【座談会】PUNPEE “タイムマシーンにのって” | クラシックなミュージックビデオができるまで

昨年10月、PUNPEEの1stアルバム『MODERN TIMES』から初のMVとしてGhetto Hollywoodが監督した“タイムマシーンにのって”のアニメーションによるビデオが公開された。一昨年10月の同作のリリースから1年経ってのミュージックビデオ公開は異例といえるが、そのクオリティーとディティールの作り込まれ方は、単に楽曲のプロモーションビデオというよりも1本のアニメーション作品として十二分に成立している、まさにクラシックな作品といえるものだった。

先日のSpace Shower Music AwardでもBest Conceptual Videoの受賞に至ったこの作品の制作の裏側はどうなっていたのだろうか、FNMNLでは監督をしたGhetto Hollywood、アニメーション制作を行ったODDJOB INCの澁谷武とYO!HEY!! 、背景の制作を行ったTSUNE(Nozle Graphics)、そしてPUNPEE本人とA&Rの増田岳哉(SUMMIT, Inc.)の6人に集まってもらい、ビデオの制作過程を語ってもらった。そこで明らかになったのは、表面的には見落としてしまう箇所まで練りこまれた緻密であり遊びにあふれた制作秘話と、単なる制作陣という枠組みを超えたチームワークのあり方だった。

取材・構成 : 和田哲郎

写真 : 横山純

- "タイムマシーンにのって"のミュージックビデオはミュージックビデオというより、それ自体が独立した1本の映像作品と言った方がいいものですよね。最初からロトスコープで制作するという話になっていたのですか?

PUNPEE - ビデオを出すまでの流れとして一昨年『MODERN TIMES』をリリースして、作品として結構世界観を作ってしまったので、最初のビデオを誰に頼もうかというのをすごく悩んだんですよ。結構色々な映像作家の人とか調べて当たってみたりしたんですけど、素晴らしい作家の人たちばかりなんですが、自分たちの世界観を100%共有できるかっていうと、もう少し合いそうな人がいるのではないだろうか、ってずっと迷ってたんです。それだったらビデオ用の予算もあるし、信頼できる周りの人たちでいつもより予算を多くしてやってみようかなって。それでいつもの布陣をドリームチームで固めてやろうと思って、最初SITEくん(Ghetto Hollywood)に話してみたんですよね。でもその時もアニメっていうのはまだ決まってなかったです。

Ghetto Hollywood - そのオファーが来た時点で発売からだいぶ時間が経ってたよね(笑)

PUNPEE - 去年の1月くらいだったから発売から3ヶ月ぐらい経ってましたね。

Ghetto Hollywood - 今まで撮ったパンちゃん(PUNPEE)のビデオと比べたら予算もだいぶ増えたから、最初は「おっ!」って思ったけど、増えたとはいえSF的なものを実写とCGで撮ったら実際いくらあっても足りないと。でも世界観は音源聴いてた時点で固まってたし、ここはアニメしかないかなって。それで絵コンテを書いてSUMMITからOKがでた日に、TSUNEさんと初めて会ったんだよね。コンテを書いた時点でアニメはODDJOBに頼もうと決めてて、背景も一緒に頼もうと思ってたんだけど、TSUNEさんに会った時に「これはTSUNEさんしかないな」って即オファーして。その日TSUNEさんがPUNPEEのアルバムのコメンタリーのカバーアートをフリーハンドで描いたって訊いて驚いて、更に右ハンドルと左ハンドルを一晩で書き直したって言うから、描くのも超速そうだし、この人しかいないな、ってなったんですよね。スタジオ石の麿くんとは前から何度も仕事してるし意思の疎通が取れてやりやすいし、今回もカット数が多かったけど麿くんは対応してくれるから、この面子でチームが決まった。

TSUNE - おれはビデオについては何も知らなくて、別のミーティングでSUMMITに行った時に「背景とか書けるよ」ってノリで言っちゃったんだ(笑)

Ghetto Hollywood - みんなオファーの時点ではこんな大変な山を登ることになるとは思ってなかった(笑)そのあと初めて皆を集めてミーティングをした時にまず言ったのは「合言葉は”オーバーワーク”で行きましょう」って。

TSUNE - オーバーワーク上等!(笑)

PUNPEE - 最近はヒップホップのビデオもいろいろな面白いパターンが出てきているけど、3年前に”お嫁においで 2015”のビデオを作ったときもオーバーワークといえばオーバーワークでしたよね。最後に本人出てるあたりとかも含めて。

Ghetto Hollywood - あれはオーバーワークっていうか、予算もなかなか厳しかったので、その分みんなで文化祭ノリで撮った感じだよね。あの時はおれのカメラが途中で壊れて、別のカメラ使ってて画質もバラバラだしそもそもカラコレすら一切してないんだけど、クオリティがそんな高くなくても皆の気分にハマったから再生回数はちゃんと回った。でも今回はクオリティもあげられるってわかってたし気合いが違ったよね。

PUNPEE - これを成し遂げたら残るなっていう気持ちが、なんか皆あったんでしょうね(笑)

- 絵コンテを書いた時から、基本的なビデオのストーリーは決まってたんですか?

Ghetto Hollywood - そこは早いうちに決まってたかも。曲を聴きながら、歌詞から思い浮かんだストーリーにヤマとオチの演出を付けた感じで。今回一番面白かったのは、一見パンちゃんの世界観で統一できているんだけど、俺は俺でなんとなくPUNPEEの好みを想像してオマージュする映画入れたり、色んな人がPUNPEEになりきって作った結果で、実はパンちゃんのディレクションがそこまで入ってるわけじゃない。

PUNPEE - 自分もこれを入れて欲しいみたいなのは言ったんですけど、大体は皆さんの提案で、これを盛り込んだらどうだろうっていうのが全部リンクしてた。

Ghetto Hollywood - そこはすごくスムーズにいったし、ポスターが貼ってある映画とかも何の相談もなく入れたら、そのまま通ったんだよね。

PUNPEE - コンテできた時点で、これが実現するんだったら全然OKですって感じでしたね。コンテを決める参考にしたものとかあったんですか?

Ghetto Hollywood - いやひたすら曲を聴いただけなんだよね。今回あまりリップシンクが入ってないけど、自然に観れるのは歌詞に即した絵になってるから。前半は申し訳程度に入れたけど、後半は展開が早いからほとんどリップしてない。

PUNPEE - 確かに違和感はないですね。だから最初はすんなりでしたけど、その後がまあ...。

一同 - ははははは(笑)

Ghetto Hollywood - 作業量が...

PUNPEE - 自分はアニメの構造をやんわりは知ってましたけど、ちゃんと知ることができたのがよかったですね。背景は毎回描くものじゃなくて、固定のものがあって、その上に透明のバックに動くものがすごい細かい動作ごとに描かれていて、そのバックごとに版が分かれているっていう。

TSUNE - 老Pの車椅子は元々アルバムで描いていたし、設定も考えていた。ワーゲンとかはサム(ギルビー)が描いたものを壊さないように内部構造を膨らませた感じ。

PUNPEE - この車の模型もMV用に作ったんですよね?タイヤが無理なく開くには、っていう。

TSUNE - コメンタリーのジャケット用に描いていたのを、MV用にプロップ作ったんだよね。コンテ見る前は勝手な想像だったんだけど、おそらく車が飛ぶシーンがあるだろうから、飛行時のタイヤ展開のプロセスとかを実際にシミュレートしたくて(笑) あとアニメーションにした際、角度によってどうやって見えるのか?っていうの検証するためだけに作ったプロップ。5月のCOASTにも展示してた。

澁谷 - 作画の時ずっと回してみてたら、ぶっ壊れちゃったんですよね。

Ghetto Hollywood - あとすごい偶然で麿くんが昔バイトしてた時の同僚で、フォルクスワーゲンクラブに入っている人がいて、最初はワーゲンであれば形や色が違っても良いと思ってたんだけど、同じタイプの持ってる人がいるっていうからそれは是非!って厚木の車が入るスタジオに乗ってきてもらって、あれはテンション上がったよね。その前日のドラマパートの撮影が、マンションの一室みたいな絶対AVで使ってるスタジオで撮ってたから、みんな「これ大丈夫なのか?」って不安だったと思うんだよね。

実写撮影の際。車輌の所有者で快くレンタルしてくれた桑木さんと撮影クルーの集合写真(2018.4.27)

PUNPEE - 確かに。ディスコのシーンとか、宙芳君と夕方会うシーンとかもそのスタジオで撮ったんですよね、その時が4月。

- 本来ならFUJI ROCKくらいにアップしたかったんですよね?

Ghetto Hollywood - パンちゃんの5月のワンマンで予告編を出して、FUJI ROCKくらいにはアップしたかったんだけど、全然山の2合目くらいだった(笑)

- その要因は?

Ghetto Hollywood - そもそもすごい作業量だったんだけど、まずTSUNEさんに火がついて。最初背景は限りある枚数を使いまわして上手くやろうとしたんだけど、「このシーンは角度が違うから、もう一回描いた方がいいよね?」ってTSUNEさんから言ってくれて。最初は1シーン2枚ずつで計10~15枚くらいって話だったんだけど、実際はもっと描いてもらって。30~40枚とかですか?

TSUNE - いやもっといってると思うよ、夕方のシーンでももっと描いてるから。部屋のシーンだけでも人が手前にきて、ボケてるけど背景はちゃんと描いてあったりするし。一枚絵でいけるところはそれでいいけど、クローズアップになってたりするところもあるし。元々は線画なんだけど、彩色する段階で背景を動かすためにバラバラに描いたりとかもあったり。

Ghetto Hollywood - それを澁谷くんがパーツを組んでAfter Effectsで動かす。結構パーツ多かったよね?

澁谷 - めっちゃ多かったですね。しかもデータが重いんでスムーズに動かすのは大変でしたね。

TSUNE - 車椅子一つとっても全部動くもんね。というのも、おれが細かい設定をやたらと増やしちゃったから・・・

PUNPEE - ここのハエが実は動くとか(笑)

TSUNE - 家の前の街灯に止まる虫も全部バラでデータ作ってて、それがモニョモニョ動くっていう。

該当の"ハエ"のカットと時計台

澁谷 - 最初ハエがいるってことすら気付かなくて(笑)

TSUNE - そういう「中の人しかわからない、言わないと気がつかない系」だと、最初に書いたPの未来の家がコレなんだけど、森だとあまりにも郊外すぎるっていうのと、時計台が遠すぎるからっていうのでもっと街の中に建てて(笑)時間経過をビジュアルで再現する意図もあったんで、過去の親父のところに戻ったとき、出会ったディスコと同じ位置に家がなきゃいけないとか、かつ時計台も同じ位置見えるところに・・・そういう設定をいちいち作ったもんだから、それも加味してすげえ時間かかっちゃったみたいな(笑)

Ghetto Hollywood - 最初時計台にはそこまでフォーカスしてなかったけど途中で「MVの象徴として使おう」ってなって。

TSUNE - オープニングに時計台入ってるんだよね。ここに時計台があって、これの位置からPの家がここにある、みたいな(笑)

Ghetto Hollywood - これ最初に貰ったときに「TSUNEさん、時計台書いてくれました?」って言ったら、書いてくれたんだけどすげえ細かくて(笑)

TSUNE - 車椅子ひとつとってみてもアルバム用に描いてた時点で設定資料があって。

- 楽しようと思えば楽できるところですよね。

Ghetto Hollywood - まさにオーバーワークで。

TSUNE - 楽はしたくない、ここはこだわりたいっていう、誰も気付かないこだわり。

Ghetto Hollywood - こんなやる前から注目されるって分かってる物もなかったし、普通のMVなら1~2ヶ月前にオファーを受けて、発売の2~1週間前に上げたいって言われるのがほとんどの中で、ここまで時間をかけられたのが一番大きかった。パンちゃんが自分で締め切りを延ばしてくタイプだっていうのも知ってるから、それに関しては甘えられるっていう(笑)納期が延びたときとかも、プレッシャーというよりは俺らもパンちゃんの通常運転に乗ったというか。

TSUNE - 最初、5月のワンマンに予告編を出すって言ってたんだよね。それで最初のオープニングを細かく作り込んじゃったから、「このまんまの流れで」って、自分でハードル上げちゃった(笑)

YO!HEY!! - 最初のリファレンスではもう少し簡潔なアニメを想定していたんですけど(笑)

- 増田さんは締め切りは設定してたんですか?

増田 - 決めていかないと最終的に完成しないだろうな、っていうのはありましたね。でも、クオリティを優先するのは今まで通りっていうか、普通のことだと思うのでそこはまあ、そんなに。

PUNPEE - 10月の始まりから凄いギアを上げて全員やってて。

- その段階ではどこまで出来ていたんですか?

Ghetto Hollywood - 大体出来てるんだけど、そこからディテールっていうか、ひたすら雰囲気を追い込んで行く作業(笑)

TSUNE - あと、おれの方はアニメーションが出来てからじゃないと描けない部分も出てくる。画面内での人物の見え方、立ち位置とか分からないから。どの位置でどう見えるかっていうのが確定しないとパースが分からないじゃん? そこだけがずっとひっかかってて、実際に登場人物の動き分かってからは「あっ、じゃあこうやって描いていこう」「この角度も必要だ」って、バーって描いていった感じで。

Ghetto Hollywood - 俺も初めてだから最初そこまでの指定が出来なくて。多分そういう合成とかロトスコープの人は最初にそれをやるのかもしれないけど、「ロトスコープの映画好き」ってだけで始まった話だから(笑)

- ODDJOBもロトスコープは初めてだったんですか?

YO!HEY!! - ここまでのものは初めてですね。

Ghetto Hollywood - ODDJOBといえばリミテッドアニメだったから、普通のもの以上にハンナ・バーバラのやつみたいに思い切りリミテッドに凝るっていうスタイル。

PUNPEE - 今回は1秒何枚?

澁谷 - 12です。24だと流石に多すぎて、12が一番良く見えるんじゃないですか。

Ghetto Hollywood - 最初は「8枚まで減らせるんじゃないか」って言ってたけど、結局12だったんだよね。

- アニメーターとして一番気を使ったところはどこですか?

PUNPEE - まあ言ったら、老人の俺は実際、存在しないじゃないですか。

澁谷 - そうっすね。最初「こんなんでどうすか」って感じでパンさんを設定資料をもとに描いて、「これだとハゲすぎ」ってなって(笑)

PUNPEE - 自分が「ハゲすぎ」って言って(笑)多分ハゲないんで。「これは生え揃えてもらう」って。

澁谷 - そういうところと、何人か僕以外に手伝ってもらったんで、線の統一とかも意識して。色とかアウトラインもやってもらって10人くらいなんですけど、大学の後輩とか従兄弟呼んだりして(笑)もともと唾奇さんとCHICO CARLITOさんの“Let me”って曲のアニメーションをPhotoshopでやったりはしてたんですけど、まぁ今回のも二ヶ月ぐらいで終わるかなって思ってた。

PUNPEE - 澁谷くんのTwitter見ると「来月ヤバいのがあるからこれでモテる」って8月の時点で言ってて。そしたらそのあとで「モテるのは来月に持ち越し」って(笑)

- 難しかったのはどの辺りですか?

澁谷 - 車っすね、圧倒的に。そもそも、車飛ばないじゃないですか(笑)最初この模型渡されて「これでやって」って言われて、マジかよってなって。ビートルの模型を使ってタイヤを変形させたりして、それを動画に書き出して、それで背景を付けたんです。そこからまたアウトラインを足して。

PUNPEE - アウトラインかっこいい。

澁谷 - アウトラインがとにかく大変でしたね、車はディテールがめっちゃ細かかったから。

TSUNE - すんません。

一同 - ははははは(笑)

澁谷 - ちゃんとしないと怒られるんですよ(笑)

TSUNE - 確実に澁谷くんだけ知識的な部分で初めて知ることが多かったから、俺らが当たり前のこととして要求してたのによく付いて来たなって。

澁谷 - ディスコのカットとか、ディスコを見たことなくて。

TSUNE - 「クラブじゃないの!?」って。

YO!HEY!! - 「ディスコはこんな背景じゃないですよね?」って。

Ghetto Hollywood - そこら辺のジェネレーションギャップはあったけど、逆に俺らの世代じゃやりきれないくらいのAfter Effectsの手数とかは新人類ならではで、上手くハマったなって。後、麿くんにキテレツ大百科のオープニングとか見せてもらいながら「アニメは回転だ」って教えてもらって、それで車とかも回転させて。

YO!HEY!! - 回転は大変だから普段なら省略したくなるんですよ。

Ghetto Hollywood - でも確かに回転を入れた部分は演出としていい感じなんですよね。ロトスコープって実写を元にしてるから、それをどうアニメならではの表現に転換するかが肝で。やっぱり人が元だから、どうしてもぬめっとするんですよ。それをどうアニメ的なトランジションで勢いを付けていくかっていうのが第一の関門だったよね。「いい感じだけどぬめってるね」って当たり前だけど。実写じゃ出来ないカメラワークも出来る訳じゃないですか。演出的な部分はどんどん更新していきましたね。

PUNPEE -実写で出来ないことといえば、金庫の鍵の案は撮ってるときになんか思いついちゃって、「絶対やりたい」って。ハンドサインで金庫を開けるっていう。最初普通にボタンを押す予定だったんですけど。波が出てるやつはTSUNEさんに足してもらって。最初は緑のイメージだったんですけど。

Ghetto Hollywood - 赤だとHALに見えるっていうのと、あとバーチャルボーイだっけ。

TSUNE - ホログラムだけだと面白くないしね。あと照射されたものがワイヤフレームじゃないとホログラムじゃないっていうイメージ。もともと「緑」設定だった金庫のコンソールパネルにあるレンズ部分を赤くして「2001年宇宙の旅」のHAL9000になったという。終盤への伏線的な。

Ghetto Hollywood - レトロフューチャーっていうのは最初からあったから。80年代に夢見た未来じゃないけど、バーチャルボーイは確かにって。HALもレトロフューチャーだし。このシーンだけでネタがいっぱいあるんですよね。コメント欄に凄い簡単なネタをいっぱい並べてる人いたけど、マジで細かい所には全然辿り着いてない(笑)

TSUNE - 全てのシーンにネタが入ってるからね。

PUNPEE - YouTubeのコメントでリファレンスの話をみんなしてて。「ここに書き込んでる奴らで飲みにいきたい」みたいな話を勝手にしてて面白かったです(笑)

Ghetto Hollywood - 澁谷君がパンちゃんのファンだから最初に「PUNPEEのビデオには解析班がいる」っていう話を聞いて、「マジか、じゃあそんなのぶっち切るしかないっしょ」つって(笑)「とりあえず入れまくるべ」って。

- 本人が入れてほしいって言ったのはどれくらいですか?

PUNPEE - 結構ありますね。

Ghetto Hollywood - 廊下の箱に入ってるものとか、立てかけてある看板とか。

PUNPEE - あと廊下にとあるゲームのキャラがいたり。高校のとき作ったデモテープとかも写ってますね。

TSUNE - 誰も分かるわけない(笑)あとキーボードの下に転がってる某IBMのマシンもそうだし。

Ghetto Hollywood - でも全部タイムマシンものっていうのがあって。

澁谷 - 猫の時計の動きとかこだわりましたよね。

PUNPEE - 尻尾と目が一緒に動くっていう。あとビデオがアップされる時間8時46分に時計がなってて。

TSUNE - あと、そのパタパタ時計のシーンの横に出てくる「写真」。実はその時計台の上空に、最後突っ込んでくる車が映ってたり。だから最後にそうなるっていうのを俺入れといたの。誰も分かんねえよっていう(笑)

Ghetto Hollywood - パンちゃんが幼稚園の時に描いたヒーローたちがアルバムの表紙になってて。家で起きるシーンを撮るときに見つけて、「これしかねえ」って。

澁谷 - 突然渡されて、「これスキャンして表紙にしてくれ」って言われたんです(笑)

PUNPEE - 結構前日にやったのいっぱいありましたよね。

Ghetto Hollywood - 前日、前々日ヤバかった。最後の3日間で修正が50箇所ぐらいあったり。

澁谷 - テストみたいだった(笑)

Ghetto Hollywood - 「パンちゃんの最後の直し」がヤバいっていう噂は聞いてたんだけど、俺これまでやってのビデオは、ほとんどなかったの。今回初めて最後「これか!」って(笑)

澁谷 - パンさんだけじゃなくてTSUNEさんからも指摘あるんですよ。2人からの修正、増田さんからの要望みたいな感じ(笑)

YO!HEY!! - 意外と増田さんのこだわりが多くて面白かったよね。

Ghetto hollywood - あまりにも修正が多いから気まずくて俺は終盤はあんま言わなかった(笑)照明の明るさとかで雰囲気を調整するくらい。

PUNPEE - 蜘蛛とかね。最初足が動いてなかったんですよ。

澁谷 - 動かしたのがアップする前日の深夜だったんですけど、作業中全く意識がなくて、目が覚めたら足が動いてた。

一同 - ははははは(笑)

PUNPEE - でもちゃんと動いてるもんね。それで澁谷くんにもうそろそろお疲れ様ってなろうとしてた時に自分から描いたりしてたよね。飛ぶ時に光り方がもっと滲んでなくて、ベタッとした色だったんだよね。

Ghetto Hollywood - 80年代特有のタイヤが緑にベタッと発光するのはレトロフューチャーだと思うんですよ。それで澁谷くんが気をきかせてやってくれたんだよね。

TSUNE - 普段(走行時)はタイヤはただの真っ黒なんだけど、飛行モードへホイールが展開する過程でタイヤの幅が可変、連続して開いていってその隙間が発光・・・みたいな設定があって、それを理解してもらって光らせてもらったんだよ。すげえ面倒くさいんだけど(笑)どうしても再現したくて。

澁谷 - After Effectsで光らせるとなんか違って、アップする数時間前にダッシュで描いて。

Ghetto Hollywood - 最後とか2日徹夜で、一週間3時間睡眠で乗り切ってくれたんだよ。俺らだったら気絶してたところを、やっぱり若さで。

澁谷 - アドレナリンどばどばで全然眠くなかったですね。

(※編注 今回、大部分のアニメーションを手がけた澁谷武はOle名義でラッパーとしても活動している)

PUNPEE - 自分も眠くなかった。最後みんな漁師みたいになってて、一時間寝て起きて連絡してっていうのを繰り返してて眠れなかったっすね。

Ghetto Hollywood - 最後の3日間すごかったよね。

澁谷 - 完成したとき「これ本当に完成してんのか?」ってなりました(笑)

Ghetto Hollywood - 最後の方はみんなの意識がそういう風になってるから、俺はコマ飛びとかそういうのをずっと探して細かい修正は出さないようにしてた。でも3コマくらいあったから危なかったよね。水彩っぽくいきたいイメージのところを今流行りの彩色アプリで行こうとしたんだけど、「これ描いて」って言ったら澁谷くんが「マジすか」って言って(笑)これ地獄だろって。

- タッチが全然違うのが凄いですよね。

Ghetto Hollywood - これまでのMVのエモい部分だけ集めて。「飛び込んだ時の水しぶきとか描かなきゃダメっすか?」って澁谷くんに言われて(笑)

PUNPEE - 最後に、最初あまり考えてなかったけど効果音入れたんですよ。飛び立つ音とか。それが楽しかったですね。SE入れた時に結構変わって良くなって、入れて良くなるって分からなかった。元々2箇所か3箇所ぐらいしか入れない予定だったんですけど、「これいいじゃん、入れよう」ってなって、一個一個探して来て。

澁谷 - あれが一番作ってて嬉しかったですね。「パンさんが効果音入れてくれた、すげえ!」って(笑)テンション上がりましたね。

Ghetto Hollywood - ハマっちゃった(笑)確実に演出としては少ないバージョンでも成り立つんだけど、「これパンちゃんスイッチ入ったな」と思って。

- 本当にみんな「やらされた感」が全然無いというか、どんどんスイッチが入っていった感じだったんですね。

PUNPEE - 絶対に次に繋がるだろうなって。じゃあ投資しようじゃないけど、未来に投資しましょうって感じになってくれて嬉しかったですね。

- FILE RECORDSとかErectionのロゴも入ってるんですね。結構みんなErectionには気づいてましたけど。

TSUNE - FILEのロゴは誰も分からないだろうな(笑)気がついてる人いるのかな?

Ghetto Hollywood - 増田さんが元々FILE RECORDSだったんだよね。

増田 - そうなんですけど、PSGとしてPUNPEEが世の中に出たのがFILE RECORDSだったので、そのルーツの一つとして。

TSUNE - それでいうとオープニングにはCISCOの箱もあるもんね。

増田 - 40年後に『MODERN TIMES』が再発されてるんですけど、復活したCISCOがその流通を担当しているっていう夢設定です。

TSUNE - オープニングの看板にそれが書かれてるのと、その反対の建物にCISCOの段ボールが積まれてるんだよ(笑)

澁谷 - ここら辺の演出はパンさんもやってますよね。

PUNPEE - やり始めたときは板橋ってナンバープレートが無かったんですけど、板橋のナンバーが発行されたんですよ、予言してましたね。

TSUNE - 俺的にはこの斜めの赤い線が入ってる「仮ナンバー」ってのが一番重要で。公認とれないような改造車だから普通のナンバーじゃなくて仮ナンバーで。これがカッコいいっていう萌えポイントなんだよ(笑)
空を飛ぶのはすでに実用化されてるテイで「飛行懸架装置」で。ハイドロ車の車検証に「油圧式懸架装置付き」とか記載されてるみたいなノリ。でもタイムサーキット自体は違法改造だしみたいな。KUSTOMの世界。

増田 - ジャケットが再現されるところが熱かったですね。ジャケットを手がけたサム(ギルビー)も本当に喜んでましたね。

Ghetto Hollywood - これ一瞬だけどめちゃくちゃいいですよね。

澁谷 - ここは動画編集してると絶対書き出すときに落ちちゃうんですよ。不思議だったんですけど、ここだけ繋げない。データが重すぎたんですよね。

TSUNE - その直後の2001年にタイムスリップしたドあたまのシーンのいたるところにみんながいる。増田くんもいるし、SITEくんはシネ・サイトになってるんだよね、白く飛んでるけど実際の絵ではもっとハッキリ出てる。あとは平林会館もあるし、ZAIちゃんもいるし。

PUNPEE - この靴光らせるのも最後に入れましたもんね。あとホテル熱海は、うちの地元でみんなが童貞捨てるところ、上板橋の方にあって、これは板橋の人にしかわからない。

一同 - ははははは(笑)

TSUNE - あと電話番号もね。

PUNPEE - これホテル熱海の番号なんですか?

増田 - いや、ここは3310-3732-1009(サミットカラ・ミナサンニ・センキュー)って書いてあります。

Ghetto Hollywood - ははは(笑)知らなかった。

PUNPEE - あとはバンドメンバーっていうのも時代を感じさせますよね、2000年だから。でもこのシーン自体はフィクションですね。まだ宙芳君とはこのときは会ってないから。

澁谷 - ここは宙芳さんのこういう素材があって。

Ghetto Hollywood - これを絵に起こした瞬間にいける気がしたよね。

PUNPEE - このうちの親父と母親が出会うディスコのシーンで麿くんがサブリミナル効果で入るっていう。最後の最後でサブリミナル効果が欲しいってなって、ハートに麿くんの顔を入れようって話になって、右のハートに麿くんが映るんですよ。でもこれもYouTubeだとわからない。

TSUNE - この写真は別件で打ち合わせの時に、「麿くん、いい顔お願い」って言ったらこの顔をしてくれたのをもってて。これしかないって入れ込んだ。

Ghetto Hollywood - お母さん役の元になったSueさんは、スナックアーバンで働いていて、昭和っぽい雰囲気をまとってるんじゃないかってことで出てもらったんだよね。

PUNPEE - あとRE-JIくんとGAPPERのシーンは、ここらへんの車の色味めっちゃいいですよね。

TSUNE - AMCペーサーは誰も言ってない?、『ウェインズ・ワールド』に出てくる車なんだけど。

PUNPEE - アル・パチーノの『スカーフェイス』って、年代が違うって誰かつっこんでましたよね。

TSUNE - それもわかってる上でハズシというか、その隣の『フラッシュ・ゴードン』もそうだし、来年公開ってフィクション的ニュアンスなんだよね。

澁谷 - これとか描いてて楽しかったですね、GAPPERさんがとにかく似るんですよね。

PUNPEE - 描きやすい顔してるんですかね。あ、本当に似てるな。

Ghetto Hollywood - という感じで本当にひたすらネタがあるんですよ。映画の前のメタモルフォーゼは澁谷くんのアイディアなんですよね。

澁谷 - これは絶対にやりたかった。音を聴いて、このシーンで何かしたいなって。

PUNPEE - このシーンは上がるなあ。胸熱ですね。

TSUNE - この背景も実にキツかったな。

PUNPEE - それでいつもの夢オチっていう。これは家ですね。

Ghetto Hollywood - ここで"お嫁"の最初にループするっていう。おれ、夢オチばっかなんだよね。

一同 - ははははは(笑)

PUNPEE - 最後のニュースのナレーションも猫も伏線が回収できてないと思って、自分で最後に入れたんですよね。

Ghetto Hollywood - あれを過去に連れて行っちゃうと、作画的にまじめんどくせえってなって、こうなったんだよね。

澁谷 - アニメにする時、猫は素材がなかったから大変でしたね、YouTubeで動画を観て。

PUNPEE - Childish Gambinoの"Feels Like Summer"とかと色味は近いですよね。

Ghetto Hollywood - ちょっと参考にした感じかな、向こうの方が予算はあるだろうけど、あとKnxwledgeとかもちょうどアニメのビデオを出してたけど、おれらもいい線いってるよねってみんなで言ってた。ODDJOBとパンちゃんを『水曜日のダウンタウン』繋がりだと思ってる人が多いと思うけど、おれと今回のプロダクションマネージャーのYO!HEY!!くんは20年近く前にラップグループをくんでいたり、ODDJOBがアニメやり始めた頃からバイトで絵を描いてたり、長い付き合いがあって、すごい有機的なプロジェクトなんだよね。普通に考えたら予算オーバーだけど、これはODDJOBならやってくれるだろう、最終的にPRにもなると思うって言って。

YO!HEY!! - PUNPEEくんのMVで監督はGhetto Hollywoodだから頑張ろうと思った。予算とかはちょっと後回しにして。

PUNPEE - ありがたいっす、これは皆さんの人柄が作ったビデオですね。

Ghetto Hollywood - 友達付き合いとプロ意識が噛み合ったものですね。実際に未来になって見返してみたいね。

PUNPEE - ずっと残るものだと思うし、皆がそのプロジェクトのことを好きならそういうことができるんだなっていうのが良かったですね。

TSUNE - こんなに枚数を描くのはアナログもデジタルもあんまりないんだけど、もうちょっとやりたかったっていうのもあって。それはネタとかじゃなくて、作画の部分でまだイケてないなってところがすごいあって。悔しいところはあるけど、これはこれでバッチリだったかなと、街並みの設定とかは好き勝手やれたし。

PUNPEE - みんなプロセスがわからない状態でここまでやったっていうのはすごいですよね。

Ghetto Hollywood - みんな初挑戦だからね、それで形になったのが面白いよね。

澁谷 - 自分はパンさんのファンだから"PSG現る"とか"寝れない!!!"のOkubo Ryuさんのビデオを超えないとっていうのがあって。自分の代表作品になったと思いますけど、次はこれを超えるものを作りたいなって思いますね。

Ghetto Hollywood - パンちゃんのアルバム、次がいつになるかわからないけど、この世界観はいくらでも続けられるからまたそういう機会が来たら面白いですよね。あと何枚出すんだっけ?

PUNPEE - あと2枚ですね。

Ghetto Hollywood - 10年後くらいに出たらいいなあって。

RELATED

RAU DEFがニューアルバム『ESCALATE III』を9月にリリース|12月には渋谷WWW Xにてワンマンも開催

RAU DEFが前作「DELICACY」から1年ぶり、「ESCALATE」シリーズとしては4年ぶりとなるニューアルバム『ESCALATE III』を9/25(水)にリリースする。

PUNPEEが中国の2都市で単独公演を開催 | BIMもオープニングアクトで参加

アルバム『MODERN TIMES』をリリース以後は全国ツアーをはじめ、昨年はPUNPEE Presents.「Seasons Greetings’18」を開催するなど、常に実験的な試みとエンターテインメントを追求しているPUNPEEが9月にMastermind × Amuse Shanghaiが共同開催する中国の2箇所(上海・深圳)にて単独公演を開催する。

Rejjie Snowなども出演する大阪の都市型フェス『CIRCUS×CIRCUS』にPUNPEE、ゆるふわギャング、Awichなどの出演が決定

9/1(日)に大阪・舞洲スポーツアイランドで開催される都市型フェス『CIRCUS×CIRCUS』は、第一弾でRejjie Snow、tofubeats、SIRUPなどの出演がアナウンスされ話題となっているが、本日第二弾アーティストの出演が発表となった。

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

Floating Pointsが選ぶ日本産のベストレコードと日本のベストレコード・ショップ

Floating Pointsは昨年11月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Elaenia』を引っ提げたワールドツアーを敢行中だ。日本でも10/7の渋谷WWW Xと翌日の朝霧JAMで、評判の高いバンドでのライブセットを披露した。