Stormzyのアルバム『Gang Signs & Prayer』のカバーアートに込められた本当の意図

現在UKのグライムシーンの先頭に立っているStormzyが、先月末デビューアルバム『Gang Signs & Prayer』をリリースした。

同作はUK総合チャートでグライムMCの作品として史上初めてUKチャートの初登場1位を飾り、現在もEd Sheeran、Rag'n'Bone Manの最新アルバムに次いで3位と、好調をキープしている。

Stormzy

このアルバムのカバーアートにはStormzy本人を含む9人の人物、机や食器、ゲーム機などが写っているのだが、背景を含めて全てが黒色で統一されている。カラフルではないものの非常に印象に残るこのカバーアート、色や人数、背景こそ異なるものの、レオナルド・ダ・ヴィンチが15世紀末に描いた「最後の晩餐」にどこか雰囲気が似ているからであろう。

レオナルド・ダ・ヴィンチ

バーミンガム大学の教授で美術史家のキャロル教授は「Stormzyが自身をイエス・キリストになぞらえている」ということがこのジャケットから分かるとBBCの取材に対して述べている。

これはStormzy自身が、自分は神のような崇高な存在であるという意味ではなく、いつ今の自身の地位が脅かされてもおかしくないと考えているという意味である。
このことは、最後の晩餐で中央に位置するイエス・キリストの横には、イエスの弟子で後にイエスを裏切るユダが座っているが、このジャケットではStormzyの横には小さな子供が座っているのが象徴的だ。
つまりこのジャケットからはStormzyの「自身の現状に満足してはならない」という強い意志が感じられるのだ。

また実際Stormzyが2月21日にロンドンで行ったゲリラライブに参加したファンの多くは、ジャケットが最後の晩餐に似ていることを感じ、またファンの1人ユラエレマさんはジャケットについて、「人種やその人の持つ背景、出身地に関係なく、誰でも成功を収めることができるということを、彼は言っているのだと思う」とインタビューに答えている。(yacid)

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