世界のシーンをリードするサウンドシステムのエンジニアが語るサウンドシステムカルチャーの本質

Jun Yokoyama

毎年クロアチアで行われるサウンドシステムカルチャーの祭典OUTLOOK FESTIVALでは、UKをはじめとする世界各国のサウンドシステムやアーティストたちが、世界各国から集まってくる低音狂たちを熱狂させ、フードコーナー横に特設されたステージでは、機材メーカーやメディアがクリエイターやオーディエンスがよりカルチャーを深く知るためのワークショップが開催されたりもしている。

そのワークショップの一環として、オーディオメーカーのVOID ACOUSTICSの創始者であり、オーディオ・エンジニアのRog Mogaleたち、サウンドシステムエンジニアを迎えてのトークセッションが行われた。

VOID ACOUSTICSとは、UK発の世界最高峰のクラブサウンドシステム。クラブの聖地イビサ島を筆頭に、ロンドン、ベルリン、アムステルダム、モスクワ、ニューヨーク、サンフランシスコ、シカゴ、そして広州と世界各国のトップクラブにインストールされており、日本でもTAICOCLUB、ULTRAなどのフェスでその威力を発揮するクラブサウンドシステムだ。

トークセッションでは、RogやVOID ACOUSTICSとも親交の深いNeuron Pro Audioのメンバー、グラスゴーのサウンドシステムMungo's Hi-Fiのメンバーが登場し、サウンドシステムの歴史、哲学、失敗話などを語った。今回、Rogの好意により、FNMNLで特別にトークセッションの書き起こしの翻訳をシェアすることができた。

Special Thanks to Tocci (Tokyo Sound System Labratory)

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司会 - それでは、Rog、これまでどんなことに影響を受けてきたか?このサウンドシステムの世界に行き着いたプロセスを話してもらえますか?

Rog Mogale (VOID Acoustics) - わかりました。僕のバックグラウンドは、レコーディングと音楽制作で、80年代から様々なトップアーティストのアクトをプロデュースしてきて、80〜90年代はPAエンジニアのビジネスに関わったりとみんなの仕事を請け負ってきたよ。

それは会社の、仕事の良い背景作りにとても役立っていると思っているんだ。90年代後半になって感じたことは、その辺のクラブを見回すと、音はまあまあなんだけど、すべてのクラブのスピーカーが真っ黒でどこか退屈だと思ったんだ。照明でさえかっこよく未来的な表現をしていた時代なのに、誰もスピーカーをデコレーションだと考えていなかったし、スピーカーだけがどこか退屈に見えたんだ。クラブのオーナーはクラブのデコに大金を使っていたのにもかかわらず、スピーカーはただの黒い箱だったんだ。そこでクラブをかっこよく見せる必要があった。それがVOIDが生まれた理由なんだ。

僕には、VOIDの他に、DIYサウンドシステムという別な一面がある。確か90年代中頃からウェブサイトspeakerplans.com 1)DIY Sound System Web Site: speakerplans.comをRogが開設した。を始めたよ。インターネットを使って自分のサウンドシステムを作り出すプランをシェアしたんだ。当時はそんなに良い設計図もなくて、1970年代の設計アイデアとかばっかりだったんだ。もっとモダンな設計アイデアが必要だったし、いくつかの設計図を提供する必要があったんだ。そして、その時に考案された設計図には今でも使われているものもあるよ。

Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - Mungo's Hi Fi Sound Systemは、そういったフリーの設計図から2002年に生まれたんだ。Mungo'sはRogが考えていたフリーダウンロードできる設計図から生まれて、フリーパーティーをやる人たちの為、自分たちでは高額なサウンドシステムを買えない人たちに、フリーで使ってもらうことから始まったんだ。

今のVOIDとコネクションがあった、それこそ最初にやったパーティーは50×80ホーンを使ってたね。警察が毎週くるようなマンチェスターの危ないウェアハウスパーティーで使い始めたんだよね。あの時にVOIDクルーから購入したスピーカーは、Looney BinのウーファーとSTASYS SYSTEMじゃなかったかな?

このスピーカーは最近売ってしまったけれども、長い間皆んなあのサウンドにやられてたよね。僕たちもDIYのシーンから生まれて、次に音響のセミプロになっていったんだ…

Rog Mogale (VOID Acoustics) - まあここで言いたいのは、それって矛盾してない?と皆思っているんじゃないかな。一方で僕は、ハイエンドの会社(VOID)を持っていて、幸運にもお金を稼いでいる。世界中の大きなクラブやフェスティバルのビックステージにスピーカーを提供している。でも、同時にそこでDIYの設計図もウェブサイトに残しているんだ。それは確かに矛盾ではあるけど、矛盾ではないんだよね。

DIYのシステムでは、僕は絶対高い既製品を使おうとは思わない。使うべきではないとも思っている。ジーンズを自分で買いに行くのと一緒で、それはとても個人的なことで、すでに作られている一般的なものを使いたいとも思わないだろ?それらを組み合わせてマッチさせたいと思うんじゃないか?そういうものを組み合わせて自分のデザイン、自分自身の音を創るんだ。それがアップロードされるべきで、それを僕はクリエイティヴオーディオと呼んでいるんだ。それは、ただのフラットな周波数特性が欲しいわけじゃない。

クリエイティヴな自分のオリジナルのサウンドを作る事、自分たちがそれに取り組む事、それがサウンドシステムのカルチャーだと思っているんだ。だからそういう経験を皆に踏んでもらうことが大切だと僕は思っているんだ。Jerome、君はどう思っているんだい?

Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - その通りだよ、良い時間を過ごすっていう経験が鍵だよね。僕はいつもクラブでパーティーしまくってたね。でもそこには何か足りないといつも思ってた。そして、グラスゴーでDag とTom とCraigと会って2003〜4年にMungo‘s Hi Fi Sound Systemに入ることに決めたんだ。スコットランドには良いスピーカーがなかったから、DIYで作り始めたんだ。今でもそれらのスピーカーを使っているよ。Rogの設計と同じもの。同じボックスで別なドライバーで今でも使ってるけどね(笑)。

その時は、さっき言ったように良いサウンドシステムがなかったから、もっと僕たちがやっていたようなサウンドをリプロデュースできるシステムが必要だったんだ。当時から僕たちはダブやレゲエをやってた。良いサウンドシステムがなかったら、その音楽を表現することができなかったんだ。だから、とにかく良い時間を持つことが鍵なんだ。オーディエンスがサウンドでダンスして、クレイジーになって、そんな人々が周りにいることが一番大事なんだ。DagにもMungo‘sについて語ってもらうよ。

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Dag(Mungo's Hi Fi Sound System) - Rogのデザインのスピーカー設計はすごいと思うし、今でも使われているよね。誰が作っても強力なんだよね。とにかく、そういったコミュニティーが、今でも生きてるんだ。

Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - RogはVOIDの新しいプロダクトをリリースする影響力のある人だ。僕の会計士は、僕たちがそのプロダクトのすべてを毎年買っている事を嫌がっているけどね(笑)。まあとにかくこうして、毎年ここOUTLOOK(クロアチアのプーラ)に来てTHE VOID、GARDENでサウンドシステムを担当してるけど、こんな事は多くの周りのPA会社がやってるってわけじゃない。それをやるには、スタッフにお金を払わきゃならないし、、、毎年同じシステムを構築するのは簡単だよ。ただ、ここに来る人々の顔を見ると『Wow!今年はなんか違うな、ここで何が起きてるんだ』って顔をするし、それを体験してもらうのがポイントなんだ。

OUTLOOKがすごいのは、ここに出てるすべてのサウンドシステムは独特で、それぞれが独特な作りをしていて、ここにあるスピーカーで悪いサウンドシステムなんて無いんだよ。

ビーチにあるDub Smugglers Sound SystemはRogにデザインされたスピーカーにインスパイアされて作られたんだ。けど、Rogが考案したスクープなんて知らなかったフィンランド人のヤツが作ってて、基本的に彼がやったことは、Rogと同じプランで同じフォルムでデザインしたんだよね。彼はレゲエが好きで、結局マンチェスターに来て、チューニングし始めたんだけど、最終的に俺たちと全く違う音を作り出したんだ。その音はスーパースペシャルで、ぶっ飛んで、朝っぱらの俺らの目を覚ましたんだよ、、、。

システムを作るには何千ポンドって金がかかる。それは楽器だからね。そして、それをその音楽の為にチューニングするんだ。俺たちは、その音に順応しなきゃならないんだよ。音楽をパーフェクトに表現しなきゃいけないし、パーティーそのものを最高にすることを常に意識しなきゃならない。それがサウンドシステムカルチャーの鍵なんだよ。ジャマイカの時代でさえも、みんな自分達のボックスで自分たちの音を作り出して、他のパーティーやヴェニューに行ったら、ここは「違うサウンド」って体験させるってことが大事だったんだ。

Rog Mogale (VOID Acoustics) -
あの時代を振り返ると、自分より年上の人々がたくさんいたよ。あと、ここにいる皆より年寄りの人達ばかりだった。あ、そこのあなた(Iration SteppasのMark Irationを指差して)は結構年取ってるか(笑)。

とにかくあの時代、60年代後半から70年代は 、PAシステムは、10インチや12インチが4発入りとかのコラムスピーカー2)縦にスピーカーが並んだスピーカーで中域しか聞こえないヒドイ音だったよ。 ジャマイカからは良い音楽が入ってきてて、ジャマイカではそういった種の音楽に対応しプレイできるシステムがあったけれども、初期のロンドンではそういった音楽を再生できるシステムがなかった。だから自分たちでそのシステムを作り上げなければならなかったんだ。ベッドを分解して合板を組み立てて、一番大きなドライバーのFANE POP 100を探してきて、18インチのスピーカーと真空管アンプを繋げて、あとはベストな音が鳴る事を祈ったんだよ。

DIYはこういった作業から来ているんだ。何も無かったから、必要な物は自分たちで作らなければいけなかったんだよ。当時のPAシステムは、安定していなかったしそこまで役にも立たなかったんだ。

オーディエンスからの質問 - DIYアプローチとVOIDの矛盾点を話してましたが、そのプロセスがどのように今の世界的なビジネスに影響してきたのか説明してもらえますか。

Rog Mogale (VOID Acoustics) - もちろん。そのプロセスは手助けになったよ。当然僕はその2つのサイドを見てるからね。さっきも言ったように僕は、PAエンジニアのルーツも、ハウスのプロダクションのルーツも持っている。また、9つの楽器をプレイすることもこれまでのサポートになっているし、そんなバックグラウンドを持っている事が幸せだよ。DIYサイドは別なブランチで僕がやりたいことをやっているわけで、それができてることを幸せに思うよ。

それと別に、まったく別なVOIDという会社では、人々が好きな良いハイレベルなオーディオシステムを作っている。でも、DIYはそれを超えているね。今では多くの世界中の人々を魅了している。今年Boom Townフェスを歩きまわっても、Notting Hill Carnival に行っても、ここに来ても、みんなVOIDのTシャツを着ていて、10分おきに誰かが来て僕をハグして「Wooow we love VOID!」って言ってくれるんだ。だから、正しいことをしているんだと思う。

これを計画してたわけじゃないけど、こんな風になるとも思ってもいなかった。ただこれは、僕が過去にやってきたことや、僕自身の選択が道を作ってきたから今に至って、結果こうなっただけなんじゃないかな。そして、人々が何を求めているか知ること、何が良い時間という事を理解するということが大事なんだ。世界中にサウンドをデザインしている人が多くいるけど、彼らはパーティーに行かなかったり、外に出なかったりするんだ。だから、こういう風にして外に出る事を大事に思う必要がある。まあとにかくこう背景も含め、全てがあって、良いものを作るんだよ。

Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - これは僕の尊敬の意を込めて言いたいんだけど、こうしてVOIDが長続きして成長してきた理由としては、その機材に関わっている人たちに、メールをしたり電話したり、問い合わせをすれば、サポートしてくれるからなんじゃないかな。メーカーとユーザーだけの関係じゃないんだ。

Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - DIYをやっている人たちは、同じ経験をして共に協力し合ったから成長してきたんだよ。そして、皆そこに幸せを感じてきたんだよね。

司会 - クラブスタンダードのオーディオ以外にも、ビジュアルを重視する観点はとてもユニークだと思いますが、なぜそういった点を大事にしているのでしょうか?

Rog Mogale (VOID Acoustics) - そうだね、スピーカーの見た目は独特で、他と違うのは確かだよね。それは、他のスピーカーとは違うように見せたいという点があったし、ナイトクラブに置くただの黒い箱にしたくはなかったんだよ。まず、クリエイティヴで完璧なアーティスティックにしたかったという点があるんだよ。これは、今の様にフェスティバルで使用される事は全く想像もしていなかったんだ。デザインをCADで描いて、デザインを「リヴァースエンジニア」して音を出すスピーカーを作っていったんだ。もう1つのアイディアは、インキュバスとアークアレイのように完璧に機能を追求したものを作ること。前で聴いてもうるさくないとか、ラインアレイの機能も有していて、フロアの後ろにいる人たちも含めてみんなが完璧に同じ体験をできるような音をデザインすることを目的としているんだ。これが2つの方法、アイデアだったね。

Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - いろんな製品があるけど各レンジのスピーカーはそれぞれ独特なビジュアルスタイルを持っていて、どのボックスも良い音が鳴るんだよ。エアシリーズに丸形と三角型があるように、VOIDはオーディエンスに対応できるようになっている。ただ単にスピーカーを聞いているという訳じゃなくて、スピーカー自体が音楽体験の一部になるんだ。人々がいい音を聞いて、音楽に身を任せて楽しんでダンスするという他と違う体験をすることが大事なんだ。

Outlookには、大小の色んなステージがあるけど、どこでも良い音を聴ける。観客はもちろん、オーガナイザーでもあるSimon、そして出演するアーティスト達も楽しめるフェスティバルなんだ。スピーカーがミュージシャンとオーディエンスを強力に繋げてくれるからなんだ。だから、ミュージシャンもOutlook には皆んな出たがるんだよね。

Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - 僕たちはスピーカーをただの箱だとは考えていなくて、スピーカー自体がこういったアリーナの場所の一部であると考えているんだ。

脚注   [ + ]

1. DIY Sound System Web Site: speakerplans.comをRogが開設した。
2. 縦にスピーカーが並んだスピーカー

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