【メールインタビュー】ENDRUN『TIME'S UP』|ワンループできてからどんだけ広げて引き算できるか

大阪を拠点に活動するビートメイカーのENDRUNが6月にニューアルバム『TIME'S UP』をリリースした。昨年、STUTSやjjj、DJ SCRATCH NICEなど名だたるビートメイカーとコラボレーションしたアルバム『innervision』とは対象的に、全て自身のトラック/プロデュースとなる当アルバム。前回から引き続き参加している新鋭ラッパーのWILLOWに加え、WILYWNKAやROLLS WYZEなども客演にて登場している。

8月にはILLNANDESとのジョイントアルバム第二弾『CZN' BEYOND』のリリースや、BESとISSUGIのセカンドアルバム『Purple Ability』にも参加するなど、常にシーンの最先端にて活動を続けるENDRUNに、アルバム制作、ビートメイク、共演アーティストなどについて、メールインタビューにて訊いた。

取材・構成:島田舞

- まずはニューアルバム『TIME'S UP』のリリースおめでとうございます。アルバムのタイトルが直訳で「時間切れ / もう終わりにしよう」などを意味しますが、こちらは制作に当たってのテーマや、心境の顕れなどでしょうか。

ENDRUN - ありがとうございます。聴いてもらえて嬉しいです。
自分の考えでは、「ENDRUN」が英語で「回避する」って意味なので、テーマは「時間切れを回避する」。

色々なシーンで予定より間に合わないこととか、欲しい時にない、とか予測と違うことがあって、
遅れたり遠回りすることが大半なんすけど、結局間に合って最終大丈夫やで、っていう落とし所です。そんくらいエキサイティングで、何か足りない時に何回も聴いてしまうサウンドになってると思う。

あと自分的には2016年にリリースした『ONEWAY』〜2019年の『innervision』で、今回の『TIME'S UP』で5年間の流れが一旦完結します。

- 昨年リリースされた前作『innervision』では、名だたるビートメイカー陣とコラボレーションされていますが、本作はENDRUNさんがオールプロデュースのストイックな作品ですね。前作を踏まえて他のビートメイカーから何かの影響、或いはビートメイクへの変化などはありましたか?

ENDRUN - 『innervision』でさらにやりたかったことが今回のアルバムで完成した感じですね。続きやけどこの作品の流れが、『innervision』本編リリースパーティで合流してからの、その後、アナザーストーリーって感じで。あと前情報なしでいきなり出したかったから今回は自主でリリースしました。これからまだ他のアナザーストーリーも色々出ます。

特に誰とかはないけど、日本人のビート皆めっちゃやばいから、新しい曲聴いたら普通に喰らいます。国内の色んな世代のラッパーとビートメイカーのコラボがもっとあったら聴きたいですね。

ビートメイクできる時間が限られてる事もあって、その中で少しずつ作業してるから、デモからちゃんと曲として完成させていくプロセスがめっちゃ長くなって、どっちのアルバムも同じ曲を1年くらいmixしてたりします。

- アルバムの紹介にて、「東京と大阪を繋ぐストーリー」と記されており、”QUESTION 1(feat. WILLOW & WILYWNKA)”におけるWILLOWさんのリリックの中でも東京と大阪を比較するものが登場しています。このトピックを選んだ理由を教えてください。

ENDRUN - WILLOWは東京生まれなんですけど、大阪も何回も住んでてどっちもまたいでるって感じで。比較しているんかはちょっとわからないんですけど。ある出来事があった時の流れで出来た曲で、2人もホームで大阪のQTRってクルーのアティチュードについて歌ってます。今回の中で芯の曲にもなるので、この人選もわかってもらえるかなって所ですね。

- WILLOWさんは前作『innervision』にてラッパーとして初めて登場しており、今回は曲数も増えて参加されています、どの様な流れでラップをする運びになったのでしょうか。また、更にラッパーとして、ライミングに磨きがかかっていると感じました。ラップに関して、ENDRUNさんのプロデューサーとしてのディレクションなどもあったのでしょうか?

前作『innervision』にて初登場し、話題を呼んだ"New Birth feat. Willow"

ENDRUN - 2015年くらいにROLLSWYZEのきっかけで知り合ったす。そん時に2人とも、ノリで録ってたフリースタイルのボイスメモ聴かされて、LINEでもボイスメモの曲めっちゃいっぱい送られてきて、ええやんてなって。で、その後でWILLOWが大阪住んでる時に、僕が不定期でやってるnewportってパーティとかで何回かライブしてもらったりしてました。

でもラッパー?というかラップがメインのやつじゃないんですよね。デザインとかスケートとかがメインで、けどドラムとかも叩けるし、全部彼のスタイルでめっちゃいいなと思う。

ラップについては...ディレクションは特になくて、今ラップして曲出してる人なんかわからんくらいめっちゃおるから、こういうスタンスの友達と作った作品もあってもいいやんてゆう価値観で作りました。それが原点のマインドというか。レコーディングも、iPhoneのイヤホンをmacのマイクジャックに挿して録ったアカペラが送られてきて、曲によってはそのテイクもほとんど使ってるから、肩肘はってないノリが出てる自然体の空気感。

- 他のラッパーへのプロデューサーとしての姿勢や関わり方など意識的に行っている事があれば教えてください。

ENDRUN - BlendもRemixも勝手に作るんも好きやからビートとハマってたり、持ち味がバッチリ活かされてる曲が好きで、はじめてやる人とは、今まで作った中で一番良い曲にしたいなといつも思ってて。

あとは直でだいたいリアルに何でも話せる人。友人と遊びで作った物を本気で仕上げるスタイルですね。

- ”QUESTION 1 feat.WILLOW,WILYWNKA”にてWILYWNKAさんも登場しています。WILYWNKAさんはジャンルレスに活躍されていますが、当楽曲の様なハードなライミングもこなし、ラッパーとしての軸があってかっこいいです。共演にあたってのENDRUNさんの感想を訊きたいです。

ENDRUN - どんだけ環境とか景色変わっても変わらない人間性とスタンスに愛を感じますね。人としてもめっちゃかっこいいしほんまおもろいです。レコーディング後にいったホルモン焼き屋もバッチリで、他にもめっちゃええやつ何曲か録ってるからタイミングが合えば色々出したいですね。

- WILLOWさんとWILYWNKAさんが親交のあるQTRクルーについて少しお伺いしたいのですが、どの様なクルーなのでしょうか?

ENDRUN - 映像とかずっと作ってくれてるROLLSWYZEという漢がいまして、前から知ってたけど、5~6年前くらいからがっつりリンクしだして。で、WILYWNKAもWILLOWも彼が繋げてくれたからこの音源が存在してて。

その頃からの自分のメインプロダクションにはいつも一枚噛んでくれてます。そいつが土台を作ったクルーで、大阪のストリート歩いてたらQTRがどんなクルーかわかると思います。

- ENDRUNさんのビートはドラマティックでサントラの様な、ストーリー性/意志を持つ、と以前から感じてい他のですが、楽曲を制作する際、何かそう言った情景やストーリーを描きながらビートメイクをされていますか?また、制作に当たって大事にしている事などあれば教えてください。

ENDRUN - たまたま聴いたエモいサンプルで作るんがずっと好きなだけで、ブラックスプロイテーション(※編注 アフリカンアメリカン向けに作られたアクション映画等の総称)とかのサントラからも影響受けています。Adrian YoungeとかBo Hanssonも好きで今回もいってもーてます。

ワンループできてからどんだけ広げて引き算できるかって所で何回も聴きます。逆に神ループで1発完成できた時もアツイす。

- 確かに、ワンループでもENDRUNさんのビートはループ毎に異なる表情で展開をみせるので「ワンループを広げて引き算する」というワードは非常にしっくり来ます。”BRAINS FLY”や”MSDE YOU LOOK DUB”など、印象的なフレーズを用いたソリッドな曲もあれば、”BED ROOM MUSIC”や”LOVE DUB”などではシンプルなフレーズの中に広がりをみせる曲もあって、ワンループの多様性を感じました。

アルバム作る際どれ程の数の楽曲を聴いていますか?また、実際にビートを制作する時間とサンプリングソースを探す時間の割合はどれくらいでしょうか?

ENDRUN - サンプルソース探しは日によるんですけど、5分から数時間〜1日~何年もかかります。常にアンテナはって探してるんですけど、集めた情報量に対して、限られたビートメイクできる時間内で、耳に止まってイメージできたやつを直感的に見つけて作ってます。

アルバム作ろうとして音楽聴いてないからどんくらいかはわからないですけど、集中して音楽聴けるのはカーステでmix聴く時くらい?やから作業時間のが割合長いですね。

- 今回のアルバム収録曲に「DUB」がタイトルに入っているものが3曲ありますね。これは以前には無かった傾向だと思うのですが、インスト曲への何か思い入れでしょうか。

ENDRUN - 元々別のビートメイカーとか自分の別のビートでWILLOWのラップ乗ってる曲があるんですけど、2016年とかに録ったやつで、『7K FILL』ってプロジェクトで出す予定だったのが流れて、お蔵入りしてたアカペラを自分のビートにブレンドしてdub versionで残しました。(レゲエのシングルのSIDE Bに入ってるVersionていうmix再編集したinst版の意味で”dub”)

- マスタリングはAru-2さんですが、Aru-2さんは様々なアーティストのマスタリングやプロデュースを手掛けていますね。aru-2さんにお願いした理由や、他の方とのマスタリングの仕上がりの違いなど知りたいです。

ENDRUN - 前作の『innervision』の時にISSUGIくん(16FLIP)がmixのディレクションをしてくれた時に、メールでやりとりしてて、例えば「EQの調整をこうしてああして〜」とか仕上がりイメージを言葉で読んで仕上げてくれる所を見て、やりとりがスムーズだったのと、リターンまでのレスポンスがめっちゃ早いので。

あとは良い機材云々じゃなくて、Aru-2がノりながらやってくれてるのがわかるくらいに、ビートに感情が入ってるのが決定的に違うと思います。

- 今回のジャケットが、名画のサンプリングに和モノを彷彿とさせる帯のデザインで、怪しい雰囲気でかっこいいです。アートワーク制作にあたっての経緯を教えてください。

ENDRUN - プログレッシブロックのアートの世界観が好きで、あと好きなレーベルのジャケットをオマージュしてて、今回はCDとしてのリリースは考えてなかったので、あえて盤のジャケ感でタイトルにちなんで作ってもらいました。

デジタル(脳内)に存在してるアイテム的な。有限と無限でいったら無。無形の方。あとは服部緑地公園のシンボルがサンプルされてるんすけど、時期は違うんですけど僕とWILLOWが住んでた街って事でついてて。

- 当アルバムリリースと併せて、8月にILLNANDESさんとのジョイントアルバム第二弾『CZN' BEYOND』のリリースが控えてます。前作『CZN'PASS』は日本のヒップホップヘッズから厚い支持を得たアルバムでしたが、3年の時を経てのリリースにあたっての経緯や意気込み、読者へのメッセージなどあれば教えてください。

ENDRUN - ライブしつつ新曲作り出したりしたのが、去年の2月くらいで、『TIME’S UP』と『CZN’BEYOND』は本当は去年の11月~12月には音源完成してて。年末にやった自分の『innervision』のリリースパーティにハメたかったけど、忙しすぎて焦って出すのはやめとこうとなって、今年に入ってから最後ゆっくり寝かせて時間がとれた分、高いクオリティに仕上がりました。今回は、ラップは聴いてたら日本語と英語50:50くらいの作品になってて、ビートも前作とは違ったテイストのものが選ばれてるから、今からリリースされるのが自分も楽しみです。

『CZN’BEYOND』のプロジェクトは自分だけじゃなくて、ILLNANDESとDOGEARとP-VINEとチームで動かすアルバムなので周辺の動きや流れにも注目していて欲しいです。あともうすぐ出るBES & ISSUGIの2ndアルバムもめっちゃやばくて自分も1曲参加してます。

今こんな状況でライブが出来たり出来なかったり、思うようにならへん事多いけど、変わらずmake musicしていくので、ビートを通じて何か感じとってもらえたら幸いです。

最後まで読んで頂き有難うございました。

 

Info

ENDRUN - 『TIME’S UP』

All Track Produced by ENDRUN
(beat make,cuts,rec,mix)
Mastered by Aru-2

配信リンク
https://linkco.re/hRaqqs4m

Track List
#1.TIME'S UP INTRO
#2.BRAINS FLY feat.WILLOW
#3.NEW BLOOD feat.WILLOW
#4 MIDNIGHT CITY'20
#5 QUESTION 1 feat.WILLOW,WILYWNKA
#6 CRUSING DUB
#7 WE GO HARD feat.WILLOW,ROLLS WYZE
#8 MADE YOU LOOK DUB
#9 BED ROOM MUSIC
#10 2030 feat.WILLOW
#11 LOVE DUB
#12 GREEN PARK

trk#2,3,5,7,10 lyrics written by WILLOW
trk#5 additional lyric written by WILYWNKA
trk#7 additional lyric written by ROLLSWYZE

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