深瀬昌久の写真集 『家族』の新装版を記念した展覧会が開催

自分自身の家族やカラス、猫といった題材をテーマに作品を発表し、2012年に逝去した写真家の深瀬昌久。1991年にInter Press Corporationより刊行された写真集『家族』の新装版が、イギリスの出版社MACKより刊行される。

深瀬が生前に手がけた最後の1冊でもあった『家族』。1971年に深瀬が妻の洋子と共に故郷の北海道北部の美深町に里帰りをした際に、弟と妹に家族ができたことですっかり大所帯に成長した一家と再開した深瀬は、彼らを写真館の写場(撮影スタジオ)に集めて家族の記念写真を撮影した。

しかしこの家族写真に深瀬は、腰巻きひとつを身につけた半裸姿の妻を家族の中に投入。この異様な家族写真はその後、妻だけでなく様々な女性モデル達を迎え入れては深瀬の手によって撮影が継続された。定点撮影されることによって家族の年々の変化が精密に確かめられ、それは一家族の歴史の断片を物語る記録として成立するが、その一方では随所に深瀬が仕込んだ虚構が混じる。こうして出来上がった奇妙な家族写真について深瀬が「三代目くずれである私の、パロディー」と言い表していることからも分かるように、家族写真に相応しくない要素を混入させることによって伝統的な家族写真の形式を皮肉ることも目的のひとつとなっている。

深瀬家を巡る撮影は5年にわたって続けられた後に中断されるが、1985年に深瀬の父・助造の年老いた姿がきっかけとなって再び開始された。その2年後に迎えた父の葬儀の日にも撮影され、1989年に深瀬写真館が廃業を迎えた日、すなわち家族四散を迎えた日を最後に完結。当初こそ伝統的な家族写真のパロディとして軽快に撮影が開始された本作は20年近く月日をかけて撮影されることによって、結果的には一家の栄枯盛衰を残酷なほど克明に記録するものに仕上がった。

新装版の出版を記念して、『家族』のヴィンテージプリントによる特別展示をタカ・イシイギャラリー 東京 ビューイングルーム にて3日間限定で開催、同展覧会開催に伴いオランダから深瀬昌久アーカイブス創設者兼ディレクターのトモ・コスガが来日し、『家族』に関するプレゼンテーションを初日夜に行う。

Info

深瀬昌久「家族」 刊行記念 特別展
会期:2019年10月16日(水) - 18日(金)
会場:Taka Ishii Gallery Tokyo Viewing Room (complex665 1F)
〒106-0032 東京都港区六本木6-5-24 1F
時間:11:00 - 20:00
休廊日:会期中無休
主催:Masahisa Fukase Archives, MACK, twelvebooks
協力:Taka Ishii Gallery

詳細:https://www.takaishiigallery.com/jp/news/

- - - - - -
プレゼンテーション概要

深瀬昌久「家族」刊行記念 トモ・コスガ(深瀬昌久アーカイブス創設者兼ディレクター)プレゼンテーション
日程:2019年10月16日(水)
会場:Taka Ishii Gallery Tokyo Viewing Room (complex665 1F)
〒106-0032 東京都港区六本木6-5-24 1F
時間:19:00 - 20:00
ゲスト:トモ・コスガ(深瀬昌久アーカイブス創設者兼ディレクター)
料金:1,000円(税込)
定員:45名 (着席35席 / 立見10席)
主催:Masahisa Fukase Archives, MACK, twelvebooks
協力:Taka Ishii Gallery

お申し込み:https://family-masahisa-fukase-presentation.peatix.com

タイトル:家族
著者:深瀬 昌久

[通常版]
定価:7,800円(税別)
判型:96ページ / ハードカバー / 310 x 230 mm / モノクロ
テキスト:英語 / 日本語
発行:2019年9月
出版社:MACK
ISBN:978-1-912339-57-0
書籍詳細:https://www.twelve-books.com/products/family-by-masahisa-fukase

[特装版]
定価:72,000円(税別)
深瀬昌久アーカイブスによる落款印 / ナンバリング入りプリント付
プリント仕様
印刷:コロタイププリント (制作:便利堂)
用紙サイズ:260 x 170 mm / 画像サイズ: 199 x 149 mm
判型:96ページ / スリップケース入りハードカバー / 310 x 230 mm / モノクロ
発行部数:150部
テキスト:英語 / 日本語
発行:2019年9月
出版社:MACK
ISBN:978-1-912339-57-0SE
書籍詳細:https://www.twelve-books.com/products/family-by-masahisa-fukase-special-edition

RELATED

Jin Doggに1年間密着したYuji Kanekoによる写真展がBOOKMARCで開催

関西シーンを代表するラッパーのJin Doggに写真家のYuji Kanekoが約1年間密着し、撮影した作品を展示する写真展が、原宿のBOOKMARCで4/8(土)から開催される。

ヒップホッププロデューサーをテーマにしたCayo Imaedaの写真展がHELLRAZORのギャラリーで開催中

福岡を拠点に活動するフォトグラファー・DJのCayo Imaedaによる写真展『DAILY OPERATION』が、東京・三軒茶屋のスケートブランドHELLRAZORが運営するギャラリーRAZEで開催中だ。

山谷佑介が3年ぶりの写真集『ONSEN I 』を刊行 | 整備されていない野湯にフォーカス

写真家の山谷佑介が3年ぶりの写真集『ONSEN I』をflotsam booksから出版する。

MOST POPULAR

ヘイトスピーチや嫌がらせを発見した時にするべき4つのこと

公共の場で嫌がらせを受けている人を見つけた時はこのように行動しようというイラスト付きのリストを投稿され、多くの人にシェアされている。

テキサスで男性が鋼鉄のフェンスとセックスし逮捕

18日、米テキサス州の32歳の男が鋼鉄のフェンスと性行為を行い、告訴された。法廷に現れず、現在逃亡中とのこと。

ヴェネチアのビエンナーレに出展された「世界東京化計画」とは?世界の有名都市が東京に変化する映像作品

6つの都市が「東京のようなアーバンランドスケープになってしまったら?」というテーマ制作された「世界東京化計画」というビデオ作品はヴェネチア・アーキテクチャー・ビエンナーレで展示されている。