【INTERVIEW】デリック・メイ、トランプ大統領、フランチェスコ・トリスターノの新作、音楽ビジネスについて語る
デトロイト出身のプロデューサー/DJで、デトロイト・テクノの名を世界中に知らしめたデリック・メイは、53歳の現在でも精力的に世界中をDJでまわり、自身のレーベルTransmatから昨年はHIROSHI WATANABE『MULTIVERSE』、Francesco Tristano『Surface Tension』と2枚のフルアルバムをリリースした。
今年1月の初旬デリック・メイは札幌、東京、熊本、福岡、大阪、名古屋をツアー。彼がデトロイトに帰る直前、落ち着いて話せる時間が少しあるということでランチとお茶に招かれた。
インタビュー前デリック・メイに「今日はせっかくの昼下がり、休みだからプロモーション用のインタビューようなものではなく、ランチと珈琲でも飲みながらどうだ?」と提案すると「I Like It」と一気にデリック・メイがご機嫌になった時のことは忘れない。忙しいツアーを終えて、日本でゆっくりする時間は彼にとって大切な時間のようだ。
インタビュー(ランチとお茶)は赤坂のホテル周辺で行った。途中娘にプレゼントとして買う予定のチェキをビッグカメラで物色するなどの時間を挟み、短い時間ながら政治の事や音楽のことを話してくれた。
Interview and Photo by Jun Yokoyama
---
日本ツアーはどうだった?
デリック・メイ - よかったよ。いつも日本は最高だよ。おい、このレコーダーはZoomじゃないか。Zoomは最高だ。ゴジラみたいだな。グゥぉおおー。ギドラ~ギドラ~~!(笑)
ツアーだ、ツアーは大変だよ。簡単じゃない。街から街へ、移動が大変だよ。新幹線から新幹線、ホテル、3、4時間かそれだけ寝て、また移動だ。プレイもしっかりしなきゃいけないし。けど、日本のクラブのサウンドシステムも最高だし、クラブのオーナーはみんなファンタスティック。オーディエンスももちろん最高だよ。けど、ツアーは大変だ。寒かったり暑かったりするから。タフだよ。
熊本はクラウドファンディングで開催されたイベントだったそうですね。
デリック・メイ - 熊本は前にも行ったことがあってね。今回が2回目だったんだけど、今回もよかったよ。2年前の夏かな。素晴らしい人たちだった。今回も人々とコミュニティから感謝とリスペクトの気持ちをもらったよ。名古屋も印象的だったな。雪が降ってたよ。
そうそうトランプ。おれは本当に心配しているんだ。
デトロイトのあるミシガン州は最後までヒラリーと接戦を見せて、最終的にトランプが勝ったね。
デリック・メイ - ドナルド・トランプが大統領になったということは、世界中の人に影響を与えるんだ。けどアメリカ人はそれを理解していない。そのダイナミクスは、アメリカだけじゃなくて、このクソでかい世界にまで影響するんだよ。それをアメリカ人をわかってない。「Make America Great Again」は「Fuck the World」と同じだよ。
トランプが言っていることや、やっていることっていうのは本当に危険だ。トランプの周りにいるやつも同じだよ。彼らは本当に恐ろしいよ。アメリカは日本を軍事的に守ってたけど、トランプになったら「もう知らない、勝手にやってくれ。自分で守れ」ってな。今までバランスを取ってきたのをむちゃくちゃにしようとしてる。
選挙の後、大規模な抗議が起きていましたね。
デリック・メイ - アーティスト、ミュージシャン、女性権利団体、人権団体、一般の人さまざまな人がプロテストに参加した。2000万人が路上に抗議をしたけど、政治家はコニャックを飲みながらシガーを吸って笑ってるよ。もうこうなったら独裁みたいなものだよ。
トランプのTwitterはクレイジーだけどな。(トランプのマネをしながら)「Sad」って。
L.L BEANの創業者がトランプを支援する政治団体に献金をして、トランプが支持をツイートしていたね。そこから不買運動が始まったりも。
デリック・メイ - 最後にL.L.BEANを買ったのは高校の時だな。教えてくれてありがとう。(笑)
さっきも言ったけどトランプ大統領は人々全員に何かしらの影響がある。おれにも、12歳の娘にも、君にも、社会環境に、現代文明にインパクトを与える。これから何が起るかは分からない。メキシカン、スパニッシュ、シリア人難民はみんな怯えている。イラクでロシアはめちゃくちゃしていて、現地の人は国連やアメリカに頼るしかないのに、トランプはプーチンの肩をもっている。"Fuck you refugees"って感じのメッセージが難民や現地の人に届いていると思うと、恐ろしいよ。
---
約20年ぶりミュージシャンとして参加したフランチェスコ・トリスターノの新作『Surface Tension』について聴かせてほしい。
デリック・メイ - 昨年リリースされたFrancesco Tristanoのアルバムにミュージシャンとして参加したんだ。ミックスはフランチェスコが全部やったよ。そうだ、1曲目"サカモト"を坂本龍一に聴かせてほしい。
昨年坂本龍一はアルバムの制作をしていたんじゃないかな?
デリック・メイ - これはぜひ坂本龍一に聴かせたいな。
デリック・メイ - そう、これが新しいフランチェスコ・トリスターノのアルバムだ。
最近、CDというフォーマットが売れないのにはわけがあるんだ。つまり、このCDというプロダクトが何なのかが若い世代の人にはどんどん分からなくなっている。AppleはCDドライブを廃止した。けどフォーマットはどうであれ、音楽がどのような経験をさせてくれるということが伝われば、フォーマットは問題じゃなくなる。USBでもいいんだよ。
今回の日本ツアーではCDなどのグッズを販売しなかったんだけど、次回はTransmatのTシャツや、サインしたCDを販売をしたいと思っている。みんな音楽やそういうことを求めているだろう。
フランチェスコのアルバムのジャケットをどうするかは悩んだ。けど、フランチェスコの顔をジャケットに載せようって彼を説得したんだ。彼はアーティストだから違うアイディアを持っていたんだけど、みんなに彼の顔を知ってもらいたかったから説得したよ。
アルバムのアートワークの中にはおれとフランチェスコがキーボードを弾いている写真もあるんだけど、これは実は俺が撮ったんだ。
昨年はレーベルTransmatからHIROSHI WATANABEとフランチェスコ・トリスターノの2枚のフルアルバムをリリースをした。
プロモーションをがんばったし、一緒にやってくれる仲間のお陰もあって、多くの人が聴いてくれてみんな驚いてくれたよ。けど、ここ日本でCDを売るのは難しいなと感じているよ。そうだ動画を撮ろう。それをインタビューに載せよう!これが日本のみんなへのDerrick Mayからのメッセージだ。
デリック・メイからのメッセージ pic.twitter.com/GYBmlv0YV8
— Jun Yokoyama (@yokoching) 2017年2月12日
これがフランチェスコ・トリスターノのアルバムだ。これは絶対に手にした方がいい。Transmatのプロジェクトだ。中には素敵なアートワークもあるし、この中にはCDも入ってる!CDの存在なんて忘れちゃった人もいるかもしれないけど。すごいー!すぐ手に入れて。ありがとうございます。
---
リリース・インフォ
フランチェスコ・トリスターノ ー 『サーフェス テンション(ジャパン スペシャル エディション)』
http://www.umaa.net/what/surfacetension.html
デリック・メイが20年ぶりに制作参加するフランチェスコ・トリスターノの最高傑作!
今年レーベル設立30周年を迎えた”トランスマット”から、フランチェスコ・トリスターノが新作+ライブコンセプトを発表。音楽、照明、建築学とデザインをミニマリズムで描いたコンセプトプロジェクト。クラフトワーク、YMOやPファンク同様に音楽シーンに革新を起こしたデリック・メイ(トランスマット主宰)がフィーチャーゲストとして参加。20年以上に渡りオリジナル作品を発表していなかったデリック曰く、「僕がこの作品を制作することを決めた理由は、フランチェスコは僕が持ってない才能を持つ生粋のミュージシャンだからだ」。
またフランチェスコ本人は、「デリックはスタジオで僕のシンセのコレクションを見た瞬間、不思議の国のアリスに潜り込んだみたいに興奮した」と語る。二人が敬愛する日本のテクノのイノヴェイターであるYMO・坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」(カヴァーVer.)を特別収録。
2016年11月23日リリース
UMA-1089
価格 ¥2,380+税
紙ジャケ仕様・8Pブックレット
解説:小野島大
※日本盤限定ボーナストラック3曲収録
U/M/A/A Store: http://store.umaa.net/items/4487213
Amazon: http://amzn.asia/0jTGQQP
iTunes: https://itunes.apple.com/jp/album/surface-tension-japan-special/id1180857060
収録内容
1 Sakamoto: Merry Christmas Mr. Lawrence (Francesco Tristano Rework)
2 The Mentor featuring Derrick May
3 Pacific FM
4 Infinite Rise featuring Derrick May
5 In Da Minor featuring Derrick May
6 Rocco's Bounce
7 Xokolad
8 Esoteric Thing featuring Derrick May
9 Day in BKK (Live) **
10 Ginseng (Live) featuring Derrick May **
11 Pacific FM (Studiovacanze Dub) ** Written and produced by Francesco Tristano
**Japan Special Edition 限定ボーナストラック
---
HIROSHI WATANABE ー 『MULTIVERSE』
http://www.umaa.net/what/multiverse.html
ヒロシワタナベをサポートしろ。彼は21世紀のYMOだ。そして彼は21世紀を代表する伝説的な日本のミュージシャンであり、アーティストだ。ヒロシワタナベをリスペクトして、彼の音楽に感謝してくれ。― デリック・メイ
ドイツ最大のエレクトロニック・レーベル<Kompakt>唯一の日本人アーティストとしてKaito名義の作品を次々と発表してきたHIROSHI WATANABEが、テクノ・ミュージックの歴史に偉大な軌跡を刻んできたデリック・メイ主宰の伝説的レーベル<Transmat>より日本人として初めて作品をリリースすることが決定!
デリックの厳しい審美眼の為、リリースそのものが極めて限定的になっていた中の快挙!!
そして新作アルバム『MULTIVERSE』は、<Transmat>と<U/M/A/A>の共同リリース作品として4月20日に発売することが決定。前人未到の地へ歩みを進める。
アートワークは、<UR>のオリジナルメンバーとしてUnderground Resistanceの作品をはじめ、<Transmat>、<Submerge>、 <Planet E>、<R&S>など名立たる名門レーベルの作品を手がけてきた巨匠、Abdul Qadim Haqqが担当。
ヒロシワタナベ /マルチヴァース
2016年4月20日リリース
UMA-1078-1079
価格 ¥2,500+税
2CD / 紙ジャケット仕様 / 8Pブックレット /
解説:野田努(ele-king) /
アートワーク:Abdul Qadim Haqq
U/M/A/A Store: http://store.umaa.net/items/2739594
Amazon: http://amzn.asia/6obG3bY
iTunes: https://itunes.apple.com/jp/album/multiverse/id1099825426
収録内容
<CD1>
1. Aperture Synthesis
2. Inner Planets
3. Soul Transitions
4. The Leonids
5. Story Teller
6. Heliosphere
7. The Multiverse
8. Time Flies Like an Arrow
9. Field of Heaven
<CD2>
1. MULTIVERSE MIX - Mixed by HIROSHI WATANABE
*本編の楽曲を使った本人によるDJミックス集。
*本編に含まれていない新曲「Galaxy Cluster」をエクスクルーシヴ収録。