【インタビュー】ZOMBIE-CHANG | ポップコーンみたいに飛んでいく
メイリンによるソロプロジェクト、ZOMBIE-CHANGがクリエイトするポップミュージックはどこか不安定で危うく、だからこそ予定調和や紋切り型のそれとはほど遠い楽しさや刺激に満ちている。昨年まではバンドサウンドで鳴らすニューウェイブ的な音楽像に傾倒していたが、2019年に入ってリリースしている音源ではフロアライクなエレクトリックサウンドを推し進めている。休止していたモデル業を再開し、今秋には映画初出演を果たしたメイリンの今のモードに迫った。
取材・構成 : 三宅正一
写真 : 信岡麻美
- 映画に出演したんですよね。
メイリン - はい。根岸里紗監督の『ふたり』という映画なんですけど。シネマ・ロサで今年1週間くらい(9月28日〜10月4日)公開されて。
- 出演はどういう経緯で決まったんですか?
メイリン - 監督と面識はなかったんですけど、里紗さんから「映画に出ませんか?」という連絡を突然もらって。「私にできるかな?」と思ったんですけど、「メイリンさんのままでいいので」と言ってもらって。「そのままとはなんだろう?」と思って挑戦してみました。そしたら、そのままでやれましたね(笑)。2人の正反対の性格の女の子をめぐるお話なんですけど。
- 芝居にはずっと興味があったんですか?
メイリン - ありました。実際にやってみてすごく楽しかったですね。おじいちゃんが亡くなって病室に入るシーンがあるんですけど、本当に悲しくなっちゃって。全然涙が止まらなくなっちゃったんです。「どうしよう。でも、ここは泣いたほうがいいシーンだし、変に周りに気を遣って涙を止めてもなぁ」と思ってそのまま泣きました。
- 自分の中に役が入ったということですよね。
メイリン - どうなんだろう? でも、「こういうシーンはこういう感情なんだろうな」と思ったときに、映画のお話とは全然関係ない自分の記憶を思い出せるのは楽しかったですね。「あのときこういう人と会って、こういう感情になったな」みたいな。写真を撮られるときもそのときの雰囲気に合わせた感情を考えるほうなので。
- モデル業も再開したんですよね。昨年インタビューしたときに「音楽活動に専念するためにモデル業から離れる」という話をしていたから、この1年でマインドチェンジがあったのかなと。
メイリン - また意識が変わりましたね。モデルをやっていたときに現場でいろんな方と出会っていろんな発見があったことを、モデルを辞めてから気づいたんです。活動が音楽だけだとまじめになりすぎちゃうというか、自分の中に遊び心がなくなっていっちゃって。それでいつの間にか悩むことが多くなっちゃっていたんです。やっぱり私は一つのところに留まることが苦手なんだなと思いました。
- それは音楽に専念してみたからこその気付きだった。
メイリン - そうですね。すごくいい機会だったと思います。
- 実際にモデル業を再開してみてどうですか?
メイリン - 楽しいです。やっぱり音楽活動だけしていたら会えない人ともお話できたり、現場ごとに雰囲気が違うので。そこでいろんなことを感じ取れることが一番楽しいですね。自分が楽しいことは積極的にやりたいなと思うし、お仕事をいただけるのはすごくありがたいことだなと思います。
- 音楽活動にもいい作用があると感じてますか?
メイリン - いろんな人が(モデルとして出ている媒体を)見たりして、そこからライブのお客さんになってくれる人もいると思うんです。普段だったらオーバーグラウンドの音楽しか聴かないような人が、私のようにインディーズの音楽を聴くきっかけになったらすごくうれしいし、それは自分にとっても一番いいなと思うポイントですね。若いお客さんと出会う上でそういうきっかけって大きいと思うし、それは無下にできないなと思いますね。
- 映画で芝居をやってみて、音楽表現にフィードバックされる実感はないですか?
メイリン - それはなかったですね。あくまで人の作品の中に入る自分、という感じなので。まだ一回しか映画で演技をしていないというのもあるし、今はそこまで考えられないですね。
- 今後、こういう映画に出てみたいというイメージはありますか?
メイリン - 園子温監督の映画に出てみたいです(笑)。個人的に園さんの作品がすごく好きで。出演している方もみんなカッコいいし、自分もそういう演技ができる人になれたらいいなとは思いますけど、絶対無理だろうなとも思っていて。でも、園さんの作品には憧れがありますね。
- 9月にデジタルリリースされた新曲"GOLD TRANCE"はメイリンさん自身がモデルに起用されているヘア化粧品ブランド、ARIMINOのカラー剤『アジアンカラー フェス(FES)』とのタイアップソングですけど、モデル業と音楽業が同居できるのはすごく幸福なことですよね。
メイリン - うれしいです。「やっと私が曲を作ってることが認知され始めたのかな?」と思うんですよね。今までは「誰がトラックを作ってるの?」って訊かれることも多かったんです。なので、積極的に自分でトラックを作ってることをアピールしていこうと思ってるんですね。
- 4月にリリースされた“されど幸せ”以降、サウンドプロダクションとしてエレクトロニックでフロアライクな要素がどんどん増していってるじゃないですか。その要因はどんなところにあるんですか?
メイリン - 今年に入って打ち込みにすごくハマって。最初はアシッドテクノが好きになって、“されど幸せ”はアシッドテクノにハマってるけどそれをバンドで鳴らしたいというイメージで作りました。
- ZOMBIE-CHANG流のニューウェイブという趣ですよね。
メイリン - そうですね。そこから突然「トランスってカッコいい!」と思うようになって。自分なりのトランスをイメージして作ったのが“GOLD TRANCE”なんですね。タイアップ案件でもあったからトラックメイクできる自分を広く伝えられると思ったし、しっかりトラックメイクしたいなと思って作りました。打ち込みの曲を作るが楽しくなったのは、今年に入ってからエレクトロセットのライブをやるようになったのが大きいと思います。ライブでも(フロアが)テクノっぽい曲のアガり方とバンドサウンドのアガり方って全然違うじゃないですか。
- そうですね。
メイリン - バンドセットとエレクトロセットを使い分けると、その違いを体感できるのが面白いですね。
- バンドセットとエレクトロセットを分けようと思った理由は?
メイリン - バンドをやっている人がソロでライブに呼ばれるときってだいたい弾き語りをするじゃないですか。「私の場合はどうなるんだろう?」と思ったんですよね。最初は電子音だけのライブをやっていたというのもあったし。でも、そのときは意識が中途半端で自分の中ではカラオケをしているような感覚だったんですよね。私自身、人がそういうパフォーマンスをしていてもあまり面白いとは思わないので。今は一人でライブやるならちゃんとリズムマシンとかを使って4つ打ちから入るテクノっぽいライブをやりたいと思うようになって。今もまだ努力している段階ですけど、最終的には私のことを誰も知らない現場でやっても盛り上がるステージを作りたいと思ってます。あとは電子音とバンドを合体させたいという気持ちはつねに持っているので。そのバランスももっと研究したいんですよね。電子音とギターが交わる気持ち悪さとか。ただバンドサウンドにシンセを足したというよりは、もっと気持ち悪い融合の仕方があるなと思うんですよね。
- 独創的なニューウェイブ感はもっと追求できるかもしれないですよね。
メイリン - うん、そう思いますね。
- 『PETIT PETIT PETIT』が日本の音楽をレコメンドするUKのレーベル、Toothpaste Recordsからヴァイナルリリースされたり、フランスでライブをしたり海外のトピックも増えてますよね。海外のリスナーからの反応はどうですか?
メイリン - 海外リリースするときにサブスクから一度音源を消したんですね。そしたらサブスクで私の曲を聴いてくれていたいろんな国のリスナーから「なんで消えたの!?」って連絡がきて。そこで「本当に聴いてくれてるんだな、ありがたいな」って思いました。フランスのランスであったフェス(「ラ・マニフィック・ソサエティ」)でライブをしたときは日本のライブと反応が違って、「海外ではこの曲が盛り上がるだろうな」と私が思う曲と実際に盛り上がる曲が一致したのがうれしかったです。海外では打ち込みの要素が強い曲が盛り上がるんだなと思いました。日本と違ってAメロ、Bメロ、サビみたいな王道の構成がある曲はあまり盛り上がらなかったり。音だけで判断するシビアさがいいというか。それは発見でしたね。そのフェスにフランスのスーパーイケメンラッパーのロメオ・エルビスも出ていて、ちょっと話すこともできてうれしかったです(笑)。
- これからまだまだ音楽的にもいろいろ実験したり挑戦できそうなことがありそうですね。
メイリン - あると思います。ポップコーンみたいにいろんなところに興味が飛んでいくので。今はいろいろ試して、ゆくゆくはポップコーンを大きく二つに分けてそこにトロトロのバターをかけたいですね(笑)。それが自分の音楽のスタイルになったらいいなって。
Info
ZOMBIE-CHANG
1st ONE-MAN SHOW
『アテンションテンションセッション』
ACT : ZOMBIE-CHANG
VJ : Ryuichi Ono
日程:2019年10月28日(月)
会場:SHIBUYA WWW
時間:OPEN 18:30 / START 19:30
料金:adv ¥3,000(ドリンク代別途)
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