【インタビュー】Kazuhiko Fujita|Marfa by Kazuhiko Fujitaを手がけるワーカホリックなアーティスト
先日FNMNL STOREより発売されたMarfa by Kazuhiko Fujitaによるエクスクルーシブアイテム。Marfaは定番となっているロゴを使用したものに加え、様々なカルチャーに造詣の深いアーティストであるFujitaの視点で作られたユニークなアイテムが大きな話題となっている。
その世界を作り上げているFujitaとは、どのような人物なのだろうか。ワーカホリックな彼の人柄や制作への姿勢、尽きることない制作意欲などをインタビューで訊いてみた。
取材・構成 : 和田哲郎
- 前に、Marfaを始めるときは服に興味があった訳ではなかったと言ってましたよね。
Kazuhiko Fujita - そうですね。僕、もともと絵描きですからね。洋服のプリント自体は15、16のときからやってますけど、元々やりたかったことは単純に自分が思ってることを絵にするっていう作業。それが根底にあったからというのが理由ですね。
- 当時作っていたアイテムはどのようなものだったんですか?
Kazuhiko Fujita - そのときは日本横町っていうタグネームがあって、自分の名前が入ったアパレルを作ることが凄く楽しくて、Tシャツキットを手に入れたら毎日やっちゃっていたんですよ(笑) そのときはTシャツくんでやっていて。確か貯まったお年玉で、知り合いに「もう使わなくなったのがあるから」っていうのを聞いて、「譲ってください」って全部買い取って始めました。あとやっぱり、スケボーがめちゃくちゃでかかったとは思いますね。自分が作ったアパレルを着て、街でスケボーをするっていうとても原始的なプロモーション。当時はプロモーションだとも思ってなかったですけど、その服を着て、あそこで滑ってたら「アイツだ」って一発でわかるみたいなものですね。
- そのとき作っていたアイテムは自分で着てたんですか?
Kazuhiko Fujita - 普通に周りの友達にも欲しいって言われたり、全然知らない人とか街で会った人に欲しいと言われたり。日本横町って単純に字面のデザインが、四つのワードを一つの形にするのでデザインしてましたから、外国人にもウケが良くて。いわゆるアパレルブランドって形ではなかったですけど、今やっているMarfa by Kazuhiko Fujitaっていうアーティストのプライベートブランドとしての基礎はそこで出来てたと思います。 Tシャツ、フーディ、ロングスリーブもやりましたし、あとジャケットとかですかね。シルクスクリーンって僕の場合は一枚一枚手刷りになるんで、一枚一枚少しずつ違うじゃないですか。それを大量に作るってことに楽しさを感じてたんですよね。
- 前に話したときに、ウォーホルやBanksyの名前は自分が制作を始めた後で知ったと言っていてびっくりしました。
Kazuhiko Fujita - 一個の作品に対して何週間も何ヶ月もかけて一つの作品を作るってことはもちろん素晴らしいとは思うんですけど、僕はそれじゃ物足りないと思っちゃったんですよね。かけた時間に対して出来たものが本当にイコールで結ばれるのか、ってことに凄く執着してて。「これじゃダメだ、もっと作りたい」っていう制作欲が凄くあったんですよね。そういうときに「もし自分で紙に絵を描いて、それをペンカッターで切り取って切り絵みたいにして、その上からスプレーかけたら自分のデザインを大量に色んなものに載せられるんじゃないか」って思ったのが、僕が得意なマスプロダクションっていうアートに偶然相性が良かったというか。それをずっとやってる段階で、偶然ステンシルやってる人と出会って「ステンシルやってるんだ?」って言われて「ハイ?なんですかそれちょっと教えてください」って聞いたら、元々そういう手法があって、それを自分が始めてたっていう(笑)そういう始まりかたでしたね。その時にBanksyを教えてもらいました。「似てることやってんな」とか(笑)そこから同時進行でシルクスクリーンとかやってるわけですけど、当時ステンシルといったらBanksyがいて、シルクスクリーンだったらウォーホルがいて、という感じでよく比較されることは多かったかもしれないです。
- 大量のものを作りたいみたいな欲求はいつ頃から生まれたんですか?
Kazuhiko Fujita - やっぱり自分で何かを制作するってことを覚えてからですね。スケートボードを始めてからどんどん色んなトリックを練習して、元々負けず嫌いですけど、負けたくないなって何でもやるようにしてて。何か一個トリックが出来るようになると、それを誰かに見せたいと思って街で滑ったりとか、知り合いがいないスケーターが滑ってるところに行っていかに自分が出来るヤツかを見せたい、っていう欲求があって。色々な人に見てもらいたいっていうのが元々あったんでしょうね。その過程で「どうやったら多くの人に見てもらえるんだろう」っていうのを考えた時に、当時インターネットはありましたけど、今ほど活発に世の中が受け入れてはなかったし、僕としては「なるべく人の目に触れる機会があるようにするのはどうしたらいいんだろう」って考えて。いかに自分のデザインや絵のクオリティを落とさず、それを大量に生産するかってところに行き着いた感じにしますね。
- アメリカに行こうと思ったのはどうしてですか?
Kazuhiko Fujita - アメリカでもアート活動をしていましたけど、アメリカから帰ってくるまでの期間は全て修行期間だと思って生きてたんですね。ある程度日本でアート制作の経験を積んだ後に、普通にアートスクールにも行ってない独学の僕が、今どの位置にいるのか知りたくなったんですよね。自然にアメリカに行って自分がやって来たことがどれぐらい正しかったのか確かめたいと思って行ったっていうのが一番の理由です。
- アメリカを選択したのはスケートの文化も大きいですか?
Kazuhiko Fujita - 世界の公用語が英語だったのもありますし、いずれ世界で勝負しなきゃいけないんだからもちろん英語は喋れた方が良いだろうし、単純にスケートボードの文化も大きかったかもしれないですね。一応LAとサンフランシスコに一度下見に行って、本当にどっちが自分に合ってるのかっていうのを見てから自分はサンフランシスコを選んだんですけど。まあでも、場所的なものは正直何でもいいと思ってます(笑)自分から行動して、自分が今までいたところとは違う場所に行くっていうのが重要だった気がします。自分のことを誰も知らないところで作品の良し悪しだったり評価をちゃんと受けて見たいなって思ったんですよね。
- 実際行ってみてどうだったんですか?
Kazuhiko Fujita - 22歳のときに大学を卒業してから、本当に誰一人知り合いもいなくて、英語も全く喋れない状態で行ったんですけど、運良く色んな人に助けられルームメイトもすぐに決まって、インターンシップ先も決まって、スポンサーも決まるっていう。めちゃめちゃ色々なことがあったんですけど、基盤を作るところは色々な人に助けられて上手く行きましたね。作品は出せば売れたんですよ。僕は良いものを作りますから出せば売れるんですけど、売れるショーが無い。物を作ることは出来るんだけどそれを見せる場に関しては非常に苦労したというか。1ヶ月が30日だとして、30日毎日のようにどこかのグループショーだったりに入って作品が売れれば良かったんですけど、そのショーがなかなか見つからないってことに凄い苦労した思い出はあって。それで外部から仕事を受けることを始めました。
- そのときは基本的に作品を作って売ることと、インターンシップをしてたんですか?
Kazuhiko Fujita - 最初の2年間は一応学校で、今まで自分が独学で学んで来たことに対してそれが正解かどうかっていう答え合わせをしながら英語も勉強して、インターンシップをするっていう感じではありました。本当に純粋に作品をギャラリーに出して売るっていうのを始めたのは少し落ち着いた後だったと思います。
- 外部から仕事を受けるっていうのはどういう感じですか?
Kazuhiko Fujita - 絵描きとしてもデザイナーとしても。基本的に僕は制作をするってことに関して全く「それはやりたくないです」っていうのが無くて。取り敢えず興味が凄いので、本当に何でもやりましたよ。
- そのワーカホリックなところは今にも受け継がれてる気がしますね。
Kazuhiko Fujita - 単純に新しい仕事が好きなんですよ。スタジオをセットしてお金を出してくれたところが毎月大きいイベントをやってたんですけど、それをやるときに「イベントでこういうTシャツを売りたいからこれを作ってくれ」とか、僕のルームメイトの友達がスターウォーズのパロディステッカーを作ってて、エピソード6のボバフェットが死んじゃうシーンをパロディしたトイレに貼るステッカーを考えてめちゃめちゃバズったやつがいて、そいつがあっちのコミコンとかで売る用のアニメのコスプレのグッズ制作をする会社を立ち上げたんですよ。「そういえばお前日本人だよな?『ゼルダの伝説』って知ってるか?」って言われて、それに出てくるマスクを作れないかって言われて。それを発泡スチロールを切りはりして、ジェッソを塗ってスプレーで塗装して、筆で本物そっくりにマスクを描いて納品するのをやったりとか(笑)本当に色んなことをしましたね。
- 結構何でも出来ちゃうというか。
Kazuhiko Fujita - そうですね。手はもの凄く器用な方だとは思います。
- ちなみに、そのときにに自分で描いてた作品はどんなテイストのものだったんですか?
Kazuhiko Fujita - なんだろう...数字?根底にあるのはマスプロダクションですけど、大量生産と数字がテーマでしたね。僕は一つの作品だけで一つの世界観を表現しようとは思わなくて。例えば、キャンバスを10個用意するとするじゃないですか。その上に鳥のステンシルをキャンバスから溢れ出るくらいに全部に打つんですよ。ただ背景となってる雲の感じや空の色は全て変えて、タイトルは全部時間が違うっていう感じにして表現してました。何時の鳥は何羽いて、空はこういう色でっていうのを10個作る。っていうのとか、単純に一つのキャンバスにリンゴを何個描けるかっていうのとか。そのときのタイトルは「72」とか。それは4つ作りましたけど、「72」だったり「73」だったり。数字と、大量に同じものがあるっていう。もちろんステンシルなので吹き方や使う色によって少しだけ違うっていう、そのニュアンスというかディテールの差に惹かれていて、だからマスプロダクションとディテールに興味があるんですよね。
- マスプロダクションを考える人たちって、基本的に同一のものを大量に作りたいってところじゃないですか。でもディテールの細かい差異に対してもフェティッシュを感じてるのは面白いですよね。
Kazuhiko Fujita - そうですね、可愛いなって思いますね。もちろん一個の絵に対してはめちゃめちゃ細かくやりますから、クオリティはめちゃめちゃ高いんですよ。いかにクオリティの高いものを大量生産できるかっていうことを僕は念頭に置いてますね。
- Marfaのインスタに、Marfaを始める前の絵のシリーズがあるじゃないですか。これは日本に帰って来た後ですよね。このときはMarfaの構想みたいなのが既にあったんですか?
Kazuhiko Fujita - 僕は洋服だけのアカウントを作りたくなくて。いきなり一枚目から洋服の写真載っけるのが凄い嫌だなって思って。Marfaのコンセプトとして「アーティストがやってるプライベートブランド」っていうのを置いてたんで、まず自分がどういうものを作ってたのかみんなに提示しないといけないだろうなって思ったから、過去に作った作品でシリーズになってる物を載せたって感じです。
- Marfaを始めようと思ったのはどうしてですか?
Kazuhiko Fujita - アメリカで普通に絵を売ったり仕事をもらってアーティストとして生活していく中で、「本当にこのままで良いのか?」って思ったんですよ。貯金を全然出来なくて、「明日どうしよう、来月の家賃どうしよう」って。非常に充実はしてたんですけどそういう生活を送ってて、物を作りたいっていうのを仕事にしたくてやってましたけど、「本当に自分が作りたい作品を作れてるのか?」っていつも葛藤してたんですよ。そういう中で、もう日本に帰ろうと思って。「日本に帰って何で勝負するのよ」ってなったときに、15、16から作ってた洋服の作り方なら知ってるぞと思って。僕は自分が想像して描きたいものを描いてるのと、もう一つ「世の中にはこんなに面白いものがあってこういうのが大好き」っていうアイデアがいっぱいあるのに、それをアーティストとして絵にしてしまうと見た人たちが何か勘違いするんじゃないかなって。単純にKazuhiko Fujitaっていう1人のアーティストとしての作品のアイデアと、アーティストとしては使わないんだけど、何か違うものを制作するときに使えるアイデアが山のようにあったんです。形にしたいんだけどそうするにはどうしたら良いかなって思ったときに、キャンバスの代わりにTシャツのボディを使って、アーティストとしては使えなかったアイデアをそこに使えたら良いんじゃないかなって思ったのがきっかけではありますね。
- そのときは何歳くらいですか?
Kazuhiko Fujita - 多分28になる年くらいですね。着想はかなり前からですけど、実際に行動に移したのは27、8くらいのときですね。
- 最初からロゴはあったんですよね?
Kazuhiko Fujita - はい。元々Marfaのロゴは一つのネタのデザインだったんです。単純に沢山あるデザインの内の一つで。
- じゃあ他の形のロゴも全然考えてたんですね。
Kazuhiko Fujita - めちゃくちゃ考える方の人間なんですけど、20くらいはあって。全部使ってないですけど、それはそれで。僕はこれと決めたらそれをやりきるタイプの人間ではあるんで(笑)Marfaのロゴを選ぶことに関してはそうでしたね。
- 最初に出したアイテムはあのロゴTeeですか?
Kazuhiko Fujita - ロゴのグラデーションのものと、ProdigyのTシャツが一番最初だったと思います。
- 出したときのリアクションは覚えていますか?
Kazuhiko Fujita - 非常に良かったですね。出したときも元々Febbと普通に遊んでるときに、写真を見せて「めっちゃ良いじゃん、取り敢えず写真送ってくれない?」って感じで「いいよ」って送ったらインスタに勝手にアップされて(笑)そしたら問い合わせがあって、取り扱い店舗も売る場所も何も無いのに「これやってるの誰なの?」みたいな感じになったんですよ。当時思い出すとめちゃめちゃ忙しくて変な感じですけど、そういう始まり方でしたね。ありがたいなって思って、すぐに制作に移るって感じで。
- 最初から福岡のApple Butter Storeでは取り扱ってたんですか?
Kazuhiko Fujita - Apple Butter Storeのオーナーの和泉さんとはアメリカで会ってるんですよ。アメリカで会って普通に意気投合して、二人とも苦難を乗り越え僕が帰ってきて、Marfaを始めるってなったときにどうしてもApple Butterでやって欲しいと思って連絡したら「Kazuhikoくんがやるなら僕は見てみたいです」って言ってくれて、デザインを見せたら気に入ってくれて、取り扱いに至ったって感じなんですけど。非常に感謝してますよ。
- Marfaは定期的にアイテムを出してますけど、そのペースも最初からですか?
Kazuhiko Fujita - 大体一ヶ月に2アイテム出そうと思って頑張ってますけど、僕は本当に色んな仕事をしてるので、たまに一個しか出せないことがありますけど。後はその時にやってるMarfaのプロジェクトにもよりますね。その時その時にはよるんですけど、ちゃんと「先月はあれしか出来なかったな、でも今月はお前らのためにこれだけやったから許してくれよな」っていう(笑)僕はもっと出来るんですよ。
- 今までで個人的に一番気に入ってるアイテムはありますか?
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"Online Store Update" marfa-by-kazuhikofujita.com #Onlinestore#Marfa#ScreenPrint#Tshirt
Kazuhiko Fujita - よりアーティストとして作るものっていうのと、「あーこれ凄い良いアイデアだな」って思って作るものが離れてはいるんですけど、確実に両面が触れてるっていうのがたまにあるんですけど、それがロバート・デニーロの宇宙人のやつです。『タクシードライバー』のロバート・デニーロの顔があって、だけど頭とモヒカンが三つあるっていう宇宙人の絵です。それは凄い気に入ってます。あと、グラデーションは作ってて楽しいですね。毎回作ってて表情が違うというか。本当はみんなに擦りたてのところを見せたいんですけど。インクが載った瞬間ってもっと色が鮮やかで綺麗なんで。グラデーションはやってて凄い楽しいですね。
- グラデーションのパターンも凄く考えてると言ってたじゃないですか。どういうときに思いつくんですか?
Kazuhiko Fujita - もちろん何か「凄い良い配色だな」って思った自然の物に関しては写真バシャバシャ撮ってますけど、後の作業は60色くらいの色鉛筆をファミレスに持って行って、その中からランダムに2本をチョイスして並べるように塗って配色を確かめるっていう作業をMarfaを考えたときに8時間くらいにやった記憶がありますね。だからパターンは無限にあります。その時その時に良い色が出せればいいなって思ってます。あとサンプリングはしてるんですけど、僕はパロディはしないんです。パロディは単純にカッコ悪いなと思っちゃうんですよね。基本的に僕は何かをそのまま使ったりもしてるんですけど、全部手描きなので、全部描き直してるんです。買ってくれて手元に届いた人には分かってるでしょうけど、オリジナルのものと比べると実は全然違うんですよね。みんな一目で見て「これ〇〇のやつですよね」って言ってくれるんですけど、「あっ買ってないんですね、実は全然違うんですよ」とは言っておきたいですね(笑)自分が良いなと思ったデザインや物に対してどこまで手を加えていいのかって凄く難しい問題だと思うんですよね。何か凄い良いデザインのフォントだけあるとして、色んなブランドがそのフォントを使ったりして自分の形にすると思うんですけど。
- 特にスケーターブランドはそれをするのが一つのマナーというか。
Kazuhiko Fhujita - もちろん凄く良いものはあるんですけど、大半の物は正直見てられないですね。やっぱりそういう「ちょっとなー」って思うブランドは名前を聞かなくなりますし、ずっと名前を聞くブランドは、それなりに考えてちゃんとバックグラウンドのストーリーもあるところが多い気がします。
- バックグラウンドも知らないで買ってる人がほとんどという話になったりしますよね。
Kazuhiko Fujita - 今はそういうことも増えちゃいましたね。街でMarfaの物を身につけてくれる人がいたらなるべく声をかけるようにしてるんですけど、そのアイテムのバックグラウンドを知らなかったら僕普通にその場で教えますし。「Apple Music入ってますか?」とか「Netflix入ってますか?」とか言って聞いて、「今だったらこれ見れるんで、これ見てもらえたら多分今着てるものももっと良い物だと思えますよ」っていう話をするようにはしてます。
- 元ネタを知らないのに買ってくれるのはブランドに力がある状態になってるってことなのかなと思いますね。
Kazuhiko Fujita -それはそれで凄くありがたいんですけど。僕は物凄く欲張りなのでそれだけで満足出来ないんです。商品ページにも元ネタになる映画や小説や音楽を書いてはいるので、もちろん買ってくれるだけでも嬉しいんですけど、欲を言えばさらにもっと理解してくれたら。僕がやりたいと思って使ってるネタは本当に良いので、それを教えたくてやってるって感じです。
- 普段吸収してるもの、例えば映画の観かたも凄いしレコードもめちゃめちゃ買ってるじゃないですか。そういうものに対する興味はいつ頃からあったんですか?
Kazuhiko Fujita - 子供の頃からですね。親の育て方もあるでしょうけど、本当に可愛がられて育って、赤ちゃんの時の写真を見たら自分が変なゆりかごみたいなのに寝てて、その周りをウルトラマンの人形で固められてたこともありましたし(笑)ウルトラマンって全部同じ人型ですけど、みんなちょっとずつ違うじゃないですか。そういうのにも知らず知らずの間に影響されてるのかもしれないですし。なんでかはわからないけど色んなことを知りたいんですよね。自分が好きになったものに対しては全部のことを知りたいと思ってます。なかなか難しいところではありますね、部屋は綺麗にしたいので(笑)
- 今回のFNMNLのTシャツも、デザインが上がってくるのが速かったですよね。普段もそういうスピード感なんですか?
Kazuhiko Fujita - そうですね。僕の制作スタイルは2種類あって、いわゆるデザイン帳というかネタ帳が10冊くらいあるんですけど、その中から引き出すパターンのものと、何か新しい着想を得てすぐ形にするというのがあって。FNMNLのときは着想があってからすぐ考えるっていうタイプだったんですけど、どっちを使っても大体そんなもんですね。勉強の仕方が上手いんですかね。僕は普通に生きてて、何か自分が思ったり何かを表現したいなって思ったときに言語化だったり可視化だったりを一番最初に考えるんですよね。今回のデザイン、特にフットボールのやつはそうなんですけど、本当だったら絵にしたり、目で完全にデザインだと思わせるものじゃなく、単純に単語を散りばめることによってネタを考えるときのソースを言語化するっていうのに対して、沢山メモした中で良いワードをちゃんとデザインするっていうプロセスで形になったものでした。それだけではつまらないので、ちゃんとバックに自分がイメージするアイデアに対する理由を一つずつつけて面白くするっていうのが上手くいったんじゃないですかね。
- ありがたかったです。
Kazuhiko Fujita - いやいや、こちらこそ凄く楽しい仕事でした。充実した1ヶ月を過ごさせてもらって幸せです(笑)
- 別のプロジェクトもやりたいと言ってましたよね。それは実際に動き始めてますか?
Kazuhiko Fujita - そうですね、最初のシーズンのデザインはもう全て上がってますし。それは誰かと一緒に働きたいと思ってて、コンセプトもガチガチに固めてるんですけど、誰かと働きたいのと自分の名前を出さずにやりたくて。
-それはどうしてですか?
Kazuhiko Fujita - 単純に10年後とか20年後に「僕あのブランド好きなんだよね。でもあのブランドは嫌い」って言ってるようなやつが「全部お前がやってたんかい!」って言うのを目指してます(笑)それが凄く楽しみです。そういうアイデアが10個以上ありますね、アパレルだけで。僕、まだ使いきれないアイデアが沢山あって。
- Marfaだと落とし込めない?
Kazuhiko Fujita - どちらかというとコンセプトがぶれるからっていう感じですね。これとこれは完全に切り離して考えたくて、自分の中で整理をしなきゃいけないっていうのもありますけど。分けてやった方がなお良いものが出来るっていう、ただそれだけです。今思いつきましたけど、毎シーズン名前が変わるブランドとか凄く面白いなって思いますね(笑)「昨シーズン見たあれと雰囲気似てるな」っていう、人間の微妙なところを感じ取る能力に目を当てた物も楽しいと思いますし。僕は常にそういうことを考えるようになりましたね。そうなってしまいました(笑)
- そうじゃなきゃワーカホリックになれませんからね。
Kazuhiko Fujita - 仕事好きなんですよね。本当に好き。全部が制作に向いてるからこんなに好きでいられるんだろうけど、本当に好きですね。
- あまり余暇的なものは無いですよね。
Kazuhiko Fujita - 暇だとどうしていいか分からなくなるんですよね。暇な時間が貰えるのであれば絵を描いたりしたいですね。半年ぐらい放っておいてもらえるなら絵を描きたいですし、後は本が読みたいですね。今は移動中しか本を読めないので、本当に本が読みたいです。映画は作業中に観れるんで。耳に入ってさえ来れば後は僕が想像で補完出来るんで(笑)もちろん大事な作品はもう一回後で見直しますけど。その楽しみを知ってからはもうヤバいですね。
- 最終的にはどうなりたいですか?もっと規模感を大きくしたいとも言ってましたよね。
Kazuhiko Fujita - ずっとこれが続けば良いと思いますし。規模感も出来ることなら大きくしたいですね。出来るやつ全員を集めて最強のチームを作りたいとも思いますね。僕は人と働くってことに憧れがあるので。でもめちゃめちゃ本音を言うと、50億ぐらい稼いでどこかの島で永遠に自分のためだけの作業に没頭したいなっていうのはあります。でも、人のことを考えて何かを作るのも凄く楽しいことだなってMarfaを始めてからは思いました。だから幸せな悩みですけど、そんな風に考えてますね。大丈夫ですか、イカれたインタビューにならないですか?(笑)
- 大丈夫ですよ(笑)ちなみに、他のブランドで好きなのはどこですか?
Kazuhiko Fujita - みんなそれ聞いてくれるんだけど、めっちゃ困って。特にあまり見ないんだよな...もちろん良いブランドはいっぱいありますけど、着ることには全く興味が無くて。好きなお店はいっぱいありますけどね。下北沢のセレクトの古着屋のfloccinaucinihilipilificationも、最近行き始めた北千住のAmanojak.ってお店も、いわゆるハイブランドとかを置いてるお店なんですけど。お店は人だと思うんですよ。良い人がやってるお店が大好きなんです。だからApple Butter Storeもそうだし、Amanojak.にも行っちゃうんですよね。だから好きなブランドというよりは、誰がやってて誰が扱いたいと思ったブランドか、ってことの方が僕にとって重要だったりします。信頼できる人たちが良いと思ったブランドで、なおかつ自分が「このデザインめちゃめちゃ良いですね」って思うものを普段は買ったりしてますけど。だから特に「あのブランドが好きで、あそこのブランドしか着てません」ってことは無いですね。でも好きなブランドはふと考えてたんですが、好きなブランドですが、僕はどんなブランドも1stのシーズンの物が好きですね。これを始めたいんだっていう熱意みたいのが目に見える感じがして良いなと思いますね。シーズンを続いているのを見るともう作りたい物が無くなったのに作り続けているんだなと思うこともあります。
- ブランドをちゃんと育てるって難しいですよね。
Kazuhiko Fujita - 厳しい言い方ですけど、作り手は制作に対してエゴイストになるべきだとは思います。お客さんがいるって状況と作りたいって気持ちはは切り離して考えるべきなのかもしれません。SNSだとか情報も早くなっている世の中の流れ的にも一度、盛り上がるとある程度はやっていけてしまいますから。個人的には将来は世界中を良いものというかクオリティの高いものというか、自分の作品で埋め尽くしたいって思ってます。
- ありがとうございました。