【インタビュー】OGF|川崎からの新しい風

言わずと知れたBAD HOPやKOWICHI、A-THUGなど日本有数のヒップホップ都市となった川崎から、新しい才能が出現した。

OGF=Only Grizzly Familyと名乗るそのクルーは、BAD HOPのライブにも帯同していたSnozzz、OGF CandeeOGF Deechとさらに他に2人のラッパーで構成されている。今年1月に初めてリリースしたアルバムにはUSのトレンドを巧みに昇華しつつも、これまでに聴いたことのない日本語のフロウで、川崎ならではのハードなライフスタイルを落とし込んでいる。

今回は前述の3人のメンバーにOGF結成の由来から、どのようなものに影響を受けているかまでを訊いた。

取材・構成:和田哲郎

撮影 : 横山純

 - 今回は初めてのインタビューだと思うので、いろいろ基礎的な部分から聞けたらと思います。まず、OGFという名前での活動を始めたのはいつからですか?

Snozzz - 2019年の始め頃ですね。

OGF Deech - あんまり細かいの覚えてないけど。

 - そもそも三人は地元が一緒なんですよね。

Snozzz - 地元一緒です。年齢もみんな22歳で。隣の中学で、高校は一緒で。家もみんな5分10分くらいの所に住んでます。

 - 『Only Grizzly Family』というのはどのような由来で付けられたものですか?

Snozzz - そんなに深い理由があるわけじゃないんですけど、自分らの中で結構ハードな曲やサウンドが好きで。グリズリーは熊だけど、自分らのハードなサウンド感と合ってるから俺らっぽいな、って思ってグリズリーって付けました。

OGF Deech - 獰猛な感じというか。

OGF Candee - この語呂を聞いた瞬間に「これだ」って思ったもんね。補足で言えば、グリズリーは他の熊と毛色が違うってことですね(笑)

- OGFを始めるまでは、それぞれどんな活動をしていたんですか?

Snozzz - それまではOGFじゃなくてOGって名前でやっていて、そこからOGFになったのが2019年の始めぐらいで。それまでのOGは結構多い人数でやっていました。

OGF Candee - 元々中学校の頃に組んでた地元のチームの名前だったんだよね。それをラップのクルーの名前にして、それを元に去年から心機一転って感じで。

 - みんなそのチームにいたってことですか?

Snozzz - そうですね。僕ら三人はいて、他のメンバーも5、6人ぐらいいました。まだ曲は出てないんですけど他にもラッパーが二人いて。

 - 昔話を聞きたいんですけど、中学の頃に出会った経緯はどんなものですか?

OGF Candee - 経緯は...Snozzzが乗り込んできたっすね。

OGF Deech - 俺もSnozzzと初めて会ったのは...タバコの煙を顔にかけられましたね。

Snozzz - そんなことあったっけ?(笑)

OGF Deech - たまたま道を聞いたら、高校で普通にタバコ吸ってて。「あっち」とか言われて。

Snozzz - 元々Deechは東京の大田区で、高校で一緒になって。Candeeとは中学からよくつるんでたんですけど。

 - その時は音楽の話とかはしていたんですか?

OGF Candee - Snozzzはやってたっすね。

Snozzz - 僕は元々BAD HOPさんたちがラップ始めた時に、それを見て始めたんで。その時ラップやってたのは自分ぐらいでしたね。

OGF Candee - 自分はダンスやってて、それを辞めてやることが無くなって。みんないつもラップしてたんで、それに混ざったのが最初ですね。

OGF Deech - 遊びみたいな感じで。

 - そういうヤサみたいなのがあったんですか?

OGF Deech - その時は公園っすね。公園でサイファーしてて。元々USのヒップホップが好きで、日本のラップよりUSのものを聴いてましたね。多分Young Thugとか聴いてましたね。

 - OGFの曲を聴いていると、日本語を使ってるんだけど日本語ラップから影響を受けたというよりは、アメリカのラップを聴いてる人たちなんだろうなと思います。

OGF Candee - 向こうのトレンドとかは凄くチェックしてて、毎日してますね。常に日本のヒップホップシーンというより向こうのシーンを追いかけています。

 - 当時のOGってグループでは何をしていたんですか?

Snozzz - OGの時はみんなでバンダナ着けて黒ずくめで街に出たりしてましたね。何してたかと言われれば、それこそ公園でラジカセとかスピーカーでヒップホップ流しながら溜まったり。そういうイメージです。

Snozzz

 - 最初はカラーギャングのイメージに近かったんですね。

Snozzz - そうですね。真似事みたいなことをしてました(笑)

 - 川崎では目立つと絡まれたり大変そうですよね。

Snozzz - 絡まれますね。しかも結構人が集まる所に行ってて、そうすると目をつけられて「誰にケツ持ってもらってんだよ」って言われて。金取られそうになったこともありましたね。

OGF Candee - 俺らの頃ギャング多かったよね。今は暴走族だけど。俺らの代はウェッサイな格好してバンダナ着けて、今で言う暴走族ぐらいの規模でした。

OGF Candee

Snozzz - 自分たちが勧誘して同い年の色んな奴をいっぱい入れて、川崎だったらそういう系に嫌々ダボダボの服着てる奴もいたし。

Snozzz - 本当に周りの人間で固めてて。デカくしようとかじゃなくて、仲間内でやってました。

 - ウェッサイ的なスタイルだったというのは、やっぱりそういうウェッサイの物が好きだったんですか?

Snozzz - それこそBAD HOPの影響とかで。それが一番カッコいいと思ってたんです。

OGF Candee - 特にウェッサイの音楽を聴いてる訳じゃなかったよね。

 - BAD HOPの下の世代から見ると、BAD HOPが登場して川崎は変わったと思いますか?

Snozzz - 絶対変わった。自分らの下の世代にもラッパーはゴロゴロいるんですけど、みんなBAD HOPが憧れでなってると思います。僕らもそうだったので。

OGF Deech

 - SnozzzさんはどうやってBAD HOPと出会ったんですか?

Snozzz - 僕はBAD HOPが中学の先輩で。僕には兄貴がいて、兄貴がBAD HOPの先輩で、自分のことを結構可愛がってくれてて。「〇〇くんの弟なんでしょ?」みたいな感じで出会って、そこから結構良くしてもらってましたね。ライヴのステージにも上がらせてもらって、今でもよく会ってますね。

 - チームは高校も続いてたんですか?

Snozzz - 高校のどこかのタイミングでチームみたいなのは無くなっちゃったんですけど、僕らがラップやるってなった時にチームのOGって名前をそのまま使ったんです。

 - 続いてるというよりは復活させたんですね。

OGF Candee - 結局これが一番しっくりくる、って。

 - 音源もOGFとしては去年から一緒に始めた?

Snozzz - あのアルバムがOGFになってから初めてのアルバムですね。

 - この間FNMNLでOGFのトラックを作ってるyonkeyさんのインタビューをしたんですが、yonkeyさんの自宅に曲を録りに行ったんですよね。

Snozzz - みました(笑)俺らが押しかけて録りに行った感じで。

OGF Deech - ずっと録ってたよね。

Snozzz - 17歳ぐらいからずっと奴の家に行って曲をめっちゃ録って。それをずっと続けてました。しかも録った曲が多すぎて一回消そうってなったんですよ。

 - じゃあ、録りに行ってたのもリリースするつもりとかも無くて、とりあえず楽しいからやってた?

Snozzz - 元々レコーディングする環境が無くて、Deechの繋がりでyonkeyを知ってて、「レコーディング出来る奴がいる」てなって「そこなら曲録れるのか」って感じで押しかけて行きました。

 - そしたらトラックも作れたと。

Snozzz - そうですね。色々器用に何でも出来て。

 - 曲はどういう風に作るんですか?

OGF Candee - 最初はYouTubeにあるタイプビートを元に作って、yonkeyがそれを弾き直して、って感じで作ってました、

Snozzz - あのアルバム自体も去年の2月、3月ぐらいにある程度出来ちゃってたので、実はあれは結構前の作品なんですよ。色々問題があって出すのが遅れちゃったんですけど。

 - じゃあ、そこからもう新しい曲も作ってるんですね。

Snozzz - 僕らはみんなで同じ家に住み始めて。みんなで一個の家を借りて、録れる環境みたいなのを作ってて。そんなにクオリティ高い機材とかじゃないんですけど、そこでフロウとか考えて。 今は毎日そこで作ってますね。

 - OGFは凄く独特なフロウを使うというか、声の使い方も凄く面白いし。日々どうやって切磋琢磨というか、曲を作っていっているのか気になっていて。

OGF Candee - 結構個人で作ることが多いですね。

OGF Deech - 個人で良いのが出来たら「Candeeこれ入ってよ」みたいに言ったり。あんまり法則は決まってないですね。たまたまノリでビート聴いて「めっちゃ良い、録っちゃおう」で出来た曲もありますし、ちゃんと考えた曲もあります。

 - この作品に入っている中だと、どれがちゃんと考えた曲になりますか?

Snozzz - “Bランク”は一番俺ららしいな、っていうトピックを考えましたね。

OGF Candee - あの曲はみんなでアイディアを出し合って。

Snozzz - あれが一番自分たちらしいトピックだと思います。"Bランク”って「ブランク」とかにも掛けてて、自分たちの葛藤とか、こういう環境の中でどう足掻くかってことも含まれてるんで、これが俺ららしいと思います。

OGF Candee - カッコつけない。

Snozzz - 自分たちのありのままを一番歌詞に出来た曲ですね。

 - 今でもトラブルは多かったりするんですか?

Snozzz - しょっちゅうありますね。色々あります。言えないこともいっぱいあるんですけど。地元には俺らのことを気に食わない奴とかも結構いて、それで喧嘩吹っかけてきたりとかもしょっちゅうありますね。

 - それは音楽をやっているから、ということもあるんですか?

OGF Candee - 無くはないっすね。

Snozzz - どういう理由でそう言ってくるのかは分からないですけど、「調子乗ってて気に食わない」って言う感じじゃないですか?ちょっと音楽やって目立ってるからって。

- 最終的にOGFとしては川崎に居続けたいですか?それとももっと別の所に行きたい?

Snozzz - あんまり拘りは無いですね。別に川崎にずっと居たいってことも無いし。USでも通用するぐらいになりたいですね。向こうと肩を並べられるぐらいを目標にしています。

 - いわゆる日本語ラップは殆ど通過してない感じですか?

Snozzz - そんなことはないですね。

OGF Deech - 本当に通ってないのは俺ぐらい。

Snozzz - 自分は本当にザ・日本語ラップから入りましたね。ZeebraさんとかAK-69さんとか、般若さんとか。中学の頃超聴きまくってました。今も新しい日本語ラップは全然チェックとかするんですけど、逆にあんまり聴かないようにしてますね。逆にUSのやつとかを聴くようにしてて。もちろんたまに聴くんですけど。

 - USだと、結構ビートを聴いてるとDaBabyとかが参照元になってるんじゃないかな、って曲もあるような気が。

OGF Candee - DaBabyっぽい感じでやりましたね。

 - そこから結構時間が経ったと思いますが、今は誰をよく聴いていますか?「

OGF Deech - 幅広いですね。若手も聴きますし、Futureとか王道な人も聴くし。

Snozzz - 今は全然向こうでも売れてないラッパーを聴いたりしますね。再生回数も回ってないラッパーを結構ディグります。

OGF Candee - 他の人が聴かないところまで行けば人が聴いたことがない音楽を作れるというか。新しいインスピレーションがもらえるから。

Snozzz - 有名なラッパーの取り巻きとか聴くもんね(笑)

OGF Candee - 有名どころは誰でも知ってるから、アングラ掘ってるのが楽しい。発見とかも結構あるし。

OGF Deech - みんないい感じに好きなものが違うんですよ。

Snozzz - 結構Deechはメンフィス系だよね。

OGF Candee - 自分らは結構幅広く聴いてます。メロウなのも好きだし、トラップも好きですし。

 - 今回の作品は3人が参加していますが、3人が参加しているのはどういう意味があるんですか?

Snozzz - 今回は自分ら3人だったってだけで、この後は全然他の2人を入れた曲も出すと思うし。控えてるだけですね(笑)

 - 次の作品ももうすぐという感じですか?

OGF Candee - 次の作品も色々と練っていて、近々アナウンスすると思います。

- 今後OGFとして他にやっていきたいことはありますか?ライブもまだそんなにやっていないですよね。

OGF Deech - ライブ増えていけばいいな。ツアーは回りたいと思ってますね。

OGF Candee - アルバム製作してる時はライブを休止していて、やっとまとまった作品を出せたのでライブもバンバンやっていきたいですね。

Snozzz - 2020年にやっとアルバム出せたので、こっから勢い止めずに色々作品を出してライブを回って、やっていきたいです。

 - 音楽以外のインスピレーションの元のようなものはありますか? 

OGF Deech - 結構嫌なことがあって悔しい思いをするとバネになりますね。すぐ曲を作りたくなります。

 - 自分の経験が、ということですね。

OGF Candee - 自分のリリックは殆ど経験談なので、どこかからインスピレーションを受けるというよりは思い出して書いてます。「あんなことあったな、リリックにしよう」って。

Snozzz - アルバムの中にも“ボンです”っていう曲がありますけど、自分らの中でスラングのようなものがあって。例えばウィードを頂きますって時に“ボンです”って言葉があって、そういう言葉を使ってるんです。

OGF Candee - 元々結構年上のギャングの先輩が使ってて。

Snozzz - 「いただきまーす」みたいな意味なんですけど。後は「ヨコギマリ」ってワードも結構リリックに入れてて。

 - 「ヨコギマリ」っていうのは結構使うんですか?

Snozzz - 僕らの中では結構使ってるスラングですね。「あいつヨコギマリしたのか?」みたいな。

 - ちなみにどういう意味なんですか?

OGF Candee - 副流煙でそいつがキマッちゃってハイになってる、みたいな意味ですね(笑)

Snozzz - そういうのをトピックにしたりしてますね。

 - なるほど(笑)「ボンです」ってなんなのかな、と思ってGoogleで調べても出てこなかったんですよ。

一同 - (笑)

OGF Candee - 結構ローカルスラングですね。

 - あれは結構ユーモラスな曲ですよね。他にもスラングはあるんですか?

OGF Candee - 「ジョン」っていうのもあります。これもウィードのことなんですけど。

OGF Deech - 元々ウィードのことを「ボン」って呼んでて、俺らの回りでJっていう友達がいて、そいつが突然「ジョンにしよう」って言い出して。

Snozzz - 本当に適当ですね。後は、会話するときに「マリファナ」とか「ウィード」とか言うよりも自分たちのスラングを使う時の方が良いことってあるじゃないですか。それが馴染んできた感じですね。

OGF Candee - 結構造語を作るのが好きですね。

 - 一緒に住んでいたらそういうのも出てきますよね。一緒に住もうって決めたのがどうしてなんですか?

Snozzz - それこそ一週間に一回yonkeyのところに行ってて、毎日フロウを出し合ったりできる環境がいいなと思って。レコーディング出来る環境を作って、防音とかも色々やって、曲作るために借りましたね。

 - この間Zot on the waveさんとの写真を上げていましたけど、あれは?

 

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Project. OGF ZOT??

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OGF Candee - あれは僕たちの家に来てもらって。後に発表があると思います。

OGF Candee - 日本だともうZotさんとやりたいと思っていたので、後Lil'Yukichiさんともやりたいですね。

Snozzz - その二人はずっとやりたいって思っていて。まさか自分らの家に来てくれるとは思わなかったので嬉しかったです。アメリカだとJetsonmadeとやりたいですね。

OGF Candee - アメリカだとやりたい人がいっぱいいすぎて。

 - 3年後ぐらいにはどうなってたい、みたいなイメージはありますか

OGF Candee - 3年後にはもう、アトランタのスタジオだよね。

Snozzz - 日本だけじゃなくて、向こうでも活躍出来るようになりたいですね。

 - じゃあ最後に、日本の今のラップシーンは3人から見てどう見えていますか?

Snozzz - こんなこと言ったら偉そうだけど、レベル上がってるよね。

OGF Deech - 前はあんまり上手くないなって人もいたりしたけど。みんなトラップとかもそうだけど、曲調とかも結構向こうっぽくなってきてるよね。

Snozzz - さらに自分たちが盛り上げられたらと思いますね。

OGF Candee - 負けてらんないっすね。

 - ありがとうございました。

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