【インタビュー】FLAT LINE CLASSICS『THROW BACK LP』| あえて合わせにいかない

MCでもありビートメーカーでもあるリーダーのSart(サルト)、DJ・MCのDaz(ダズ)、ラッパーのBIG FAF(ビッグ・ファフ)、Weird the art(ウィルド・ザ・アート 以下Weird)、現在活動休止中であるSoloBright(ソロブライト)の5名からなるヒップホップクルー「FLAT LINE CLASSICS(フラット・ライン・クラシックス)」。メンバー全員が東京・品川出身の97年生まれながら、楽曲は飾らない90’sクラシックサウンドをベースとし、5名全員がMCであることを生かした熱気の溢れるマイクリレーが特徴だ。

そんな彼らがファーストEP『AUTHENTIC』、セカンドEP『Take Roots』を経て、満を持してアルバム『THROW BACK LP』を2023年にリリースした。そんな東京のヒップホップを盛り上げる彼らに、幼馴染ならではの地元の話やアルバムの制作秘話、トラップが主流のヒップホップシーンにおいてクラシックサウンドを続けていく意義について、話を聞いた。

取材・構成 : MINORI

撮影 : KK

- まず、みなさんが出会ったときのことを教えて下さい。

Sart - SartとBIG FAFとWeirdは本当に地元が一緒なんですよ。小学校も同じで。BIG FAFとWeirdは特に家が近くて、大井町線、池上線エリアの旗の台のあたりが地元です。僕はどっちかっていうと武蔵小山とか戸越銀座あたりが地元で。Dazと僕は高校で同じクラスで、蓋開けたら隣の中学校でした。

Daz - 僕も武蔵小山が地元です。

Sart - そういう地元・品川の繋がりですね。

- なるほど。今のメンバー全員が揃って顔を合わせたのはいつだったんですか?

Sart - それぞれが友達ではあったけど、このメンバーが全員揃ったのは高校3年生くらい。BIG FAF、Weird、Solo Bright(現在休止中)とは少年野球のチームまで同じで。

- 野球チームまで。

Sart - BIG FAFの父親が監督だったんですよ。もともと自分がピッチャーでBIG FAFがキャッチャーで自分とバッテリーを組んでたんですが、成長するにつれてBIG FAFがしゃがめなくなって。自分がキャッチャーになったりもしましたね。

- なかなかいいエピソードですね。みなさんが住む地元の品川はどんな街ですか?

BIG FAF - 商店街や銭湯が多くて、落ち着いた街ですね。結構おいしいお店も多いんです。

- そうなんですね。よくメンバーで行ったりするお店とかもあるんですか?

BIG FAF - 武蔵小山の『鳥勇』っていう立ち飲みもできる焼き鳥屋さんは待ち合わせしながら呑んで、そのまま小一時間いるとか多いですね。つくねが美味しいんです。あとは、『ぶらいとん』っていう油そばのお店は地元で一番うまいです。

Sart - あとはお店じゃないですけど、 BIG FAFの実家ですかね。飯がうまいです。あと量がとにかく多い。

-(笑)。地元で仲が良かったメンバーのようですが、どういった経緯でクルーを結成するに至るんでしょう?

Sart - BIG FAF以外は元々ヒップホップが好きで、高校のときから学校で誰の曲がやばいみたいな会話もしてました。そのとき確かフリースタイルダンジョンが始まったばかりで、高校生ラップ選手権の影響もあって僕たちの世代でラップバトルも流行ってて。音源ももちろん聴いてたんですけど、それとはまた別でラップバトルも好きで、地元でサイファーもしてたんですよ。

Weird the art - 自分とDazは高校のときからずっと参加してて。

Daz - 地元で見つけた「武蔵小山サイファー」に参加させていただいてました。今有名になりつつある人たちが結構参加してて、例えば018だったり、バトルでいったら百足くんとか。あとはEco Skinnyとかもそこにいて。人数は多いときでは20人ぐらいいましたね。林試の森公園あたりでやってました。

- すごいメンバーですね。そのサイファーはだいぶ鍛えられそう。BIG FAFはいつごろラップを始めたんですか?

BIG FAF - 自分はずっと日本のポップスを聴いてたのでヒップホップ自体聴き始めるのが遅くて。ラップを始めたのは地元でサイファーが始まったぐらいからで、仲間内で「やってみる?」みたいな感じになって、何も知らない状態で始めました。

左 : Weird the art 中央左 : BIG FAF 中央右 : Sart 右 : Daz

- なるほど。無茶振りから始まったんですね(笑)。Sartくんはビートメーカーでもありますが、いつごろビート作りを始めたんですか?

Sart - 実は最初にビートを作ってたのはDazなんですよ。

Daz - 確かSartの誕生日に、武蔵小山のハードオフでMIDIコントローラーみたいな、MPCまではいかないみたいなものを誕生日プレゼントとして買ってあげたんです。そこからかな?

Sart - 3ヶ月くらいで使わなくなっちゃったけど(笑)。でもハマるキッカケはそこだったんです。DazとWeirdの二人はサイファーをやってたので、仲間内でも同じような遊びを始めたんです。で、ビートも自分とDazで作るようになっていって。ちょうどSoundCloudとかも流行ってたんで、曲ってこんな簡単に作れるんだって気づいて、「俺らもやってみるか」という感じで音楽の制作も始めましたね。その頃からぼんやり今のクルーの枠組みみたいなものはあって、曲をちょこちょこ上げるようになって。

- 「Flat Line Classics」というクルー名はいつ決まったんですか?

Sart - BIG FAFの叔父さんがヒップホップではないんですけど、作曲家みたいな仕事をしてる人で。そこにみんなで初めてレコーディングとはどんなものか知るために使わせてもらって。その流れで、その人が出ていた 『ROUSH TOKI DOKI BAR』という青山蜂で定期的に開催されていたイベントに少し出演させていただくことになりました。確かそれに出る前に名前を決めた覚えがあります。

- ちなみに、名前の由来はなんですか?

Sart - 当時から日本でもヒップホップだとトラップ系が流行ってたんですけど、メンバーはどちらかというと90’s のクラシックが好きで。確か“Flat Line”だけだと、確か“死”みたいな、あまりいい意味ではないんですけど、そこに“Classics”を付けることで逆に「死んでも廃れない音楽をつくりたい」っていう意味合いを自分たちで込めて、この名前を付けました。

- なるほど。造語的な感じで名付けられたんですね。先程紹介してもらった武蔵小山サイファーに参加していたラッパーも、現在トラップ系の曲を多く作っている方が多いですが、当時からメンバーがブーンバップを好きだったというのは自然な流れだったのでしょうか?

Sart - みんな一貫して憧れていたのが仙人掌さんで。そういう音楽を一番聴いてきたし、ライブもよく見に行っていて、「これが一番かっこいい」という共通認識みたいなものがありました。もちろんトラップを聴くのは好きですけど、自分たちでやるならこういうスタイルがいいと。

- 他にもメンバーのルーツとなったアーティストの方はいますか?

Weird the art - やっぱりKANDYTOWNですね。

BIG FAF - 自分はWeirdに勧められて初めてちゃんと聴いたヒップホップがKANDYTOWNでした。それが衝撃で、その一年後くらいに今働いているGROW AROUND(KEIJUやMIKIなどラッパー/アーティストも多く働いていた、現在も多くのラッパーが買い物に訪れるセレクトショップ)に入って。

Sart - KANDYTOWNは最初から割とクラシックなヒップホップをやってたと思うんですけど、あの頃の俺らにはそれが逆に新鮮に聴こえて。あとは映像が凝ってたり魅せ方も上手くて、「あ、これが東京のヒップホップシーンなんだ」って最初に聴いて思わされました。

Weird the art - あとはちょうど音楽をやり始めた2015、2016年くらいがC.O.S.A.さんとKID FRESINOさんのアルバム『Somewhere』が出たタイミングで、それがかっこよくて、こういう音楽をやりたいと。

BIG FAF - あとはGROW AROUNDでお世話になっていたB.D.さんの『BALANCE』とか、MIKIさんの『137』もよく聴いてて。仕事も一緒にする中でさらに色々なことを学ばせていただきましたね。

- 日本のヒップホップだけでなくUSのアーティストも当時からよく聴いていましたか?

Daz - 聴いていた順番としてはUSの方が早いですね。

Sart - 好きだったアーティストはメンバーによって各々違って。僕は上に姉がいたので比較的聴き始めるのも早くて、映画の『8 Mile』とかを見てヒップホップに入ったのもあって、エミネムは昔からよく聴いてました。あとはJAY-Zも好きでしたね。コテコテなんですけど、"Empire State of Mind"の和訳を見ていて、「ヤンキースの選手以上にヤンキースキャップを有名にしてやったぜ」っていうリリックがすごい好きで。

BIG FAF - 自分もJAY-Zには影響を受けました。でも実はUSをちゃんと聴き始めたのはGROW AROUNDに入ってからで。とりあえず先輩に教えてもらったデカいラッパーを中心に聴き始めました。Big Punを最初に勧められたり(笑)。あとはSmoke DZAの“Santos party house”とか、Joey Bada$$の“For my people”あたりも好きで、常にこんな曲を作りたいと思ってます。

- 大きいラッパーから聴くって切り口は中々斬新ですね(笑)。WeirdくんとDazくんはどうですか?

Weird the art - 自分はEminemを14歳くらいのときによく聴いてて。そこから雑誌の『411(フォーダブワン)』とかを読み始めて、A$AP Rocky、Tyga、Wiz Khalifaあたりを知って、ちゃんと聴き始めました。

Daz - 僕は、高校一年生のときにTSUTAYAで借りたKanyeですね。Sartと高校のクラスが同じだったので一緒に行って、勧められて借りました。その時借りたのは『Late Registration』ってアルバムで、それが自分の中では衝撃で。「なんだこれ、奇妙だけど気持ちいいぞ! 」っていう感覚は今でも覚えてて、自ら調べて音楽を聴くっていう、ディグることの第一歩になった作品だと思います。

- そうなんですね。あと、FLCと言えば、恵比寿BATICAがホームグラウンドになるかと思うんですが、いつからどういった経緯でそうなっていったんですか?

Sart - 元々BATICAで働いていた同い年のヒカル(SHINING TNKとしてDJ活動もしている)っていう子と仲良くなって。僕たちもまだ青山蜂でライブを始めたばかりの頃だったんですけど、いろんなイベントにブッキングしてくれて、そこからいろんな人と繋がって徐々にライブ活動が広がっていった感じです。なので僕たちの活動の中ではヒカルとの出会いも大きいですね。

BIG FAF - BATICAももちろん多いですけど、自分の職場の先輩の誘いでちょこちょこHARLEMとかVuenosとかでもライブに出させていただいたり。

- キーマンがいたんですね。FLCと言えば同世代の友達も多い印象なんですが、どうやってその輪を広げていったんでしょうか?

Daz - 各々がクラブでいっぱい飲んでましたね。

BIG FAF:すごい酒飲んで、いろんな人を輪に入れていくっていう。そのスタイルをBATICAの人にも気に入ってもらえたみたいで(笑)。

Daz - もらったギャラより飲むっていう。

- BATICAスタイルですね。

Daz - 最初は全員で遊びに行くっていうスタイルだったんですけど、そこから徐々に各々一人で別のところに遊びに行くようになって。その友達がまた友達を連れてくるみたいな感じで徐々に広がっていった気がします。

- BATICAではDazくんが主催のイベントも毎年年末にやってますよね。

Daz - そうですね。確か4年前の年末くらいから『Deepdrunker』っていうイベントをやらせていただいてて。タイミング的にはファーストEPを出したくらいですかね。最初は忘年会を身内だけでやろうっていう話をヒカルとしていて、特にライブとかは組まないラウンジだけのイベントだったんですけど、それが予想以上に良くて。楽しくなっちゃって、2年目からHi'Specさんだったり、三面ゴシップだったりとゲストをお呼びして、ちょっと盛大にやらせていただいたっていう。

- 最初は身内の忘年会イベントだったんですね(笑)。

Daz - どっちかっていうと一般のお客さんに向けたイベントというより、忘年会として業界の方や周りの友達に楽しんでもらうっていうテーマでやってましたね。そこから徐々に恒例行事になっていきました。

- 話は変わって新しいアルバムについても伺いたいんですけど、制作自体はどれくらいかかったんですか?

Weird the art - 11月はレコーディングで潰したよね。

Sart - 2か月くらい結構タイトにやりましたね。今はこんな感じですけど、制作してるときは初めてぐらいスタジオがピリピリして。「歌詞書けてないとかありえない」みたいな雰囲気でやってました。それは個人的にはすごい良い印象で。良い緊張感だったかと。

BIG FAF - 結構ピリピリしてたっすね。Sartは「リリック書けてない」とか言われても基本無視、みたいな(笑)。

Sart - みんな短い時間の中で全力でやってたし、僕も自分のレコーディングが中々うまくいかないっていうのもあったし。

BIG FAF - もう怖いくらい追い込んでたんで、「大丈夫、大丈夫」って少し和らげたりして(笑)。

Weird the art - 音楽で疲弊したけど、良い期間だったよな。

- すごい。いつもの雰囲気だと考えられないですね。制作自体はどうやって進めていったんですか?

Sart - 制作はほとんどビートありきですね。元々僕の家が半分スタジオみたいになっているので、プリプロまで詰める借り録りは僕の家に集まって。今回の作品に関してはレコーディングはちゃんとスタジオを借りて録りました。

- 各々、リリックはどうやって書いてますか?

Weird the art - みんなちょっとずつスタイル違うよな。

BIG FAF - 俺は基本ビートを聴いて家で書いてきます。たまに例外でその場で集まったときに録っちゃう日もあるけど。でも今回のアルバムに関してはみんな持ち帰って書いてきた曲が多いっすね。

Daz - やっぱり今回のアルバムは特にビートがすごくよかったんで。「これだ」っていうリリックが出ないときにはもったいないから書きたくなくて。メンバーみんな、しっかり良いものができるコンディションのときになるべく多く書くっていう感じだったかと思います。

Sart - 一回スタジオで録り終わってから、やっぱり納得いかなくて別日にやり直した曲とかもあるしね。

- リリックを書く時はいつもどんなことをインスピレーションに書くことが多いですか?

BIG FAF - ビートを聴いて、まずはざっくりとした共通のテーマをみんなで決めますね。その後に自分の近況とかも混ぜたりして。あとは聴いてて情景が浮かぶようなリリックは意識しました。

Sart - 今回のリリックでやっぱり多いのは、現場の雰囲気ですよね。クラブで飲んでるときの情景だったり、地元でどういうことをしたとか、そういう空気感が伝わるようなリリックが多いと思います。

Weird the art - そういう要素も多く入れつつ、あとは社会を風刺するようなリリックを俺とDazは書いてました。社会を俯瞰で見て感じたことをエッセンスとしてリリックに入れたり、人が本当は当たり前に気づかなきゃいけないけど意外と見逃しているようなことを、曲を通して気づかせたいっていうのはこだわりました。

Sart - 分かりやすく、WeirdとDazの二人は昔から俯瞰した、第三者的な目線の歌詞が多いかもしれない。

Daz - その中でも今回は俯瞰しすぎないっていうのは意識しました。結構気を抜くと抽象的になりすぎる傾向があったので。やっぱり前作までは、SartとBIG FAFの二人は直接的な意味が多くて、自分とWeirdは抽象的なリリックが多かったので、今回のアルバムではそこのバランスをもう少しすり合わせるっていうのは意識しました。

- リリックもそうですけど、音楽的な部分でも今までの作品とだいぶ変化がありましたよね。Sartくんは“BEAUTIFUL MIND” で歌ってたり。

Sart - そうですね。FAFとかはクルーの中で割とクラシックなラップをしてることが多いんですけど、僕は割と柔らかい曲調のものも好きで。その曲に関しては、結構アルバムのバランスを意識して、ゴリゴリのぶん殴る系の曲はクルー全体でやって、二人とか少人数でやる曲で奥行きを出すというか、緩急を付けました。

- 確かに、アルバムのビートのバランスが良いと思いました。収録する曲を選ぶ際のこだわりなどありましたか?

BIG FAF - バランスは特に気にしたっすね。全部同じ雰囲気の音だと聴いてて飽きちゃいそうだなとか、テンポも緩急を付けたりして。

Sart -  先行でリリースされた“FLAT LINE CLASSICS”についてはDJ SCRATCH NICEさんにビートを送ってもらった際、全員一致して絶対にこのビートでやりたいと決まりました。この曲がアルバムの核となっていて、他の曲の雰囲気を決めていきました。

- 今作は言わずもがなビートメーカーが豪華でしたが、どのように繋がっていったんでしょうか?

BIG FAF - 直接会いに行ったり、DMをして送っていただきました。

Sart - 結構FAFとWeirdに連絡をしてもらうことが多くて。WeirdにもDJ GQさんに連絡してもらったりとか。彼らは初手コンタクトするときの攻撃力が強いんですよ。

Weird the art - 元々知り合いの人とかは少なかったんですけど、基本的にはイベントで被って、お話して連絡先を交換するっていうのが多かったんじゃないですかね。

- 新しいアルバムの中で各々が特に印象深い曲とかありますか?

Daz – 自分はdhrmaくんとの“BACK FRONT DOOR”ですね。dhrmaくんは昔から知っていて、よくSILENT KILLA JOINTさんとの『DAWN』とか、仙人掌さんのリミックスを聴いていて。一緒に曲をやりたいなってタイミングでイベントがたまたま運命的に被って、そのときにお願いした流れでした。自分の中では、冷たく澄んだ川のほとりに立たされたイメージみたいな。それとは真逆の東京の街を俯瞰してリリックに落とし込むには絶対にdhrmaくんのビートが必要だと思っていたので、一緒に作れて嬉しかったですね。

Weird the art - 絞れない。でも“ONE”か“ZI PANG”かなと。素直にビートがすごい良くて、シンプルにハマりました。自然とこの曲でライブしてるイメージが湧いてきて、リリックを全部頭に入れてから良いバイブスでレコーディングに臨めた気がします。

Sart - 僕もいっぱいありますけど、絞るなら“UNTITLED 24/7”ですかね。活動を始めてから今に至るまでのストーリーがリリックになっていて、本当にこのアルバムをまとめあげるような曲。小学生で同じ野球チームだった話とかがそのままリリックになってたり、FAFのお父さんの車で流れてたサザンの曲を引用してたり。メンバー内でかまし合う様な雰囲気も好きでしたね。最後の曲で自分たちをもっと深く知ってもらって、次の作品ではさらに音楽の幅を広げて行けたら嬉しいです。

BIG FAF – 自分がビートで初っ端全員くらったのはDJ SCRATCH NICEさんの"FLAT LINE CLASSICS"ですね。この音でラップしたいって心から思えました。

Sart - 最初にビートを聴いたときにその場で曲名を自分たちのクルー名にしたいっていうのも決まったよね。

BIG FAF - でもやっぱり“HOT MAGIC”も印象深いです。実はリリックを書き直したんですけど、最終的に一番情景が見えてから書けた曲ですね。MASS-HOLEさんのビートが夜のイメージだったので、いつもお世話になってる恵比寿BATICAについて書きました。

- “HOT MAGIC”はDazくんのフックもすごくキャッチーですごい良いですよね。これからもBATICAでアンセムになりそうな気がする。

Daz - そうっすね。自分でもびっくりしました。

BIG FAF - フックの勢いを考えてバランス取るために俺はちょっと控えめにしたもんね(笑)。

Daz - あれは最初8小節しか書けなくて。でもすごくその8小節のまとまりがよかったんで、フックにさせてくれって。

BIG FAF - みんなライブで歌ってくれそうだよね。

Daz - 今まではライブでみんなが歌ってくれるような曲があまりなかったので、今回こそは叶ったかなと思います。

- 曲を作るときにライブのことは結構意識するんですか?

Daz - すごい意識してますね。

Sart - 今までDazがDJをやりながらラップもするっていう結構負担が大きい感じだったんですけど、バックDJをRyoくん(Ryo Ishikawa)がしてくれるようになってから前に出れるようになったので、Dazの勢いがさらに増したっていうか、みなぎってる感じで。そんなこともあって、ライブも初っ端いっちゃえよみたいな感じで、曲の順番が決まりましたね。

- ライブの際のこだわりとかってあるんですか?

Sart - 最近は特にいろんなジャンルの人たちが出るイベントに出させていただくことも多いので、なるべくその場の流れを一回止めて、自分たちの世界を作るってことを心がけてます。

Weird the art - あえて合わせにいかないという。例えばDJにイントロを長めに掛けてもらったり。

- 確かに、最近は同じヒップホップのジャンルといえど、かなり音楽性が幅広くなってますよね。

Sart – そうですね。自分たちの音楽性で言うとクラシックなブーンバップのジャンルに行き着くと思うので、イベントが被ったり、自分たちもライブに足を運ぶことが多いのは仙人掌さんとか、DOWN NORTH CAMP周りのアーティストだったりが最近は多いです。でもこの前出演したHARLEMのイベントがおもしろくて。僕たちの前はeydenが所属する98jamsで、その後がTokyo Young Visionで、若手クルー合戦みたいな感じになってて。

- そのイベントも遊びに行かせていただきましたけど、アウェイかと思いきや、FLCのライブも相当盛り上がってましたね。

Weird the art - トラップ系の曲が好きな客層がほとんどでしたけど、逆にクラシックなサウンドは変わり種で。だからそこで自分たちの色は出せたかなっていう。

Daz - やっぱりいいと思ったものにはちゃんと反応してくれるよね。でもやっぱり最近はヒップホップが好きっていうよりも特定のアーティストのライブが楽しい、好きだから行くっていう人が多い気がしていて。フォロワーの多さだったり、話題性だったり、そういう指標がないとまず見てもらえないみたいな。そこを少しずつ崩していけるようにっていうのはありますね。

- そういう中でもやりがいは感じている?

BIG FAF - 今若手でこういう音楽性をやっている人が少ない中で、自分たちがどれだけ広められるかみたいな感じがしていて。

Sart - 僕らよりさらに若いお客さんにもこういう音楽があるっていうのを知ってほしいし、繋げていきたいっていう思いもありますね。ずっとヒップホップを聴いてきた大人の人にも、こいつらは間違いないなって思ってもらえたら嬉しいです。

- 今年はクルーとして、なにか新たに挑戦したいことなどありますか?

Sart - まだ僕たちはほとんど都内での活動しかしてないので、やっぱりいろんな地方のイベントに出て、まだ聴いたことない人たちにも届けたいし、ライブ感も実際に味わってほしいです。それこそさっきのBATICAの話じゃないですけど、僕たちはみんなで飲みたいって感じなので、友達を増やす感覚でそれを地方でもやっていきたいですね。フェスとかも出演したいです。

Daz - 作品も沢山出したいです。とにかく今年は止まらずにいきたいですね。

Info

アーティスト: Flat Line Classics
タイトル:  THROW BACK LP
レーベル: P-VINE, Inc.
仕様: CD / デジタル
発売日: 2023年1月11日
品番: PCD-83038
定価: 2,530円(税抜2,300円)
Stream/Download/Purchase:
https://p-vine.lnk.to/omM90m
*CDとデジタルでジャケットが異なります

<トラックリスト>
1. NO FASHION
Prod by meraki  / Lyrics: BIG FAF, Weird the art, Daz
2. CORTEZ
Prod by DJ GQ / Lyrics: Sart, Weird the art
3. BIG STEPPER
Prod by Sart / Lyrics: Weird the art, BIG FAF, Sart
4. FLAT LINE CLASSICS
Prod by DJ SCRATCH NICE / Lyrics: Daz, Sart, BIG FAF, Weird the art
5. BACK FRONT DOOR
Prod by dhrma / Lyrics: Daz, BIG FAF
6. ZI PANG
Prod by Sart / Lyrics: Weird the art, Sart, Daz
7. ONE
Prod by DJ GQ / Lyrics: Weird the art, BIG FAF
8. MELLOW DOWN MARKET
Prod by Sart
9. HOT MAGIC
Prod by MASS-HOLE / Lyrics: BIG FAF, Daz, Sart
10. BEAUTIFUL MIND
Prod by DJ SCRATCH NICE / Lyrics: Sart, Daz
11. UNTITLED 24/7
Prod by GRADIS NICE / Lyrics: BIG FAF, Daz, Weird the art, Sart

RELATED

【インタビュー】DYGL 『Cut the Collar』| 楽しい場を作るという意味でのロック

DYGLが先ごろ発表したニューEP『Cut the Collar』は、自由を謳歌するバンドの現在地をそのまま鳴らしたかのような作品だ。

【インタビュー】maya ongaku 『Electronic Phantoms』| 亡霊 / AI / シンクロニシティ

GURUGURU BRAIN/BAYON PRODUCTIONから共同リリースされたデビュー・アルバム『Approach to Anima』が幅広いリスナーの評価を受け、ヨーロッパ・ツアーを含む積極的なライブ活動で数多くの観客を魅了してきたバンド、maya ongaku

【インタビュー】Minchanbaby | 活動終了について

Minchanbabyがラッパー活動を終了した。突如SNSで発表されたその情報は驚きをもって迎えられたが、それもそのはず、近年も彼は精力的にリリースを続けていたからだ。詳細も分からないまま活動終了となってから数か月が経ったある日、突然「誰か最後に活動を振り返ってインタビューしてくれるライターさんや...

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

Floating Pointsが選ぶ日本産のベストレコードと日本のベストレコード・ショップ

Floating Pointsは昨年11月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Elaenia』を引っ提げたワールドツアーを敢行中だ。日本でも10/7の渋谷WWW Xと翌日の朝霧JAMで、評判の高いバンドでのライブセットを披露した。