The Most Memorable Thing from the 2010's Selected by Dos Monos

早くも年末到来ということで、恒例のFNMNLの年末企画がスタート。今年は2010年代も終わりということで、この10年間の中でもっとも印象的だったことをFNMNLと関係の深い方々に訊いていきます!題して『The Most Memorable Thing from the 2010's』。印象的な音楽作品や個人的な思い出まで、どんな出来事がチョイスされていくのかお楽しみに!

今回は荘子it、TaiTan、没からなる3人組HipHopユニットで、今年の3月に満を持して初の音源となる1stアルバム『Dos City』をリリースしたDos Monos。

The Most Memorable Thing from the 2010's Selected by Dos Monos

荘子it

映画

コメント

やや抽象的、というか幅が広過ぎるトピックで恐縮なのですが、僕の人生=個人史において、2010年代は間違いなく映画の時代でした。

振り返れば10年代の始め、僕は毎日10時間ギターを練習する高校生のバンドマンでした。ですがその後すぐ、映画に出会い、映画監督を志すようになりました。映画を観始めた当時好きだったのは主にヴィンセント・ギャロの『バッファロー66'』やジャン=リュック・ゴダールの『気狂いピエロ』等。こんな風に好きなものを寄せ集めて自分のエモーションを作品にできたらいいなあ、という、今思えばかなり子供っぽいし御里が知れる感じですが、出会いとはそんなものです。いずれにせよ、音楽だけでは人生の全てを表現できないと思い始めたギター小僧だった自分にとって、映画=総合芸術的なイメージは、相当に求心力がありました。これも今思えばかなり幼稚な発想ですが、すっかり映画監督を志すようになりました。

その後、ギターを捨てて(しかし音楽はやめずひっそりとDTMを始めつつ)大学の映画学科に入り、毎日とにかく映画を観まくり、分からない映画があれは批評を読みまくり、分からない批評があれば思想や哲学や他分野の芸術史を独学しました。大学教授や学生仲間とは馴染めず(というか人としていくら好きでも趣味が合わず)、結局授業をサボったまま図書館に籠っていたので、単位は落とし続け、信頼する仲間も見つからず、ひとまず集団制作である映画を撮ることは難しいと考えた僕に、好きなものを寄せ集めて自分のエモーションを作品化できる道は、さしあたり一人でできるトラックメイクと、映画監督を志すこじれた自我が発達する前の中高時代にすでにかろうじて関係を築いていた昔の仲間を誘ってHip Hop クルーを結成するというものだけでした。それがDos Monosです。

結果として10年代の終わり、僕はHip Hopクルーを率いて、人生で初めて自ら全曲を手がけたアルバムを世に送りました。以上の通り、最初の作品は映画を作るモチベーションで作ったので、ほぼ映画だと思って聴いてもらえたら嬉しいです。映画の歴史は音の無いサイレント映画に始まりましたが、やがて音を得て、ついには音楽そのものとなるのです。

2020年代はどのように過ごしたい?

映画という、恐らく今後は20世紀のようには芸術史において重要な位置を占めることのない芸術ジャンルから得た多くのものを、22世紀まで残る新たな作品を作ることに捧げたいと思います。

 

TaiTan

『THE MANZAI 2013 決勝』

コメント

天竺鼠と東京ダイナマイトの漫才が衝撃的に面白く、そのバグりきった脱力には腰を抜かしました。もともと松本人志の伝説のコント集『VISUALBUM』や松尾スズキの初期の戯曲など、日本独特の不気味な笑いを扱った作品が大好きだったのですが、リアルタイムでその手の作品に出会うことは滅多になかったので、彼らとの出会いはかなり印象に残っています(テレビ越しという不意打ち感もあいまって、文字通り喰らった)。音楽関係ねえじゃんと言われるかもしれませんが、当時、結成前のただの友達だったDos Monosのメンバーとあの面白さを共有できたことは、その後のDos Monosの作品群にもかなり影響与えたと思います。

2020年代はどのように過ごしたい?

活動の幅を地理的な意味でも表現的な意味でも広げたい。

 

Animal Collective

コメント

2010年が始まった時は16歳で、自分はかなりぼやっとしている方なので、何が起きているかなど(今もですが)あまりわかっていませんでした。その年の夏、アニマル・コレクティブを友達の森田君が教えてくれ、そこからより幅広い物事へと興味が広がったように思います。世間的にはむしろゼロ年代を生きたバンドだということはわかっていますが、僕個人の10年代は彼らにはじまり、結局今もその余波の中にあります。もう彼らの新譜を熱心に追ったりもしなくなりましたが、彼らのオープンな姿勢、音楽への向き合い方を知って世界が広がった10年間でした。

2020年代はどのように過ごしたい?

20年代ということを今のところそんなに意識していませんが、今後も変わらず音楽が好きでいれたらいいなと思います。

 

Info

12/14 (土)
radioDTM10周年ライブ 出演
http://radio-dtm.jp/500th10years/ticket/

12/19 (木) 新宿MARZ
SMTK presents "Dazed and Fuzed" 出演
http://www.marz.jp/schedule/2019/12/smtk_presents_dazed_and_fuzed.html

Dos Monos

荘子it(Trackmaker/Rapper)・TaiTan(Rapper)・没(Rapper/Sampler)からなる、3人組HipHopユニット。荘子itの手がける、フリージャズやプログレのエッセンスを現代の感覚で盛り込んだビートの数々と、3MCのズレを強調したグルーヴで、東京の音楽シーンのオルタナティブを担う。結成後の2017年には初の海外ライブをソウルのHenz Clubで成功させ、その後は、SUMMER SONICなどに出演。2018年には、アメリカのレーベルDeathbomb Arcとの契約・フランスのフェス『La Magnifique Society』、上海のフェス『SH△MP』への出演を果たすなど、シームレスに活動を展開している。3/20、満を持して初の音源となる1stアルバム『Dos City』をリリースした。

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