HyperJuice & Habanero Posseインタビュー - 日本のベースミュージックシーンの臨界点と彼らに必要な「アティテュード」
東京・渋谷を中心に活動するプロデューサーデュオのHyperJuiceは8月Habanero PosseとJ-REXXXという強力な2組を迎えた新曲"Fiyahhhh"をリリースし、その勢いそのままに明日、9/25(日)に対バンライブイベント「HYPE ME vol.1」をCircus Tokyoで開催する。
HyperJuiceが対バンアーティストとしてHabanero Posseを選んだ理由、彼らのコラボレーション相手のHabanero Posseはそれをどう考えるか、なぜこのタイミングでコラボレーションなのか、なぜライブセットに挑むのか、ということを2組に聞いた。
Interview & Photography by Jun Yokoyama
もうHyperJuiceとHabanero Posseの2組はイベントに向けて他のメディアでインタビュー受けてると思いますが、ここで同じことを聞いてもおもしろくないので、どんなことをインタビューでお話したか教えてください。
Gunhead (Habanero Posse) - コラボレーションの理由やテーマ、どうしてゲストボーカルをJ-REXXXにしたんですか?とか。
Hara (HyperJuice) - 制作してみてどうでしたか、とか。今後コラボしてみたいアーティストいますか?とか。
それいい質問ですね。それを聞かせてもらってもいいですか。
Hara - もうこのインタビューで2回やってますよ。(笑)
じゃあダメか…。どういうことをお話ししたいんですか?本当は。
Gunhead - それはインタビューアーの横山さんの腕じゃないですか?(笑)
単刀直入に聞く腕前を見せてるんですよ。(笑) とりあえずジャブ代わりではないですが、お互いがお互いに聞きたいことを聞くっていうのはどうでしょう?
Gunhead - 今、貯金いくらあるの?
Hara - 全然貯金ないですよ。奨学金を返してますから。引っ越しもするんで。
お金無いときは、じゃあCD-Rを作って売るとかしてるんですか?
BINGO (Habanero Posse) - それ、いつの時代の話だよ。(笑)
この2組はベースミュージックのジャンルの中で活動してて、しかも同じくらいのタイミングで出て来た2組ですよね。仲間でありライバル関係と言うか。その2組がわざわざこのタイミングで一緒に曲をリリースするというのは何らかのビジョンや目的があるんじゃないか、と思ってるんですが。
Hara - そもそものコラボの経緯としては、HyperJuiceとしてイベントをやりたかったんです。クラブ/ダンスミュージックのアーティストが対バンをするようなイベントを。
クラブやDJの一般的なクラブナイトのようなイベントがある一方で、EDMカルチャーやロックフェスなどは、アーティストがショーとしてライブを観せるっていうイベントがある。そういう時代に変わりつつあるな、と考えているんです。
Fazerock (HyperJuice) - クラブイベントでもDJとショーケースの垣根が低くなってきたもんね。
Hara - そのバンドのようなショウケースをあくまでもクラブで、ダンス・ミュージックのアーティストとしてやってみたいな、と思ったんです。で、コラボ作品を作った上で、2組のアーティストのバンドのショーケースをやりたい、と。
Gunhead - そういうことをインタビューで知りました。
そうなんですね。 (笑)
Gunhead - イベントをやるっていうことは知ってたんですけど。まったく準備してない。使わないコントローラーとかをわざわざいっぱい持っていこうかな。(笑)
Hara - 音楽自体をお客さんに「構えて」観てもらいたくて。だからあえてライブっぽいツーマンっていう言い方でライブをしようと思いました。
Gunhead - クラブのイベントも海外の有名アーティストと地元のDJたくさん集めました、っていうイベントが多いからね。
Fazerock - 今はサブフロアゲストとかありますからね。
Hara - その真逆のことをしてみたいと思って。トライすることが大事。
Hara - そういうクラブ事情みたいなところに一石を投じたかったっていうのもありますね。Habanero Posseを選んだのは、トラックメイクの面でスムースに行くだろうという期待と、こういうことを言っても、温かく理解してくれるかなと思ったので。(笑) 信頼関係みたいなものがあるから。
海外のEDMやベース系のDJはみんな自分で曲を作ってて、その曲をいかにDJプレイの時にライブ感あふれる感じでプレイできるか、っていう勝負になってると思う。しかも、デジタル配信の時代だからDJは、たくさん曲を持っていて、あの曲がクラブで!みたいな感動も少なくなった。海外のDJも毎週来るもんね。東京や大阪だと。
Hara - そこで自分たちの価値を高めないとって感じだよね。
Hara君が言ったように、ライブに来るお客さんとクラブに来るお客さんって全然違うよね。
Gunhead - 目的が違いますよね。ライブに来るお客さんはライブを観て、物販を買うっていうのが楽しみだし。クラブは酒、性じゃないですか。優先順位が違うんでしょうね。
だからクラブ・ミュージック界の人がそういうことにチャレンジするっていうのは、なんとなく健全かなって思ったりするんですけどね。
Hara - 自分たちも色んな所のイベントやフェスで出演して、フィールドを広げたいっていうのもありますね。
具体的に2人はライブバージョンのセットだとそれぞれ何を担当してる?
Hara - ぼくらは歌ったりするわけじゃないんですけど、Fazeがベースを弾いたり。
Fazerock - シンセ、サンプラーを担当してます。
Hara - ぼくがメインの大まかな流れをDJで。これをCDJやミキサーを使わずにやったら、もっとライブ感出ると思うんですけど、そこはCDJやミキサーにこだわって、クラブ感を出す感じで。
そのクラブとライブの良いところをライブ/DJに落とし込んで、風通しをよくしよう、って感じなんだね。
Hara - HyperJuiceは事務所とレーベルに入ったんで、リリースとリリースパーティの日程が先に決まってるんですよ。だから制作やパーティのことを走りながら考えてやってる感じですね。
そこでHabanero Posseとなら、こんな走りながらやるようなペースでも一緒に考えながら出来るんじゃないか、汲み取ってくれるんじゃないか、と思って声を掛けました。勝手ながら。
けど「そんなの自分たちの事なんだから、自分たちで勝手にしろよ」とはならなかったんですか?
Gunhead - 話を聞いた時に何を意図してるかは想像は付いたので、じゃあこっちはこういう風に動こうという感じでOKを出しましたね。
BINGO - 2週間に一回のペースでは会ってるから、何を考えてるかは分かるんだよね。
Gunhead - 後は歌い手とかをどう入れるかなどのアドバイス的な役割を担うことになるだろうなとは思っていましたね。
Hara - 本当に2人には頭上がらないっすね。(笑) 本当に自分たちが持っていない部分を補ってくれました。
Gunhead - 企画書を見たときには「今までのHyper Juiceのイメージから飛び抜けられてない」と思ったんですよ。一緒にやるなら今までやったことないことや、今までアプローチしたことない方向に行けたらと考えましたね。
なおかつ歌い手のクオリティが高いアーティストというのは条件として譲れないな、と。友達が等身大で歌ってくれるというより、もう少し作品として一段上に引っ張ってくれるアーティストにしようと考えてまいたね。締め切りギリギリでしたけど、そのへんは譲りたくないというのがありましたから。
今回の作品のテーマは「アティテュード」なんですけど、自分が音楽をやってるぞっていう姿勢を示したかったんですよね。個人的にも。
今は「歌ってみました」とか素人の作品でも良いものはたくさんあるんですけど、表現が氾濫している時代だと思うんですよ。ニコニコ動画なんかの作品にもイイもの結構あるでしょ。だからこそ「ちゃんとしたものを作らないといけない」って思うし。ここらへんで、自分たちが自信持って出せるものを作らないとねっていう。
この2組っていわゆる日本の「ベースミュージックシーン」のベテランというか、有名な2組なわけじゃないですか。「日本のベースミュージック」っていう言葉には良い意味でも悪い意味もあると思うのですが。
Gunhead - わかりますよ。
もうそろそろ「日本のベースミュージックシーン」という枠組みの中で、この2組はもうやる事ないと思うし、その枠組みの中でずっとやっていくのはしんどいと思うんですよね。
Gunhead - 超わかりますよ。ぼくらはその界隈の中で、特に外に出ていくタイプの人間なんですよ。他のジャンルのアーティストとコラボしたり、向こうのプロジェクトに入れてもらったりするんですよね。出てかないと広がらないんですよね。
BINGO - そうそう。
外に出ないと実力って分からないですもんね。
Gunhead - 外には想像を超えるモンスターがたくさんいますからね。
けど、例えば日本から世界に出て活躍しているアーティストで言うと、JukeのDJ Fulltonoさんみたいな、一つの事を突き詰めていくタイプの人もいるじゃないですか。どちらもありえるんですけどね。そういう人たちには大きな影響を受けてるし。ぼくたちはいろいろ外と協力して動くっていうやり方があってるんですよね。
だからベースミュージックのアーティストって言われるとすごく違和感を感じるんですよね。
ベースミュージックって便利な言葉ですからね。どの音楽でもベースや低音は鳴ってて、今やその低音がクラブサウンドの流行の特徴にもなってきました。メディアの側からするとすごく便利な言葉ですけど、思考を停止させる言葉だと思ってるんですよね。だからこそどんどん外に出て特徴のあるミュージシャンになって、J-POPに食い込んでいってほしいと思ってるんですけど。
Hara - 外に出ると席はいっぱいあるって感じはするんですよね。しかも自分でどの席に座るかっていうのは決めることができるんですよね。小さいシーンにいると、自分の席っていうのはずっと同じで、譲らないといけないし。
Gunhead - どんぐりの背比べになっちゃうんですよね。
BINGO - 今は、初めから仲間も居て、同じことにハマってる人が周りにたくさんいる。おっさんの言い方になるけど、昔は一人でどこか遊びに行って、やっと同じ趣味の人と繋がってっていう感じだった。今はそうじゃないよね。良いか悪いかは置いておいて。
Gunhead - いい意味で日本のベースミュージックを捉えるとしたら「勘違いがあったから新しいものが生まれた」のかもしれないんですよね。けど、今は「ベースミュージック」って言葉がスムースになった分、とんでもなく上手いやつとかスキル持ったやつが出てきたりして、おもしろいことにはなってると思うんですけど、ひんまがった人が出て来なくなってきてるのかも、とは思いますね。
BINGO - 想定外みたいなやつは出てきにくいのかもね。
Gunhead - ぼくらはただのひねくれ者なんですよ。(笑)