【インタビュー】Se So Neon|やりたいことを実現するために

2020年に発表したEP『Nonadaptation』はインディバンドとしては大健闘のチャート13位を記録、2,000人規模のホールをソールドアウトさせるなど韓国では若者を中心に熱い支持を得ている3人組バンド、Se So Neon。ここ日本でも2019年にSummer Sonicに出演するなど2度のツアーをこなしていて、インディロックや韓国音楽のリスナーを中心に注目を浴びているし、先述のEP『Nonadaptation』はPitchforkが選ぶ「2020年のベスト・ロック・アルバム」リストに選ばれるなど、世界的な評価も得ている。

そんなSe So Neonが2021年の活動の始まりとしてシングル“Jayu”を2月5日に発表した。EP『Nonadaptation』で恐怖感や不安をテーマにしていたバンドは、どのように「自由」という大きなテーマを掲げるに至ったのだろうか。ソユン(ギター・ボーカル)、ヒョンジン(ベース)、ユス(ドラム)の3人に、シングル“Jayu”の話題を中心に話を聞いた(本インタビューは韓国の音源流通社、PoclanosのWebに3月5日に掲載されたものをベースに日本語訳・再編集を行っている)。

インタビュー:キチキム (kixxikim)

翻訳:山本大地

- シングル“Jayu”を発表してから1ヶ月が経ちましたね。どのように過ごしていましたか。

ソユン - 忙しかったです。大事なスケジュールが続いたので、まだ休むことを考えてなかったのですが、ようやく余裕が出来たような気もします。

- 新曲“Jayu”についての話をさせてください。まず簡単に曲の紹介をお願いします。

ソユン - EP『Nonadaptation』で、社会で感じる混乱や恐怖感、不安を歌って考えたことは、それぞれが持っている恐怖感に向き合うことが大事だということでした。“Jayu”という曲では自由を見つけたという完結された意味よりも、自由を求めなきゃいけなくて、それが私たちをより強くしてくれるという思いを込めました。

- 昨年発表したEP『Nonadaptation』に収録された“Midnight Train”は同年代の友人との電話が曲を書くきっかけになったそうですね。“Jayu”を書く時はどうでしたか?

ソユン - “Jayu”を書く決定的なきっかけがあったというよりは、昨年わけもなく、精神的にしばらくどこか深い場所に沈んでしまったような時期があったんです。私の気分というよりは解消されない何らかの問題があったからでした。その時は結局私が抱えていた恐怖感を克服出来ないことで、自分を支えられず、ガクッと倒れてしまったような感じでした。なんとか克服してからは、自己批判的な態度を持って受け入れるべきことは受け入れるようにして、ありのままの自分を見つめようという自然な流れがありました。

- サウンド面についてもお話を聞かせてください。全体的にDavid Bowieを始めとした70年代のクラシックロックの雰囲気を感じたのですが、単純な再解釈やオマージュという感じはしなかったです。

ソユン - 仰る通り何か一つのターゲットを持って作ったわけではなかったし、自然と流れるままに作ってみた感じです。もちろんデモトラックの時からクラシックな感じがありましたが、それはSe So Neonがやったことない領域だったので、とても注意深くアプローチしました。「とても古い感じに聴こえたらどうしよう」とか気にしたりして。

- 「クラシックな感じ」と「古い感じ」って、少しの違いしかありませんからね。

ソユン - はい。それに私がクラシックロックについて深く研究したわけでもないので、気安く再解釈出来るものか気になりました。でも、Se So Neonが今まで見せてこなかった新しい音楽的な試みを見せられたようなので、よかったです。

- トラックのアイデアはソユンさんから出たようですが、ヒョンジンさん、ユスさんのお二人は曲を完成させる時にどんなポイントを重視されましたか?

ユス - デモではドラムがなかったのですが、編曲しながらドラムを入れるよう方向性が固まりました。デモを聴いてどんな風にドラムが入ると良いか考えた時のイメージそのままで形にすることが出来たので満足でした。60〜70年代に作られたスネアやバスドラムなど古い楽器を良い状態で持っていたんです。それらをスタジオに持ち込んで録音しましたが、メンバー皆気に入ってくれました。

ヒョンジン - 私はユスさんよりももっと時代を遡って、50〜60年代をイメージして音作りしました。この曲の準備のためにアンプを新しく買ったのですが、私がイメージした通りの音が出たと思います。

- 曲名についても簡単に聞かせてください。デモの時からは仮の曲名は“Jayu”(韓国語で”自由”を意味する)でしたが最終的に決定するまで時間がかかったと聞いています。自由という単語から連想される重みのせいでしょうか。

ソユン - これまでEPのリード曲が “A Long Dream”、“Midnight Train”と続いた後の“Jayu”だったので、例えば「愛」という曲名を付けるのと似たような重みがありました(笑)。でも、この曲からイメージ出来るものを考えてみても「自由は自由でしょう、それ以外に何か示唆するものがある?」という感じだったんです。それで、候補としては他の単語もたくさんあったのですが、原点に戻って「自由」に決めようということにしました。メンバーにこの話をしたら、2人とも「自由がいいだろう。他の候補は違うと思ったよ」と言ってくれたんです。その時はすごく良い気分でした。「そう、違う、自由だ!」って。

ヒョンジン - ソユンはいつも答えを見つけてくるタイプなので、途中で僕たちが何かしてあげられることもなくて、答えを見つけて来た時はただ「(「自由」以外の候補に関しては)それは違うでしょう」って感じでした(笑)。

ソユン - 私以外のスタッフたちも「自由」が良いと思っていたみたいなんです。自由という単語は誰でも知っているけれど、日常でよく使いはしないじゃないですか。なので、「自由」という文字を世の中に届ける時に感じる気持ち良さがありました。

- 俳優のユ・アインが出演したMVも話題になりましたね。どのようなきっかけで共演するようになったのでしょう。

ソユン - Byul.org(모임 별:韓国語読みは”モイム・ビョル”、ソユンもメンバーとして活動する7人組バンド)の活動を通して親交が深まりました。アインさんがByul.orgの音楽を好きなんです。アインさんが「何か面白いことがあれば一緒にやりましょう」と先に話をしてくれて、そのときがちょうど“Jayu”を発表しようと決めた頃だったので共演することになりました。MVの制作をとても楽しんでくれたので、本当に有難かったです。今回のシングルを幸せな思い出として残せるようにしてくれた人の一人です。

 - Se So Neonはバラエティ番組『遊ぶなら何する?』(韓国MBCで放送)への出演をきっかけに大衆的にも人気になりましたが、一方で音楽はその後もよりチャレンジングになりましたね。これもまた「自由」の一部分だと言えますかね。

ソユン - 私たち3人が皆「人気を得ようとするためにもっとわかりやすくて楽しい音楽を作らなきゃ」と考えるようなミュージシャンではないんです。基本的にやりたいことをしないといけないという考えを持っています。それから「大衆的」の基準って誰も知らないですよね。

- やりたいことをやるというのは、言葉では簡単ですが、とても難しく大事な態度ですよね。仰る通り大衆性という概念は相対的ですが、楽曲のフォーマットや歌のテーマなどに「大衆歌謡」から思い浮かべるステレオタイプがあるじゃないですか。妥協することについて葛藤するアーティストもいると思います。

ソユン - 急にSe So Neonが次のアルバムで電子ドラムを導入して、ディスコをしても、私は全然おかしくはないと思います。大衆性の有無よりもやりたいことをしたかが、より重要だと思います。もちろん少しも妥協しない事はないと思いますし、「私たちは妥協をしない」と言えばそれは矛盾になるでしょう。ただ、最小限の妥協でSe So Neonの活動をすることが、私たちが取るべき姿勢だと思います。例えば私たちはTV番組に出演してダンスカバーを披露しましたが、それを「大衆にアピールしようと腹を決めたようだ」と思う人もいるかもしれません。以前はそういう反応を気にしていましたが、いまは年々冒険心が大きくなっています。

- 2021年を生きるいま、Se So Neonがやりたいことをしていくことが一番大事であり、それがある時はダンスカバーでもあるということですね。

ソユン - そうですね。

- YouTubeにアップされているVLOGシリーズや、先ほど話されたHyunAの“I'm Not Cool”のダンスカバーもSe So Neonだけの多様な魅力を見せてくれていますね。こうしてゆるく親しみやすい一面も見せることを大衆が持っていたSe So Neonへの誤解を解くための一環だと思ってもいいでしょうか(韓国KBSの音楽番組『ユ・ヒヨルのスケッチブック』に出演した際、「近づきづらいイメージから解かれたい」という思いから、HyunA(ヒョナ)の"I’m Not Cool"のダンスカバーを披露した)。

ソユン - 言及してくださったコンテンツは面白いからやってみました。一方で心配もありました。「あ、私のイメージが...」みたいな(笑)。

ヒョンジン - ソユンは積み重ねられた大衆のイメージがあるけれど、私たち二人はないんですよ。

ソユン - このお兄さん達にはプラスですよ、完全に。私も両面性のある人間なんです。人間ある一つの面だけ見せることは面白くないと思うんです。だから遊ぶ時は遊んで、制作する時はそれに集中して。

- ファンの反応も含めて振り返ってみると、ソユンさんにもプラスになるかもしれないですよね。

ソユン - 得か損かで考えたことはないですが、そうならいいですね。撮っている時はとても楽しいです。アドレナリンが湧き出たというか。私はこういうコンテンツは一種の「狂気」だと思っています。最近は舞台もそうだし、カメラの前で遊ぶことも全て「狂気」だと思うのですが、そうなったのもコロナウイルスの流行でライブを出来ない状況だからじゃないかと思います。

- 笑って話してくださいましたが、ここから少し重い質問をさせてもらいます。あるインタビューで3人皆がSe So Neonの一員でありながら、公平に待遇を受けられないことについて心残りに感じていると読んだのですが。

ソユン - 今もずっとSe So Neonのテクニカルライダー(ライブの時の演出プログラムが全て書かれたもの)をメンバーで一緒に修正していっています。カメラも、照明も、楽器も、メンバーみんなのイメージが大衆に均等に伝えられなければならないと思っています。Se So Neonが売れていくほど、可能な選択肢も多くなるだろうし、その点に対する丁寧なアプローチが可能になるのではないかと思います。

- そんな意味でも“Jayu”のMVが印象的でした。3人のメンバーが皆、MVに出演してハーモニーを成している姿が良かったです。そう考えると『ショー!音楽中心(Show! Music Core)』(韓国MBCの音楽番組)に出演した時、演奏が終了する時にカメラがソユンだけにフォーカスされるのではなく、3人がアップで揃って映っていた姿が印象的でした。

ソユン - 音楽番組に出演した時も3人を均等にフォーカスしてくれたのですが、偏見とかなく見てくれているようで良かったです。それとは別でメンバーそれぞれにフォーカスした映像もありますが。

ヒョンジン - 僕は1分30秒くらいまで演奏するパートがないんです。なので、僕のことは撮らないものと思っていたのですが、僕にフォーカスした映像には全部映っていて(笑)。

- この場を借りて、「Se So Neonのヒョンジン」と「Se So Neonのユス」ではない、「ベーシストのヒョンジン」と、「ドラマーのユス」について話を聞きたいです。ライブで気にする部分や演奏に対する考え方でも構いません。

ヒョンジン - ライブ当日の楽器のコンディションやライブハウスの温度と湿度、ベースのストラップのような些細なところまで気にする方です。他の2人に比べてステージの経験が少ないので、パフォーマンスのために練習もたくさんしています。例えば、“The Wave”ではリズムに合わせて足を動かすととてもダサく見えるんです。なので、リズムと足が別に動くように練習をするとか、いろいろと気を使う方です。ライブの時に隣にいるソユンの機嫌も気にします(笑)。ライブ前の雰囲気が良くないと、ライブもうまく行かないので。

ユス - ドラムを録音するときは、どこで聴いても最大限同じような音が出るように、気を遣っています。学生の時からジャズシーンでもずっと演奏をしているのですが、Se So Neonで出来ないことをジャズバンドの時にやれるという意味もあって、今も都合が合えば参加するようにしています。

- ソユンさんは良い意味で誰よりも冷静なフロントパーソンだと思います。成功に甘んじることもないようですし。ソユンさんが見る現在のSe So Neonのポジションはどんな感じですか。

ソユン - まだ始まりの段階だと思っています。決して今のポジションに留まっていたくないという考え方があって、今も前進しているし、ゴールを決めておきたくないです。私らしい音楽とアティチュードを大切にしながら、妥協しないままどこまでいけるか気になります。

- Se So Neonは数千人を収容するライブホールで単独ライブを完売させたり、海外メディアでも好評を得たり、韓国でも地上波の音楽番組に出たりと、着実に一段ずつ階段を上って行っている感じがします。Se So Neonが考える次のステップは何ですか?

ソユン - 3人みんな同じ考えだと思いますが、もっと大きい場所でライブをしたいですね。

ヒョンジン - 僕はビルボード1位です(一同笑)。

ユス - ワールドツアーかな?

- コロナウイルスの流行がなければ、ワールドツアーも現実的だったでしょうね。最後に聞きます。誰にも邪魔されずに自由な一週間を送れるなら、どのように過ごしたいですか。

ヒョンジン - 今、健康のために6時以降には何も食べないようにしているんです。たまにどうしてこうして我慢しながら生活しなきゃいけないのかと思うことがあります。なので、一週間三食しっかりと美味しいご飯を楽しむ旅行をしたいです。僕にとってはそれが自由だと思います。

ユス - 兵役に入る前、一ヶ月半ほど韓国中を旅行したことがあります。 その時までは決心さえすればいつでもまた旅行に出られると思ったんです。でも今はそれができないんです。もちろん一週間では短いですが、時間を貰えればもう一度旅に出ると思います。

ソユン - 私は実際に計画していたことでもあるのですが、黙言修行(言葉を発することを極力控えて自分の内面世界に注目することを目的とした修行)と瞑想を兼ねてテンプルステイを一週間したいです。内面のデトックスと言えばいいでしょうか。そんな時間があればいいですね。

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