月間韓国音楽2017年11~12月編 Selected by stttr & DJ DJ機器

K-Popだけでなくヒップホップ、エレクトロニックミュージックまで、独自の発展を遂げている韓国の音楽シーンから生まれる良曲をピックアップする人気連載。

今月は年末スペシャルで掲載できなかった昨年11月〜12月分を一挙掲載。選曲を担当するのは、もちろんstttrとDJ DJ機器の2人の韓国音楽愛好家。

stttrの2017年11~12月オススメ曲

1. 엄정화 Uhm Jung Hwa - "Ending Credit"

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オム・ジョンファが12年ぶり10枚目となるフルアルバム『The Cloud Dream Of The Nine』をリリースしました。『구운몽(九雲夢)』という韓国の古典小説をモチーフにしたアルバムです。

K-Popはオム・ジョンファの存在抜きには語れないと思います。オム・ジョンファが歌手デビューしたのは93年。今につながるK-Popの元祖といわれるソテジワアイドゥルが、デビューした92年の翌年です。K-Popの歴史とともにキャリアを積んできたオム・ジョンファは、様々な形でK-Popにポジティブな影響を及ぼしてきました。

そのひとつが、彼女のダンスミュージックへの深い理解です。オム・ジョンファのディスコグラフィーを遡ると、彼女がその時代ごとに様々なプロデューサーを起用し、ディスコをはじめハウスやR&BやNJSなどのダンスミュージックを彼女流・韓国流に解釈・消化し、歌謡曲として打ち出してきたことがわかります。そのひとつひとつが非常に完成度高く、トレンドを意識した曲があれば、懐古的な曲もあったりとバラエティに富んでいます。オム・ジョンファならではのハイコンテクストな曲作りは、参加したアーティストに確実に良い刺激を与えていると思います。ちなみに”Ending Credit”の曲を担当したのはPrimaryとSuran。リリース前にクレジットが出た段階ではR&B~ヒップホップのこの二人だと今のオム・ジョンファには軽すぎるのでは?と少し心配していましたが、結果は最高なディスコ風味のエレクトロ曲でした。オム・ジョンファの人選も、それに答えた二人も見事ですね。

ステージ上では常に愛着を持ってダンスミュージックの快楽性や文化的側面を表現してきました。この動画のステージはおそらく00年台後半ですが、ドラァグクイーンやダンサーとのパフォーマンスは圧巻です。オム・ジョンファがこのようなパフォーマンスを通じて築いてきた下地がなかったら、ガインテミンシン・セハも居なかったかもしれません。

“Ending Credit”の歌詞は、ある恋愛が終わりスクリーンにエンディングクレジットが流れているのを、ひとり映画館の客席から眺めているという内容です。オム・ジョンファの歌詞は、いつもどこか寂しさを感じさせます。曲の最後、「또 다른 영화는 시작됐고 관객은 하나 둘 입장하고(また別の映画が始まって、観客が一人二人と入場してくる)」とあります。新しい物語の主人公は彼女なのでしょうか、それとも別の誰かなのでしょうか。いずれにせよ、恋愛が終わる寂しさを歌いつつも、それを含めた人生を祝福するような素晴らしい歌詞だと思います。

2. 이달의 소녀/이브 (LOONA/Yves) - "new"

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12人のメンバーを1人ずつ発表していくプロジェクトLOONA、2017年は怒涛のリリースラッシュでした(ちなみに正しい表記は”LOOΠΔ”なんですがMVタイトルなどは検索に引っかかりやすいように”LOONA”になっている模様)。2017年初頭のLOONAは“My Sunday”など初々しさを前面に打ち出すような楽曲ばかりでした。これはこれで良かったのですが、5月の”Eclipse”からガラリとイメージを変え、BPMもどんどん加速してそのまま年末まで駆け抜けました。

新人なのに、曲はフューチャーベースなど他のK-Popグループがやっていないような路線ばかりで、LOONAが自分で設定したトレンドを自分でどんどん転がしているという状況。売り出し方が一から十まで異例づくしなので他のグループと比較して評価することは難しいのですが、何しろ曲のクオリティが高すぎるので注目度はどんどん上がっています。最近はフォロワーも出現していて、11月に出た유설(YUSEOL) - 'Ocean View'などはモロにLOONAサウンドの影響下にありますね。

12月のChuu - "Heart Attack"からサウンド的にはまた別のモードに突入したように思えるのですが、1月はどうなるでしょうか(追記:1月30日に出ました)。そしてあと1人で全メンバーが揃いLOONAがグループとして正式デビューということになります。もはや祭りです。参加しないと損!

3. Sumin - "Mirrorball"

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シンガーソングライターのスミンが新曲”Mirrorball”をリリースしました。2015年から活動しているスミンですが、2017年は大活躍でした。ミニアルバムをリリースし、客演も6月編で紹介したJinboのアルバムの"TT"リミックスなど多数。SUMIN - "Sparkling"、Khundi Panda X Viann - "Ms. 808 feat. Sumin"はMVもありますので是非どうぞ。

4. 야광토끼 (Neon Bunny) - "지금 (Now)"

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才人Neon Bunnyがシングルをリリースしました。Neon Bunnyは2010年代初頭から着実に活動を続けていて、2016年にはセカンドアルバム、2017年は日本公演もありました。その時々でエレクトロ色が強くなったりダンス寄りになったりしていますが、どの作品もいいです。3ヶ国語で歌うこの曲はBPMをぐっと抑えてドリーミーな仕上がり。個人的には今までで一番好きです。

番外編

2017年のK-Popから独断と偏見で100曲選んだYoutubeプレイリストを作りました。順番は時系列で、選出基準はYoutubeに公式のMVや音源がある曲のなかで個人的に良かった曲、注目すべき曲、変な曲等いろいろです。2017年の復習になるかどうかは分かりませんがよかったらどうぞ!

stttr

stttr

プロフィール
DJ。新旧韓国音楽。
韓国や日本など東アジア各国のポップミュージックを比較研究しています。

DJ DJ機器の2017年11~12月オススメ曲

まずは11月から!YvesSEVENTEENEXIDSONAMOOfromis_9がよかった!

1. Red Velvet - "Peek-A-Boo"

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Red Velvetが『THE RED』以来の2ndフルアルバム『Perfect Velvet』でカムバック。タイトル曲の"피카부 (Peek-A-Boo)"が大好き失神しました。これこそK-POP!と言うような出来です。2017年ベスト!!!素晴らしい。。。
ままず、キックがいいですね...今のキックだけで最高の曲です。アプローチ的にはバブルガムベース的な部分も感じますが、よくわからないジャンルです。バブルガムポップ?とでも呼称しましょうか。歌詞からもパフォーマンスからもわかるとおり、異性に媚びないというかあまり眼中になく、自分たちだけで楽しむような態度は、非常に興味深いものです。 TWICEとの差が面白いですね。

その他の収録曲の"봐 (Look)"はファンキーなディスコ風楽曲です。作詞にSUMINとJINBOはディスコ系で完全に信頼できる布陣した。曲の後半に少しJINBOの声が入っています。。"I JUST"はcomposedにHitchhikerの名前が入っている。"Kingdom Come"はThe Stereotypes、"Attaboy"はKensie、"Moonlight Melody"はMono Treeと、非常に豪華な布陣です。完全によい!すごい!!!2017年ベストアルバムでしょう。

ちなみにこのカムバック日、韓国にいてすぐにCDを購入することができました...ありがとうございました...。

2. Block B - "Shall We Dance"

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Block B の新曲"Shall We Dance"は、ハウス的なアプローチ意外でした。ZICO、そしてパッキョンが作詞作曲という感じです。パッキョンが小室哲哉さんのように見えてびっくりしました。
派手さはないが、非常に良いバランス曲だと感じます。ZICO本当にすごいですね....。収録曲"My Zone"は先に日本オリジナル楽曲としてZICOとAKLOが競作した曲の韓国語バージョンです。このパターンはあまりなかったのでおもしろいです(AOAの"愛をちょうだい"が"Help Me"として1stアルバムに収録されていたことがあります)。

3. JEON SOYEON(전소연) - "Jelly"

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CUBE所属、Produce 101出身のチョン・ソヨンのソロデビュー曲です。Unpretty Rapstar3にも出演していたのでラップがとても上手ですね。
フューチャーサウンドをベースにしたポップな曲があります。
MVにはCUBE所属の人たちが出演しており、大変豪華です!Pentagonのイドンとウソク、Wanna Oneのクァンリン、そして以前紹介したSMTM6での"VVIP"でおなじみウチャンくんも出演しています。CUBE顔、わかりやすい…

12月はTHE BOYZGiriboyBUMZUHorimUjuがよかった!

1. DPR LIVE - "Jasmine" (prod. CODE KUNST)

前作『Coming To You Live』ではJay Park、Loco、Crush、Dean、DUMBFOUNDEAD、KIM HYO EUN、G2などの豪華な客演を向かえてのEPであったが、今回はほぼほぼソロ作品であるEP『Her』が発売されました。その中で"Jasmine"を。トラックをCODE KUNSTが担当しています。幻想的な映像とトラックが印象的です。

DPRは「Dream Perfect Regime」の略です。ソウルを拠点とするビジュアルプロダクションであるDPRに、ラッパーのLiveも所属しているような構図。その他にも映像チームがいたりと、すべてクルー内で完結させているようです。非常に面白くて神秘的なクルーだと思います。
そしてDPRクルーの社長?というかビジュアルクルーのDPR IANが元C-CLOWNのRomeことユ・バロムなんですよね…。知ったときに本当にびっくりしました。アイドルのセカンドキャリアがMV監督とは…すごいことです。
BIG BANGのTAEYANGのソロ曲"WAKE ME UP"のMVもDPR visualチームが手がけています。外仕事も活発なようです。"Eung Freestyle"のMVも作っているようですね(というかアップロードされているアカウントがDPRなのに今気が付きました)。

かなり特殊な活動や流通の仕方をしているDPRですが、着実に実力や人気も出てきていると思います。来日公演も決定しており、今後が楽しみですね。
今年始めにBillboardにインタビューが掲載されていましたので、こちらもどうぞ。

2. HyunA - "Lip & Hip"

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デビュー10周年を迎えるヒョナから、ファンへのサプライズ・プレゼントとして制作した記念シングルです。強くてセクシーなキャラクター全開の曲、そしてMVになっています。このセクシーさを全面に出したタイプのK-POPのMVを久しぶりに見たような気がします。ヒョナのしっかりとしたキャラクターあっての表現なのでしょう。
それにしても韓国にはこのような特徴的な声でラップをする女性が一定数いるのでしょうか?ヒョナ、ジミン(AOA)、チョン・ソヨン、Jvcki Waiあたりは特徴的ですね。不思議で魅力的な声です。

3. DEAN - "Instagram"

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もはや説明不要、DEANの新曲が公開されました(MVは1月でしたが、曲の配信は12月でした)。リリースされて3日ほどで韓国主要チャートをオールキル(すべて1位)ということで、完全に国民的な歌手になっているようです。しかも主だったプロモーションもなく、MVもない状態での1位は韓国ではかなり異例でしょう。
ちなみにリリース直後にIUがこの曲をカバーしてInstagramに投稿するということもおこりました。
売れるとはこういうことなのですね…。

歌詞の内容もとても切ないものです。このご時世、共感できる人々はたくさんいるのではないでしょうか。是非一度調べて読んでみてください。

DJ DJ機器

DJ DJ Kiki

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