KASHIF『BlueSongs』スペシャル | ギタリストKASHIFが選ぶギターにうなった10曲
横浜を拠点とするクルーPan Pacific Playaのメンバーであり、一十三十一、スチャダラパー、[1](さらうんど)、G.RINA、Sugar’s Campaignなど多彩なアーティストをギタリストとして支えてきたKASHIFが、ソロデビューアルバム『BlueSongs』を5/3にリリースした。
『BlueSongs』は収録曲のほとんどをKASHIFが1人で作り上げ、エレクトロニカからネオソウル、シティーポップからインディーフォークまでKASHIFの幅広いバックグラウンドを、静かにしかし明快に表現した内容となっている。
FNMNLではギタリストとして幅広い活躍をしてきたKASHIFに、ギターサウンドに唸らされた10曲をチョイス、『BlueSongs』とあわせて、KASHIFのギター愛を堪能してほしい。
KASHIFが選ぶギターにうなった10曲
1. A Tribe Called Quest - "4 Moms"『The Love Movement』収録 (1998)
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こちらの曲、自分的にはヒップホップ然としたソリッドなトラックと、非サンプリングのディストーションリードギターの組み合わせの、理想郷を見た気持ちになれた楽曲でした(もちろんカッティングも最高に素敵です)。
ギターのディストーションサウンドとヒップホップのトラックの組み合わせって、
自分的にはある種ネタ性やtoo much感をデフォルメする要素が強い印象の時期があったので、アルバム内では箸休め的な役割のはずのこの曲の洗練度合いに大変衝撃を受けました。自分のプレイにかなり大きく影響を与えています。
2. Sade - "Cherish The Day" 『Love Deluxe』収録 (1992)
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イントロから入っているストレンジな音が強烈にビブラートをかけたギターである事にだいぶ遅れて気づいて、改めて心を奪われた曲です。この奏法を個人的に「Cherish The Day奏法」と名付けたのです(笑)。
いつか使いたいと思っていたので今回の自分のソロアルバム収録曲「You」の最後の方で初めて実行してみました。ちなみに今回の記事きっかけで初めてオフィシャルMVをみたのですが、(恐らく)ゴールドトップ&P90のレスポールを使用する所にもグッときてしまいました。
3. Eric Clapton - "Old Love" 『Journeyman』 (1992)
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アラフォー世代でご存知の方も多いと思いますが、アンプラグドムーブメント全盛期に世界的にヒットしたクラプトンのライブです。自分的にはこの動画の3:20あたりからの長尺のギターソロ、これがもう本当に「most beautiful guitar solo in my life」って感じです。
あくまで自分の主観ですが、これだけの長尺なのに、出だしから終わりまで無駄な探りなしに、ひたすら泣きや哀愁の歌心の詰まりに詰まった旋律を奏でた上、スロウハンドらしく派手なテクニックは無くとも、見事に展開や変化をつけたストーリーテリングも完璧。いまだにフィルなのかキメ弾きなのかわからないのですが、前者であれば本当に奇跡のテイクだなと。クラプトンの偉大さを痛感しました。
4. 小沢健二 featuring スチャダラパー - "今夜はブギー・バック(nice vocal)" 『LIFE』収録 (1994)
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"今夜はブギー・バック"でミックスとしては控えめな音量でずっと鳴っているギターフレーズですが、自分はスチャダラパーさんのサポートさせてもらうようになってから初めてコピーしました。とてもシンプルなフレーズなのですが、各種アンサンブルとのグルーヴの良さはもちろんの事、弾き手をノらせる運指都合&人体都合の整合性の高いフレーズである事を実際弾いて改めて実感しています。確かスチャさんに伺った話ではこのフレーズは小沢さん考案との事で、未だに弾くたびに感慨深い物を感じています。
5. 坂本龍一 - "千のナイフ" 『千のナイフ』収録 (1978)
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前述のA Tribe Called Questの"4Moms"については「ヒップホップ然としたトラックとディストーションリードギターの組み合わせの理想郷」といいましたが、自分としてはこの曲はそのテクノ版という認識です。ギターは楽曲内で2回、渡辺香津美氏のソロが出てくるだけですが、それがまるでスクウェアなシーケンスのメトロポリスに突如半メカの電飾の巨大な龍が現れたような、、個人的にそんな印象で大好きです。ご本人たちは好きではなかった様なコメントも散見されますが、この時期のYMO関連音源のフュージョンへの接近感、自分はとても大好きです。
6. Prince - "Batdance" 『Batman』収録 (1989)
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プリンス節全開でジャンル的に形容不能な感もある"Batdance"(笑)。自分のプリンスとの出会いの曲で強烈なインパクトを残してくれました。自分にとってのプリンスのギターって「とことんトラディショナルを踏まえた上でそれを破壊したアップデート感と共存させるプレイ」って感じなんですが、この曲に関してはアレンジ含めそれが遺憾なく発揮されているなぁと思います。よく聞くと、ギターソロはデッドにしきれなかったエアー感が少しあるような気がして、そういう荒々しさも最高です。イントロのパワーコード4発は一生頭に残ると思います。
7. Mr.Big - "Green Tinted Sixties Mind" 『Lean Into It』収録 (1991)
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自分が高校の時に初めてコピーしたライトハンド奏法の曲という、個人的な思い入れのデカさがチョイスの理由として大きいのは否めません(笑)。このどイントロのギター、速さを前面に出すわけではなく16分のメロを聴かせるためのライトハンド奏法であるという点は当時のHR/HMの系譜の中では珍しかったように思います。そのイントロだけでなく、そこから先の曲自体がとにかく最高です。途中細かい転調や変拍子といったプログレッシブな部分がありつつも、難解さを全く感じさせないポップスに見事に昇華されているあたり、流石のメンバーの技巧者っぷりを感じました。いつかカバーします(結構マジ)
8. Bibio - Saint Thomas 『A Mineral Love』収録 (2016)
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Bibio氏の作品はギターがフィーチャーされている楽曲も多いのですが、
こちらはその中でも左右に定位を振ったエレキ二本のみでラストまで行く佳曲です。この曲が収録されているアルバム「A Mineral Love」はハイ&ロウファイ、アナログ&デジタルの質感の混在が魅力の一つですが、その並びの中で聞くとこの曲のギターがシンセのアルペジエーターのシーケンスをトレースした感じにも思えたりして、不思議な魅力があります。
そういったアナログ&デジタルのユニークなバランス感は自分のアルバムの構成を考える上でも大きく影響を受けました。
9. Cornelius - "Sensuous" 『Sensuous』収録 (2006)
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前述の「Bibio / Saint Thomas」に続きこちらもほぼ全部がアコギの曲なのですが、対照的にこちらは現代音楽的な側面や音響的技法なども取り入れられたストレンジな楽曲です。元来自分はギタリストとしての小山田圭吾さんのファンなのですが、その大きな魅力は的確なプレイや音色もさることながら、とにかくordinaryでないアプローチに富んでいる事です。この曲はそれがラストのチューンダウンしていく所まで遺憾なく発揮されていると思いました。
こちらの話ですが"Saint Thomas"と"Sensuous"の質感を混ぜつつ、適度にFusion/AOR感を落とし込んだギターインストアルバムを作りたいとぼんやり妄想しています。
10. Sister Sledge - Thinking Of You 『We Are Family』収録 (1979)
ラストは言わずもがなのギターカッティングリフ史に燦然と輝くこちら。ナイルロジャース節全開です。カッティング手法の王道ともいえる、セーハした指以外の動ける指でのハンマリングと空カッティングを混ぜた奏法(ギターの用語多くてすいません)が多く使用されています。個人的に初めてそのタイプのフレーズを弾いたのはThe Isley Brothersの"That Lady"をコピーした時なのですが、"Thinking Of You"は"That Lady"的フレーズをさらに旋律性の有るリフとして見事に昇華したものという認識です。自分のギターDJ時の最多使用曲でもあるのですが、貼ったリンクはあえて自分がその際によく使っているDimitri From Paris Remix verにしてみました。
Info
KASHIF - 『BlusSongs』
Billboard Records
HBRJ-1025
2,400円(tax out)
2017年05月03日リリース
01 Breezing
02 On and On
03 The Night
04 Clean Up
05 Desperate Coffee
06 PPP I Love You (Part2.1) 07 You
08 Neverland
09 Be Colorful
10 BGM
11 PPP I Love You (Part3)
脚注
↑1 | (さらうんど |
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