【インタビュー】JUNE | BTSのプロデューサーからシンガーソングライターへ
世界的にK-POPへの関心が高まったことで、K-POP以外の多様なジャンルの韓国アーティストたちも注目を浴びるようになった。その中にはK-POP的な感性を持ちつつも、同時にオリジナリティを発信するシンガーソングライターも多くいる。今回インタビューしたJUNE(ジュン)もその中の一人である。
JUNEは世界的な人気を誇るボーイズグループ・BTSが所属するBig Hitエンターテインメントの練習生としてキャリアをスタート、その後BTSの”Not Today”、”Lost”、”Awake”などの楽曲に参加するプロデューサー、さらにソロのシンガーソングライターへと転身を果たした。また、ソロ活動と並行してPlanetarium Records(PLT)の一員としてヨーロッパツアーを果たすなどその活動の幅は多岐に渡る。
今年1stアルバム『Today’s』をリリースした彼に話を訊いた。
取材・構成 : soulitude
翻訳編集: Erinam
- まず音楽を始めたきっかけやアーティストになろうと思ったきっかけを教えてください。
JUNE - 幼少期から音楽が好きで、よく聴いたり歌ったりしました。その頃から漠然と音楽をやりたいとは思っていましたが、本格的に目標として定めたのは高校に進学してからですね。高校は芸能学校であるソウル実用音楽学校に入りました。
- 子供の頃から音楽をよく聴いたということですが、どのような音楽を聴いて育ちましたか?
JUNE - 小学6年生のとき、はじめてR&Bに出会ったんです。最初は当時流行っていたポップR&Bを聴いて、Musiq Soulchild、R. Kelly、Ne-Yoなどを聴くようになりました。そこからさらに色々探して聴くようになって、古いソウルまで聴くようになりました。D’Angeloとかネオソウルも好きでした。
- なるほど。そう言ったR&Bの影響もあって音楽学校への進学に至ったのですね。でも芸能の学校に進学するには楽器やボーカルなどの実技試験を受けなければならないですよね。
JUNE - そうです。実は元々ドラムをやっていたので、ドラム専攻で高校に入るつもりでした。しかし、ちょうど当時歌うことにハマってしまって、急遽変えてボーカル専攻で進学することにしたんですよ。
結局自分で楽曲プロデュースをしているので、ドラムとボーカルの両方を当時経験したことはとても役に立っていると思います。
- JUNEさんが音楽学校に通うアーティストの卵からBig Hitエンターテインメントの練習生になったのはどういう流れがあったんですか。
JUNE - 高校を卒業後、本格的に音楽をやってみたいと考えるようになって、プロへの糸口をつかむためにあるコンペティションに出場しました。そのコンペティションで良い成績を残すことができて、これから頑張っていこうと思えました。
そのコンペの影響か、その後間もなくBig Hitエンターテインメントの新人開発チームから連絡が来て、「Hit Itオーディション」という自社オーディションに出場してほしいと誘いを受けました。自分にとって何か良い機会になるかもしれないと思って出場したら1位になって、そのまま自然に練習生となりました。
当初のBig Hitエンターテインメントでの生活は、アイドル練習生というよりはアーティストが集まったクルーという雰囲気でした。しかし、だんだん僕の求めていた方向性とは合わなくなりました。会社の方も僕の意向に気づいて、じゃあプロデューサーとして一緒にやってみるのはどうかと提案してくれたんです。
- その結果、BTSの”Not Today”、”Lost”、”Awake”などの楽曲を手掛けるようになったんですね。ところで、プロデュースワークはどうやって始めたのですか。
JUNE - 特にどこかで習ったことはないです。興味があって独学で色々と試みている段階でしたが、ちょうどその時期にいいチャンスをいただいたので、一緒に作業を進めながらプロデュースを色々と習得していきました。
- ではそれらの楽曲がプロデュースを初めて最初に作り出したトラックなんですね。
JUNE - そうです。2016年10月10日。今でも忘れられません。
- 練習生からプロデューサーへとBig Hitエンターテインメン内部での立場が変化した頃から、すでにソロのシンガーソングライターとしてのキャリアもお考えだったのですか。
JUNE - はい。そもそも自分の歌う音楽を作るシンガーソングライターになることが目標でしたし、当時事務所にもその意向をきちんと伝えました。Big Hitエンターテインメント側も僕の意向を尊重してくれたので、会社を離れて新たなスタートを切ることができました。
- 今、BTSは韓国はもちろん日本を含めて世界中から大きな支持を得ていますね。当時手掛けた楽曲が今や世界中で愛されていますが、そういった変化についてはどのように感じていますか。
JUNE - そうですね。例えば、僕が参加した”Not Today”という楽曲は日本語バージョンもリリースされました。その日本語版を聴いてみたら、自分の知らない他の国の言語で僕の書いたメロディーが歌われているので、なんだか不思議に感じられました。僕自身もアーティストとして活動しているからには、いつか自分自身の楽曲も日本語や他の国の言葉で歌ってみたいと思っています。
- プロデューサーとしてBTSのアルバムに参加していた時期から、2018年にデビューシングルをリリースするまで約1年の間はどういう活動をしていましたか?
JUNE - その間に新しい会社と契約を結び、PLT(Planetarium Records)の仲間たちと楽曲を作り始めました。その結果生まれたのが2018年1月にリリースした『PLANETARIUM CASE#1』とその翌月にリリースした『PLANETARIUM CASE#2』です。
- ソロ活動の開始後は、PLTのクルーとしても活動の幅を広げていますが、今お話に上がった2枚のEPに加えてシングルも3枚リリースした他、クルー同士でお互いの作品に参加するなど親交も深いですね。PLTのクルーも紹介していただけますか。
JUNE - PLTには僕を含めて5人が所属しています。チョン・ジヌは『K-POP STAR』という有名なオーディション番組に出演したことで一番知られているメンバーで、センチメンタルな歌唱が魅力です。GAHOは5人の中で一番大衆的な音楽性を持っています。VILLAINはオリジナリティのあるユニークなヒップホップを作っています。そして、MOTIはレーベル唯一のラッパーです。
みんなそれぞれ違ったスタイルの音楽性を持っているので、お互いにいい影響を与え合いながら交流できていますね。
- PLTの結成はどういう流れで?
JUNE - チョン・ジヌとVILLAINは高校時代の友達です。そして、MOTIはジヌの知り合いで、GAHOはVILLAINの知り合いでした。音楽が好きな友達同士で集まって遊んだりしているうちに、皆で何かやってみようと集まるようになりました。
- 去年、シングル『Sérénade』でいよいよ本格的なソロ活動を始めました。デビュー作として一番気を使った点は?
JUNE - 初めての作品だったので、自分が一番上手にできて、自分が一番好きな音楽はどういうものかすごく悩みました。この作品でJUNEというアーティストが作る音楽を初めて世の中に披露するわけですから。自分では悩んだ分、自分の方向性はちゃんと伝えられたのではないかと思っています。
- 今年、アルバム『Today’s』をリリースしましたね。簡単にアルバムの紹介をお願いします。
JUNE - 今年6月3日にリリースした僕のアルバム『Today’s』は10曲のトラックが収録されており、『6AM』という楽曲から『12AM』まで一日のそれぞれの時間に感じるムードや気持ちを盛り込んだトラックで構成しています。
- 1日の時間の流れを表現したユニークなテーマですね。
JUNE - 僕は同じ1日の中にも時間ごとに違ったバイブスがあると思います。僕がリスナーとしてその時間帯に聴きたいと思うような音楽をイメージして作ってみました。なので、実際に時間の流れに合わせて聴いていただければ嬉しいですね。でも人それぞれその時間に感じる感情も違うわけですから、それはリスナーの方のバイブスで。
- アルバムでJUNEさんが一番気に入っているトラックを挙げるなら?
JUNE - 僕は4曲目の”For”が一番好きです。この曲は古いソウルミュージックのスタイルなので大衆性は強くありません。でも、僕が好きな音楽ジャンルでもあるので、わざとビンテージな雰囲気を出そうと頑張りました。今でも時々自分で聴いたりするほどお気に入りです。
- リード曲の"오늘밤은,(今夜は、)"はレトロなニュージャックスウィング・ジャンルのトラックです。今までJUNEさんが披露したことのないスタイルのトラックですよね。
JUNE - ニュージャックスウィングは前からずっと一度はやってみたいと思っていたジャンルです。ちょうどいいタイミングでニュージャックスウィングにぴったりのテーマが思い浮かんだので今回作ってみました。元々好きなジャンルです。
- JUNEさんは96年生まれですが、どういうきっかけでニュージャックスウィングやソウルなど70~80年代の音楽を聴くようになったのですか?
JUNE - 先ほどお話したように、僕が子供の頃に聴き始めた音楽が90~2000年代のR&B音楽です。でも90年代の音楽を聴いていれば、自然と80年代の音楽に興味がわき、また80年代の音楽から70年代の音楽への興味がわくようになるじゃないですか。
そうやってさかのぼり続けていくうちに50~60年代のジャズも聴くようになりますね。僕も音楽好きとして、自然とそういう風に古い音楽に興味を持つようになりました。
- ここ数年、日本の80年代前後のポピュラー音楽がシティーポップと名付けられ改めて人気になっています、シティーポップ系の音楽も聴きますか。
JUNE - はい、好きなアーティストも多いです。"Plastic Love"で有名な竹内まりや、杏里、国分友里恵、大橋純子など普段からよく聴いています。
- アーティストとしての目標は何ですか?
JUNE - もちろん多くの人々に聴いてもらうことも目標の一つですが、僕の音楽が誰かにとって、ある時間や天気に合わせて、ふと思い浮かんで聴きたくなるような音楽になったらいいなと思っています。
- では今後の活動計画を教えてもらえますか。
JUNE - しばらくライブをたくさんする予定です。10月にはソロコンサートも予定しています。コンサートが終わったら、PLTレーベルのツアーでアメリカを回ります。ニュージャージー、アトランター、ロサンゼルス、シカゴ、ダラスでライブをすることになっています。
ヨーロッパツアーの時も良い思い出が沢山出来たので、今回も楽しみにしています。ライブでエネルギーをもらって、またいい曲を作らなきゃですね。
- 最後に日本の読者に一言お願いします。
JUNE - これからも色んなジャンルの音楽を披露していくつもりなので、是非僕の楽曲を聴いてみてください。今後チャンスがあれば日本でもライブやリリース活動できれば嬉しいです。ありがとうございました。