Ena & Ryo Murakami インタビュー | ベルリンのフェスBerlin AtonalとサテライトイベントNew Assembly Tokyo
ドイツ・ベルリンにある発電所跡地のKraftwerk、そしてClub Tresor、OHMにて毎年夏に開催されているフェス「Berlin Atonal」が初のサテライト・イベント「New Assembly Tokyo」を2017年2月17〜19日の3日間、東京で開催する。
Berlin Atonalは1982年にベルリンでスタートし、1990年にベルリンの壁崩壊と共に休止していたが、2013年にKraftwerkに場所を移し復活。2013年以降毎年、エクスペリメンタル/エレクトロニック・ミュージックを革新的なプレゼンテーションで紹介し続けている。
昨年はエレクトロニック・ダンス・ミュージックのアムステルダムの「DEKMANTEL」フェスティバルやカナダの電子音楽とヴィジュアル・アートのフェス「MUTEK」などが日本に上陸。海外のフェスが日本でパーティを行うことも珍しくはなくなったが、Berlin Atonalとは一体どのようなフェスティバルなのだろうか?
今回のインタビューでは、Berlin Atonalに出演したENA(2015、2016年)とRyo Murakami(2015年)を迎えて、Berlin Atonalに出演した時のことを回顧してもらった。さらに、今回のBerlin AtonalのサテライトイベントNew Assembly Tokyoに出演する2人が抱く期待や正直な不安も包み隠さず話してくれた。Ryo MurakamiとEna + Rashad Beckerは2月19日(日)に渋谷Contactに出演にする。
Interview and Photograpy by Jun Yokoyama
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私も撮影で参加させていただいた2015年のBerlin AtonalにRyo MurakamiさんとEnaさんは出演されていましたよね。まず、どのような形でブッキングは来たのですか?
Ena - 2人には別でブッキングの依頼が来ましたよね?
Ryo Murakami - Enaくんもメールだよね?
Ena - もともとBerlin Atonalをオーガナイズしているローレンスの仲間がオーガナイズしていたベルリンであったパーティに2013年にブッキングされました。
2010年くらい、自分が初めてベルリンに行った時からそのBerlin Atonalのオーガナイザーのローレンスのことは知ってたけど、その時はAtonalをやるやつってことは知らずに。本当に自然にパーティの周りにいる人って感じでした。
自分の場合は、2014年にセカンド・アルバム『Binaural』をリリースして、ヨーロッパでもその反応がよかったから、その流れっちゃ流れで2015年のBerlin Atonalに出演したって感じかな。
Ryoさんはどうですか?
Ryo Murakami - おれは突然メールが来たんだよね。実はそのメールを見落としそうだった。(笑) いきなりGmailにメールが入ってきて。Berlin Atonalのことはまったく知らなかった。
Ena - だからRyoさんが出演するかどうか決める前に話をしましたよね?「これどんなフェスなんだろう」って。(笑)
お二人ともBerlin Atonalのことは良くご存知なかったんですか?
Ryo Murakami - Berlin Atonalの会場であるKraftwerkっていう会場のことは知ってました。カッコイイなって思って、ウェブサイトとかちらちら見てたんだけど。けど、ブッキングのメールが来た時は「Atonal、、、。知らんなぁ」って。(笑) で調べたら会場がそこだった。
Ena - 2015年の段階なんてBerlin Atonalに対してみんなそんな認識ですよね?
Ryo Murakami - 少なくともおれは知らなかったね。
いつぐらいにブッキングの連絡がくるんですか?
Ryo Murakami - 半年くらいだったかな。
Ena - おれもそれくらいだな。Ryoさんにはどうしてブッキングが来たとか聞いた?
Ryo Murakami - その話してないわ。理由は聞いていない。(笑)
Ryoさんも2015年の夏にアルバムをリリースしましたよね?
Ryo Murakami - けどアルバムは2013年だし。セカンドが出るちょうど前。Berlin Atonalに出演してヨーロッパにいる夏のタイミングでリリースしたんだよね。
Berlin Atonalって何のイベントなんですかね?自分もその現場にいたのですが、表現するのが難しくて。(笑) 行ったから、感じたことはたくさんあるんですけど、カテゴライズできないというか。
Ryo Murakami - Kraftwerkっていう場所もそうだけどブッキングはおもしろいよね。
何を感じましたか?他のフェスやイベントとはどう違いますか?
Ryo Murakami - そういう大きい所で、自分たちがメインステージで出演っていうのはなかなかないでしょう?2016年のBerlinl Atonalもそうだったと思うんだけど、メインステージでやるような人ではない人がメインでブッキングされてる。2015年のメインはFaustとかメインになりそうな人がメインでやってたよね。
Kraftwerkという大きな空間で出演するということで、特別な準備をして望みましたか?
Ena - 普段通りだけどね。おれは。音の面では。
Ryo Murakami - リハーサルを終えて、他の出演者の様子や会場の雰囲気を見て、音を変えたね。リズムを抜いてやったね。おれの感覚だとリズムを抜いたほうが映えるんじゃないかと思って。Kraftwerkの会場内は単純に反響するからね。
Ena - それは行ってからしか分からないことですよね。
Ryo Murakami - 想像しようにもできないし。サウンドチェックして、自分の前にやってたアーティストの人達のショーを見て、空気を感じて、考えを変えましたね。あの反響音はいいですよね。気持ちいいですよね。反響音が長いし。
ENA - 味方につけることができれば相当いいよね。
Ryo Murakami - きもちいよね。あそこまでガランしてると。
Ena - あれだけの建物ってのは、なかなかないですよね。
野外イベントともどんな種類のクラブとも違いますもんね。
Ena - ぼくは想像した範囲内でやろうと。いつも通りやろうと思って。
Enaさんはベルリンやヨーロッパに1年のうち数ヶ月くらいは滞在していますよね。Enaさんは、Berlin Atonalはベルリンのシーンの中で、Berghainとかいろんなクラブがある中で、どんな存在なんですか?
Ena - Berlin Atonalはわかりやすくて、レコードストア/レーベルのHardwaxとかBasic Channelの流れの、現在進行的なものだと思う。Berlin Atonalのオーガナイザーの人脈がまずそうだから。もちろんBasic ChannelのMoritz von Oswaldも出演するし、Rashad Becker(サウンド・エンジニア/アーティスト)も出るし、いわゆるその辺の人たちは出るから。現在のBasic Channnelの流れと言ってもいいよね。Hard Waxの事を追っている人たちっていうのはベルリンにたくさんいて、そこには集まってくるよね。
RyoさんはBerlin Atonalにはどのようなイメージを持って臨んだんですか?
Ryo Murakami - 自分はそんな頻繁にベルリンに行くわけでもないし、想像つかないよね。ベルリンの中でBerlin Atonalがどんな存在なのかとかもわからないし。歴史とか人脈とか聞くとなんとなくって感じはしたけど。
Ena - 行くまではわかんないよね。2015年の段階じゃなんも分かんなかったっすよね?行ってみてあーっていう。
Ryo Murakami - 未知の世界だったよね。
2年も経つと未知のフェスが日本にやってくるってことも起るんですね。
Ena - 日本でのBerlin Atonalのサテライト・イベントの話をすると、あの建物抜きでどうスペシャルな感じになるかっていうのは、なかなかチャレンジだよね。
Ryo Murakami - そこが難しいよね。
Berlin Atonalっていうと、やはりあの建物が空間的にも音響的にも特徴ありますもんね。
Ena - 現地でやるスペシャル感っていうのを、違う場所に持って来るのは難しいなって思いますよね。単純に場所が特別なものだし。
Ryo Murakami - クラフトワークのステージに登る階段が。感動するもんな。
海外の人がゲストで来ただけのイベントになってしまうってというのは懸念しますよね。けど、Berlin AtonalにとってKraftwerkっていう場所はとても大事な要素なんですね。
Ryo Murakami - やっぱり建物が雰囲気作るし。そこの場所で流れる音楽っていうのはそれだけで聴こえ方も変わるし。インパクトはとてもあると思うよ。
Ena - 去年出演した時にオーガナイザーと話して、場所のスペシャル感っていうのは意識してると思ってるみたい。世界探してもああいう場所は無いからね。またベルグハインとも違うし。サイズ的にもベルグハインは小さいし。
Berlin Atonalに出演してから、何か変わりましたか?ブッキングやコラボレーション、また自分の制作など。
Ena - 新規のブッキングはほとんどBerlin Atonal繋がりからですよ。あそこから増えましたよ。
色んな人が来て見てるってことなんですか?
Ena - ベルリンのど真ん中だから、色んな人がふらっと来てる人が多いんですよね。
Ryo Murakami - 2016年の自分のヨーロッパツアーはほとんどBerlin Atonalで自分のショーを見てっていう人だったな。ベルギーのBozar Festival 2016も、ベネチア国際現代音楽祭もそうだし。
Ena - おれもそんな感じですよ。Berlin Atonalに出演するってのはやっぱりでかいです。2015年の時点だとBerlin Atonalのようなブッキングをするフェスは、ポーランドのUNSOUNDくらいしかなくて。次の時代のブッキングって感じだったんだよね。だから2015年のBerlin Atonalはすごく注目されたなって今は思う。今までのフェスとはちょっと違うフェス。
Ryo Murakami - そういうブッキングのフェスって、2012年くらいから増えたんだと思うんだよね。UNSOUNDも。[1]UNSOUNDは2006年に第1回目を開催。2010年より本格的にNYやロンドンでも開催するニューミュージックが主体のフェス。その中で言うとBerlin Atonalは最近の部類ではあるとは思うんだけど。その流れを加速させたことは間違いない。
Ena - ざっくりしたくくりになっちゃうけど、raster-noton系[2]サウンド、アート、デザイン、科学が交差するドイツのテクノ・レーベル。グリッチやノイズ等を素材にしたテクノが特徴のイベントってずっとあったじゃないですか。けどBerlin Atonalにはラスターノートン系のアーティストってブッキングされてないじゃないですか。ちょっとニュースクール感がBerlin Atonalにはあるというか。IDMやアカデミック感なものとはちょっと違うというか。
Ryo Murakami - Berlin Atonalはある種の人には「はいいじゃん」っていうブッキングするよね。
Ena - それぞれの印象があると思うんだけど、おれは個人的にはMUTEKやラスターノートンっていうのはアカデミックでハイテク感っていうイメージがあるんだけど、Berlin Atonalっていうのはハイテク感がないんだよね。エクスペリメンタルっていうのは今まで全部アカデミックだったから。もちろんノイズみたいなのもあったけど。Berlin Atonalはアカデミック感を排除してるような。人によっては土臭いく感じるかもね。そこにノイズのアーティストも範疇に入ってるというか。若干ダイレクションが違うよね。
評論家とかアカデミックなトーク、映像作品の上映もありましたけど、それは全面に推してないですもんね。アカデミックな形っていうプレゼンテーション感も出してないのかなと感じました。
ヨーロッパのフェスや、イベントに対してBerlin Atonalはどのような影響を与えたと考えますか?