【脇の下こちょこちょスピンオフ Vol.4】トランプ政権誕生:アジズ・アンサリがアメリカ国民に融和を訴える
現地時間の1月20日正午、ついにトランプ政権が発足。反トランプ派による暴動が起きたり、「ウィメンズ・マーチ」をはじめとする大規模な抗議活動が各地で行われたり、アメリカは不穏な空気に包まれた。今アメリカは「分断」の危機にさらされている。だが就任式の翌日には、インド系コメディアンのアジズ・アンサリが人気バラエティ番組「サタデー・ナイト・ライブ」(以下、SNL)に出演。痛烈な人種ジョークを交え、アメリカ国民に対して「融和」を訴えた。
40年以上の歴史を持つSNL
にアジア系タレントがゲストで出演したのは今回でわずか4度目。ちなみに過去のアジア系ゲストは、ジャッキー・チェン、ルーシー・リュー、ブルーノ・マーズの3名のみらしい。ブルーノ・マーズがアジア系と言われてもピンとこないけど、お母さんがフィリピン出身なので、まあ一応アジア系としてカウントされるんだろう。
「ってか、アジズ・アンサリって誰?」と思ったそこの人。ホンマええ加減にしてくれ。アジズ・アンサリといえば、NYUに通いながらスタンダップコメディアンとして実績を積み、『Human Giant』で大ブレイクした若手コメディアンだ。最近ではNetflix制作のコメディ「マスター・オブ・ゼロ」でエミー賞脚本賞を受賞している。若干33歳ながら、相当のやり手だ。それになんたって、あのジェニファー・ローレンスと友達なんだぞ。一緒にイタリア旅行に行ったこともあるらしい。もう一度言う。相当のやり手だ。うらましいったらありゃしない。
そんな彼がSNLに初出演し、「ステレオタイプなんてクソ食らえ」とでも言わんばかりの人種ネタを披露してくれた。トランプ支持派を「小文字版KKK」「カジュアルな白人至上主義者」と呼び、オルタナ右翼を中心とした差別主義者たちを一刀両断にした。
しかし同時に融和を訴えることも忘れない。アジズは「トランプに投票した人すべてを悪者扱いしちゃいけない」と釘を刺す。いろんな事情があって躊躇しながらも彼に投票せざるを得なかった人もいるはずだ、と。さらに彼はこう付け加えた。「大勢の人がトランプに投票したけど、それは大勢の人がクリス・ブラウンの曲を聴くのと同じ」
元恋人のリアーナを殴ったりと素行の悪さで知られるクリス・ブラウンだが、確かに彼の音楽やダンスはキャッチーで魅力的だ。しかし彼の曲を聴いているからといって、その人が暴力を容認していることにはならない。インド系ということで数え切れないほどのステレオタイプにさらされ反発してきたアジズが言うからこそ含蓄のあるコメントだ。
中でも特に筆者の心の響いた言葉がある。
「変革は大統領からは生まれない。変革は怒れる大衆から生まれる」
クリントンの戦争を終わらせると誓ったジョージ・W・ブッシュが新たな戦争を始め、ブッシュの戦争を終わらせると誓ったバラク・オバマがまたもや新たな戦争を始めた。スローガンの「チェンジ」はどこに行ったのか。この数十年間、アメリカ国家の体質は何も変わっていない。アジズの言葉には、「政治家に頼るな。自ら行動を起こせ」という熱いメッセージがこめられているように感じられた。
このアジズ・アンサリの感動的なスピーチだが、全訳はこちらからどうぞ。
(文・まごおりしんぺい)
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