【特集】岡田拓郎 + duenn 『都市計画(Urban Planning)』| 2人が選ぶCOVID-19以降の都市の音楽

先日ソロアーティストとしての2ndアルバム『Morning Sun』のリリースをアナウンスした岡田拓郎と、Merzbow、Nyantoraと共に活動するエクスペリメンタルユニット3RENSAや多くの美術館、美術展への音楽提供などで知られるサウンドアーティストのduennによるコンセプトアルバム『都市計画/ Urban Planning』が本日5/20(水)に発表となった。

これまで王舟&BIOMAN、Jim O'Rourke、Ana Da Silva & Phewの電子音楽作品を発表してきたNEWHERE MUSICからのリリースとなった本作は、岡田とduennのディスカッションで生まれたキーワード「都市の音楽」から始動。「現代において、生活の中に鳴らされるべきアンビエント・ミュージック(環境音楽)とはどんなものなのだろうか?」などの会話を重ねながら、岡田はduennに1つの大きな決まりごとを提案する。それは長いキャリアを持つduennがやったことのないことだった「duennが作るメロディのみでアルバムを完成させる」というもの。装飾がまったくなされない最小限の音で構成されているのは、メロディメイカーとしては生まれたばかりの赤ん坊であるduennが紡ぎ出したプリミティブなメロディが中心にあるからだ。

また本作はメロディのduenn、編集・プロデューサーとしての岡田とはっきりとした役割分担の元で制作され、80年代から活躍し、環境音楽、現代美術の分野で多大な功績を挙げている藤本由紀夫や吉村弘など、偉大なる先人たちへのリスペクトも感じさせるものでありつつも、はっきりと2020年の都市にフォーカスが当たっている。

FNMNLでは本作のリリースを記念して、都市の風景をも一変させてしまったCOVID-19以降の都市の音楽を両者にセレクトしてもらった。

岡田拓郎が選ぶCOVID-19以降の都市の音楽

1. Taku Sugimoto - "Bell Of..."
2. Jim O'Rourke - "Low Bow"
3. Gavin Bryars - "Jesus' Blood Never Failed Me Yet"
4. Christina Kubisch - "In Transition"
5. Sam Gendel - "Satin Doll"
6. Satoshi Ashikawa - "Still Space"
7. Robert Turman - "Flux 1"
8. Michael Vallera - "Deep Sleeping Exit"
9. Folke Rabe - "What??"
10. Erik Satie, Philip Corner - "Gnossienne No.1"

コメント

静まりかえった街の中心の塔のてっぺんから、誰にも聴こえないような静かな音で鳴らされる鐘をイメージさせられたTaku Sugimoto「Bell Of...」は、その音と音の間に、ある時間の立ち上がりから消えゆくまでという、音楽を音楽たらしめる部分を意識せずにはいられない。信心深い年寄りの放浪者のフィールド・レコーディングの一部をテープループさせたゆったりとした室内楽をそこに乗せたGavin Bryars「Jesus' Blood Never Failed Me Yet」、空港の待ち時間で拾い集めた電磁波(音は無加工だそう)だけで構成されたChristina Kubisch「In Transition」、Erik Satieをとてつもなくゆっくりと奏でたPhilip Corner「Gnossienne No.1」。
この数ヶ月は、結局音楽は人に何をもたらすのかという、子供の頃に誰しも考えていたような漠然とした問いについて改めて考えています。
部屋の窓を開ければ聴こえてくる音のようでもあり、耳を傾ければ、「なぜ?」という問いが詰まった音楽に、とてつもなく音楽であると意識させられる。
できるだけ思慮深くいるように感じさせてくれる、そして音楽が優しく包み込んでくれる事を思い出させてくれる音楽。

duennが選ぶCOVID-19以降の都市の音楽

1. Sarah Davachi - "For Voice"
2. ELEH - "Harmonic Twins"
3. George Harrison - "No Time or Space"
4. The Caretaker - "Things that are beautiful and transient"
5. Brian Eno - "Microsoft Windows 95 Startup Sound"
6. David Rosenboom - "Brainwave Music"
7. Ben Vida - "Reducing The Tempo To Zero"
8. Kali Malone - "Spectacle Of Ritual"
9. Eliane Radigue - "Triptych"
10. Grouper - "Atone"

コメント

COVID-19以降、個人的にはプロテクターの中に入ったような非現実な世界が続く。これから先、どのような変化が到来するかを全く予想がつかない。ユートピアなのか。ディストピアなのか。これまでの日常生活で都市の恩恵を受けている身として、接続と断続を繰り返しながら、変貌していく姿をこれからも見ていきたいのと、そんな都市の一部として機能しうるサウンドスケープを選定してみた。「あかるい未来」が訪れますように...

Info

Okada Takuro + duenn
New Album『都市計画(Urban Planning)』
2020.5.20 Digital Release
Newhere Music NWM-004

配信先リンク
https://ssm.lnk.to/UrbanPlanning

01. Waterfront (UP-01)
02. Aquapolis (UP-02)
03. Third Sector (UP-03)
04. Hana To Midori To Hikari (UP-04)
05. Nijuuisseiki No Mori (UP-05)
06. Green Park(UP-06)
07. Social Welfare (UP-07)
08. Public Space (UP-08)
09. New Urban Center (UP-09)
10. Subcenter (UP-10)
11. Landscape (UP-11)
12. Zone (UP-12)
13. 116 (UP-13)
14. Public Open Space (UP-14)
15. Cosmodome (UP-15)
16. Infrastructure (UP-16)

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