【座談会】木下麦 × OMSB × PUNPEE × VaVa 『オッドタクシー』| アニメのサントラの作り方

4月からテレビ東京・AT-Xで放送されているほか、Amazonプライムビデオで配信中のアニメ『オッドタクシー』。41歳のタクシー運転手・小戸川を軸に、可愛いけれど一癖も二癖もある動物のキャラクターたちが織りなすポップかつミステリアス、ファンタジーかつリアルというこれまで見たことのないオリジナリティーあふれる作品だ。

本編と同様にサウンドトラックをPUNPEE、OMSB、VaVaというSUMMITに所属するアーティストが手がけるというユニークな試みがなされており、アニメの世界観と3人それぞれのトラックが、予想以上の相性の良さを見せている。そこでFNMNLでは『オッドタクシー』の監督の木下麦とPUNPEE、OMSB、VaVaの座談会を敢行。アニメのサウンドトラックという未知の世界へのチャレンジについて話を訊いた。

※「オッドタクシー」の今後の展開について言及している部分もありますのでご注意下さい。

取材・構成 : 和田哲郎

影 : 横山純

 - まず、サウンドトラックを3人になぜオファーしたのでしょうか。

木下麦(以下、木下) - 『オッドタクシー』はキャラクターの見た目は可愛いんですけど、中身は結構生々しくて、リアリティがある作品です。音楽もギャップをつけたいなと思って、ヘビーな内容だけど、音はユニークでライトな質感にしたくて。最初PUNPEEさんに声を掛けさせて頂いて、そこからVaVaさんとOMSBさんを紹介してもらったんですけど、皆さん凄く個性があって、バリエーションが増えて。結果的にミステリアスでユニークで、凄く良い感じになりました。

PUNPEE - 最初はSUMMIT経由で自分にオファーが来て。やっぱ劇伴って曲数がめちゃめちゃ多かったので、だからSUMMITみんなでやったらどうかなと思って、2人を誘ったんですよね。脚本を読んで面白かったので、SUMMITの増田さんと「これはやりましょう」ってなった気がします。今までに劇伴はやったことなかったし。

OMSB - 自分も脚本頂いた段階で「おもろいっすね」ってなってやらせてもらおうかなと思いましたね。

VaVa - 僕も、どんどん読み進めていくうちに、自分が思っていたものと全然違うことになって。生々しいって表現がまさになんですが。「やべえ、どんどん裏切られていってる」って感じがあって。めちゃめちゃ面白かったので、僕も増田さんと話したのを覚えてますね。皆さまがやられるなら、出来る限りやろうかなと。

 - 劇伴って、他のアーティストに提供するビートとも全然違うものだろうし、そもそも数が多いっていうのもありますよね。どうやって進めていったんですか?

PUNPEE - 45曲ぐらいあって、まず曲の割り振りを最初に決めようって。例えば“憤り”とか“日常A”とか“悲しみ”とかあったのを、「これは自分がやる」っていうのを1人ずつ決めて進めていって。アニメーションサイドからも「この曲はなくなった」とか「もう少しこうして欲しいかも」ってオーダーがきたので、それに応えていった感じですね。

左 : VaVa 右: PUNPEE

 - 「こういう曲を作って欲しい」っていうのは、最初からあるものなんですか?

木下 - そうですね。その段階でVコンを作っていて、「このシーンにこの曲を当てたい」っていうのはある程度出していて。それをリストにして、「こういうのを作って頂きたい」って感じで相談したんです。

PUNPEE - そこから作っていって......苦戦したものはあったっけ?

OMSB - 俺は苦戦したというか、作るまでに日常で色々大変なことが重なってて。そこに苦戦してた(笑)。

VaVa - “憤り”とか曲名と合わせて、どういうシーンで流れるかとか、このキャラクターがどういう感情で、っていう部分を提示頂けたりしていたので、曲を作る上ではかなり楽でしたね。

木下 - ちなみに、割り振りってそれぞれの得意分野で分けたんですか?

VaVa - 「この曲はこの人が合いそうじゃない?」っていう考えで決まる曲もありましたね。

OMSB - 「この人はどういう日常か」っていう部分が書いてあって。「これだったら俺っぽいな」とか、そういう感じでしたね。

PUNPEE - 大体怒りとかドープ系はOMSBだったよね(笑)。一瞬で決まった。

一同 - (笑)。

 - エモい感じの曲はVaVaさん担当だったのかなと。

VaVa - メロディアス系はそうですね。

PUNPEE - エモーショナル系はVaVaちゃんで、自分はその間くらいをやった感じかもしれないですね。

 - 最初にサントラが送られてきた時、監督としてはいかがでしたか?

木下 - 最初は、「ちょっと曲としての完成度が高すぎる」って(笑)。アニメは映像とセリフと音楽が重なって100点を出さないといけないんですけど、音楽だけでカッコ良すぎて、100点出ちゃってて。映像との調和を取るために、ちょっと加減していく作業が必要だなと思いましたね。

左 : OMSB 右: 木下麦

PUNPEE - 最初に送ったのが、取り敢えず手元にあるストックのビートで合いそうなものだったんですよ。合っていたものはそのまま採用されたんだけど、やっぱりビートが無いものも必要だったりするから。それはまた新たに作った感じですね。もしくは、昔送ったけど使われなかったやつを最初に送った記憶がありますね。全部ビートが入ってた記憶があります。

 - 確かに、ビートが無いものって普段あまり作らないですよね。VaVaさんの曲はビートが無いものも多かったですよね。

VaVa - 色々ディスカッションしていく過程で、引き算の大事さを学んだ。普段ラップ用にビートを作るとしても、それこそラップが入って100点ってところがあって。ビートの音数が多すぎて複雑だと、ボーカルの入る余地が無いので。そういう意味でも勉強になって、引き算の美学みたいなものを学ばせてもらった感じですね。あと、「雰囲気を作る」っていうのが一番大事だと学びましたね。

 - PUNPEEさんとOMSBさんは大事にした部分はどこですか?

PUNPEE - メインで鳴ってる主役をビートの中に作っちゃうと、声が乗り辛いなっていうのが分かったっすね。メインのメロディーが入ってるビートだとそっちが主役になっちゃうから、やっていく過程でそういうものが無くなっていって。後ろのコード進行が中心のものになっていきましたね。そこに声が乗ってドラマが出来るから、そこも勉強になったっすね。ヒップホップと違う作り方だった。

OMSB - 自分は二人よりもサンプリングが元々多いんで、まずそこで「まずいよな」と思って(笑)。一応シンセがあるので、それで作っていこうってなって。結局ヒップホップのビートみたいなことをやるっていうのが自分のポジションかなと思ったので、サンプルの要素をどこまで出していいかとか、どこまでアニメとフィット出来るかを考えました。

 - 確かに、OMSBさんの曲が一番ラグドなヒップホップ感が凄く出ていますね。

PUNPEE - 普段やっているものと変わらないまま(笑)。

OMSB - そうっすね(笑)。

- 曲が来たときはイメージ通りのものが来たっていう感じでしたか?

木下 - 僕も初めてだったので、音響監督さんと相談しながら、どういう要素を足し引きするかディスカッションしながら進めていった感じですね。

 - 作業は順調に進みましたか?

PUNPEE - そうですね。最初進めていて、その後OPのテーマが自分に入ってきちゃって。でもVaVaちゃんがとにかく速かったですね。

VaVa - 「取り敢えずめっちゃ作りまくろう」みたいな(笑)。

PUNPEE - VaVaちゃんはすげえ速くて。俺が着手した時にはほぼ終わってたかも。

VaVa - 普段の考え方で作らないので、やってて「めっちゃ楽しいな。じゃあもうちょっとやるか」ってなりました。サントラには入らないミステリーキッスの曲も面白かったけど、あれが一番苦労したかもしれないです。

 - あの曲は凄いですね。最初はVavaさんが作ったってわからなかった

VaVa - 僕はアイドルソングとか、ああいうのを作ったことが無かったので「どうしよう」ってなりました。でも元々ああいう曲は好きだったので、歌詞とかメロディーも全部自分で考えて、一人でスタジオで「キス......」とか口に出して「何を言ってるんだろう、俺は」って。アイドルが好きだった時に、アイドルの曲って、アイドルがファンである自分に対して言ってるように錯覚させるような歌詞だなって思ってたんですよ。全然「あなた」としか歌ってないのに、自分が「あなた」だと思うみたいな。そういう曲に引き込まれることが多かったので、懐かしい感覚でしたね。みんな勘違いして、取りあえず握手会に行って認知してもらって覚えてもらえるし、それでライブとかを観ると、その時に映像越しに目が合うだけでも自分のことだと思っちゃうんで。アイドルの歌詞を書く人は、ああいうときめき系の歌詞を書くんだよなと思いながら書いてましたね。

PUNPEE - なるほど(笑)。

VaVa - 後は単純に、もう一曲は僕が好きだった『美味しんぼ』の曲とか、昔のアーバンな感じを入れて。今で言う「アーバン」じゃなくて、昔の本格的な「アーバン」みたいなのが割と好きで。和の感じというか。

木下 - VaVaさんのアイドルの曲が上がってきた瞬間、一発目ですげえ良いなって。

PUNPEE - 「もう形になってる」って。

VaVa - 声優さんも歌えるキーとかにめっちゃ指定があって、トラックを聴いた時に「あー」とか言ってて。自分は「これが歌えれば、これはライブで歌える」ぐらいの感覚でやってたので、勉強になりましたね。

PUNPEE -  tofuくん(tofubeats)にアドバイス貰いたいって言ってなかった?

VaVa - 「今取り敢えずこんな感じなんですけど」って言ったら「もうオッケーじゃん」って言われて、「あ、そうすか......」って(笑)。サントラに関しては、作るのが楽しかったですね。

 - 「第4話 田中革命」で、VaVaさんのトラックが多数使われていますね。あの話はすごい印象的でした。田中もゲームにハマってるキャラクターじゃないですか。その辺りは自分も投影出来る部分があった?

VaVa - めちゃめちゃ分かるっすね。俺もアプリで3万くらい課金しちゃって、結局「そればっかりやってたら音楽出来ない」つって消したんですよ。自分を戒めるために。それをやると意味が無いんですよね。田中はそういうことをめっちゃやるから、感情移入出来る登場人物でした。よく分からない金の使い方っていうのは、マジで分かるなって。

PUNPEE - あの回凄く良いですよね。田中回。

 - 皆さんが好きなキャラクターは誰ですか?

PUNPEE - 自分はやっぱりMETEORくんがやったヤノ(笑)。

VaVa - 俺も、PUNPEEさんとMETEORさんが二人でセリフを考えたラフの段階を聴くのをめっちゃ楽しみにしてて。歌い回しとか言い方とか、二人でやってましたよね。その時のデータ聴くのがめっちゃ楽しみで。

PUNPEE - METEORくんの起用については、最初にこっちから提案して。「入れられたらいいな」って感じで、オーディション的にMETEORくんにラフに歌わせて、「どうですか?」って言ったら通ったんですよ。それで「やったー」ってなってから、台本読みながらビートを決めて。METEORくんが与えられたことをやるっていうのをあんまり見たことなかったので、どうMETEORくんがやるのかっていうところも面白かったし、付き合いは長いですけど、まさかこういうところに入ると思わなかったから感慨深かったですね。

OMSB - 結構すげえ瞬間ありましたよね。

PUNPEE - あったあった。40小節ぐらいの長いバースがあって、上手く面白くやってて、凄いなって。最終話に近づくに従ってどんどん声がノってきた(笑)

VaVa - METEORさんの声がインパクトありますよね。かなり個性が強い。

PUNPEE - キャラクターっぽいよね。

OMSB - 自分はお笑いコンビのダイアンのユースケさんがやってる柴垣のくすぶった感じが脚本の段階で分かりすぎて、「ああ、俺だ......。」って気持ちになってました(笑)。

PUNPEE - 超ストイックにやってるのに、相方にどんどん仕事が決まっていくみたいな(笑)。

VaVa - 難しいというか、あの心境って、めっちゃグルグルしてる感じがありますよね。

 - ひとりひとりのキャラクターが、「悪」と「正義」で簡単に分けられないというか。悪の部分もあれば、その人なりの正義を貫いているというのがしっかり描写されている。ドブとかもそうですが。

PUNPEE - METEORくんも「みんなどこかで失敗してる」って同じようなこと言ってて。その後で「さっき会ってたP.I.C.S.の人たちも街ゆく人たちも過去を色々背負ってると思うよ」って。ミーティング中にそんなとこまで考えていたのかっていう(笑)。

一同 - (笑)。

PUNPEE - 人間模様が素晴らしくリアルに描かれていると思いました。

VaVa - 自分はやっぱり田中ですね。俺もつい先日パチンコで27000円溶かしてる人間なので(笑)。けど、ああいう課金とかって、最強に良い当たりは0.1%ぐらいなんですよ。だからマジで当たった時は脳汁が半端ないんですよね。あの感覚を知ってる人だと、多分めっちゃ共感出来ますね。それが無ければ無惨な形で自分の腕から離れていく気持ちとかも、「分かるな~......」って。結局感情移入出来るキャラクターが自分の中で一番印象に残りますね。

木下 - 僕は小戸川にはかなり感情移入していましたね。小戸川の人付き合いが苦手な感じとか、本当はずっと喋りたいけど不器用でコミュニケーションが出来なくて、内側に籠っている感じは凄く共感していて。それが『オッドタクシー』をやる大きなモチベーションの一つなんですけど。それもありつつ、ユニークなキャラクターで言うと樺沢には共感しましたね。樺沢は最後の方で本音を吐露するシーンがあるんですけど、本当は目立ちたくて色んなことをやっていたけど自分に自信が無い故に、どんどん事が大きくなって。そこには凄く共感しましたね。最初はただの大学生ですけど、結構味わい深いキャラになったと思います。

PUNPEE - 此元さんと木下さんの間のやりとりは結構スムーズだったんですか?「こういうキャラクターにして欲しい」みたいな。

木下 - 脚本を作ってもらう段階では、僕は「こういう風にしてください」っていうお願いはしていなくて。此元さんから来たやつがめちゃくちゃ面白かったので、「このまま流れに任せて作ってください」って感じですね。

PUNPEE - 最初にキャラクターが出来たんですね。なんとなくのキャラクターがあって、ストーリーがついて。

木下 - そうなんです。発端を言うと、プロデューサーに僕が「リアルな人間模様を描く動物アニメ」っていう企画書を出して、キャラクターデザインはその時に出来ていて。僕も僕なりに内容を考えていたんですけど、「キャラクターは面白いけど内容は弱い」ってゴーが出なくて。それからしばらく経って、此元さんに参加してもらうことになって、3人で内容を詰めていきました。キャラクターは出来ていたので、キャラクターに肉付けするのは此元さんにやっていただきました。

PUNPEE - 逆だと思っていました。

VaVa - 確かに、大体逆を想像しますよね。自分たちにお話を頂くどれぐらい前から考えていたんですか?

木下 - 5年か6年前ですね。

VaVa - マジっすか!それは凄いですね。

 - アニメの企画だと通常それぐらいかかるものなんですか?

木下 - 長い方じゃないですか?

PUNPEE - 自分たちもやることが決まって1年ちょいぐらいなので、更に時間がかかってたっていう......。

 - PUNPEEさんとOMSBさんは、自分が作った中で印象深い曲はありますか?

PUNPEE - “日常A"ってやつですかね。あれは何気ない感じで作ったんですけど、滑稽な感じと、人生のリアルな感じが上手い感じでミックスされて、よく作用していると思いました。『踊る大捜査線』で和久さんが出てくる時の音楽があるんですけど、ちょっとそれを意識して(笑)。でもまた違う感じになって良かったですね。

 - ライナーノーツを読むと、サントラをたくさん聴いたっていうことですが。

PUNPEE - 聴いたっすね。まさにですけど『タクシードライバー』も

聴いたし、他はNine Inch Nailsのトレント・レズナーがサントラをやっている『ソーシャルネットワーク』の、不安な音を出すために音階に乗った音じゃなくて、その中間の音を不協和音的に出したりするアイデアが面白かったり。日本のアニメのサントラも聴いたし。やっぱり全然ヒップホップと作り方が違って、不穏な曲は最初にベースがブーンって入ってきたり、めちゃくちゃリバーブをかけたりしてて、左右で振って不穏な感じを出したり、そういうのを聴いて勉強しました。あと、サンプリングが出来ないから、自分でその音を再現したりしました。

OMSB - 僕はやりたいこと全部やったなっていう感じになっちゃったんですけど。自分の中で一番しっくり来たのは、とあるキャラの回想で使われる曲“最悪の日”ですかね。自分が意図した「こうあって欲しいな」っていうイメージがあると思うんですけど、このトラックに関してはそのまま思っていた通りだった。

PUNPEE - オムス氏の候補を聴いたとき、全部合うと思った。

OMSB - ほんとっすか?

PUNPEE - アニメーション作品とか、映画とかに全部合いそうだなって。キャラクターが良い意味でそこまで無くて、連想しやすいっていうか。だからK-BOMBさんもサントラは合いそうだなって。

OMSB - 自分でそういう作品も作ってますよね。

 - 監督の中で、サントラで印象的な曲はありますか?

木下 - やっぱり物語の肝になっていく、11話の重要なシーンでかかるOMSBさんの曲ですね。あそこは本当に重厚で残虐な感じにしたくて。なおかつメリハリが効いて、かなり怖くなって良いシーンになったと思います。後はラストでかかる音楽をVaVaさんにやって頂いて。The Poguesの“Fairytail Of New York”って曲があるんですけど、そういうクリスマスの賛美歌みたいな雰囲気でシーンを演出したくて作ってもらいました。

VaVa - “Fairytail Of New York”が良すぎて、「うわ、どうしよう」みたいな(笑)。でも音嵌めもあの曲だけ作り方がちょっと違って。ちょっとした絵コンテというかVコンを頂いて、「落ちるところにこの音が入る」とかをやっていたので、凄く面白かったですね。

木下 - おかげさまで凄く良いラストシーンになりました。最終回、ぜひ多くの方に見てもらいたいです。

 - アニメ自体はみなさんどのあたりが好きでしたか?

PUNPEE - いっぱいあるっすけど、やっぱり4話が好きですね。あの回はストーリーもそうですけど、変な表現がいっぱいあって。あの回だけ急にトリッキーになってて、印象に残りますね。

VaVa - ちょっと危なそうな感じがありますよね(笑)。また別ですけど、PUNPEEさんと澤部さんのオープニングテーマのギターの入りめっちゃ良いですよね。

 - オープニングテーマはどういう経緯で?

PUNPEE - 途中でやることになって。それで「澤部さんがいい」っていう話に自然となったんです。二人とも板橋出身だし、なんかリンクしてるなって。話の中心になるのは夜の街じゃないですか。だからすぐに曲が想像出来たし、澤部さんがどういう歌を歌うかも知っていたから、結構スルっと出来ました。二つ目のギターリフでメロディーも乗ってて、そこにラフのドラムを付けちゃって、本番だけ澤部さんに家に来てもらってボーカルを録りました。ノーストレスでしたね。普段やってることをやっただけ。

VaVa - 温度感がめっちゃ良いなって。あれ以上アップテンポだとちょっと違うし、めっちゃ合ってると感じました。

PUNPEE - アニメのオープニングでも成立して、落とし込むならここかなってメロディーがあって。モタってるビートに澤部さんのギターの展開が入ってたら、二人の良いところを出せるかなと。

木下 - 最初からめちゃくちゃカッコいいなって。僕がこれ以上アイデアを出すことも無くて、本当にめちゃくちゃ良いなって感じでしたね。

 - 結構アニメの中でもヒップホップ的な小ネタがありますよね。

一同 - (笑)。

木下 - 小ネタを皆で考えた感じですね。

PUNPEE - サウナのところの与太話とか"あれは誰が得するんだろう"って(笑)。そういう小話的なものとか、TwitterのタイムラインにMETEORくんがいたりとか。初期から凄く相談に乗ってくれて、こんなにお話聞いて貰えるのが嬉しいなって。

OMSB - こんなに散りばめてもらえるのかって。

VaVa - 漫才の出囃子の音がめっちゃ好きなんですよね。独特な感じがあって(笑)。ちゃんと『M-1』(※作中では『N-1』)の感じがめっちゃ再現されてて。

PUNPEE - あれは『Diagonal』っていうイベントをやった時に、OMSBと二人で作ったSimi Labのジャングルっぽいリミックス。それが出囃子っぽくて、「これどうでしょう」って言ったら「大丈夫です」って(笑)。

 - サントラが、たまに前に出てくるシーンもあって。カピバラがラーメンを注文するところとかは、敢えてサントラが目立つ使い方をされてますよね。

PUNPEE - あそこは、いきなりめちゃくちゃデカくなって(笑)。めっちゃブレイクビーツな曲で。あのちょっと太い感じの音が地上波で流れるのはアガりますね。

 - この仕事をやったことで、自分の制作にフィードバック出来そうなことはありますか?

PUNPEE - Skitだったりイントロで使えそうなヒントはいっぱいあったし、あとはMETEORくんも便乗して何か出して欲しいですね。『ヤノEP』みたいな(笑)。

VaVa - 個人的に聴いてみたい。僕は個人で作る曲は極端で、音数が死ぬほど多い曲と、割と普通な曲で。でもサントラは音数が超シンプルというか、足し算引き算の美学で全て完成されるじゃないですか。普段サントラとか聴くんですけど、改めて『クラッシュバンディクー』のサントラを聴いたりして。あのゲームって可愛いけど、やられる時の音はちょっと怖いし、気持ち悪いところもあるし。違う観点で音楽を聴くっていうのは改めて感じましたね。ヒップホップも鳴りがどうこうっていう聴き方もあると思うんですけど、「ここでこういう音入ると気持ち悪くなるんだ」とか。後は何より、サンプリング出来ない点。自分の未熟さを非常に体感して、意識的に頑張らないといけないと思いました。

PUNPEE - アイドル的なことも今後はやっていきたい?

VaVa - お仕事が来たら全然やりますけど、「出来ればヒップホップバイブス、よろしいですか?」って(笑)。こちらのフィールドになるべく持っていける方が、非常に楽ではあります(笑)。

OMSB - 自分は逆に、基本的にループで終わることが多かったので、それ以降の作り方が結構しんどくて。「ここでブレイクなりSEを入れる」とか、「こういう方が目立つのかな」っていうことを考えたりするようになったのと、弾きでちゃんと作ったことがほぼ無いので、そういう意味で少しだけ出来るようになったのがよかったです。

木下 - どういう感じで各々苦労されて一曲作っていく過程があるのか気になって。僕は音楽を作る手順が分からないので、どういう発想でラップや歌詞を書いて、イメージを作っていくのかなって。苦しかったり悩むことはありますか?

VaVa - 自分の曲を作る過程ではめちゃくちゃありますね。むしろ不思議なもので、2時間ぐらいで作った曲が一番バズったりすることがよくあるし、逆に「これめっちゃ苦労したのにあんまバズらんやんけ!」みたいなことが結構あったりするんですけど、パッてビートを聴いた時に鼻歌で浮かぶメロディーが意外と一番良かったりするんです。レコーディングでも一発目に録ったテイクが一番良いっていう不思議なことがあって。「このテーマにはこういうビートで」って決め過ぎるよりは、ビートをパッと流して運動神経とか感覚で録ったものが良いのではと思って、最近はとりあえずバーって作ることをやっていて。やっぱり自分の曲になると、「これ聴いたことあるな」とか「このテーマ歌詞で歌ったな」ってことが結構あって。それが弊害になるというか、ゼロから始められるわけではないので、それを日々考えたりするんですけど。でも上手くいかない時はずっとゲームやって、アニメ観て、寝るみたいな(笑)。「今日何も出来なかった」っていう罪悪感を持ったまま寝るのは結構ありますね。

木下 - 頭で考えすぎるより感覚と勢いで描いた方がうまくいくとか、絵にも通じるなと思って。僕も絵を描いてたらよくあるので、一緒だなと思いますね。

VaVa - 何も考えずにやったやつがめっちゃ良いから、何なんだろうって。自分でビート作ってる時も、ネタを最初にやってドラム入れてベース入れてさあラップ書くぞってなったら、既にビートに飽きてるんですよ。だから僕はネタを最初に並べて、そこからサビを書いて、レコーディングでそっと肉付けする。そうすると新鮮な気持ちでいられるから。どんどん作る時に論理的思考になって、自分がワクワク出来なくなっていくんで。「なるべく楽しい仕事で生活していきたいのに、なんでこんなに難しいこと考えてるんだろう」って思いますね(笑)。だから頭パーにしてやってますね。最近パーにしすぎて何もかも分からなくなってるので、危ないかもしれないですけど。

PUNPEE - 楽しく作ってきたけど、そうも行かなくなってきちゃうっすよね。でもそういう時に違う感じの話が来ると、リフレッシュ出来るよね。

OMSB - 『APEX』の曲もめっちゃ嬉しかったな。

VaVa - 自分の好きなものと、音楽がリンクするのはめちゃめちゃ嬉しいですね。

PUNPEE - サントラって、『IWGP』とか『ケイゾク』の時にKREVAさんがやってたんですよ。それを当時観た時に「こんなことも出来るんだ!すげえ!」と思ったんですよね。ヒップホップ作ってて、サントラに行くのってすげえなって。それを思い出して、自分も今そういうことが出来てて、新鮮なことに取り組めてるんだなって思いました。

OMSB - 僕は歌詞をストレスが溜まったなって思う時に書いてるんですよ。言いたいことが溜まらないと書けないところがあって、なかなか進んでいかないところにイライラしてたんですけど、最近になって何も言わないことを意識していて。それでいっぱい書いてたら新しい言いたいことが生まれて。内容は今まで言ってたことと共通してくるんですけど、またちょっと別のステップになるというか。結構そういう感じですね。

VaVa - 感覚で書いてる部分があるから、自分の歌詞を見て「ああ、俺こう思ってるんだな」って改めて思ったりしますよね。

OMSB - それは俺もめっちゃ分かるっすね。

PUNPEE - 俺オムスのTwitter見てて、「これリリックに使いてー!」っていうのすげえいっぱいある。「のび太さんのエッジー」とか(笑)

OMSB - 多分ネタにしまくってますね(笑)。

- 皆さんから監督に聞きたいことはありますか?

VaVa - それこそ『オッドタクシー』が完成して、新たに創作意欲が沸いたりしますか?

木下 - 今は全く無いんですよ。

VaVa - なんか安心しますね(笑)。

PUNPEE - もしヒットして、映画化することになったらやるっすか?

木下 - うーん。続いてもおかしくないですけどね。もっと見たくなるような魅力的なキャラもたくさんいるので。

OMSB - 本編でも音楽について「この曲のさ」っていう話がちょこちょこ出てくると思うんですけど、普段聴いてる音楽ってどんなものですか?

木下 - 普段聴いてるのは、ベタですけどTHE BLUE HEARTSとか。

PUNPEE - 音楽的な話が脚本に入ってたじゃないですか。あれは此元さんのアイデアだったりもするんですか?ブルース・スプリングスティーンのくだりとか。

木下 - あれは完全に此元さんですね。

VaVa - 音楽を聴いてて、「めっちゃ良い曲!」ってなる部分ってありますか?

木下 - やっぱり映画のサントラとかで壮大さだったり神妙さだったり神秘性だったり、映像と組み合わさって相乗効果でパワーがバーンってなってる時に「素晴らしいな」と思いますね。

VaVa - なるほどですね。

OMSB - 『101回目のプロポーズ』の「僕は死にましぇん」のところって、ネタになってるけど実際に観たらめちゃくちゃ泣けますよね......違うっすか?(笑)。

PUNPEE - 確かにあそこで流れてたね。あのシーン今若い人が観たらどう思うのかな。結構ヤバいよね。

OMSB - 積み上げてきたものがあったから、そこで出すんだって。

PUNPEE - あれも相乗効果だよね。聴くと思い浮かぶもんね。

OMSB - 後は『カリートの道』の最後とか。

PUNPEE - あれは良いっすね。チェーンを破っていくところ。

Info

◆「オッドタクシー」作品情報

■放送・配信情報■
◯地上波
テレビ東京 2021年4月5日(月)26時00分から放送スタート
※初回、4月12日(月)、4月19日(月)の放送は26時05分よりスタート

◯CS
AT-X 2021年4月7日(水)23時30分から放送スタート
毎週(水)23:30~24:00
リピート放送:毎週(金)11:30/毎週(火)17:30
※週1話ずつ3回放送
※放送日時は変更になる場合がございます。

◯配信
Amazon Prime Videoにて見放題独占配信
2021年4月6日(火)から毎週朝9時更新

■キャスト■
小戸川:花江夏樹 白川:飯田里穂 剛力:木村良平 柿花:山口勝平
二階堂ルイ:三森すずこ 市村しほ:小泉萌香 三矢ユキ:村上まなつ
大門兄:昴生(ミキ) 大門弟:亜生(ミキ)
柴垣(ホモサピエンス):ユースケ(ダイアン) 馬場(ホモサピエンス):津田篤宏(ダイアン)
樺沢:たかし(トレンディエンジェル) タエ子:村上知子(森三中)
福本(煩悩イルミネーション):高井佳佑(ガーリィレコード) 近藤(煩悩イルミネーション):フェニックス(ガーリィレコード)
ドブ:浜田賢二 今井:酒井広大 田中:斉藤壮馬 山本:古川 慎 関口:堀井茶渡
黒田:黒田崇矢 笑風亭呑楽:大塚芳忠 花音:汐宮あまね 玲奈:神楽千歌
ヤノ:METEOR
長嶋聡:???

■スタッフ■
企画・原作:P.I.C.S.
脚本:此元和津也(P.I.C.S. management) 監督:木下 麦(P.I.C.S.)
副監督:新田典生 キャラクターデザイン:木下麦・中山裕美
美術監督:加藤賢司 色彩設計:大関たつ枝 撮影監督:天田 雅 編集:後田良樹
音響監督:吉田光平 音響制作:ポニーキャニオンエンタープライズ
音楽:PUNPEE VaVa OMSB
音楽制作協力:SUMMIT, Inc. 音楽制作:ポニーキャニオン
アニメーション制作:P.I.C.S. × OLM

公式HP http://oddtaxi.jp/

公式Twitter  @oddtaxi_

公式Instagram @oddtaxi_

ODDTAXI ORIGINAL SOUNDTRACK
SUMMIT (PUNPEE×VaVa×OMSB)
[品番] PCCG-2020
[発売日] 2021/05/19
[価格] 2,800円(税込)

■収録内容
TVアニメ『オッドタクシー』の劇伴音楽を収録

■仕様・特典
●監督・キャラクターデザイン木下麦描き下ろしイラストジャケット仕様
●特製ブックレット(PUNPEE×VaVa×OMSBによるライナーノーツ収録)
●監督・キャラクターデザイン木下麦イラスト特製ステッカー

[発売元] ポニーキャニオン
※サントラ商品情報リンク先⇒https://oddtaxi.jp/disc/296/

https://summit-shop.net/items/6049877fc19c4525c78e57a0

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