【インタビュー】MÖSHI 『Painting』 | 感覚というよりも流れを知った上で作る
NY在住でファッションデザイナーとしても活動するMÖSHIは、ロンドンの芸術大学セント・マーチンズを卒業、現在はユニクロの奨学金を受けながら、NYのパーソンズ大学院でデザインを学んでいる。輝かしいキャリアを持ちつつも、コロナ禍を機に本格的な音楽制作を昨年スタートさせたMÖSHIは、昨年フジロック「ROOKIE A GO-GO」への出演、さらにCREATIVEMAN PRODUCTIONSが主催 するSUPERSONICへのオーディション「出れんの!?スパソニ!?」においてもファイナリストに選出されるなど、音楽においても順調なキャリアを歩んでいるように見える。
2021年最初の楽曲『Painting』をリリースしたばかりのMÖSHIに、なぜ音楽のキャリアを踏み出そうと思ったのか、ファッションと音楽に対する表現の姿勢の違いなどを訊いた。
取材・構成 : 和田哲郎
- 色々なところで聞かれていると思うのですが、MÖSHIさんはファッションの世界でキャリアを積みつつも、どうして同時に音楽をやっているのか興味があります。元々どういうきっかけで音楽を聴くようになったのか、ルーツを教えて頂きたいです。
MÖSHI - 一番最初に音楽に関わり始めたのは、中学の頃に吹奏楽部でドラムをやっていたんです。ドラマーは凄く大事なポジションではあるんですけど、自分で曲を作れたわけでもないので、もっと自分で色々表現したいなと思ってました。その時は、服に興味があったのでファッションを勉強しようとロンドンに行って。服を作れるようになってきて思ったのが、ファッションショーでも展示でも服だけじゃ成り立たないし、音楽だったりインスタレーションだったり、そういうのを全て含めた方が自分のコンセプトを表現するときに良いんじゃないかと。必ずしも、自分でやらなくてもいいんですけど、誰かにお願いするにしても、自分が理解していることで注文できることも変わってくるはずなので。それでロンドンの芸術大学に在学しているときに、音楽だったりファインアートだったり、色んなことを自分でどんどんやってみようと思い立って。最終学年になる前ぐらいから、少しずつ他のアウトプットをし始めた感じですね。
- 元々は服を活かすためというか、ファッションの中でより理解を深めるためというか。自分の世界をより表現するために音楽があったという感じなんですね。
MÖSHI - そうですね。でも、全然ファッションが最初にあるってわけでもなくて。取り敢えず自分が一番大事にしているのが、テーマだったりコンセプトで、その都度適した方法で表現出来たらなと思って。だから場合によっては、そのテーマを表現するにはファッションが重要なときもあるかもしれないし、ファッションと音楽のミックスかもしれない。そういうものに出来るだけフレキシブルに対応したくて、他の表現手法にも興味が出てきた感じですね。
- なるほど。とはいえスッと色々な形で表現出来てしまうのは凄いなと。
MÖSHI - でも、最初は全然自信は無くて。在学中に大体みんなインターンするために、最終学年になる前に休学するんです。それで普通だと一年間は有名なブランドでインターンしたりするんですけど。自分は全部自分の制作をしようと思ってインターンは一切しなくて、最初は音楽より先にインスタレーションを作り始めたんです。ルミネのアワードとかに選ばれて、そこから「別に自分の専門じゃないこともどんどんやっていいんじゃないか」っていう自信がついて。あまり臆することなく、どんどん他のアートにチャレンジしてみようって。
- コンセプトがしっかりあれば、形は自由ということですね。トラックメイクも完全に独学ですか?
MÖSHI - 完全に独学なので、未だに「合ってるんだろうか」って思うんですけど(笑)。最初はただ色んな音楽を聴いてビートをコピーすることを毎日やって「どうやったらこういう音を出せるのかな」って研究してました。まだ全然ですけど、ソフトを買ってから開かなかった日は無いと思いますね。絶対に毎日、少しの時間でも触るようにしていて。その中で段々自分のワークフローが出来てきたので、少しずつ良くなっていけばいいなと思うんですけど。
- 少し昔に戻って、ドラムをやっていたということは、その前にやってみたいと思う気持ちはあったということですよね。その時に聴いていたものだったり、最初に衝撃を受けた音楽はどんなものだったんでしょうか?
MÖSHI - そもそも音楽やりたいと思ったのは、小学校の時に『ファイナルファンタジー』を凄くやっていて。BGMを、植松伸夫さんって人が作曲してるんですけど、それが好きすぎて、そのサントラをどんどん買って聴いていて。家には誰も音楽をやっている人がいなくて、しかも僕は中学受験をしていたので、その時はなかなか楽器だったり他の趣味をやるってことが出来なくて。中学に入ってから音楽をやってみたいなと思って、吹奏楽部を見学した時に、ドラムが一番カッコいいなと思って始めました。
- なるほど。TylerだったりEarlだったり、DPR LIVEのような韓国のヒップホップの影響があったというお話でしたが、ヒップホップやR&Bに出会ったのはいつ頃ですか?
MÖSHI - 音楽を始めた時に、先輩が僕にBlue NoteのジャズのCDを大量に貸してくれて。それまでは殆どの音楽を沢山聴いたことがなかったので、ジャズがカッコいいなと思って、中学の時はずっとジャズを自分で集めて聴いてて。高校の時にアメリカに行ったら、みんなヒップホップを聴いてて。中学の頃は僕の周りにヒップホップを聴いている人がいなかったので、「こういう音楽があるのか」と思って。ルーツも近いところがあるし、さらにジャズやR&Bやブラックミュージックに興味を持って。日本に帰ってきてからはどんどん深く掘っていきたいなと思って、WARPだったりBrainfeederだったり、Robert Glasperみたいにブラックミュージックを統合しているアーティストなどに出会って、どんどん魅力にハマっていきましたね。
- Glasperだったり、例えばFlying Lotusだったり、Tylerもそうだと思うんですけど、そういうアーティストたちってそれぞれのやり方で、自分の中にあるルーツを分解してコラージュ的に作り上げるようなアーティストですよね。MÖSHIさんも、やっぱりそういうコラージュ的なものに凄く興味があるのかなと、資料にあるアート作品を見て思ったんですよね。
MÖSHI - そうですね。まず、色んな要素を意図的に組み合わせる時もあれば、逆に無意識的に組み合わせるってことは結構好きかもしれないですね。自分が作っているトラックに関しても、「ここと混ぜるの?」っていうことも結構試したりはしていて。確かに色んな違った要素をその時に応じて上手く組み合わせることは、自分の手法の中で大事なものかもしれないですね。
- そういうものに惹かれるのはどうしてだと思いますか?
MÖSHI - ファッションも音楽をやる時も、その流れだったり歴史を調べるのが好きで。例えばファッションに関しては、もちろん自分で好きなものを好き勝手にやっても良いんですけど、時代の潮流があるじゃないですか。「じゃあここのベースは残しておいて、どこから面白い要素を持ってくるのか」って考えるのが、どの制作でも好きで。なんで好きかと言われれば、分からないんですけど(笑)。どのアウトプットにおいても、感覚的にやるというよりも理論的に考える方が性に合ってるんです。歴史を知ったり、流れを考えるのが好きなのかもしれないですね。「次はここを持ってきたら面白いんじゃないか」っていう。芸術大学にいるとゼロから生み出してるのかなと思われる方は沢山いると思うんですけど、僕はあまりそれを信じていなくて。結局アート作品とかで評価されるものは、ある手法を加えたことによって時代や、その後の方法論が変わっていくというもので。その転換期を上手く読める人が、結局時代のゲームチェンジャーになっている。そもそも知らないと何が正しいのか分からないっていうところですよね。だから、理路整然と考えるのが意外と好きですかね。
- ファッションでも、今はよりそうなってきていますよね。
MÖSHI - そうですねストリートファッションの歴史も作られてきて、最近はラグジュアリーブランドもストリートファッションを凄く入れてきていますけど、じゃあ次の展開がどうなるのかっていうところを考えるのが、やっぱり優秀なクリエイティブディレクターなんじゃないかと。僕にはまだ答えは無いんですけど(笑)。
- その上で今回のシングル"Painting"は、前回のEPだと低い声でフロウするものと歌うっていう要素の曲がそれぞれあったような感じがして。今回の曲だと、その要素が両方とも一曲の中に入っていて。こういう構成にしたのはなんでですか?
MÖSHI - そうですね......。前回のEPはどちらかと言うとどっちかに偏っていたという感じですか?
- 個人的にはそう感じて。テーマごとにというか、楽曲ごとに声を使い分けていて、それが今回は両方とも一緒に入っているという感じがしたんですよね。
MÖSHI - まず自分の中でのテーマとしては、今年一発目のシングルだし、EPが終わって新しい区切りとしての曲なので、自分の最初の全部を詰め込みたい、ラップやファルセットだったり、普通に歌っているところも入れたかったんです。でもその上で、もっと多くの人に聴いてもらいたいのでメロディーもキャッチーにポップにしつつ、構成もちょっとイレギュラーになっていて、踊らせたと思ったら急に戻って、また盛り上がるとか、やりすぎちゃうと聴かれなくなっちゃうけどバランスも取っている。メロディアスなビートだと思うんですけど、ちょっと日本のエレクトロニカっぽい、切ない感じを上手くBPM140のトラップの基本に上手く混ぜ合わせられないかなとトライした部分があります。
- 楽曲についての完璧な説明だったと思うんですけど、そういう画というか、完成図は最初から見えてるんですか?
MÖSHI - 曲に関してはデモを一気に作っちゃって、そのままループさせておくんです。イントロからじっくり作っていくタイプではなくて。良いなっていう4小節なり8小節が出来たら、取り敢えず3分ぐらいの尺にしちゃってラップを乗せて。まず適当なフロウを乗せるんですけど、それを大体1日で終わらせて、一週間ぐらい寝かせておいて、その後また聴いてどんどん構成を変えていくパターンが多いかなと思います。取り敢えず基本の全体像が最初に見えていないと、どうしてもスッキリしなくて。だから曲を作り始めたら絶対にその日のうちに3分ぐらいの尺にして、その後でじっくり考えるっていうプロセスでやっています。
- いつからその作り方ですか?
MÖSHI - 最初からですね。その日のうちになんとなく自分の曲を聴きたくなって。10秒くらいの短いバージョンだとアレなので、デモバージョンを作って、電車の中とかでずっと聴いて、聴きながら「こうしたら面白いかな」っていうのをメモってという作業をしてます。だから自分の曲は凄く聴きますね。何回も書き出すからバージョンの数がヤバいことになるんですけど(笑)。出かける時も休憩する時も、ずっとそればかり聴いて考えるようにしていますね。
- アート作品を作る時も、似たような形ですか?
MÖSHI - 近いと思います。ファッションとかでも、結構プロセスや実験が大事だと思うので、失敗してもいいし、どんどん取り敢えず何でも試す。生地のサンプルを作る時も、取り敢えず色々な量をやってみて可能性のあるところをピックアップして、それをさらに発展させていくっていう。考えているだけだと分からないので、手を動かすのも好きですね。
- 話を聞いていると、結構ワーカホリックな性質というか。
MÖSHI - 他にやることがあまり無いんですよね(笑)。制作が一番楽しいんで。特に最近は外に出ることもないので、今まで以上にずっと家にいて作っていますね。
- なるほど。歌詞もいわゆるラップとして考えると、結構長いと思うんですよ。歌詞に関しても最初に3分にしちゃうっていう過程から、少しずつエディットしたり加えたりってことをやるんですか?
MÖSHI - 歌詞は最初にフロウを凄く試すんです。歌詞を入れるのは一番最後。ラップはメロディアスにしたいんですけど、メロディーやフロウをまず決定するのが僕にとっては最優先で。他のやり方も試したりしたんですけど、あまり自分的にはしっくり来ていなくて、音楽的にその方が納得がいくものになるって思ってます。その後にどんどん当て嵌めていって、ただ歌詞を嵌めるにあたって若干歌詞に影響されることはあります。「この言葉はどうしても入れたいから、それだったら3連符にした方がいいかな」っていう微調整はありますね。
- この曲だと、歌詞も実際にあったことがモチーフになっているのかなと思うんですが、抽象的にぼやかしているというか。視点が色々移り変わっている感じがするんですけど、歌詞は自分の体験などが最初にありますか?
MÖSHI - 自分の体験もあるんですけど、基本的には自分の体験を凄く誇張したり、抽象化してる歌詞が多いと思います。色々な視点って言ってくれたのは凄く嬉しくて、というのも僕は色々な人からの視点があるような映画が凄く好きで。歌詞の中でも色々なところからの視点があるのが重要なんです。でもそれ故何言ってるのか分からないこともあると思いますが(笑)。具体的なんだけど、ちょっと抽象的なところもあるっていう程よいバランスが凄く好きで、それを表現しようとしていますね。
- 好きな映画や映画監督は?
MÖSHI - ジム・ジャームッシュ。特に彼が一番最初に撮った『パーマネント・バケーション』って映画があるんですけど、ああいう何も起こらない映画が凄く好きで。スペシャルな人がスペシャルなことをしている映画があまり好きじゃないんですよね。こうやって日常の中で、どういう違った視点を持てるかっていう。当たり前にいる人たちがどういうことを普段考えているかとか、当たり前の人の違った見方を与えてくれる映画が凄く好きなんです。他にはヴィム・ヴェンダースとかも凄く好きですね。
- ジャームッシュやヴェンダースはやっぱり変なインサートとかが入ることもあるし。
MÖSHI - そうなんですよ。場面の切り替えとかで、変なインサートが入ったりしますよね。
- 歌詞にもそういう要素を入れているってことですよね?
MÖSHI - そうですね。色んな場面に切り替わったり、ふと「なんでこんなシーンあったの」ってなったり、ああいった映画が好きで。ああいうストーリーを作れたらいいなと思いますね。例えばアルバムを通してだったり。
- アーティストで歌詞に影響を受けたり、「この人の歌詞はいいな」と思うような、バランスを保っている人は誰だと思いますか?
MÖSHI - ......難しいですね。
- 自分がMÖSHIさんと近いような歌詞を書いている人として思い浮かぶのは、日本だとDaichi Yamamotoさんで。Daichiさんはやっぱり歌詞の書き方だとFrank OceanとKendrick Lamarが一番凄いと言っていて。
MÖSHI - 確かに、例えとかが凄いんですよね。そう思いますね(笑)。Frank Oceanは特に、言い回しとか例え方とかが凄いですよね。すみません、Daichi Yamamotoさんと言ってくれて(笑)。
- Daichiくんも結構主観と、人の話をあたかも自分のように歌詞の中に入れていたりしていて。それはやっぱり複数の視点が同時に入っているという点で、似ているなと思ったんですよね。
MÖSHI - Daichiさんの歌詞はそういう歌詞が多いですよね。Frank Oceanはよく口ずさんでるし、良い歌詞だなと思いますね......(笑)。歌詞で影響を受けた人って、あまり考えたことなかったです。Frank Oceanは大好きですね。
- ちょっとこの曲から離れて、実際にリリースを始めてから結構トントン拍子だと思うんですよ。そういう今の状況についてどう感じていらっしゃるのかなと。
MÖSHI - 本当に、単純に凄く嬉しいですね。と言うのも、僕は本当に去年の頭は誰も知らないというか、誰も聴いていなかっただろうし、自分でもそんなに出していなかったし。仲間たちとなんとなく好きに作ってみて、自分たちで楽しんでいたので、こうやって多くの人にサポートして頂いて、徐々に知っていただける機会が増えているのは、こんなに嬉しいことは無いですね。やっぱり人に聴いてもらうことが重要だと思うので。自分で楽しむのも良いですけど、色々流れを考えたり、新しい挑戦をしていきたいし、やっぱり多くの人に届いて欲しいので。だから「嬉しい」に尽きます。
- こういう状況の想定はしていなかった?
MÖSHI - ここまでは想定していなかったです。ただ聴いてもらえる努力はしましたね。去年ちょうどコロナでニューヨークにいられなくなったので帰ってきて、音楽を本腰入れてやってみようっていうときに、自分たちはライブを出来る伝手もないし、そもそもライブをしちゃいけないっていう状況で、かと言ってSNSで上手く広げられるとも思えなかったので、音楽を分かってくれる人に聴いてもらいたくて、『SUPER SONIC』だったり『FUJI ROCK FESTIVAL』だったり、タワーレコーズにアプローチしたり。だから僕はライブ経験ゼロだったんですけど、今だったら音源をしっかり聴いてもらえるんじゃないかなと思って。それで、聴いたことないようなアプローチをしてる音源をしっかり作ろうってことはしました。ただ、ここまでは予想していなかったですね。
- しかも、レーベルとの契約も自分から志望されたというか。
MÖSHI - そうですね。そもそもビクターが自分の色んなアウトプットを使うようなところを理解して頂けそうだなと思って。実際にお会いして、僕の色んなところを自由にやらせてくれたり、伸ばしてくれるレーベルだなと思ったので、是非やりたいということで。
- 今回のシングルを皮切りに、今年の計画というか、自分がどうなっていきたいというのは既に考えていますか?
MÖSHI - まずシングルの連続リリースをしっかりMVと共に出して、もっと多くの人の中で「MÖSHIってこういうアーティストなんだ」ってところが定着するようになったら良いなと思ってるんですけど。一つ一つしっかりやっていくことしか、今は考えていないですね(笑)。でももっと広げようと思って、もっと聴かれるために最近はそこにフォーカスしてトラックを作っていて。ただキャッチーな面白くない曲になってしまわないように、バランスを一曲一曲とるってことにフォーカスしていますね。
- コレクティブLaastcについてもお話を伺いたいんですが、クルーの方々とはもともとどういう関係だったんですか?
MÖSHI - もともとは僕と同級生だった友達がいて。彼はずっと音楽をやっていて、それで東京藝大に入って、そこで僕のバックDJをやっているPause Cattiに出会ったんですね。3人ともあまり友達がいないのでいつもつるんでいて(笑)。その中で曲を作り始めた時とか、リリースするにあたってのジャケだったり、自分たちの中でどんどん手伝いあえる関係が良いよねってことになって。あまり縛られずに、お互い必要なときに頼ったり。今回の“Painting”のギターもLaastcの1e1っていうメンバーに頼んで。僕が想像もしていないようなものが入ってきて「凄い良い!」みたいな。そうやって自由に、全然縛り付けることもなくどんどん作っていて、助け合っていく気の合う仲間っていう感じですね。
- 今後Laastcとしての活動もあり得るんでしょうか?
MÖSHI - そうですね、やっていきたいなと思っているんですけど。ただそのアウトプットをどうしたらいいのか凄く考えていて。後は結構全員我が強いんで、一緒にやる時は大変で(笑)。ちょっとお願いするぐらいなら良いんですけど、3人で凄く大きいものをやるってなったら、誰がリーダーシップをとるのかな。いつも普通に喧嘩したりするので、難しいところなんですけど。ただ、本当にやれたら凄く良いなと思っていて。1e1も東京藝大の音楽の大学院が終わってから美術で大学院に行ったりしていて、色んなアウトプットをしてるし、それぞれが音楽を作りながらも違うアウトプットを出来てる人たちなので、最終的に自分たちでやりたいって話すのは展示ですね。音楽をやってインスタレーションをやって、僕はファッションをやってますけど、それでLaastcのカラーを出せる展示をやりたいですね。出来れば今年とかに、大きい規模じゃなくてもいいから出来たらいいんですけど。そうすると、もっと僕だけじゃなくて他の人も色んなチャンスを得られるんじゃないかなと思っていて。そもそも一緒にいるのはどんどんお互い協力し合って、聴かれるようになったり見てもらえるようになるためなので。一緒にアウトプットを近いうちに出したいと思います。
- ちなみに、どういうことで喧嘩になるんですか?
MÖSHI - 一時期3人で普通に音楽を作ろうかってなった時があったんですけど、それぞれ制作のスピードが違う上に我が強いので、全員が納得できる作品はなかなか作れないんです。あとは喧嘩になるのは方向性ですかね。三人とも聴いてる音楽が全然違うんですよ。僕とPause Cattiは結構近いんですけど、1e1は結構違って。
- でも、同じものが好きな人たちが集まっても仕方ないところもあるだろうし。
MÖSHI - そうですね。でもお互いにパッとデモを投げ合って意見を言い合うことはよくあるので、別に一緒に作るってだけじゃなくて「どう思う?」って時は面白いフィードバックがあります。
- そういう関係は一番良いし、信頼している人から意見をもらえるのは良いですよね。これも小ネタっぽくなりますが、“Painting”でもブランドのkolorの名前が出てくるじゃないですか。好きなブランドというか、ファッション面で今興味を持っているのはどんなところですか?
MÖSHI - 最近はあまりブランドものを買わなくなってしまって。最近は近くのブックオフで買ったり、そういうところで発掘するのが面白くて。ブックオフとか、厚木の方にある巨大な倉庫の古着屋の西海岸とかで発掘するのが最近は好きですね。良い組み合わせがあったらリメイクしたり、意外と自分で作ったものを着るのが好きです。ファッションブランドだと、日本のブランドだとFACETASMとか。
- やっぱり、今は若い人でも古着やアーカイブを漁る人が多いですよね。古着に興味があるのはどうしてですか?
MÖSHI - そもそも、そういう倉庫系の古着屋さんはやっぱり見たこと無いような服があるので、自分で着る用だけじゃなくてパターンを取る用にも使っていて。その組み合わせで面白いことが出来ないかなっていうのもあるし。
- 「何だこのブランド」っていうやつがありますよね。
MÖSHI - 「なんなんだよこれ」っていう。単純に好奇心が大きいかもしれないですね。特に変な服は自分で着れないものもあって、家が古着でいっぱいになるんですよ(笑)。「変なブランドだな」とか「変な形だな」とか、ダサいんだけど何か良いというか。それこそ自分へのアーカイブみたいになるんですよね。もちろんたまに着たいものもあるんですけど。そこを見ることで「こういうパターン好きだったんだな」とか、意外と予期せぬ気づきがあるので、西海岸はよく行ってますね(笑)。綺麗な古着屋にはあまり行きたくなくて。もちろんセレクトされてるから絶対に良いんですよね。それを見るのも好きなんですけど、僕は基本的に無造作に大量の服がある場所に行くのが好きで。ロンドンでもそういうところに凄く行ってて。
- ロンドンにもあるんですね。
MÖSHI - ロンドンはめちゃくちゃ古着屋があるんですよ。特に週末はみんな凄く並ぶんですけど、倉庫みたいなところを貸し切って、一日だけゴミみたいに服が積まれてて、みんな引っ張り出したりして。埃だらけなんですけど、そういうところが好きでめっちゃ行ってましたね。解体して、パターンを取って、違う素材でやってみたら「この組み合わせ面白いかも」って。セントマーチンズではアブストラクトな感じにしてたんですけど、パーソンズの卒業コレクションは自分のテクスチャーを活かしつつ、もっとリアルなものにしていきたくて。最近は特に、パターンは集中していますね。ポケットの位置だったり、そういうのを古着を買う時にもフォーカスして見ていたりします。
- 色々なものに対する目線が一貫しているのが面白いですね。ありがとうございました。
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