【インタビュー】C.O.S.A.『Cool Kids』|全てがヒップホップである
C.O.S.A.が1月にリリースしたニューアルバム『Cool Kids』はクラシックアルバムである。盟友のRamzaやRyo Kobayakawa、所属するSUMMITの作品ではお馴染みとなったドイツのプロデューサーRascalなどがシンプルかつ強度のあるトラックを提供。その上でC.O.S.A.は地元や家族、仲間、そしてアーティストとしての孤独な心境などを、自身の体現するヒップホップを通して誠実に表現している。
FNMNLではリリースを記念してWWW Xで開催した初のワンマンライブの翌日に話を訊くことができた。それぞれの楽曲の背景についてふんだんに語ってくれた。
取材・構成 : 和田哲郎
撮影 : 横山純
- まず、昨日は初めてのワンマンライブでしたがいかがでしたか?
C.O.S.A. - 全然余裕でした。二時間でも出来るなって感じでしたね。昨日はちょっと、声が本調子ではなくて。RENくんとかZAIちゃんはヒヤヒヤだったと思う。
- 観てる側からは全然感じられなかったですね。
C.O.S.A. - 友達も「声が枯れてて逆にカッコよかった」って言ってましたけど。楽しかったっすね。やってみると、いざ本番になると終わるのが早いよってみんな言ってましたけど、本当にその通りで。一時間半ちょいやったと思うんですけど、全然すぐ終わりました。
- 『Chiryu-Yonkers』の曲も披露していたのは上がった人も多いんじゃないでしょうか。昔の曲と今の曲でサウンドテイストとか違うと思うんですけど、根本的な部分は一貫しているんだなというのを感じて。
C.O.S.A. - 確かに。共通する部分は多いですね。『Cool Kids』っていうタイトルも、“6号公園”って曲のフックのところから来ているので。ずっと同じこと言ってるなっていうのはあります。
- アルバム『Chiryu-Yonkers』が2015年で、『Girl Queen』が2017年じゃないですか。2021年は『FRIENDS & ME』がありましたが、『Cool Kids』はいつから作っていたんですか?
C.O.S.A. - 『FRIENDS & ME』と同時期です。『FRIENDS & ME』が5曲ぐらい出来た時に”Cool Kids”が出来て、それがその時の自分に凄くしっくり来てて。「こういう曲と『FRIENDS & ME』の攻撃的な、トラップとか色々やってる感じと分けて作った方がいいかもしれないな」って途中で思い始めて、それで『FRIENDS & ME』ともう一個『Cool Kids』っていうアルバムを2個作ろうと思って、そこからスタートしました。なので一番最初に出来た曲は“Cool Kids”ですね。
- それはいつ頃だったんですか?
C.O.S.A. - 去年の頭かな。でも“Ghost Town”が去年の頭に出来てるから、もっと前かもしれない。一昨年の年末かもしれないですね。
- じゃあ、2019年の末頃なんですね。それまでも制作はずっとしていたんですか?
C.O.S.A. - 今思うと、ちゃんとはやっていなかったですね。サボってたって訳じゃないですけど、制作に関してはそういう部分があったかもしれないです。
- じゃあ、“Cool Kids”とかが出来たタイミングでエンジンがかかってきたというか。
C.O.S.A. - 『FRIENDS & ME』を作る時にエンジンがかかったって感じですね。
- それは気持ちの変化みたいなものがあったんですか?
C.O.S.A. - 凄く正直な話をすると、子供が出来て一年半とかは正直音楽をやる余裕が無くて。色々あったんで、あんまり集中出来ない時が多くて。今思うと音楽に真っ直ぐ向いていなかったのかもしれないですね。一年半ぐらい経って子供が一人で遊んでくれるようになってからは自分の時間も出来るようになったんで、また音楽で実現したいことの欲が出てきた。トップになりたいとか、ワンマンやりたいとか、そういう欲に正直にやってみようと思ったというか、それでやり始めた感じです。
- 一年ちょっとぐらいでこのアルバムが出来てるということですが、自分はもっと昔から作っていたのかなという気もしていて。それぐらい強度がある作品だと思ったんですよね。
C.O.S.A. - 実際は一年かかってないかもしれないですね。
REN (C.O.S.A.のA&R) - まあ、一年半ぐらいですかね。でも、多分構想とかがずっとあって、それが形になって音になったのが一年半ぐらい。実際にはもっと長いのかもしれないですね。
C.O.S.A. - 単純に、ビートが決まらない時期とかがあったので。ビートがあればすぐ出来たと思うんですけど。ビート探しも結構時間をかけたというか。
- 今回はRamzaさんだったりRyo KobayakawaさんだったりRascalなど旧知のビートメイカーはいつつ、自分も知らないビートメイカーも沢山いて。ビートはどうやって探したんですか?
C.O.S.A. - (Rascal以外の)海外の人たちは、みんなタイプビートのプロデューサーです。タイプビートからいっぱい探してコンタクトを取って、「エクスクルーシブ売ってくれ」って言って貰いました。普段からタイプビートを探すのが凄く好きなんです。
- ビートの選び方にしても、今回のアルバムは凄く一貫してると思うんですよ。音数が凄く少なくて、上物がそんなに派手に鳴っていなくて。オーダーして作ってもらったくらい統一感あると思いました
C.O.S.A. - いや、オーダーしたのは一個も無くて。単純に自分の好みでそういうビートが集まったのかもしれないですね。自分の中での感覚なんですがヒップホップで展開をつけるのが好きじゃなくて。基本的にはループのビートの上でやるのが好きで、リリックとかフロウで展開をつけていくのが好きなので。あんまりビートに展開があるものは選ばないかもしれないですね。
- ビートにストーリーを語らせるんじゃなくて、ストーリーを語るのはリリックってことですかね。
C.O.S.A. - ......そこまで深く考えてないですけど(笑)。単純に好みって感じですね。展開があるものは歌える人の方が合うなと思ってて。自分は歌えないので。スピットするラップは基本的にはループものの方が、普段聴く時も好きですね。
- 面白いですね。とはいえ、今回は歌っぽい曲もありますね。
C.O.S.A. - ちょっとはありますね。オートチューンに助けられてやってみました。
- 最初に出来た曲が“Cool Kids”ということで。この曲は昔、地元であったことを歌っていますが、C.O.S.A.さんのリリックの面白さって、この曲だとメインとなるストーリーがありつつ、でもこの曲だとそこにNate Doggのラインが唐突に出てきたりするっていうのが、自分のストーリーだけじゃなくて他の人を登場人物に配置することで、外の世界みたいなものに繋げさせてくれる感覚があるなと思っていて。だからリリックの書き方をどうやっているのか凄く気になるんですよ。一筆書きじゃ出来ないんだろうなと想像しているんですが。
C.O.S.A. - 基本的には一筆書きですね。あんまり書き直したりすることは無くて。その曲を書こうと思ったら最初から最後までバーって書いて終わりって感じで。でも、人名とか唐突な言葉とかは意図してやってます。それは普段自分が音楽を聴く時でも、それに喰らうことが結構多くて。長くやってるのもあるし、パンチラインとか人名とかは「ここに配置しよう」とか、「このビートのここに入れよう」って意図してやってます。
- さっきから自分の予想が全て間違っていますね(笑)構成が染み付いているというか。
C.O.S.A. - そこは自分のスキルが向上してきたと思いますね。狙ってやれるようになりました。
- Nate Doggのラインとかを聴いた時に、宇多田ヒカルさんが『初恋』をリリースした際に公開していた座談会を思い出しました。宇多田さんは「ずっと同じことを言ってるリリックは全然自分は面白いと思わない」とか、どこでびっくりさせられるかを凄く考えてると話していて。
C.O.S.A. - それは凄く思いますね。俺はいつも「引っかかり」って言ってるんですけど、それを曲の中で作れるかどうかが大事だっていうのを、友達とリリックの話をするときとかに言ってますね。曲の中に違和感を自然に組み込めると、聴いた人の頭の中にずっと残るっていうのは思ってて。ちゃんと出来るようにやってますね。
- そういう部分はいつから意識していたんですか?
C.O.S.A. - いつですかね。でも、自分が普段好きな曲、ヒップホップだけじゃなくてJポップも聴いていると職業柄分析みたいなことをするんですよね。そういう時に、そういうものが共通してあるなと思うんですよ。サカナクションとかがまさにそうで。突拍子も無い音とかが入ってるじゃないですか。ああいうのは狙ってやってるんだろうなと思うし。あと、瑛人の“香水”が出た時は友達とかとすぐその話になって。やっぱりあれだけ唐突にドルチェ&ガッバーナが出てくると凄く耳に残る。「あれはあそこで勝ってるよね」っていうのは話してました。
- 面白いですね。C.O.S.A.さんってすごくヒップホップ的であるのと同時に、ポップミュージックとかからの影響があるんですね。DJでも普通にポップスもかけたりもしますし。ラッパーの歌詞って結構単線的というか、自分が感じたことや起こったことをザーって書いて、それもカッコいいとは思うんですけど、唐突に別の世界のことが入ることで、ただのリアルじゃなくて曲としてのリアリティが増してるなというのは今作を聴いて思いました。
C.O.S.A. - ありがとうございます。よくラッパーが書くのは、どこかに行って、その旅のことを書いたりしますよね。日記みたいなラップっていうか。それは自分はあんまり好きじゃなくて。例えば“Mikiura”とか“1AM in Asahikawa”とかは、その土地で思ったことについて書いてはいるんですけど、日記的な「ここで何があって、誰に会って」っていうラップじゃなくて、何を表現したいのかっていうのを表せるように、説明的にならないようにしています。
- “Cool Kids”だと「デカいアメ車が~」っていうところはアメ車とかが地元にあったんだろうなっていうのは想起出来るんだけど、そこからNate Doggがいないってラインでまた別のものに繋がるというか。それを狙ってやってるというのは聞けてよかったです。
C.O.S.A. - あんまり説明しちゃうとね、面白くないんで。
- “Blue”でも「青」っていうのが様々な感情を表す色として描かれてますよね。悲しいものの代名詞でもあるし、夜から朝になっていく時の青空でもあるし、複層的に青っていう色が敷き詰められていることにグッと来ましたね。
C.O.S.A. - “Blue”は、奥さんのプレゼントを買いにGUCCIに買い物に行ったんですよ。その時にちょうど名古屋のGUCCIに青いイルミネーションがズラッと並んでて、それと掛けてて。おっしゃる通り落ち込んでる時のブルーだったり、夜から朝に変わる時に気分が前向きになる瞬間だったり、そういうのを一曲として表現した感じですね。
- この曲はジャズっぽい要素がありますが、結構オールディーズっぽいものが好きなのかなと。シナトラとかもDJで掛けたりしていましたが、そういう部分は映画などから影響を受けたんですか?
C.O.S.A. - いや、ジャズは普通に好きで。家でも聴いてるし。単純に今はトラップが流行ってから、日本だけじゃなくてムードのある曲が凄く減ったと思ってて。もう大人だし、一曲そういうのはやりたいなってずっと思ってて。今回村岡(夏彦)さんがピアノを弾いてくれたんですけど、元々あのビートにはピアノが無かったんですよ。「所々にピアノの音を入れたいんで、一旦これで頭からケツまで弾いてもらっていいですか?それをエディットするんで」って言ってやってもらったら完璧で(笑)。全く削るところが無くて。音質だけ自分でエディットさせてもらって、そのまま使いました。でもほんと、ピアノが入っただけで全然違う曲になったっすね。ピアノが入る前はもっとストイックな曲だったんですけど、ピアノが入ったことで凄くムードのある曲になりました。
- 情感があるというか。昨日のライブでも凄く良かったです。
C.O.S.A. - “Blue”は自分もアルバムの中で一番好きな曲ですね。
- その理由はなんですか?
C.O.S.A. - 単純に良い曲だと思います。奥さんに対する自分の気持ちみたいなものも、凄く素直に歌えてると思うし。前のアパートに住んでる時に録ってたんですけど、奥さんが仕事から昼に一回帰ってきて、俺がそれに気づかずにちょうど録ってて。それを奥さんが廊下で聴いてて、ちょっと泣いたって言ってました。
- めっちゃ良い話です。
C.O.S.A. - そういうエピソードもありますね。
- “5PM”も家だったり地元の曲ですが“Blue”は全体的にロマンチックですが、こっちは乾いた始まりというか。
C.O.S.A. - そうですね。それも前のアパートにいた時の話で、前のアパートに住んでた時の話が今回のアルバムは結構多いんですけど。さっきも言ったようにちょっと色々あって、その時は自分もちょっと精神的にしんどくて。そういう時の気持ちの曲もちょくちょくありますね。“5PM”もそこまで悲しい曲ではないですけど、自分は元々夕方が凄く嫌いで。子供を迎えに行くのが大体5時ぐらいなので、子供を迎えに行く毎日になってからはそんなに嫌いじゃないというか。そういう移り変わりを曲にしたっすね。
- 前に夕方が嫌いだったというのはどうしてですか?
C.O.S.A. - なんなんですかね。小学生の頃からなんですけど、一番何もやることが無いというか。学校から帰ってきて、夜になるとテレビとか遊びに行ったりとかもあるけど、4時、5時、6時の辺りってちょうど何もやることがない。西日って言うんですかね、あれもダルいし(笑)。好きじゃないんすよね。
- 娘さんが生まれたことで見え方が変わったんですね。
C.O.S.A. - 多少ですが。“Cool Kids”を書いた時も、自分が毎日昔の通学路と同じ道を通るんですけど、いつも一人で帰ってる女の子がいたんですよ。いっつもその子一人なんですよね。「あの子また一人でいるわ」と思いながら何日か見てて。俺も小学校低学年の時にあまり友達がいなかったんで、一人で帰ってたんです。それを思い出して。その時に思ったのが、自分と重ねてどうとかじゃなくて、自分の娘がああなったら嫌だなっていう風に思って。その時に自分を振り返る曲っていうのも“Chiryu-Yonkers”とかを書いた時と今では思うことが全然違うんだなと思って。自分のことというより娘がどうこうって思うようになったんで。それでもうちょっと自分の昔のこととか、自分のことを違う表現で歌えるのかもしれないと思って“Cool Kids”を書いたんですよ。奥さんと娘と三人でいる時間が一番長いので、それがアルバムとしてのきっかけだったと思いますね。
- 自分一人でずっといたら過去のこととかも同じ視点でずっと見ちゃうけど、娘さんが生まれることでそこの視点が広がったんですね。同じ場所のことを歌っても、ずっと同じ表現ってあり得ないじゃないですか。それも表現のリアリティに反映されてるのかなと思っていて。例えば今作でも、地元っていうのも家があって奥さんと娘さんがいて、ある種落ち着く場所でもあるけど、一方では過去に辛いことがあったりとか、しがらみもある場所だったりして。どこの視点で見るかによって全然変わってくるっことで、奥深いものになっているのかなと思いました。
C.O.S.A. - 昔の曲と言ってることが違う部分ももちろんあると思うんですけど、そういう変化をちゃんと表現出来たなって。ずっと同じ人間ではないので変わらないところもあるけど変わった部分もあるので、そういうのも組み込めたらいいなと思ってましたね。
- 次が“Feels Like Summer”ですが、この曲はトラックが凄く良いなと思って。自分は結構UKのドリルの人たちがやるような乾いたダンスホールみたいなものが好きで、そういう感触があるというか。でもC.O.S.A.さんにとって夏って凄く楽しい感じのものじゃなくて、こういうちょっと乾いた感触があるというか。
C.O.S.A. - この曲に関しては10代の頃の、若かった時の夏のような何とも言えない感じ......毎日ちょっとむしゃくしゃしながら街に出るような、そういうモヤっとした感じを10代の頃の夏に例えて話してる曲ですね。ビートも確かUKの人で、UKドリルじゃなくてもう少しブラジリアンっぽい、より最近の感じのビートを作ってる人で。その人本当にビートが良くて、何曲か聴かせてもらってそれでやりました。
- 少し強引にUKのラップの話をさせて欲しいのですが、UKのラップが好きだと思うんですけど、UKのラップを聴くようになったきっかけはありますか?
C.O.S.A. - 元々ダブステップとかが凄く好きだったんですよ。
- それはCOSAPANELLAとかでも感じましたね。
C.O.S.A. - なので多少そっちにアンテナはあったんですけど、まさにグライムって言われてる時、Skeptaの最初の頃とかは正直サウンド的に自分はハマらなくて。『Konnichiwa』とかも当時最初は来てなかったんで。
- 確かに『Konnichiwa』の時のSkeptaって、まだ音数も多いし派手な感じはしますよね。
C.O.S.A. - 今の方がよりミニマルな感じがして好きですね。でも、やっぱりPop Smokeになるのかな。Pop Smokeから逆輸入じゃないですけど。あとは『トップボーイ』。『トップボーイ』は世界中でUKのラップを聴く人が増えたきっかけなんじゃないですかね。
- あそこで繰り広げられる風景って、全然アメリカとも違うし。あのどんよりした天気と、あのファッションと。
C.O.S.A. - フレッシュでしたね。「あ、ナイフなんだ」とか(笑)。あれは結構影響大きかったかもしれないです。
- 自分の音楽性にも影響を与えていたりはしますか?
C.O.S.A. - 生活が違いすぎるので直接的な影響は無いですけど、サウンド面ではありますね。あと単純に、去年とか一昨年ぐらいだとちゃんとしたラップを聴こうってなるとUSで探すよりUKで探した方が早いっていうか。ちゃんと上手い、スピットしてるラッパーがいっぱいいるし。UKのラップの人ってライブでも声あり音源をあんまり使わない人が多くて、昔ながらの「誰が一番ライブでカマしたか」みたいな文化が多少残ってるっぽくて。その辺が凄くフィールしたっすね。
- 確かに。「Dizzee Rascalはポップになったからグライムじゃない」とか、そういう要素がUKの強みかもしれないですね。
C.O.S.A. - クラッシュじゃないけどそういう文化があるから、ちゃんと歌ってカマせる奴が強いっていう。Skeptaがずっとリスペクトされてるのもそういうところなのかなと思いますね。
- 自分もそうなんですけど、USのラップとかはちょっと聴かなくなってる部分もありますか?
C.O.S.A. - うーん。物によるって感じですかね。もちろん聴いてますけど、むちゃくちゃずっと聴いてるみたいなものはちょっと減ってるかもしれないですね。最近自分はアフロばっかですね。アフロが今は一番聴いてて楽しいです。音も良いし。Wizkidのアルバムとか、本当に音良いですからね。たまにアフロやってる人のエンジニアのインタビューとかを読むんですけど、USのエンジニアとやってることが全然違って。そういうのも面白いですね。基本的にはパーカッションのミックスから始めるって言ってて。パーカッションがアフロビートの中だと一番大事らしいですね。機材とかも違ったりして。“Feels Like Summer”はそのバイブスも取り入れつつ。
- 焦燥感みたいなものも凄く感じられる曲ですよね。次が“Sunday Freestyle”ですが、仙人掌さんに”Monday Freestyle”って曲があり、この曲にも参加していますね。
C.O.S.A. - タイトルはまさに“Monday Freestyle”から来ていて。自分はあの曲すごく好きなので。で、佐々木のNHKの番組収録があった日にみんなでいて、JJJの家に泊まったんですよ。で、Jに「ビート聴かせてよ」って言ったらそのビートがあって、ヒデオくんとJのラップもあって、そこに自分もその場でバーって書いて、フックとヴァースを足して作ったって感じですね。
- じゃあ、最初は別にC.O.S.A.さんの曲ということではなくあったんですね。
C.O.S.A. - あの二人もそれを曲にするとは決まってなくて。「じゃあこれちゃんと曲にしましょう」ってことでみんな録り直してもらって、ちょっとリリックも書き直して。でも曲名にある通りフリースタイルみたいな曲なので、打ち合わせして何回もやりとりして作った曲じゃなくて。自分も15分ぐらいで書いて、ほとんど一発録りみたいな感じでした。日曜日に録ったので、そのまま“Sunday Freestyle”っていう。
- なるほど。この曲はラップのカッコ良さみたいなところにフォーカスしてるのかなと思いました。
C.O.S.A. - そうですね。フリースタイルの良さみたいなものは残せたらと思って。自分もたまにYouTubeにフリースタイルみたいなものをあげてて、もちろん書いてるんですけど、自分がフリースタイルってタイトルつける時のルールとして「一回も書き直さない」っていうのがあって。それもそういう風にやったっすね。
- それは過酷なルールですね。
C.O.S.A. - でも、フリースタイルってつけるならそういうものだから。それは自分の中のルールとしてやってますね。
- 個人的には曲数的にも“Sunday Freestyle”から前半と後半に分かれているのかなと思って。“Hood Boy"から“Delirium”辺りは凄く苛烈な曲というか......。
C.O.S.A. - 暗黒ゾーンに入っていきます。
- この辺りは、さっき仰っていた精神的にキツかった時に書いたものなんですか?
C.O.S.A. - “Hood Boy”はそういうわけじゃないんですけど。“Hood Boy”はビートがあって、フロウとして面白いアプローチが出来ないかなっていうか。後は自分がやったことがないフロウをやってみたくて。自分の中でアトランタっぽい感じ。土っぽい、ベタっとしたフロウでオートチューンちょっとかけてっていうのをやってみた感じです。
- やってみたいスタイルがあったんですね。
C.O.S.A. - 自分はいつも違うフロウとかをやってみたいタイプなので、同じ感じでは曲を作りたくなくて。それはちょっとやってみたっす。
- ”Delirium”は「せん妄」って意味なんですね。この曲は凄いなと......。
C.O.S.A. - アルバムの中で一番好きな曲は“Blue”なんですけど、一番よく出来た曲だなと思ってるのは”Delirium”ですね。それこそ”知立Babylon Child”とか“Girl Queen”と同じように、かなり昔から構想はあったんですよ。ただビートだったり自分のスキル不足だったりで、何回か挑戦してはいたんですけど実現出来てなくて。今回ようやくビートもフロウも曲全体の仕上げとしてもバッチリ、100%自分が表現したいと思うように出来た曲ですね。ちょっと自分を褒めてあげたいです。
- 凄くマッドなC.O.S.A.さんが表現されてるなと。
C.O.S.A. - 単純に自分が思う日本の若者の、自分自身は若者じゃないですけど、一番抱える問題って精神的なメンタルヘルスのところだと思うんですね。それに凄く引っ張られてる人っていうのをよく見るし、社会全体のちゃんとみんなが取り組まなきゃいけない問題だと思うんですけど。上手い言葉が見つからないですけど、精神的な病気とかで犯罪をしちゃったりとかっていうのも多いじゃないですか。そういうのを見てて、自分も10代の時に病院には行ってないんですけど鬱病というか、そういう時があって。今は全然大丈夫なんですけど、そういう人の気持ちも多少分かるし。自分もムカついたり落ち込んだりすると攻撃的になるタイプなんで、それを曲にしたいなっていうのはずっと思ってて。色んなパターンを考えたんですけど。もっとセンセーショナルな曲もあったんです。誰かを殺しに行くとかっていうストーリーテリングで。でもそれは作った時に「これは違うな」と思って。俺が表現したい心のモヤモヤを表現してるものじゃなかった。今回の“Delirium”は自分の中にもう一人の自分がいて、本当の自分はそのもう一人の自分が考えてることや、やろうとしてることが全部妄想だっていうのをわかってるんだけど、そのもう一人の自分に凄く引っ張られて、ずっと誰かに追っかけられてるような気がして、もう一人の自分が自分を殺しにくるっていう状態の歌です。
- 自分の中で戦ってるというか、内側でそういう葛藤や戦いみたいなものがあるっていうのが凄く感じられる曲ですよね。「邪魔をしたら殺す」ってところがフロウ的にもめちゃめちゃ......。
C.O.S.A. - あれももちろん第三者に言ってるんじゃなくて、せん妄状態にある時の自分がもう一人の自分とお互いに言い合ってるというか。そういう感じですね。
- 最後のヴァースのところは、制作をすることは薬にもなるし、逆もあるという。実際に制作にやられちゃうということはありますか?
C.O.S.A. - ありますね。やっぱりずっとやってると。特に自分の歌詞みたいなタイプだと、結構自分を掘り下げることになるので、多少持ってかれちゃったりっていう時はありましたね。でも最後の歌詞でも言ってる通り、Kendrick Lamarも曲作りが自分のセラピーになるって言ってるっすけど、もちろんそれもあるけど逆もあって。それが自分の精神的な助けになる代わりに、曲作りを一生終えられないというか。曲を作らないとまた悪化していくじゃないですけど、それが結局ドラッグとかと一緒というか。モルヒネみたいに、痛みは一瞬和らぐけど、ずっとやっていかなきゃいけないっていう感じですね。
- 何かを作る人っていうのはこういうことと戦ってるんだろうなっていうのが。
C.O.S.A. - みんながみんなそうじゃないとは思うんですけど、俺みたいなタイプはそうかもしれないですね。
- とても印象的な曲でした。
C.O.S.A. - ありがとうございます。なんか、曲のパワーを変な風に捉えて使う人がいなければいいですけどね。そういうことを意図したわけではないので。それを聴いて、そういう思いがある人が自分の思ってること、言葉に出来ない部分を表現してくれてるなと思ってくれて、少しでも救いになればなと思いますけど。
- “Blue”もそうでしたが、“Jungle”も凄くムーディーな曲ですよね。IOさんが客演で入ってる曲の中で一番IOさんに合ってる曲になってる気がしました。
C.O.S.A. - ビートがちょっとKANDYTOWNっぽいですよね。
- 昨日も言っていましたが、ずっとIOさんのファンだったということで。どういう部分に惹かれたんですか?
C.O.S.A. - 単純にカッコいい。見た目もだし、1stとかも凄く好きだったし。今回自分のヴァースとフックを入れて、「このビートのここに絶対IOくん合うな」と思ってお願いしたら快くやってくれたんで。曲自体も家族が出来て満たされていく自分との葛藤じゃないですけど......ラッパーにとっては誰にでもあると思うんですよね。ハングリー精神が無くなる、ゲットーな環境じゃなくなった時の歌詞の書き方みたいな。俺は正直あんまり無かったんですけど、多少満たされていた後の自分をジャングルに例えて、また一歩そこで成長して大きくなってやっていく。IOくんにもそれを伝えたら、自分の曲を書く時に同じことをちょうど思ってたって言ってくれたので、お互い想いのある曲に出来たと思います。
C.O.S.A. - “Jungle”は凄く好きですね。ライブでやってても楽しいし。あと単純に、IOくんに会う口実になるので(笑)。ライブに呼べばIOくんに会えるし。
- “My Field”は、基本的にこのアルバムはずっと抑制的で、それが一気に解放される曲ですね。
C.O.S.A. - “My Field”は結構最後の方ですね。13曲ぐらいにしたいっていうのがあって、明るい曲がちょっと足りないなって感じがして。そういう曲をビートから探してて、ちょうどこういうビートがあったんで作った感じですね。
REN - “Jungle”と“My Field”が最後でしたね。
C.O.S.A. - 連続ぐらいで作ったっすよね。
- ある種アルバムの中で語られてた葛藤みたいなものが一旦忘却されて、単純にブチ上がるというか。そういう感じがしますね。
C.O.S.A. - そうですね。ラッパーアンセムって感じでボースティングして。喜怒哀楽の中で「楽」じゃないけど、「喜」でもなく。無敵状態みたいなものがあって、そういう時の曲って感じですかね。フックにある「俺のやり方」っていうのは、後輩に言われたことがあって。「誰かに負けてるとか勝てないって思ったことってあるんですか?」って聞かれて、その時に考えてて「いや、ないよ」って。「自分の一番いいところってラッパーはそれぞれみんなあるから、俺のこの強みの部分では負けるところは無いって自分では思ってるよ」って話してて。その会話から生まれた感じですね。「これをそのまま曲にしたら面白いかもしれないな。自信を持って歌える曲かもしれない」って。ちょうどビートがあったので、それが合わさって次の日ぐらいに出来ました。
- ふとした会話を後で思い出して「これを曲にしてみよう」となることも多いんですか?
C.O.S.A. - 結構みんなあるって言いますけど、俺はあんまり無いかな。アルバムではその曲ぐらいかもしれないですね。でも、自分で歌ってても聴いてても楽しくなってくるっていうか。「頑張ろう」って思えますね。
- 次は昨日も渋谷について歌ったと言っていましたが“Ghost Town”ですね。
C.O.S.A. - まさに『あんじょうやっとります』で来た時に。二泊三日ぐらいしたんですよね。で、なんか一日丸ごとオフの日があって。何もやることが無くて、ずっと渋谷を歩いてて。松濤ってところに入り込んでいって、何も知らなかったんですけど「すげえ家ばっかあるわ」って思って。ずーっと松濤を歩いてて、まさにコロナの緊急事態宣言の時で。新幹線も一人もいなかったし、名古屋とか俺の地元にも人いなかったんですよ。でも渋谷に来たらむっちゃ人いて、「渋谷やっぱすげえな、別世界だ」と思って。同じ国とは思えなくて。それがきっかけで出来た曲ですね。
- でも、“Ghost Town”っていうのが両義的でもあるのかなと思って。渋谷も人はいるけど凄く寂しい街って感じもしなくもなくて。
C.O.S.A. - みんな何かを求めてフラフラしてる感じですよね。もちろんそれは自分の中でも思って書いたっす。
- そういう意味で繋がってる部分もあるというか。街っていうものがそういうものってことも言えるかもしれないですけど。
C.O.S.A. - 自分が地元にいる時、特にコロナであんまり家から出られない時と、渋谷に来てみてその差に凄く驚いたのと、当時自分が地元で思ってたようなこと、大変な時期でもあったのでそれと比較して思いを吐露した感じの曲ですね。思ってることを素直に書いた感じです。ラップしてても力強くなるような曲ですね。
- 次が“Baby”ですが、聴いてると“Mikiura”は本編と切り離されているような感じがあって。“Baby”が本編の最後って感じがするんですよね。
C.O.S.A. - かもしれないです。“Baby”は歌物を一曲やりたくて。自分の前の『FRIENDS & ME』でも「歌物のラップにブーイング」とかそういうことを言ってるんですけど、「自分がメロディをつけてラップをするならこういう風にやるよ」っていうのを一個提示したくて。Cee Lo Greenの“FUCK YOU”ってあるじゃないですか。あのノリでやりたくて。凄くメロディアスなビートで、メロディもつけたラップなんだけど歌詞は攻撃的なことを言ってるっていうか。笑えるような、面白おかしくおちょくってるような曲をやりたくて作ったっすね。
- その話を訊くと、確かにフィーチャリング相手はCampanellaさんしかいないですね。
C.O.S.A. - 完璧ですね。そういう部分なら彼はお任せなので。“Baby”は、“Ghost Town”もそうですけど、小さいクラブのフロアライブとかで俺もCampanellaもベロベロに酔っ払った状態で歌うと楽しいだろうなって。Campyとは長いんですけど、一緒にライブでやれるような曲はあんまり作ったことが無かったんで、今回はライブでやれるような曲を作ろうって言って作ったっすね。もう三回歌ったんですけど、昨日のワンマンが二人とも一番良い感じに歌えてた。あのノリでやれたら最高だなって思います。
- メロウなんだけど、仰った通りそういう両義性みたいなものがあって。
C.O.S.A. - “Baby”ってタイトルで、イントロも「Baby~」とか言ってるからみんな「惚気た曲なんだろ?」って思って聴いてたら「てめえの節穴ぶち込むリリック帳」っていう。そういうのが面白いかなって。
- この始まりもめちゃくちゃインパクトありますよね。
C.O.S.A. - 凄く好きですね。楽しいです。
- 最後が“Mikiura”ですね。この曲はボーナストラックっぽいと思ったんですけど、この曲だけある種現実感が無いというか、天国みたいな感じで歌ってる、ちょっと肩の荷が降りているような感じがして。三木浦っていうのがC.O.S.A.さんにとってそういう天国みたいな場所なのかなと思ったんですけど。実際はどういう場所なんですか?
C.O.S.A. - 元々東海地方では釣り場として有名な場所なんですけど。単純に自分はあそこが本当に好きで。行ってみたら分かるんですけど、凄く小さいんですよね。でも凄く小さいところに漁港があって山があって、そこに住宅が密集してるんですよ。で、車は一台も通れないんですね。小さい階段が住宅沿いにいっぱいあって、みんなそこを降りて漁港に車を停めて生活してるんですけど。それがジブリとかに出てくるような、「THE日本の漁村」みたいなところで。それが凄く好きで、よく行ってて。今回2021年にちゃんと音楽で頑張ってみようって思った時に、それの一番対義語じゃないですけど、自分の中で街に生きて音楽をやるのと反対にあったものが三木浦でリラックスしてる自分だったので、それを今回表現として使わせてもらった感じですね。あれは“Cool Kids”のMVを撮ってる時に、RENくんがスタジオの待ち時間であのビートを聴かせてくれて。「それめっちゃ良い」つって、その場で 1ヴァース目を書いて。RENくんに「このビートで俺が何を歌ってるのを聴きたいですか?」って聞いたら、RENくんが「未来」って言って、「わかりました」って言って1ヴァース目を書いたんですよ。RENくんがいなかったら出来てなかった。
REN - びっくりしたのが、普段はスタジオで作るので、リリックを書いてラップするところを見たことが無かったんですよ。でも、あそこの1ヴァース目はマジでそこで書いてて。その時は照明とかをスタジオで準備してる時間だったんですよ。その時に書いて、そのまま披露してくれて。
- 凄いですね。軽い歌詞じゃないのに。
C.O.S.A. - ビートのイントロを初めて聴いた時に、自分は三木浦が思い浮かんだんですよ。今でもそうなんですけど。あのビート、三木浦っぽいんですよね。今回堀田さんにビデオ撮ってもらった時も、イントロに三木浦の風景が出てくるんですけど、本当にまさに自分が最初にビートを聴いた時に思い浮かべた通りの映像がPVにあって。堀田さんに凄い「ありがとうございました」って伝えましたね。
- 本当に今がリリックとそれに乗せるフロウって意味で凄く充実した時期というか。それはご自身でも感じますか?
C.O.S.A. - 正直感じないですね。ずっと一定っていうか。制作意欲とか制作スピードみたいなものはあんまり変わらないと思っていて。ただ自分がやってるかやってないかだけで。頑張ってないわけじゃないですけど、今までに無い力が湧いてきてるみたいなことは特に無くて。全然まだ作れるし、やりたいこともまだあるし。今年はもう一枚出して、年末にもうちょっとキャパの大きいところでワンマンやるっていうのは決めてます。「やりたいな」じゃなくて。でも、俺は自分の家で録ってるんで、機材がある程度ちゃんと揃ったっていうのは大きいかもしれないです。どうしても自分が普段聴いてるUSのラップと比べてボーカルの音質が悪いなっていうのがずっと気がかりで。それで結構録ってて「嫌だな」で終わっちゃう時もあったんですけど、今は音質的にUSの第一線でやってる奴らのアルバムと比べて90点ぐらいのところまで来てますね。それは結構制作意欲に繋がってるかもしれないです。100点じゃないですけど。田我流とも言ってたんですけど、90点から100点に上げるまで、1点上げるごとに50万ぐらいかかる(笑)。
- 500万ぐらいかかるんですね(笑)。
C.O.S.A. - 100点にするには家の電源からまず変えないと。ここからはゆっくりですけど、音楽で稼いだお金をなるべく機材に投資するのはこれからもやっていこうと思ってます。
- 今回やっぱりC.O.S.A.さんに訊くなら、リアリティをどう考えてるのかなっていうことを凄く訊きたくて。自分もC.O.S.A.さんの曲を聴くとリアリティを感じるんだけど、「リアルなんだ」って感じるのって変なことじゃないですか。本当のC.O.S.A.さんの生活のことは知らないわけだし。でもそれがリアルなんだって思わせるのは曲とか歌詞の強度っていうのが物凄いからだと思うんですけど、リアリティみたいなものはC.O.S.A.さんにとって重要なものだと思いますか?
C.O.S.A. - そこは正直あんまり考えて書いていないんですけど、今回のアルバムに関して言えば完全にフィクションのストーリーテリングみたいなものは無くて、基本的には全部自分のことを歌ってるので、全部リアルって言えばリアルですね。でもお客さんが聴いてくれてそう感じるのは、自分が音楽活動で積み重ねてきた結果という部分もあると思いますね。一日二日で説得力って生まれるものじゃないので、それをやってきたって自負もあるし。真面目に正直にやってきたって自負もあるし、それは必然的に音楽としてみんなに伝わってるのかなとは思いますね。
- 単純にこの作品ってことじゃなくて、歩み全体を含めてということですね。
C.O.S.A. - 自分の目標じゃないですけど足りない部分としては、自分のことをまだ知らない人にも届けるような動き方をしなきゃいけないっていうのは、RENくんとか増田さんとも話してて。俺のことを知ってくれてる人に届けることは出来てるけど、また新しい層にも伝わるように、届けられるように考えて動かなきゃなと思ってますね。でも今回はRENくんの尽力もあって色んなところのプレイリストに入れていただいたりとか、カバーさせてもらったんで。多少新しい人に届けられたのかなと思いますけど。それを継続していけたらと思います。
- 今作の反響はいかがですか?
C.O.S.A. - 反響は、多分良いと思いますね。他の人たちがどれだけ普段リリースした時に何通DMが来るかは分からないですけど、毎日大量にくるので良いとは思います。でも結構心配してくれてる人がいて。「死なないでください」「大丈夫ですか?」みたいな。そういうDMくれた人も結構いたので。
- それもある種歌詞を本当にリアルなものとして受け取ってるってことですよね。C.O.S.A.さんは、色んな物の二面性みたいなものを凄く引き受けてると思うんですよ。それはフッドもそうだろうし、例えば家とかに対してもそうだと思うし。ヒップホップもただ単純に楽しい物ってことじゃなくて、裏では暴力だったりがあるってことも含めて受け止めて、自分のやり方で引き受けているような気がして。
C.O.S.A. - そうですね。でも、自分は本当に心底ヒップホップの人間だと思ってるし、ヒップホップもまだ大好きだから、生活の基準っていうか、全てがヒップホップではあるので。別にヒップホップで死んでも仕方ないぐらいには思ってますね。
- 前から言っていますよね。
C.O.S.A. - それは変わってないですね。自分から死にに行くとは思ってないですけど。そんな攻撃的なアレでもないし。でも、それだけ責任を持ってやってるっすね。自分の発言っていうか、曲とかにも影響力があるのもわかってるし。そういう責任感っていうのは持ってやってるかもしれないです。
- 年々そういう気持ちは強くなっていますか?
C.O.S.A. - うーん。でもやっぱりなってますね。単純に聴いてくれてる人が増えれば増えるほど、それは思います。ライブとか行っても泣きながら話しかけてくる人がいるので。「人生で影響受けました」みたいな。そういう人たちがいるから、ちゃんと真面目にやって作るっていうのはこれからもやっていこうかなと思ってます。
- 昨日ライブの時に自分の隣にいた男の子二人組が一曲ごとに「うわ~......」みたいにため息を漏らしていて。本編終わった後にも「これ絶対アンコールあるよね、“LOVE”やってくれるかな」って言ってて、終わった瞬間にも「マジかっこよかった......」って呟いてました。
C.O.S.A. - 確かに最近お客さんがまた一巡した感じがしますね。また一回り若い人も増えたなと思います。それだけ今ヒップホップ聴いてる若い子がどんどん増えてるんだなと思いますね。
- しかも、C.O.S.A.さんの活動も広がってるというか。LEXさんやralphさんやったり、そういうのもあるのかなと思いましたね。
C.O.S.A. - そうですね。フィーチャリングは凄く多くやらせてもらってるんで。本当に光栄ですよ。ralphくんとかLEXくんとかに呼んでもらえるのは。ほんとに10代の子達のスターですから。彼らに呼んでもらえるのは凄く嬉しいです。
- その流れで訊くと、今回は二回「ラップスター」って言葉が出てきますよね。それはちょっと年長者から若者に対しての警句じゃないですけど、若いラッパーに対して思うことなのかなと。
C.O.S.A. - ”Hood Boy”の方では自分が昔思ってた時と重ねて。若い奴らにも喝入れるじゃないですけど、「俺も同じこと思ってたし、俺もお前らと同じように地方で一からやってきてる人間だからお前らとスタート地点は一緒だよ」って。自分も若い頃はYouTubeでラッパー見ていいなと思ってましたから。
- もう一回“Ghost Town”で出てくる「こんな弱いラップスター」っていうのは......。
C.O.S.A. - それは自分のことですね。自分のことをラップスターとして見てくれてる人もいるので。そういう人たちは自分の弱い部分を想像してないと思うので、それを吐露するような。
- 「曲を書くたびに涙が出る」っていうのも、自分は他のアーティストから聴いたこともあるし、それこそさっき言った宇多田ヒカルさんのインタビューでも、宇多田さんは一曲出来るごとに大泣きするらしくて。
C.O.S.A. - そうなんだ。俺も結構大泣きするっすね。もちろん曲によるし“My Field”で泣いたりはしないんだけど、結構泣いちゃうっすね。曲が出来て初めて「あ、自分ってこういうこと思ってたんだ」って気づく時もあるし。自分の言葉に出来ない気持ちとかを整理してる時間でもあるので、みんなが聴いた時に「俺たちが思ってること言ってくれた」って思うのと同じように、自分も「俺ってこんな風に思ってたんだ」とか、逆に現実を突きつけられるというか、悪い意味で「やっぱりこうだよな、どう考えても」っていうのもあるし。それで泣いたりはやっぱりあるっすね。
- 前者のものは自分に対してのセラピー的な部分ってことですよね。
C.O.S.A. - でもやっぱり泣くっすね。あんまり良くないですよね、人のスタジオで。恥ずかしいっすからね(笑)。
- そのためにも自分のスタジオを100点にしていくしかないですね。
C.O.S.A. - あと10点どうやって上げるか。何を変えていいのか正直分からないんですけど。でも、この前ケーブル変えたんで92点ぐらいにはなってますね。今回のアルバムより古河電工のCMの時の方がケーブル変えた後なので、あっちの方が音がいいんですよ。次のアルバムはもっとボーカルの音が良くなると思います。
- 今年はもう一枚出すんですね。
C.O.S.A. - 一枚か二枚か。一個はそれこそアフロじゃないですけど、ちょっとそういう踊れるダンスホール的なものを夏ぐらいに作りたいのと、もう一個アルバムかEPか何か作ってもいいかなと思ってます。
- じゃあ、今は動き続けるというか。
C.O.S.A. - フィーチャリングとかもまた呼んでやりたいし。大先輩から「やろうよ」って言ってもらったやつとかもあるんで、そういうのも実現出来たらなと思います。
- 楽しみにしています。
Info
■Track List:
1. GZA Intro
2. Cool Kids
3. Blue
4. 5PM feat. 田我流
5. Feels Like Summer
6. Sunday Freestyle feat. 仙人掌, JJJ
7. Hood Boy
8. Delirium
9. Jungle feat. IO
10. My Field
11. Ghost Town
12. Baby feat. Campanella
13. Mikiura feat. KID FRESINO
M3 Additional Key : Natsuhiko Muraoka
M10 Cuts by DJ ZAI
Mixed by D.O.I. for Daimonion Recordings
Mastered by Tatsuya Sato (The Mastering Palace, New York City)
Cover Photo by cherry chill will.
A&R : Ren “Reny” Hirabayashi (SUMMIT,Inc.)
℗© 2022 SUMMIT, Inc.