【インタビュー】K2|自分の個性を発信していくのが何より大事

2021年にTrippie Reddのアルバム『NEON SHARK vs Pegasus (Deluxe: Presented by Travis Barker)』のカバーアートを手がけたことで注目を集めたグラフィックアーティストのK2。それだけでなく他にもUSではYoung ThugやJuice WRLD、iann dior、国内ではLEXやBAD HOPなどのアートワークを2021年手がけている。そんなK2だが、本格的にキャリアをスタートしたのも昨年に入ってからというのも驚きだ。

今回のインタビューでは彼のグラフィックデザインとの出会いや、USのラッパーたちとの仕事の裏側についても話を訊くことができた。

取材・構成 : 和田哲郎

 - 元々自分でグラフィックを作り始めたきっかけは何だったんですか?

K2 - 始めた当初は全然ヒップホップ系のグラフィックを作っていなくて。最初はゲーム、Eスポーツの方から入ったんです。専門学校にも行ったんですけど、専門学校でのデザインが、自分のデザインというよりは企業の商品デザインをできるようになる方向性で、自分がやりたいことと違うと思ったので二ヶ月で辞めたんです。それで「自分がやりたいことってなんなんだろう」って思ったら、前から音楽が好きだったので。でもその頃はジャケットのアートワークなんて全然出来ると思っていなくて、「どうすればアートワーク制作が出来るのかな」と思って。待ってても全然何もならないんで、とりあえず出来ることをやってみようと思ってファンアートを作り始めて。はじめは自分の方から「ジャケ写作らせて頂けないですか」って連絡したり、色々やりました。たまたま Trippie Reddのジャケットのコンテストがあって、「チャンスだな」と思ってたまたま参加してみたら受かって、そこから色々な人に認知してもらった感じですね。その流れでファンアートとかも続けて描いてて。

 - じゃあ、まだキャリアは本当に短いんですね。

K2 - 全然短いです。2021年の2月とかに始めて、こんな風になると思ってなくて。学校辞めてどうしようと思って、「上手くいくのかな」っていう心配があったんですけど。なんとか上手くいきましたね(笑)。

 - そもそも絵を描くとか、アートに興味を持つきっかけになったのはゲームが大きいんですか?

K2 - 絵は小さい頃から好きで、ゲームより絵を描く時間の方が多かったですね。あまり勉強は得意じゃなかったので、高校の時に「将来何しようかな」って思ってて、家族が「絵が上手いんだから専門学校でも行ってみたら?」って言ってくれて、「将来そっち系でも仕事出来るのかな」と思って、その時から考え始めましたね。アナログじゃなくてデジタルでデザインしてみようと思って。

 - 最初はもっとアナログで絵を描いていた感じだったんですか?

K2 - 最初は落書き程度の作品で、SNSに投稿するわけでもなくノートに絵を描いてて。

 - 最初に絵を描くことが好きになったきっかけって、子供の時だから覚えていないかもしれないですが、どんなものだったんでしょうか?

K2 - お母さんがめちゃくちゃ絵が上手くて、小さい頃からよく絵を描いてもらったりしていて。何回か絵の描き方も教えてもらって。親の影響は大きいかなと思います。

 - ヒップホップ自体は元々好きだったんですか?

K2 - ずっと好きですね。ヒップホップよりはK-POPとかを最初聴いてたんですけど。めっちゃヒップホップを聴き始めたのも『高校生ラップ選手権』が流行ったぐらいのタイミングですね。

 - でも、そんなにああいうアートの世界でのキャリアが短いとは思わなかったです。もう少し長くやっていたのかと。

K2 - 全然ですね。自分も思っていないというか、ずっと実感が湧かなくて。親とも毎回話してるんですけど、実感はずっと無いですね。

 - でもインスタの最初の投稿から今の世界観というか、ちゃんとK2さんらしさみたいなのが出ているような気がして。ああいうスタイルのグラフィックはどういうところから影響を受けたんでしょうか?

K2 - ありがとうございます。Pinterestを、暇な時にずっと見たりしていて。最初は真似程度で描き始めて。そこからハマって、ずっと没頭して描いてる時期がありました。

 - Pinterestはタグで色々検索出来て面白いですよね。ちなみに、その時はどういうタグで検索していたんですか?

K2 - Travis Scottですね。『Astroworld』にはめちゃめちゃ影響されてるなと思います。

 - あのジャケットはめちゃめちゃ強烈ですもんね。没頭して描いていた時期は一日でどれぐらい描いていたんですか?

K2 - 夜中まで起きて、朝になるまで描いていたりして。一日12時間作業していたこともありました。

 - でも、その時もそれが仕事になると思ってやっていたわけではないんですもんね。

K2 - 全然思っていなかったです。Twitterとかに載せて、色んな人に見てもらえればいいかなと思ってて。それでお金を稼いだり、生活していくとは全然思っていなかったですね。

 - 最初は趣味の気持ちで描いていたのが、「自分でもしかしたらいける?」というか、「反応あるな」と思った瞬間はいつ頃だったんですか?

K2 - どうだろう......それも2021年に入ってからですかね。Trippieの作品にはちょっと反応もあったりして。「こんなに反応貰えるんだ」って思って、「ちょっとやってみようかな」と。専門学校の頃も、めちゃくちゃ良い先生がいて。俺のデザインを見せた時に「なんでウチの専門学校来たの?」って。課題を出せなかったり、やれって言われたことが出来なかったんですよね。それで「根っからアーティスト肌なんだと思うよ」ってその先生が言ってくれたんですよね。最初に学校やめる相談したのもその先生で「フリーランスとかでもやっていけると思うよ」って言ってくれたんです。めちゃくちゃ凄い先生で。めっちゃ物静かなんですけど、デザインのことを喋ると止まらなくて。作品を集めるのも好きみたいです。

 - その時はどういう作品を描いていたんですか?

K2 - 絵というよりは絵と写真を混ぜたコラージュで。本当にコラージュ写真みたいな感じでやっていました。

 - K2さんの作品って例えばPop Smokeの作品も迫力がありますよね。肖像画とかは元々得意だったんですか?

K2 - 肖像画はあまり得意ではないですけど、ずっと描いていくうちに慣れたというか。自分で言うのもアレですけど、やり始めて没頭したら結構成長が速いのかなと。去年の作品と比べると、自分でも面白いですね。

 - 自分で一番変化したと思う部分はどのあたりですか?

K2 - ちょっと前のTrippieだったりの作品は宇宙みたいな感じなんですけど、最近はちょっと綺麗目な感じを意識するようになってて。でも、それも半年前とかだと思うんですけど。きっかけとかは全然分からなくて。イラストって、昨日出来なかったことが今日になって急に出来たりするんですよ。だからめちゃくちゃ面白くて。ハマりますね。

 - 特に、まだ若いし凄く変化が激しいというか。今の状況に自分の認識は追いついていますか?

K2 - 全然追いついていないです(笑)。Young Thugも反響多くて。Juice WRLDのジャケをやることになったんですけど。そんな感じで海外のプロデューサーさんとかも見てくれてて。

 

- 海外のアーティストとのやりとりって、大変だったりしませんか?

K2 - でも、慣れればそんなこともなくて。始めは長文きたら翻訳して、めちゃくちゃ大変だったんですけど、慣れていくうちに「日本語でこう翻訳すればちゃんと英語で変換されるんだ」って。英語も全部翻訳する必要は無くて、分かる範囲だけでも結構伝わるんで。あとは、自分の英語の文章がバラバラでも伝わるっちゃ伝わるんで、もう慣れましたね。

 - 無茶振りとかは特に無いですか?

K2 - 海外ってめちゃくちゃあるんですよね。日本人と全然違うのかなと思って。Young Thugの時なんか酷くて(笑)。あれも、納期一日か二日で言われたんですよ。それで、その日はもう寝れなくて。やり始めてから一日中寝ないでずっとやって、やっと終わったと思ったら......あれは二人向き合ってるジャケ写なんですけど、「次は正面向いてるバージョンでもう一個作って欲しい」って言われて、「まじかよ......」って思って(笑)。でもここまで来たら、それで担当出来なかったらめちゃくちゃ悔しいなと思ってやりました。正面のやつも二個作ったんですよ。両方使われなかったんですけど。海外は本当に......(笑)。依頼してジャケ何個か作るのが当たり前みたいな感じで。

 - 「パターンを何個か出して欲しい」って感じで。

K2 - そうなんです。それもちょっと違うパターンとかじゃなくて、違うコンセプトのものだったり。

  - しかも、納期がヤバいですね。

K2 - そうです、「明日までに渡さないといけません」みたいに連絡がきて(笑)。「冗談だろ」って思って。

 - でも、あれを一日で仕上げられるって相当凄いと思うんですけど、イメージとかが伝えられるんですか?

K2 - そうです。元々インスパイア元の写真が送られてきて。Young Thugの写真がいっぱい入ってるリンクとかが送られてきて、最初参考になる写真を何個か並べてイメージを作って。それでラフを送ったら数字がいっぱい書かれて返ってきて、「ここもうちょっとこうして」みたいな感じで。それを三回ぐらい繰り返して完成って感じですね。

 - それを一日でひたすらやりとりしたんですね。

K2 - めちゃくちゃキツかったです。

 - 他のアーティストも結構大変でしたか?

K2 - Trippieはコンテストだったので、そのまま使われて。Iann Diorも結構修正ありましたね。でもちょうど良いぐらいでした。

 - なるほど。今も、一日の作業時間は長いですか?

K2 - 長いですね。余裕ある時も毎日6時間ぐらいやっていないと「一日何にもしてねえ」みたいになるというか。「こんな何もしていなくていいのか」って。基準が分からなくて。地元でずっと一人でやってるので、周りに同じことしてる仲間がいなくて。みんなどれぐらいなのかなと思います。

 - 最初Hideyoshiくんの件でやりとりした時に、「特にPhotoshopとか Illustratorは使っていないんです」っていうのを聞いて、びっくりしたんですよ。

K2 - 行った専門学校が、デザイン未経験者でも短期間でPhotoshopかIllustrator触れるようになるって感じで一から教えてもらったんですけど、本当に機械音痴すぎて。本当はフォトショとかイラレとかやってみたいんですけど、さわれないんですよね。

 - 今デザインしてるのはアプリなんでしたっけ?

K2 - iPadのProcreateってアプリでやってます。めちゃくちゃ使いやすいんです。

 - そのアプリの使いやすいところは?

K2 - ブラシが色々あるんですけど、直接紙に描いてる感じになったり。それを見てるだけで楽しいです。

 - 直感的に使えるんですね。でも、まだ19歳ですよね。去年は怒涛の一年だったと思いますが。

K2 - そうですね。おみくじ引いたんですけど、最初、小吉か何かで。「大吉が出るまで引いていい」みたいに聞いて、引いたら「飛躍」って文字だったんですよ。なので「今年はもう飛躍出来るのかな」と思って。本当に飛躍したっすね。

 - 将来的なビジョンとか、「こういうことをやってみたいな」ってことは今の状況だと色々考えると思うんですけど、どんなことがありますか?

K2 - とりあえずは今みたいにジャケとかをやってるんですけど、自分のアートとかをまだ全然やったことが無くて。自分のスタイルをちゃんと作って、売る側になりたいというか。後はアパレルでやっていきたいなとは思っていますね。

 - もっとゼロから作品を描いてみたいということですよね。

K2 - そうですね。展示とか結構あるじゃないですか。でもジャケを展示するとかはなかなか無いなと思って。ファンアートとかも違うかなと思うので。一から作って、展示とかもちょっとやってみたいなと思います。

 - 特に好きなアーティストとかはいるんですか?

K2 - 海外なんですけど、Sam Sprattって人がいて。その人の作品は毎回やべーってなってますね。比べるのもおこがましいんですけど、一回比べちゃうと自分の作品が全然ダメに見えて泣いちゃったりする時もあるぐらい、めちゃくちゃ凄いですね。

 - 070shakeとか、Logicのアートワークもやってる人ですよね。

K2 - そうですね。

 - その差って、ご自身ではどの辺りに感じているんでしょうか?

K2 - 色使いとか、画面から見て近いものと遠いものとの差がめちゃくちゃ上手いというか。パッと見でも背景だったら、例えばビルが遠くに見えるようにするのが上手いというか。後は色使いですね。めっちゃ凄いなと思ってます。いっぱい描いててもごちゃごちゃしてるように見えなくて、どうやったらそうなるんだろうと思って。

 - 確かにデジタルだと、アナログで描くより描こうと思えば何でも配置出来るだろうし。ジャケットを手がける上でK2さんが一番気にしている部分はどういうところですか?

K2 - あんまりシンプルなものじゃなくて、凝りたいなと思っていて。なるべく派手に見えるというか、バーって見てても目に留まるようなジャケが作りたいなと思ってます。自分がデザインしてるからなのか分からないですけど、曲聴いてる時に誰の曲か分からない時はジャケ写で選んで聴いたりしていて。なのでそういう感じで気にしてますね。

 - 今は特にSpotifyやApple Musicでプレイリストで聴くことが多いから、そこでジャケ写で目立つかどうかは結構大事なところですよね。そういうのはアーティストサイドから言われたりもするんですか?

K2 - 目立つようにとかは無くて、コンセプトとか「こうして欲しい」っていうのは言われるんですけど、それをどうやってシンプルにしすぎないで目立つように、人目を惹くように出来るかっていうのは毎回考えてますね。

 - 地元の友達とかはK2さんの活躍は知ってるんですか?

K2 - あんまり直接言われることは無いんですけど、裏で話してるのかなっていうのはちょくちょくありますね(笑)。ちょうど最近、全然会ってなかった友達から電話かかってきて。「お前めっちゃ出世してんだべ?」って言われて(笑)。そんな感じですね。

 - 東京に出てくるつもりとかはあるんですか?

K2 - 埼玉には行こうかなと思ってます。東京に用事あったらすぐ電車で行けるし、結構いいかなと思ってて。

 - サクセスストーリーを聞けてよかったです。何かを始めたくて、でも踏ん切りがつかない人とかにメッセージというか、「とりあえずこうした方がいいんじゃない」っていうのがあればお願いします。

K2 - インスタのDMとかにも来るんですけど、例えば「絵上手くなりたくて美大行こうとしてるんですけど」とかが来て。でも、絵が上手いのもめっちゃ大事だと思うんですけど、自分の個性を出すのが、何するにもSNSではめちゃくちゃ大事だと思ってて。とりあえず自分から発信していかないと誰の目にも止まらないというか、待ってても何も来ないので。とりあえず自分の個性を出してイラスト描いてたら結構良いのかなと思います。

 - まずは自分がやりたいことをしっかり発信するのが大事というか。

K2 - そうですね。見てみて何してるのか分からない感じだったらダメなのかなと思います。そんな感じですね。

 - ありがとうございました。

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