Jun Yokoyama

世界のシーンをリードするサウンドシステムのエンジニアが語るサウンドシステムカルチャーの本質

FEATURED  2017.03.01  Jun Yokoyama

毎年クロアチアで行われるサウンドシステムカルチャーの祭典OUTLOOK FESTIVALでは、UKをはじめとする世界各国のサウンドシステムやアーティストたちが、世界各国から集まってくる低音狂たちを熱狂させ、フードコーナー横に特設されたステージでは、機材メーカーやメディアがクリエイターやオーディエンスがよりカルチャーを深く知るためのワークショップが開催されたりもしている。

そのワークショップの一環として、オーディオメーカーのVOID ACOUSTICSの創始者であり、オーディオ・エンジニアのRog Mogaleたち、サウンドシステムエンジニアを迎えてのトークセッションが行われた。

VOID ACOUSTICSとは、UK発の世界最高峰のクラブサウンドシステム。クラブの聖地イビサ島を筆頭に、ロンドン、ベルリン、アムステルダム、モスクワ、ニューヨーク、サンフランシスコ、シカゴ、そして広州と世界各国のトップクラブにインストールされており、日本でもTAICOCLUB、ULTRAなどのフェスでその威力を発揮するクラブサウンドシステムだ。

トークセッションでは、RogやVOID ACOUSTICSとも親交の深いNeuron Pro Audioのメンバー、グラスゴーのサウンドシステムMungo's Hi-Fiのメンバーが登場し、サウンドシステムの歴史、哲学、失敗話などを語った。今回、Rogの好意により、FNMNLで特別にトークセッションの書き起こしの翻訳をシェアすることができた。

Special Thanks to Tocci (Tokyo Sound System Labratory)

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司会 - それでは、Rog、これまでどんなことに影響を受けてきたか?このサウンドシステムの世界に行き着いたプロセスを話してもらえますか?

Rog Mogale (VOID Acoustics) - わかりました。僕のバックグラウンドは、レコーディングと音楽制作で、80年代から様々なトップアーティストのアクトをプロデュースしてきて、80〜90年代はPAエンジニアのビジネスに関わったりとみんなの仕事を請け負ってきたよ。

それは会社の、仕事の良い背景作りにとても役立っていると思っているんだ。90年代後半になって感じたことは、その辺のクラブを見回すと、音はまあまあなんだけど、すべてのクラブのスピーカーが真っ黒でどこか退屈だと思ったんだ。照明でさえかっこよく未来的な表現をしていた時代なのに、誰もスピーカーをデコレーションだと考えていなかったし、スピーカーだけがどこか退屈に見えたんだ。クラブのオーナーはクラブのデコに大金を使っていたのにもかかわらず、スピーカーはただの黒い箱だったんだ。そこでクラブをかっこよく見せる必要があった。それがVOIDが生まれた理由なんだ。

僕には、VOIDの他に、DIYサウンドシステムという別な一面がある。確か90年代中頃からウェブサイトspeakerplans.com ((DIY Sound System Web Site: speakerplans.comをRogが開設した。))を始めたよ。インターネットを使って自分のサウンドシステムを作り出すプランをシェアしたんだ。当時はそんなに良い設計図もなくて、1970年代の設計アイデアとかばっかりだったんだ。もっとモダンな設計アイデアが必要だったし、いくつかの設計図を提供する必要があったんだ。そして、その時に考案された設計図には今でも使われているものもあるよ。

Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - Mungo's Hi Fi Sound Systemは、そういったフリーの設計図から2002年に生まれたんだ。Mungo'sはRogが考えていたフリーダウンロードできる設計図から生まれて、フリーパーティーをやる人たちの為、自分たちでは高額なサウンドシステムを買えない人たちに、フリーで使ってもらうことから始まったんだ。

今のVOIDとコネクションがあった、それこそ最初にやったパーティーは50×80ホーンを使ってたね。警察が毎週くるようなマンチェスターの危ないウェアハウスパーティーで使い始めたんだよね。あの時にVOIDクルーから購入したスピーカーは、Looney BinのウーファーとSTASYS SYSTEMじゃなかったかな?

このスピーカーは最近売ってしまったけれども、長い間皆んなあのサウンドにやられてたよね。僕たちもDIYのシーンから生まれて、次に音響のセミプロになっていったんだ…

Rog Mogale (VOID Acoustics) - まあここで言いたいのは、それって矛盾してない?と皆思っているんじゃないかな。一方で僕は、ハイエンドの会社(VOID)を持っていて、幸運にもお金を稼いでいる。世界中の大きなクラブやフェスティバルのビックステージにスピーカーを提供している。でも、同時にそこでDIYの設計図もウェブサイトに残しているんだ。それは確かに矛盾ではあるけど、矛盾ではないんだよね。

DIYのシステムでは、僕は絶対高い既製品を使おうとは思わない。使うべきではないとも思っている。ジーンズを自分で買いに行くのと一緒で、それはとても個人的なことで、すでに作られている一般的なものを使いたいとも思わないだろ?それらを組み合わせてマッチさせたいと思うんじゃないか?そういうものを組み合わせて自分のデザイン、自分自身の音を創るんだ。それがアップロードされるべきで、それを僕はクリエイティヴオーディオと呼んでいるんだ。それは、ただのフラットな周波数特性が欲しいわけじゃない。

クリエイティヴな自分のオリジナルのサウンドを作る事、自分たちがそれに取り組む事、それがサウンドシステムのカルチャーだと思っているんだ。だからそういう経験を皆に踏んでもらうことが大切だと僕は思っているんだ。Jerome、君はどう思っているんだい?

Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - その通りだよ、良い時間を過ごすっていう経験が鍵だよね。僕はいつもクラブでパーティーしまくってたね。でもそこには何か足りないといつも思ってた。そして、グラスゴーでDag とTom とCraigと会って2003〜4年にMungo‘s Hi Fi Sound Systemに入ることに決めたんだ。スコットランドには良いスピーカーがなかったから、DIYで作り始めたんだ。今でもそれらのスピーカーを使っているよ。Rogの設計と同じもの。同じボックスで別なドライバーで今でも使ってるけどね(笑)。

その時は、さっき言ったように良いサウンドシステムがなかったから、もっと僕たちがやっていたようなサウンドをリプロデュースできるシステムが必要だったんだ。当時から僕たちはダブやレゲエをやってた。良いサウンドシステムがなかったら、その音楽を表現することができなかったんだ。だから、とにかく良い時間を持つことが鍵なんだ。オーディエンスがサウンドでダンスして、クレイジーになって、そんな人々が周りにいることが一番大事なんだ。DagにもMungo‘sについて語ってもらうよ。

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Dag(Mungo's Hi Fi Sound System) - Rogのデザインのスピーカー設計はすごいと思うし、今でも使われているよね。誰が作っても強力なんだよね。とにかく、そういったコミュニティーが、今でも生きてるんだ。

Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - RogはVOIDの新しいプロダクトをリリースする影響力のある人だ。僕の会計士は、僕たちがそのプロダクトのすべてを毎年買っている事を嫌がっているけどね(笑)。まあとにかくこうして、毎年ここOUTLOOK(クロアチアのプーラ)に来てTHE VOID、GARDENでサウンドシステムを担当してるけど、こんな事は多くの周りのPA会社がやってるってわけじゃない。それをやるには、スタッフにお金を払わきゃならないし、、、毎年同じシステムを構築するのは簡単だよ。ただ、ここに来る人々の顔を見ると『Wow!今年はなんか違うな、ここで何が起きてるんだ』って顔をするし、それを体験してもらうのがポイントなんだ。

OUTLOOKがすごいのは、ここに出てるすべてのサウンドシステムは独特で、それぞれが独特な作りをしていて、ここにあるスピーカーで悪いサウンドシステムなんて無いんだよ。

ビーチにあるDub Smugglers Sound SystemはRogにデザインされたスピーカーにインスパイアされて作られたんだ。けど、Rogが考案したスクープなんて知らなかったフィンランド人のヤツが作ってて、基本的に彼がやったことは、Rogと同じプランで同じフォルムでデザインしたんだよね。彼はレゲエが好きで、結局マンチェスターに来て、チューニングし始めたんだけど、最終的に俺たちと全く違う音を作り出したんだ。その音はスーパースペシャルで、ぶっ飛んで、朝っぱらの俺らの目を覚ましたんだよ、、、。

システムを作るには何千ポンドって金がかかる。それは楽器だからね。そして、それをその音楽の為にチューニングするんだ。俺たちは、その音に順応しなきゃならないんだよ。音楽をパーフェクトに表現しなきゃいけないし、パーティーそのものを最高にすることを常に意識しなきゃならない。それがサウンドシステムカルチャーの鍵なんだよ。ジャマイカの時代でさえも、みんな自分達のボックスで自分たちの音を作り出して、他のパーティーやヴェニューに行ったら、ここは「違うサウンド」って体験させるってことが大事だったんだ。

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