【インタビュー】Neetz『Soundtrack from 991』|「原点がここにあることに気づいた」

Neetzが昨年リリースした1stアルバム『Figure Chord』は狼煙のような作品だった。その実力の片鱗は、KANDYTOWN本体はもちろん、メンバーたちのソロでも垣間見せていたが、このアルバムで結実したように思える。そんなNeetzが2014年に発表したミックステープ『Soundtrack from 991』のリマスター版をリリースした。6年前の作品をなぜ今? 今回はそんな素朴な疑問から、この作品を制作していた当時の話も訊き、Neetzのルーツを辿る。

取材・構成:宮崎敬太

もっと自分の名前を知ってもらいたい

 - Neetzさんは自粛期間中はどのように過ごしていたんですか?

Neetz - 今年に入って、KANDYTOWNで近所にスタジオを持ったんです。なので自粛期間中は週3くらいのペースでそこに行って曲を作ってました。自宅からも近いのでたぶん俺が一番頻繁に行ってますね。

 - そんな中、Neetzさんは『Soundtrack from 991 (2020 Edition / Remastered)』をリリースしました。本作は2014年にBandcampにて配信されていた作品のリマスターになります。なぜこのタイミングでリイシューしたんですか?

Neetz - トラックメイカー/プロデューサーとしてもっと自分の名前を知ってもらいたいので、今後は定期的にNeetz名義の曲を出していこうと思ってるんです。いろんなサブスクで、サッと検索して俺の曲がたくさん出てくるようにしたい。でもその前に「『Soundtrack from 991』がそもそもサブスクに入ってないよね」という話になって。6年前の作品を今出すなら、ちゃんとリマスターもして新曲も追加しようと。

 - ラストに収録された“Halfway”ですね。

Neetz - 実はこの曲の前半部分はオリンピック関連のCM用に作っていたものなんです。そしたら『Soundtrack from 991』に新曲を追加してサブスクでリイシューする今回の話が決まって。じゃあこのCM曲の後半部分に新しい展開を付け加えてフルバーションにしようと思ったんです。

 - 前半と後半でガラッと雰囲気が変わるのはそういうわけだったんですね。

Neetz - そうそう。曲のストーリーも考えてて。前半はオリンピック関連のCMだったこともあって、仲間と一緒に何かを勝ち取るイメージで制作してたんですよ。なので後半は勝ち取った後の内面の葛藤を表現してみようと思いました。それを柊平(Holly Q)にも伝えてリリックにしてもらった。

 - この曲は3月に配信されたKANDYTOWNの"Progress"とはかなりテイストが違いますね。意図的に作風を分けてるんですか?

Neetz - どちらも自分の中から出てきた表現ではあるんですが、“Progress”はKANDYTOWNのみんなとミーティングして「これまでやったことないことをやろう」というテーマを決めてから作ってるんです。一方“Halfway”は俺一人で完結してる。そこが仕上がりの差になってるんだと思います。そういう意味では、昔よりも作れる曲の幅が広くなったと思いますね。

『Soundtrack from 991』は俺にとって始まりの一枚

 - ファンはみんな知ってるとは思いますが『Soundtrack from 991』は隠れた名盤ですよね。僕も当時Bandcampで買いました。

Neetz - そんな人いたんだ…。でも普通に嬉しいですね(笑)。身内には評判良かったんですが、この作品に関して直接感想を聞いたりすることはあんまりなかったので。でも、この作品を出して自分がトラックメイカーとして世の中に認識されたという感じはなんとなくしてました。俺にとっては始まりの一枚という感じです。

 - この頃はまだKANDYTOWNの名前もほとんど知らなくて、誰がいて、どういうグループなのかもわからなかった記憶があります。でも今改めてこの作品を聴くと、実はKANDYTOWNのメンバーががっつり参加してた。

Neetz - そうですね。BANKROLLとYaBastaのメンバーが参加してて、KANDYTOWNとしてはまだ輪郭がぼんやりしてた頃です。これの後にKANDYTOWN名義のミックステープ(『KOLD TAPE』)を出すんですよ。当時は俺の家か、キク(KIKUMARU/Mr.K)の家が溜まり場で。集まっては、みんなにトラックを聴かせて、レコーディングして、みたいな感じでした。俺も本当に無心でトラックを作ってましたね。たぶん今より早いペースで作ってたと思う。そこから厳選してまとめたのが、この『Soundtrack from 991』なんです。

 - 5〜6年前の空気感がパッケージされている、と。改めて『Soundtrack from 991』を聴き直して、Neetzさんはどんな印象を持ちましたか?

Neetz - この頃みたいに、みんなで集まってなんとなく制作するノリも大事だなって改めて思いました。この作品には初期衝動というか、勢いがある。大人になるとみんなそれぞれ予定があるし、俺らはメンバーも多いから、最近はなかなか昔みたいに集まれないんです。今回KANDYTOWNでスタジオを持ったのは、またみんなで集まる場所を作ろうという思いもあって。

 - Neetzさん自身の制作面に関してはどうでしょうか?

Neetz - 改めて聴き直して「俺、こんなことやってたんだ」っていう新鮮な驚きがありましたね。さっきの“Halfway”と“Progress”の話に近いんですけど、去年『Figure Chord』を出すまではKANDYTOWNやメンバーのトラックを作ることが多かったんです。特に初期のKANDYTOWNはネタの雰囲気を活かしたトラックにしたかったので、1フレーズをまるっとサンプリングしてドラムを足す感じのものが多い。でも『Soundtrack from 991』ではネタをチョップしたり、加工して、さらに鍵盤を弾いた音を足したりしてるんですね。この作り方は『Figure Chord』に近い。つまり俺のより個人的な音楽性が出てたんです。そういう意味でも俺の原点と言える作品ですね。

音楽業界に就職して、制作の裏方として働きたいと思ってた

 - この作品を制作した当時、Neetzさんはどんな生活をしていたんですか?

Neetz - この頃は一応音楽の専門学校に通ってたんですよ。ほとんど行ってなかったけど(笑)。俺、エンジニアになりたかったんです。当時は普通に音楽業界に就職して、制作の裏方として働きたいと思ってましたから。

 - ということはミキシングなどの知識は専門学校で学んだ?

Neetz - 本当に基礎の基礎だけ。あとは独学です。制作に関しても、音響とかに関してもめちゃくちゃ自分で勉強しました。というか今もずっとしてます。

 - なるほど。Neetzさんがレコーディングエンジニアのillicit tsuboiさんとフィールしたのは、その辺のバックボーンも関係しているんですね。

Neetz - うん、それは間違いなくあると思う。

 - では裏方ではなくトラックメイカー/プロデューサー/ラッパーになったのはなぜですか?

Neetz - 環境ですね。裏方として誰かの音楽のために作業するより、KANDYTOWNのメンバーと一緒に曲を作るほうが楽しくなってきちゃったんです。あと近くに早い段階からプロのミュージシャンとして活動して人が多かったことも影響を受けてると思います。

 - 先ほど「勉強をしてる」と話されてましたが、具体的にはどんなことをしてるんですか?

Neetz - 音楽に関することは本当にいろいろやってるけど、制作に関して言えば気になったトラックを自分で作ってみたり。

 - ちなみに最近気になったトラックを教えてください。

Neetz - Kaytranadaとかかな。四つ打ちだけどヒップホップな感じがしてすごく面白いと思った。たぶん鳴りが違うんですよ。ハウスっぽくない。どうやったらこういう音になるのか、やっぱり自分で作ってみないとわからない。でもKaytranadaの曲でどうしても再現できない音があったんですよ。それでTsuboiさんに「あの音はどうやって出してるんですかね?」って質問したら、「机か何かを叩いてる音をサンプリングしてるらしい」って教えてくれました(笑)。

 - (笑)。

Neetz - そういう細かい部分のアップデートは常に続けてますね。今個人的に課題にしてるのは、曲のテーマやコンセプト、構成について。どのラッパーに頼むか、どう組ませるかとか。今回の“Halfway”もめちゃくちゃ考えました。

 - 今後はどのような活動を予定しているんですか?

Neetz - 今はKANDYTOWNの次のEPの制作をしてます。自粛期間中にYouTubeで出したSTAY HOME EDITIONの3曲を俺のトラックに差し替えてます。あと新曲も入ります。その他に外部アーティストのコラボや自分名義の曲もたくさん準備しているので、楽しみにしててください。

Info

アーティスト:Neetz
タイトル:Soundtrack from 991 (2020 Edition/Remastererd)
発売日:2020年5月29日
楽曲リンク:https://linkco.re/xuM4ESGb

トラックリスト、クレジット:
1.Keep It Moving (Ft. Big Santa Classic, IO, Young Juju, Mr.K, Neetz)
2.Wake Up Homie (Ft. Young Juju, Gottz, Holly Quran, Dony-Joint)
3.Ill Street Blues (Ft. Mr.K , Neetz, Ryohu)
4.Cruel Summer (Ft. Ryohu)
5.Yellow Gunz Thought (Ft. Neetz, Young Juju, Gottz, Dian)
6.Drive (Ft. Gottz & Holly Quran) [Clean]
7.Don't You Know (Ft. Mr.K & Young Juju)
8.Voodoo (Ft. Young Juju)
9.Bounce Up (Ft. Holly Quran, Gottz, Dian)
10.Summer Connection (Ft. IO & Neetz)
11.A Message (Ft. Neetz & Gottz)
12.Melancholy Day (Ft. Ryohu & Neetz)
13.Original Groove (Ft. Big Santa Classic)
14.Sat Night (Ft. Mr.K)
15.STARKLE (Ft. Holly Quran & Dony-Joint)
16.Summer Connection (Remix) [Ft. IO, MUD]
17.Halfway (2020) [Ft. Holly Q]

All Produced by Neetz
Performed by KANDYTOWN [Big Santa Classic , IO , Ryohu , Dony-Joint , Young Juju , Gottz , Holly Quran , Dian , Neetz , Mr.K, MUD, Holly Q]
Recorded @ Studio 991
Remasterd @ REM Studio by Rick Essig
Re-Design by THE TAXi FILMS

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