【インタビュー】5Leaf 『bud』| もっと自分のかっこいいを届けたい

広島出身のラッパー5Leafが、1stアルバム『bud』をリリースした。幼少期からダンスに親しんでいた彼女は、その延長でヒップホップと出会い、次第に音楽への関心を深めていった。一緒にダンスを習っていたという姉の影響もあり日本語ラップに触れるようになりZORNやOZROSAURUSを熱心に聴くようになり、ヒップホップの魅力にのめり込んでいったという。

もともと歌うことも好きだった5Leafは、配信アプリで「歌ってみた動画」を投稿し始め、その中でこれまでは聴くものだったというラップを自身で表現するようになる。その流れの中で、次第に自身の楽曲制作にも挑戦し始め、ラッパーとしての道を歩み始めた。本作『bud』には、そんな彼女の音楽的ルーツやこれまでの歩みが色濃く反映されている。

取材・構成 : 渡辺志保

撮影 : 横山純

5Leaf - 自分が生まれた時、両親はもう離婚していたんですけど、(父親が)家にいた時もあって。お父さんというよりは「たまに来る、一応パパ」みたいな認識でした。

5Leaf - たとえば「ちょっとスイーツ食べよう」ってコンビニのスイーツを買った時に、サランラップ一枚の上にそのスイーツがポンって置かれている写真が残っていたりするんです。誕生日も、バターケーキっていうかケーキのスポンジだけがあって、そこにろうそくがボン!って。小さかった時はそれが普通だと思っていたんですけど、大きくなるにつれて「周りと違うな」と思うことが増えましたね。小学校ぐらいまで家族はめっちゃ仲が良くて、ママは病気だったけど、遠足の時はママなりにお弁当を作ってくれることもありました。だから小さい時の嫌な記憶とかは全然ないですね。小学校高学年ぐらいから家族の仲が悪くなっていったんです。でも今は、家族や自分のプライベートに対して心の余裕ができました。たとえば、今までずっとママとの関係性が悪くて自分への余裕もなかったから、ママが悩んでいても「うざい」とか「知らん」って感じのマインドだったんです。でも最近は、ママが怪我をしたり年齢的なことがあったり、「将来自分が家を出たらママが1人になるな」って考えたりした時に、今までにはなかった余裕が出来始めた。葛藤せずに、ママのために病院代を出すこともできるようになりました。

5Leaf - ダンスはもともと、お姉ちゃんとお母さんがやっていて、そこのスタジオがすごく安く通えるところだったんです。無料体験みたいな感じで受けに行って「楽しい」と思って、一時期家族3人で通っていました。先生がすごくいい人で、何とか続けられていましたね。

5Leaf - 続けていました。高校に入ってからは、「ウチはお金がけっこうヤバい」っていうのが目に見えて来た。「毎月、電気止まっとんなぁ」って。だから、(ダンスは)今やるべきじゃないんだろうなって思って辞めました。でも、小学生の頃から続けていたからすでに自信もついていたし、辞めたあとも友達と踊ったり振りを作ったりして動画を撮ることもありました。

5Leaf - そうです。(ダンスの先生が)ヒップホップしかやらない先生だったので、それがヒップホップだとも意識せずに聴いていました。

5Leaf - ステージに立って、人前でダンスを披露するという快感を覚えた時に「音楽っていいな」と思ったのは覚えています。大きくなるにつれ、「自分がやりたいのはヒップホップだな」と何となく思っていました。小学校高学年ぐらいの時、お姉ちゃんがAK-69さんの曲を聴いていて、そこから自分もディグるようになった。それからは、ZORNさんやMACCHOさんのラップを聴くようになりました。仕事に行く前とか歌詞を書く前にまず聴くのは、OZROSAURUSの"BJブルース"です。

5Leaf - 聴いていますね。お姉ちゃんは聴く音楽が幅広くて、二人でシェアし合うんですよ。Apple Musicのプレイリストも全部共有していて、毎回会う度に「新曲あった?」とか聴きあっていますね。けっこう私がチェックしないようなところまでチェックしているので、めちゃ楽しいです。姪もまだ小さいんですけど、もうバチバチにヒップホップを聴いています。"チーム友達"が出た時もめっちゃ歌っていました。

5Leaf - もともと、歌うことが好きだったんです。BIGBANG、2NE1とかのK-POPも好きでした。なのでステージに立って歌うことへの憧れはあって、「自分にもできるかな?」って思っていました。そこから実際に配信で歌ってみたり、友達とカラオケ行ってもみんなが“聴き専”になってくれる時期もあったりして。

5Leaf - 最初はTikTok LIVEかなぁ。その前に別の配信アプリで少しだけ歌っていたんですけど、TikTokでやってみたいなと思って。規定の人数以上のフォロワーがいないとライブ配信ができないルールがあったから、初めの方は毎日欠かさず投稿をしていいました。フォロワーが増えるまで毎日頑張って、やっと配信ができるようになってからはライブ配信でHYとかBoAの曲を歌っていました。あとは、特徴を掴むことが得意だったので、色んなアーティストの発声を真似てみたり。ヒップホップが好きだったから「ラップでもできるのかな」と思って、Awichさんの"Bad Bitch 美学"や"RASEN in OKINAWA"にも挑戦してみました。

5Leaf - めっちゃ嬉しかったですね。自分の曲が作れるなんて思ってもいなかったし、地元にいて実家にいながら、一人で曲を作るのって難しいことじゃないですか。それと、周りの人たちも小さい頃から私が歌うのが好きだってことを知っているから、地元の子達も「やっとだね」って喜んでくれて。

5Leaf - ざっくり言うと、確実に前には進めたなと思うし、やっとそこに立って地に足をつけられた感覚もあります。それに、音楽を通して出会う人もめっちゃ増えたから、それもすごく大きいですね。

5Leaf - 最初、アルバムを作るというよりは”とにかく新しい曲を作っていくこと”を目標にして取り掛かりました。未完成のものも含めて、作っていた曲が数曲あったんです。その中には消化しきれなかった曲や、納得いくところまで作り込めなかった曲もあって。でも1回、自分の作ったデモを聴き直してみたら「この曲格好良いな」「このメロディやばいな」って良く思える曲もあったから、チームの人たちと意見を共有する中で「(アルバムを)作ろう」と決めました。

5Leaf - "人狼"や"If I were a man"とか。どちらかと言うと、これまでの自分の曲は過去のバックグラウンドとか深みのある曲が多いんです。だから、シングルとしてリリースした"NO RULES"は逆にライブで盛り上がる曲を作りたくて制作した曲。制作していく中でやばい曲になりました。

5Leaf - 疾走感みたいな感じでバーっと書いて、けっこう気合が入ってましたね。

5Leaf - メロディに関しては、ヒップホップに限らず色んな音楽を聴いてきたというのは間違いないと思います。ロックもK-POPも聴くし、K-POPって特にメロディがキャッチーだったりするじゃないですか。あとはAdeleとかも聴くし。だけど、その中でも自分の好きな感じのメロディは固まってはいるのかなと思います。自分が(ビートを)聴いて、一度鼻歌とか宇宙語で録音したものをチェックしたときに「これ来た!」っていう瞬間はありますね。このメロディで行こう、みたいな。

5Leaf - ノートにひたすら書いています。外出先だったらケータイにメモったりするんですけど、基本は家で、自分のスイッチを入れてからリリックを書くので、時計も見ない。ノートとパソコンを置いて書いています。

5Leaf - そこまでガチでやらないと。(リリックを書くことは)ずっとやってきたことでもないし、自分の中では今、勢いがついてきているつもりなので、ここでちゃんと曲を作らないと、これから自分の思ったようにはならないと思っています。

5Leaf - 私が知らない地元の友達の知り合いが「この前、遊んどったら車で5Leafの曲が流れたんよね」って言ってくれているという話を聞いたり、「友達とプレイリストをシェアしたら5Leafの曲がめっちゃ入っとったよ」って教えてくれたり。最近も、買い物に行ったら店の人が私のファンの方だと言ってくれて。

5Leaf - ネイルサロンでも、「え?!5Leafちゃん?!」ってびっくりされて、「家族でめっちゃ聴いとるよ」と言ってくれて。そういうふうに、応援してくれている人の顔を直接見た時とか、人伝いで聞いた時に「マジで頑張らんとな」って思いますね。それこそ、お父さんとたまに連絡を取ることがあるんですけど、ある日電話がかかってきて「ワシの職場のヤツが5Leafのファンなんじゃ。今度、色紙持って行くけぇ!」って言われて。「CDは出んのんか?」とかも聞かれますね(笑)。

5Leaf - どうなんだろうな。治安はもちろん悪いし、しがらみとかもすごいんです。ここと関わったら何かやばい…みたいなこともあるから、自分を自分で守らなきゃいけない街かもしれないです。でも、ずっと地元にはいたいなと思っています。

5Leaf - しました。20歳を過ぎてから。というのも、高校は友達と「この制服可愛いよね」って選んだファッション系の高校だったんです。呉市の隣の広島市内にある学校で、地元から1時間かけて行ってました。だけど、高校1年生の終わりぐらいの頃に、家の経済状況がまじでヤバい状況になったんです。電気とかガスとか毎日なにかが止まっていて。それで、休学して現場仕事や居酒屋でバイトをし始めました。制服を持って夜の仕事に行って、着替えてから学校に行く生活で。そこで留年している同じ学年の男の子と繋がったら、その子は「通信で学校に行きよる」と。だから私も通信に切り替えました。そうしたら、その子が高2の終わりぐらいの時に交通事故で亡くなってしまって。2人でずっと頑張りながら「卒業しようね」と話していたから、「自分は働きながらでも絶対に卒業しよう」って思って、5年かかってやっと卒業したんです。

5Leaf - まず『bud』は、色んな目線からより深く5Leafを知ってもらえる内容になっていると思うので、改めて聴いてくれる人ももちろん、そこで初めて自分を知ってくれる人もいっぱい増えてくれたらいいなと思っています。あと、大きな会場でワンマンをやりたいというのは、一つの目標ですね。やっぱり、今よりもっと何十倍もの人に聴いてもらいたいし、「夢が叶った」って言えるところまでは絶対に行きたいです。それに、もっと自分に自信を持てるようになりたいとか、ライブが上手くなりたいという思いも強いです。ただかっこいい音楽を作れるだけじゃなくて、その見せ方やアウトプットの仕方についても、もっと自分の”かっこいい”を届けられるように努力したいなって思いますね。今年は年女なので、頑張ります。

5Leaf - 本当に全然現実的じゃないけど、ZORNさんとは絶対にいつかご一緒したいという目標はずっとあります。

5Leaf - やっぱり一番好きなアーティストだし、自分が一番食らったラッパーなので。自分もZORNさんを食らわせるようなラッパーになって、二人のパワーでヤバい曲を作りたいなっていうのはワクワクしながら想像しています。でも、そのためにはまだまだずっと頑張り続けなきゃいけないわけだし、それが逆に活力にもなりますね。

Info

【1st Album / bud】by 5Leaf
2025/2/11 release

https://linkco.re/2saszPAR

1.Grab a Dream (New / Lyric MV配信予定)
2.Way of Life
3.Destruction
4.GO (New / MV配信予定)
5.人狼 (New)
6.If I were a man (New)
7.3AM
8.NO RULES
9.bittersweet
10.dreamin… (New)

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