Simon Fowler & UC EASTインタビュー 元おかき工場の山本製菓での合同展、それぞれのスタンス、場所と作品

ちょっとした即興アートみたいな感じだね。

Simon - 山本製菓でやるっていう意味もあるし。いくみと、この建物で話すことで、山本製菓の建物と一緒にアートを創る感じ。

UC EAST - だから山本製菓も作品の一部って感じ。やっぱり場所がすごいから。家で制作して、ここに持ってくると、どうしても違和感出そうな感じして。ここの感覚を信じてやるほうがフィットするというか。

同時にここの雰囲気に飲まれてもあかんねんけど。変わったとこでやる意味というか。せっかくこんな変わったところでやるんやから、そういうやり方がええなと思って。普通のホワイトキューブ(白い壁に囲まれたギャラリー)なら、また別のやり方するやけど。

来週から展示やけど、2人は本当に何にも作ってないん?

UC EAST - まったく。さっきまで別の仕事のフライヤー作ってた。

Simon - おれも別の仕事してた。

展示できんの?ここ広いで。

UC EAST - なんとなくはもうあるで。

前ここで展示した時めっちゃ時間かかってたやん。

UC EAST - いや、絵を描いたのは2日間。絵はすぐ出来たけど展示方法はめっちゃ時間かかった。結局会期中ずっと展示方法をいじってたから。ここはインスタレーション的な方がおもしろいと思ってるし、その方が面白いと思ってる。

作品も大事やけど、見せ方も大事。山本製菓じゃないとできへん作品やと思うし。こないだの個展の時に新しいタッチの作品が増えたし。自分でもびっくりした。「わたし、こんな絵描くんや」って。

自分でも分からんねんけど、家でやんのとは違う。

Simonはここに泊まってるんでしょ?

UC EAST - 住んだり出来る場所ってここしかないから。

ここでやるとイマジネーションが湧いたりするの?

Simon - まあ、はじめたらね。今はゆっくり。今は西成を自転車で走ったりして、建物とか雰囲気をつかんでる。ここに来る前には、釜ヶ崎のこととか調べた。60年代からの話は、すごく興味がある。去年から大阪は3回目なんだけど、その時はPulpのおしゃれな堀江のPulpの二階に泊まった。今回は反対の場所。

UC EAST - だって、毎日ここの前を歌唄いながらチャリ乗ってるおっさん通るもん。一日一回絶対に。この間の日曜日はサザエさん歌ってた。平和な街やわ。

Simon - 昔、20年前のロンドンのハックニーに似てる。(サイモンはロンドンのハックニー出身)

Simonは、いくみの作品を見てどう思った?

Simon - 最初に観た時は熱くなった。ライブペイントだけど、いいなあと。ライブペイントってほとんどダサいから。イギリスにいると。ライブペイントっていつもおんなじ感じで。すこし偉そうな感じになっちゃうけど。けど、いくみのはきれいな動き方。そして、ノイズとめっちゃ合って。30分だったけど、1時間30分でも出来ると思う。

UC EAST - うーん。でもライブペイント…。なんて言うんやろ。ライブペイント自体はダサいもんやと思われてると感じてる。やっぱりライブペイントやってますって言うと、「ダサ」って言われるし。「ライブペイントなんて興味ない」って言われるし。けど、自分の中のライブペイントと世の中のライブペイントって全然違うし、ライブペイントの可能性はまだまだあると思ってる。

最近はこだわってやってる。この間のライブペイントみたいに、ミュージシャンのライブに合わせたり、描くモノも、紙とかキャンバス紙に描くんじゃなくて、アクリルパネルに和紙を貼ったりしたものに描くとか。こだわればこだわるほどライブペイントは面白いと思ってる。

Simon - 一人では作れないものを作れるよね。

UC EAST - 一緒にやってもらうアーティストは自分で選んでる。自分はパーティオーガナイザーじゃないから、ライブペイントでミュージシャンと一緒にやるっていう関わり方しかできんし。普通にも観たいけど、だいたい自分が呼んでる人って、ライブ観に行った時に絵が浮かぶ人で。やっぱこの人やったらライブペイントできるって思える人。

出来上がりの綺麗さよりも、音に合わせてどう動くかとか。手の流れとか結構意識してる。抑揚付けててやるようにしてる。 私も飽き性やから、来てくれてるお客さん数時間とかやっても誰もじっと見てられへん思うし。この間初めて映像化したけど、やっぱり生で観てほしいっていうのはある。現場で、現場の空気っていうのはあるし、そこを大事にしたい。

大人しくない人が集まってたもんね。

UC EAST - けどライブペイント始まったらみんな静かに観てたやん。

まあそれはいくみっていうのもあるんじゃないかな。いくみのライブペイントって、アートの世界じゃなくて、ライブっぽいし。「いくみライブペイントはじめるの?ほんじゃあ観よか」みたいな。

UC EAST - やっぱり来てるお客さん信用できるもん。観るもんは観る人らやし。おもんなかったら帰るやろうし。言うし。その辺は面倒くさいけど、それで黙って観てくれて、よかったって言ってくれたから、「やったった」って思えるし。

普通のアートのイベントだとしたら終わったら、お金とかキャリアの話の話にもなるわけやん。「この作品はどこかに応募するの?」とか「お金はどうするの」とか。

UC EAST - まあそういうのは金持ちがすることちゃう?金持ちでもないし、学歴もないし。

いくみは中学校も出てないんやんな?

UC EAST - 中学校は出てるわ!中学校は義務教育やから。だっておもんないもん。高校は16歳の時におもんなくなって辞めた。で、ライブペイントは16歳の時にはじめてる。その時からスタンスは変わってないかな。私はその時にライブペイント観たこと無いのにライブペイント始めて。

どういうこと?

UC EAST - ただライブペイントっていうものが存在していることは聞いててさ。先輩に「ライブペイントってどんなんですか?」って聞いたら、「ギャーッとやってわーっとやったらいいわ」って言われて。「そうなんだ」ってなって。 一回目のライブペイントはペンキを投げてた。

ひたすら投げて、塗って。そこからそのままのスタイルで今に至るかな。汚しまくるから最初の頃はクラブの人には嫌な顔されてた。(笑) 徳島から大阪来て初めてしたライブペイントなんて、ずっとクラブの床掃除してた。誰かにペンキをこぼされて (笑)

ライブペイントなんて、イベントの邪魔にならない所でこそっとやってみたいな感じやん。誰が観てんのみたいな。ライブペイントする方も飲みに行ったり、ダラダラして、本気でやってんの?みたいな。大阪来てからそういうの見てがっかりした。仲間が出来ると思ったのに。

…この半年くらいでいくみのスタイル変わったよね。

UC EAST - 前までの絵って「これでいいかな」みたいな、びくびくした感じやった。今の絵はスケッチブックに描いてた感じのそのままの絵。ライブペイント1年半くらいやってない時があって、その時に自分のやりたいようにやってたら、これ調子ええやんってなって。

それまでは結構かわいい感じのマトリョーシカみたいなの作ってたやん。モチーフみたいなものがあるっていうか。今は、なんかよく分からんもんな。点数付けられへんもんな。

UC EAST - だから茨の道やなって思う。てわも今の方が楽しい。自分のやりたい事をやってるし、実験したくなる。

Simon - 今回、版画のプリントスタジオにも入る予定。いくみちゃんに版画をやってもらう。昔の版画屋さんみたいに、誰かが絵を描いて、それを版画屋さんが版画を作って、プリントする。最近そういう風にコラボレーションしてて。結構昔の感じ。でもパソコンとかPhotoshopとかも使うけど。一番大事なのは触感。

UC EAST - データだけだと分からんけど、プリントでは全然違うから。観て、触ると全然ちがう。版画ってもっと違うから。

Simon - 最近版画への興味があって。何かが始まる感じがしてる。10年やってやっとここまできた。

UC EAST - 版画って絵と違って、色を足したり、引いたりするプリントする作業があるからまたいろいろ違う。

Simon - 生活とか…。版画なら50枚作って安く売れるから。お金ない人にも作品売りたいけど、お金が無かったら買えないと思うから。100枚位つくったら安くして渡せるから。

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