町だから、労働組合も強くて、その風土は感じます。でもどこで生きても矛盾だらけではありますよね。釧路の町議会議員には元々ラッパーの活動もしていた清水たつやくんという人がいて、俺なんかはリベラル寄りの清水くんを応援したい気持ちがあったりするけど、親戚にはいわゆる保守系の人もいるし。それは自分の例だけど、たとえば公務員として働いている人がリベラルな政治家を支持しているけれども、働いている現場は保守的な傾向が強いとか。誰しもそういう矛盾のなかで生きていかなければならないし、そういうことを含めて年を取らないとわからないリアルがありますからね。
- 素朴な質問ですけど、そんななか人生は楽しめている感じですか?
PRIMAL - 楽しむっていうか、生活していくなかでときは過ぎていくし、友達も少ないしね(笑)。これまでは息子が野球をやっていたからその付き合いも多かったけど、息子は札幌の高校に行って寮に入ったから。
- 「息子にピッチャーやらせてみっか/横峯パパみたいな発想で美化」(“自我”)っていうリリックがありますね。
PRIMAL - そう(笑)。
- クラブやヒップホップのつながり以外の生活圏でPRIMALさんがラッパーであることは知られていたりしますか?
PRIMAL - いまはヒップホップが世間的にも流行っているし、あるとき一部で俺がラッパーであることが知られたんですよ。息子の小学生時代の野球のチームで自分がコーチをやっていたりもしたから、そういう付き合いのある親御さんのあいだで。そのチームで高野山の軟式野球の全国大会に出場して、試合後にみんなで食事しているときに、父母の人から「羽鳥さん、やっちゃってください」って言われて。
- すごい(笑)。それは、試合の総括とか反省をフリースタイルでやってくれ、と。
PRIMAL - そうそうそう(笑)。いちどやったら、毎回試合のあとにフリースタイルで試合の総括をするようになって、元々強いチームだったけど、結果的に勝ち上がって全国で準優勝できた。それ以外でも納会とかでフリースタイルしてくださいって言われてやることもありましたね。
- めちゃいい話ですね。しかし、こうして話を聞いていると、いまの生活をしながら14曲あるフル・アルバムを作り上げるモチヴェーションを保つのはかなり大変だったのでは?
PRIMAL - いやあ、大変でした。大変だし、曲は作っていたけど、普段の仕事があるから、セカンド・アルバムの『Proletariat』のころみたいに自分がプロモーションで動くことは絶対にできなかったし、最後は小林さん(鎖グループ代表)に頼りました。毎日仕事のあとに駐車場に行って車のなかでトラックを聴いて少しずつリリックを書いていきましたね。
- 車のなかで?
PRIMAL - 札幌時代は、妻は仕事があったから釧路から離れられなかったけど、息子と川崎から呼んだ実の母親と3人暮らしをしていたから、家のなかでは曲をかけられなくて。それで車のなかでトラックを流してました。1曲を何百回、ときには何千回も聴くことがあるから。
- そんな聴くんですね。
PRIMAL - 聴きますね。それで少しずつビートにハマるリリックや韻、表現を書き溜めていって。1日1小節しか進まない日もあるし、半分は寝てる、みたいな(笑)。
- はははは。眠る男(笑)。
PRIMAL - 寝て、書いて、寝て、書いてのくり返し。
- “自我”で「ニヤリと笑えるヴァースを書きてえ」とラップしていますけど、それが感じられるのが僕は好きですね。
PRIMAL - ああ、言ってますね。二木くんは前作に比べてもそう感じました?
- そうですね。いろいろありますけど、たとえば“愛憎”の「解脱する事できないPRIMAL/下手打つ事を恐れるスパイラル/現代の方法として雪詰まる/自己啓発してじっとしている始末」とか、どう落とすんだろうと楽しみながら聴き進められるラインで。
PRIMAL - そうやって聴いてくれたら本当にいいですね。そこを目指しているので。狙っているわけではないけど、上手くいったなというリリックをどんどん積み重ねていって。ただ、同じようなフロウとか同じ言葉を何回も使っているなっていうのはあって、ラップのハメ方はこれまで自分が持っているもので勝負するしかなかった。
- ところで、鎖グループから出すことになった経緯は?
PRIMAL - SAWが、俺がアルバムを作っていることを漢に伝えてくれて、漢から電話がきたんですよ。「鎖でやらないか?」と。その流れから、“追憶 feat. SAW, BES & 漢 a.k.a. GAMI”もできて。
- そうだったんですか。これはタイトル通り過去を回想する、ヒップホップで言うBack In The Day系の曲ですね。
PRIMAL - BES、漢とはやりたかったし、やるつもりだった。SWANKY SWIPEの『BUNKS MARMALADE』にはやられたしね。BESの目に浮かぶ臨場感のあるリリック、ラップに食らったから。ただ、この曲に関しては元々SIDE RIDE(PRIMAL、O2、GOから成るグループ。MSCはSIDE RIDEと、漢とTABOO1から成るILL BROSが合流して結成)とSAWでやろうとしていた曲だった。
- そうだったんですか! それは聴きたかった……。
PRIMAL - GOにはSAWがオファーしてくれたけど、「今回はできない」と断られて、O2には俺から直接オファーすると、やってみるということだったからトラックも渡したけど、「やっぱり書けない」と。だから、俺のリリックは、MSよりも前のSIDE RIDEの3人の時代のことを書いていて。GOの家が港区にあって、そこに毎週土曜日の夜中に集まってリリックを書いたり、そこからクラブに遊びに行ったり。

- RUMIさんとの共作曲“痺れ”も最高でした。
PRIMAL - RUMIとの制作は1年ぐらいかかりました。俺がサビで作ったつもりのリリックをRUMIに送ると、「これはまだ煽りだね。サビにはならないよ」って言われて(笑)。それで少しずつ煮詰めながら作っていった。
- RUMIさんのリリックには「チクチクと殺殺されちゃうから」という、かつてPRIMALさんとBAKUさんと共作した名曲“畜殺”(2004)をアレンジしたリリックがあります。
PRIMAL - RUMIはtwitterで自分はパラノってる、PRIMALは一貫していてすごい、みたいなことを書いてくれたけど、RUMIも3人も子供を育てているし、そうとう頑張ってやってるでしょ。この曲を作るために電話でいろいろ話しましたね。「“痺れ”ってどういうことだ?」とか。アルバムのなかでいちばん話し合いをして作った曲で、最終的にRUMIも一人で録るのがテンション的に無理だからっていうことで、札幌まで来て一緒に録りました。
- SIDE RIDEの曲もいつか実現してほしいですね。
PRIMAL - O2とも電話で近況を話して、そのときに「曲を作ったり、作品を出す意欲がすごいな」と言われたけど、俺が逆にO2に言ったのは、作品を出せば聴いてくれる人が絶対いるからやった方がいいんじゃないということ。いちど売れた有名な歌手だってテレビに出なくなったあともディナーショーをやったりしてファンが集まって音楽を続けてやっていくわけだから。自分のようなラッパーでもこうして聴いてくれる人がいるのが実感できたし、O2にも間違いなくファンがいるよね。鎖からMSのEP『1号棟107』(2015)を出したけど、あのときもしO2がいれば、アルバムに発展したと思う。それぐらいMSに欠かせない存在がO2だから。
- 最後に、PRIMALさんにとってラップすることとは何でしょうか?
PRIMAL - 自己主張だよね。それがラップする理由の大半を占めている。ライヴもやっていきたいけど、年も取ったし、リリックが飛ばないようにするためにはかなり練習しないとならないし、毎週末やるのは絶対ムリ。でも、こうしていろんな人に聴いてもらえて本当にありがたいですよ。

Info

PRIMAL『Nostalgie』
発売日:2025年4月25日(金)
配信リンク:https://ultravybe.lnk.to/nostalgie
Tracklist
1.Prologue Produced by Halt
2.囚われの身 Produced by DOGG a.k.a. DJ PERRO
3.自我 Produced by MICHITA
4.これから Featuring Yas I am Produced by ながさきたけし
5.惰性 Featuring MAD KOH Produced by DOGG a.k.a. DJ PERRO
6.現実 Produced by MICHITA
7.東区午前0時 Produced by DOGG a.k.a. DJ PERRO
8.記憶 Produced by DOGG a.k.a. DJ PERRO
9.愛憎 Produced by MICHITA
10.痺れ Featuring RUMI Produced by ながさきたけし
11.Slender Produced by Yusaku Arai
12.追憶 Featuring SAW, BES and 漢 Produced by DOGG a.k.a. DJ PERRO
13.人生 Produced by DOGG a.k.a. DJ PERRO
14.Epilogue Produced by DOGG a.k.a. DJ PERRO
――――
Executive Producers : PRIMAL for MUJO RECORDS and DOGG a.k.a. DJ PERRO for Nico Studio
Mastered by I-DeA at FLS 6th Lab
Recording and Mix Engineer : Yuzuru Tatsuta at SMASH STUDIO
A & R Administration : Masahiro Kobayashi for 9SARI GROUP
Cover Art Design : Taboo1
Cover Art Direction : DOGG
All Recordings MUJO RECORDS
P+C 2025 9SARI GROUP
All Rights Reserved