【インタビュー】Keep in Touch | R&B / ダンスミュージックにフォーカスした新しい才能を

ダンス・クラブミュージック、R&Bにフォーカスをあてたプロジェクト『Keep in Touch』をソニー・ミュージックレーベルズ/EPIC Records Japanがスタートさせた。

新たな才能を発掘するためのオーディションが現在行われているこのプロジェクト。2025年の音源リリースを目指して、第一期となる今回はシンガーおよびシンガー・ソングライターを募集中だ。

クリエイティビティとスキル、そして感性を中心に据えた楽曲制作とプロデュースを中心に据えたこのプロジェクトについて、立ち上げの動機やプロジェクトが狙う射程についてメンバーである姉川哲史、平林錬、そしてエグゼクティヴプロデューサーを務める沖田英宣の3氏に話を聞いた。

取材・構成 : 和田哲郎

平林 - では自分から。まず小袋成彬さんを担当されていた姉川さんと3年前くらいに出会って、そこからクラブの現場を中心にお会いするようになって音楽、特にダンスミュージックの話をするようになり。小袋さんがDJやイベントとかを通じてやられてた動きが、僕もすごく刺激をいただいていたし。裏方でもそういうのを推進してったりとか、推奨していくことを望んでいたので、そういうところで考え方が割と一致していったというのが、まず始まりです。

沖田さんとはもともとSUMMITの仕事を通して、といっても私は現場に行かせていただいただけですが、宇多田ヒカルさんの『30代はほどほど。』という番組があり、そこにPUNPEEさんが出演した際に初めてごあいさつをさせていただいて。そこから少し時間は空いたんですけど、その後、小袋さんのアルバムの"Butter"っていう曲で、自分も制作に参加する経緯があったので、ミックスの立ち合いで再会したんですね。

それで1年半前くらいに姉川さんとの話を具体的に進めたいなっていうのあって、姉川さんから沖田さんにも話してみますということで、何回か食事をさせてもらったりする中で、ダンスミュージックやR&Bのシーン、特にシンガーさんをもう少し盛り上げたいというか、まだアーティストの絶対数が不足してるなって思っていたので、そういう話をさせていただいて、じゃあ、新しいスターを見つけましょうってところからスタートしたって感じです。

姉川 - 僕は、20代の頃からずっとクラブに遊びに行ってたんですよね。ブラックミュージックっていうより、ダンスミュージック。昨年末くらいに錬さんがロンドンに行かれるタイミングがあったんですけど、帰国したら「クラブミュージック」ってワードを熱量高めに言われた瞬間に、すごい符合したなって思いましたね。

沖田 - そうですね。最初はお酒飲んでただけという記憶しかないんですけど(笑)とにかく新しいことをやるんだと若い人に言われたならば、それは応援します、実現のお手伝いをしますよっていうのが年長者の務めなので。非常に喜ばしいことです。小袋って名前がキーワードとして出て思い出したのですが、僕の記憶が間違ってなければ、小袋くんが言った言葉でいまだに印象に残ってることが一つあって、「僕たちは、親の世代がダンスをしてる姿を見たことがない」っていう。これは、ものすごいいろんなことを含んでる言葉だなと思って。あまりの鋭さにものすごく驚いたっていう。あと、ロック系のフェスとか行ったときに、もちろん、いろんな音楽をやってらっしゃる方がいるんですけど、お客さんの動きって大体2パターンくらいしかないんですよね。

さっきの小袋くんの発言とそういうお客さんの動きという部分で、何か巨大など真ん中がばっくりないよなっていうのを、すごく感じていて。特に僕は世代的に、海の向こうのカルチャーに衝撃と刺激を受けてきた世代なので2010年代ぐらいからポップフィールドの人が、例えばLady GagaとかTaylor Swiftとかがものすごいダンストラックに軸足が変わってきて、なんでみんな踊りだすんだろうって感じていたんですね。もちろん、ヒップホップ、ラッパーの隆盛もあったし。

でも、日本って結局、さっき言った二つのノリ方だったり、もしくはある種のネット発の日本のトラックメーカーたちが発信するグルーブには、あんまり僕は共感っていうか、心の底からいいねと思えなくて。なんだろうなこの虚無感っていうのがあったので、この2人からのその申し出に、とことんやったんさいと。俺の思ってる、ぽっかり空いてるところをやってくださいなという思いを託したってとこですかね。

平林 - R&Bについてそのシーンがなかなか根付かなかった理由も考えても、答えは全然一つじゃないと思うんですけど。艶を感じさせてくれるアーティストさんがもっといたらワクワクするなと思ったり、そもそも若い人たちにR&Bといっても何のことかわからない方も多いかもしれないですよね。

ヒップホップもそうなんですけど、歴史的に様々な音楽を広げてきたというか、色々なジャンルの架け橋になってきたのがやっぱりR&Bだったなって思ってるんです。今も例えばTylaが、南アフリカの音楽を代表して、ポップカルチャーにしていくっていう存在でいて、彼女のスタイルはやっぱりR&Bだと思っているので。そういう架け橋になれるような存在っていうものがいないと思ったんで、今回、見つけたいなというのがあります。ダンスに関しては姉川さんが。

姉川 - でも、すごいおっしゃってたとおりっていうか、現行のいわゆるワールドスタンダードのヒットチャートに入ってくるポップスの人たちって、ダンスとR&Bをどの比率で配合するかだと思うんです。その比率とかブレンドのしかたでそれにそれぞれの個性が出てくる感じかなと。日本のポップシーンでもそういう曲を作ってらっしゃる方はいっぱいいるんですけれども。なかなかダンス・クラブミュージックっていうのがフィーチャーされないなっていうのは、自分から見ると、何とかしたいなとは思いますね。例えば、PC MUSICとか、A.G. Cookとかってそもそも日本のトラックメーカーが大きな影響を与えてたりもしますし。

平林 - やっぱり、ヒップホップ自体のここ5年の盛り上がりと、単純にシーンの広がりってというところ。あとは、歌唱もできる、普通に歌も歌えるラッパーの方々もたくさん出てきてらっしゃって、メロディーを付けることが普通になってきてる。ポップスのカルチャーから、メロディーを中心に楽曲が構成されてるっていう印象が、日本のヒップホップでもめちゃめちゃ感じてて。さらにリズムをもっと自然に大事にしていけるシーンになってくるとそれがダンスにつながってくるっていうか、踊ることに対して素養というか底が上がってくる部分だと思ったんで。

 なので、今、そこに気付いて、リズムを大事に音楽を作る方。ここまで今、シーンが大きくなった中で、ヒップホップっていう系譜の上で、R&B自体がもちろん本国では離せない存在だと思うので。なので、今これから、若い方々とかが、どんなフォーマットの音楽でも、例えば2000年代のものにたどり着いたりできるってところが、そういう時期が来たのかなっていう印象で。なので、ヒップホップっていうものから、R&B見て作る人っていうところにも、すごく僕はチャンスというか、そういうものをやりたいって人が出てきてるんじゃないのかなと感じます。実際に、DJの方とかでも、今、あんまり日本ではいらっしゃらないですけど、DJやりながら歌唱する人って、世界では、かなり普通になってきていて、そういう人もクラブレベルとかでは、出てきたりとかしてるので。もしかしたら今、出てくるかもしれないっていう可能性を感じて、お話をさせてもらったという感じです。

沖田 - もともとのご質問は、R&Bの現状認識ってことでしたよね。それでいくと、昔、リズム・アンド・ブルースって言葉だったときに、日本でも、つのだ☆ひろさんとか上田正樹さんとか、ブルージーなアフロアメリカ由来の音楽が根っこにあるような音楽をやってる方ってのは普通にいらっしゃって。その後、僕の感覚ではリズム・アンド・ブルースって言葉からブラックミュージックっていう言葉になった。その頃に、例えば山下達郎さんとか鈴木雅之さんとかのジェネレーションとか、もちろん桑田(佳祐)さんがいらっしゃって。その後、R&Bって言葉になって。さっきおっしゃったような90年代末から2000年ぐらいに、TLCとかに夢中になってた宇多田ヒカルのジェネレーションで、そこで多分、僕の中で一旦途絶えるっていう時代認識なんですよ。

そこからR&Bを標榜する歌手さんとかがあんまり出てこなくなったっていう印象があって。宇多田ヒカルも最初は、R&Bの歌姫とかって言われてましたけど。いつの間にか、彼女がもっとジャンルを越境していくような音楽を作り始めたんで、それも言われなくなり。その代わりっていう人も、あんまりいないっていうまんま、今に来てる気がするので。あともう一個の、R&Bが消えていく過程で、それってここ数年ですけど、歌うまっていう言葉が出てきていて。歌うまな方々が、ことごとくブラックネスがないっていうところも、日本の音楽シーンの現代史において注視しておいたほうがいいのかなってのがあって。

沖田 - うん、そう。もちろん地道に活動してらっしゃる方いると思うんですけど、スターがいないねっていうのは多分、皆さん同意していただけるんじゃないかなっていう感じですかね。

沖田 - ですね。

沖田 - あそこが分水嶺で変わりましたよね。

平林 - よく沖田さんとも話すんですけど、もともとは、R&Bの印象って、歌い上げるとか、スポットライトみたいなイメージがあると思うんですけど。今は、そのジャンルの中でも、ダンストラックで、自身も踊ってっていう作り込みも含めた、そういうものが、ここ数年で特に出てきていて。ポップカルチャーの中にR&Bってものを見ていらっしゃる方とかも、そういうのもすごい意識してライブを作り上げたり、ミュージックビデオで踊ったりもしてるとこも含めて、かなり変わったと思うんで。R&Bって中でも、そういうシーンの人が出てきた。派手にという意味ではなく自分を表現するパフォーマンスが想像できる、圧倒的であるアーティストこそ自分たちが見てみたい人材ですね。

姉川 - 海外のアーティストの曲がリアルタイムで情報入ってくる時代になって、日本のシンガーが、世界のヒットチャート最前線の、リズム、譜割だったりとかフロウだったりとかからモロに影響受けているのが聴いていてわかるので、同時代性という意味でクオリティは上がってるなとは思っています。ただ個人的には、あんまりメロディーが重視されてないなっていう印象があります。「コレ、めちゃめちゃいい歌だな」というよりは、どちらかというと、トラック、フロウに優先順位がある印象をうけます。このプロジェクトやる上でちゃんとマスに広げていきたいと思ってるので、きちんとポップなものを作っていくというのは、課題だし大切にしたいところだと思ってます。

沖田 - 結局、今、ダンスミュージックを歌いながらパフォームするっていうものが、日本も含めたアジアではグループしかいなくって。群舞の時代なので、ソロパフォーマーが目立ってこない。本当にスターって言えるようなダンスするアーティストって、安室さん以降いないでしょ。ばっきばきに踊って、かわいくて、歌もうまくてっていう。なんで?っていう、この椅子、がら空きなんですけどっていうところをなんとかしたいなと。

群舞は群舞で素晴らしいんですが、グループはファンダムを誘発してしまうので、一見さんが入りづらい印象があって。多分、僕らが標榜してるものは「みんなのすてきなスター」っていうものをつくり上げたいなって。安室さんしかり、デビュー時の宇多田ヒカルしかりとか。だからソロアーティストを探しているのかもしれないよね。

姉川 - そうですね。そこは、意外と一致してるとこだと思います。

沖田 - そうですね。層の厚さですよね。

沖田 - そうですね。

姉川 - 世代間で共有されているものは少ないなと思います。色々ありますが最近ではコロナもあったりとかでパーティーが出来ない時期が続いたり。その間の断絶は感じますね。

でも、いわゆるビッグクラブで遊びいく人もキラキラしてないと駄目だよ、みたいなカルチャーじゃなくって、それぞれ色が付いてる小さい箱でみんな自分たちの目指すパーティーを始めている印象はあります。それこそ場所も告知されていないレイブとか、クラブ以外のお店でホームパーティー的にDJやってたりとか。今っぽい、今の若者っぽい遊び方に変わってきているかなと思います。これほど機材が安かったり、DJやパーティーを始めるにあたってハードルが低い時代はこれまでになかったと思います。ローカルでのカルチャーの積み重ねという意味ではそこにチャンスは感じてますね。

平林 - 僕もネガティブなことばかりではなくて、さっきの断絶って意味で言うと、世代で継がれていくもの、これからもっとかなり紡いでいかなきゃいけないと思うんですけど。コロナ禍で悪いことばっかりじゃなかったのは、さっき姉川さんがおっしゃってましたけど、東京のシーンは小箱がコロナ禍の中でも頑張ってくださったことで、少なくとも小箱の盛り上がりっていうのは、僕がクラブに行き始めてから、今が一番若者がクラブに集まってる印象があって。

DJの人数も、本当に増えたと思います。音楽に日頃から触れたい、日頃から音楽をディグして、自分の好きな曲を皆さんにかけたいっていう。その行為自体が、もちろんプレイリスト文化とかも、そういうものもだと思うんですけど。現場で自分でかけて盛り上げたい、自分で好きな音楽を聴きたいっていうことの、能動的な部分は、すごく広がってきてはいると思うんで。

結局僕、このプロジェクトやってて何が一番望みかっていうのは、自分が好きな曲を聴きたいって感じなんです。自分がとにかく好きな曲をずっと聴いてたい。それに、ずっと聴いてられる音楽ってものに携わりたいと思って、今回、きっかけをいただいたので。東京のシーンをいつも見てると、若い方々が常に音楽に触れてるっていうことに可能性を感じたので。そういう意味では、まだ若い世代の人が、どんどんつないでいってっていうところのスタートになり得る、東京ではそういう状況かなと思っています。

平林 - そうですね。どうですか、和田さんは。

姉川 - 盆踊りですよね。

平林 - いわゆるトラディショナルなものじゃなくても、解釈というか、奇をてらって新しいことをやりましょうっていうよりも、ごく自然にそういうことができる人ってのは、宇多田さんがまさにそういう存在だと思うんです。

さっきNia Archivesの話をされてましたけど、この間宇多田さんのライブお邪魔させてもらったときに、若いかたがたが、お母さんと一緒に来られたりしてるのが、普通につながって、しかも、世代を追うように普通に聴いてるっていう。現行の音楽を、お母さんと一緒に聴くっていうのが、まさに、これからもつないでいくものとして素晴らしいなと思ったので。今後、そういうアーティストが出てきて、僕の孫の世代に、われわれが発掘するアーティストっていうのが、そういうロールモデルになってったらいいなってのは、先日のライブで強く思いました。

平林 - やっぱり、アルバムを大事にしたいアーティスト。アルバムというフォーマットでこういう表現をしたいですって、まず前提に自分がやりたいことがあって、ヒット曲というか、普遍的に皆さんに愛される曲もあれば、ずっと、よくある隠れ名曲が共存しているような。音楽作る上で、そこの多様性を持ってらっしゃるアーティストっていうのが、自分にはすごく魅力的で、そういう意味でも、普遍的、耐久性というのをメッセージとして出させてもらったっていう感じですね。今回デモを1曲とプレイリストを作成していただくかたちで募集をしてるんですけど、そういうメッセージを受け取ってくれたなというアーティストに出会えたら、うれしいです。

沖田 - 普遍性と耐久性って、それが獲得できたら素晴らしいことなんですけど、それを目標にやっても難しいと思うんで。ただ、やっぱり、何となく直感で思ってるのは、越境してくる人っていうものが、多分、そこをつかんでくるんじゃないのかなと思っていて。

自分は宇多田ヒカルを25年見てて思うのは、宇多田ヒカルって越境の歴史でしかないなと。越境するっていうことは、柔軟であるっていうことだと思うんです。柔軟性って、多分、今のポップスとして成立することに大きく関わっていると思うので、そういう人を探しているんだろうなと思いますし。それが、いつか周りから、普遍的だねとか、強いね、足腰がとかって言われたら、すてきだなと思いますね。とにかく、越えてくる人。ここのフィールドから、こっちに飛び出す人っていう。飛び出す勇気がある人っていう方との出会いをできたらいいなと。

沖田 - それは宇多田ヒカルに聞くのが多分一番いいと思うんですけど(笑) ただ、横から見てて思うのは、変わんなきゃいけないな、新しい要素をなんか入れなくちゃ、次どうしようとかって考え方は、多分、一ミリもしてない。彼女の場合は、自分の内側を注意深く見つめたときに、あれ、なんか、あたし、こんなもの持ってたんだっていうものが自分の中からちょこっと出てきた、その芽みたいなものを見逃さないっていうことなんじゃないかなと思います。そういうものが自分の中に積もってきて、あれ?っていうのを自分の中に見つけるっていう。だから、彼女は、さっきおっしゃっていただいた足腰が強いって思われるのかも。誰かスタッフが取って付けたような、「これからトラップだよ、トラップやんなよ」っていうようなことは、やってこなかったので。

平林 - 全然、偉そうに言えるほど、一個もないんですけど。さっき、かなり主観的に、好きな音楽を聴きたいだけっていうのはリアルにそう思ってます。自分がそう思ってること自体に賛同してくれそうな、自分の好きなアーティストさんってのは存在していて。そういう人たちやDJの方とかと、意見交わしてるときに、やっぱり、ダンスミュージックに関しても、さっきポジティブな部分を言いましたけど、DJが素晴らしい仕事で、クラブという存在が音楽の一番ホットな発信源というシーンにしていきたいし、もっと求めたい。それを、みんなが享受していけるような、皆さんがそれを摂取して、新たな音楽をまた生み出すっていうモチベーションになるような。

やっぱり、一夜にして変わることって本当にたくさんあると思うんで。僕も、一夜じゃなかったですけど、ロンドンで、ものすごいかぶれて帰ってきて。その機会を増やしたいっていうか、そういう、何だこれ!?っていう衝撃を与えられるアーティストみたいなところと一緒にお仕事したいですし。そういうチャンスがあるっていうこと、そういうものが、ふらっと行ったイベント、DJ聴いて、ライブに誰かと一緒に行ったけど、自分の人生を変えるような出会いって信じてるので、自分もそういうの受けさせてもらった身として、そういうのをもっと増やしていきたいなと思ってます。姉川さん、どうですか!(笑)

姉川 -  世界で活躍してるDJってめちゃめちゃいっぱいいるじゃないですか。でも、認知度という意味ではコア層というか、クラブに積極的に興味がある人しか知らない。われわれが、このプロジェクトで、きちんとダンスミュージックっていうのは、こうですみたいな定義して、踊れる場というものを提供すれば、シーンとしてもどんどん盛り上がってくるんじゃないかなって僕は思います。

平林 - 1個付け加えていいですか。クラブっていうものの、例えば、きょう、クラブ行きますって一般の人に言ったときに、印象さまざまだと思いますけど、やっぱり、普通にチャラい印象というか。出会いの場としてもすてきだと思いますけど、音楽が先行して、音楽を聴きに行く、踊りに行くっていう印象が少ないと思うんです。さっきの話にもつながりますけどダンスをすることが自然になっていくと、クラブに行くって行為自体の印象が変わると思うんで。すごくすてきな場所だってなればいいと思います。しかも、その場所から世界にジャンルは広がっていく可能性がある、100人とか200人規模の場所から、そんなものが生まれるすてき場所っていうのが日本からできたら嬉しいし、皆さんに知ってもらいたいっていう意味であります。

平林 - と思いますね。めちゃくちゃ感じましたね。姉川さんはロンドンに住んでたんで。そのとき、何年ぐらいでしたっけ。2年ぐらいでしたっけ。

姉川 - 2年ぐらいです。2008から2010ぐらい。

平林 - 是非その話を!

姉川 - 錬さんは1カ月にめちゃめちゃ詰め込んでるから (笑)。僕はお金もなかったんで2年ぐらいかけて、ちょこちょこクラブ回ってました。ポスト・ダブステップとか一番盛り上がってた時期でしたね。当時のPlastic Peopleとか。

平林 - 私もその頃よく聞いていて日本のクラブにもよく馴染んでいたように思います。あとは南ロンドンのPeckamにあるORMSIDEというクラブに行った時にドリル、ベースミュージックからジャングル、ハウス、テクノ様々なジャンルが入り混じりながらちゃんと軸がある現場がものすごく刺激的で、かつ有機的で。めちゃめちゃいろんな若者、ロンドンって土地柄、アジアの人も、そこの入り交じってる所に、そういう音楽が鳴り響いてて。

でもそういうふうにしたいってよりは、日本独自の、海外の人が来たときに、日本って独自のクラブ文化があるねって感じ取ってくれたらいいですよね。海外のDJが、ゲストで出てきてても、そういう日本ならではの蓄積みたいなのを感じてくれて帰ってくれたら、めちゃめちゃうれしいです。

姉川 - (沖田さんは)向こうでクラブ行ったことあるんですか、ロンドンで。

沖田 - ない。レコーディングスタジオしか。

姉川 - 行きましょう。

沖田 - 本当そうですよね。なんでしょうね、クラブに行くっていうのが特別みたいな、敷居が高いみたいな感じってあるような気がしていて、この国。もっとこう、気軽に行って楽しいんだよみたいなところは、このオーディションをやりつつも、そこも広げていかないといけないんだろうなという気はしますね。すぐそばに楽しいものが、あなたがお好きになれそうなものがあるんですよっていうことを、こつこつやってくしかないのかな。でも、こつこつやると陰気な感じがするから、楽しく、おいでおいでみたいな感じの、明るい感じにしたいですね。空気が循環してる感じを『Keep in Touch』で醸し出せれば、おのずと人が集まって来るだろうし。

さっきの、中長期的なっていうことの、ご質問で言うと、もう長期というか、本当は中期で成し遂げたいんですけど、どんどんまねされることですね。それがもう、願いです。なんか、急にみんなが、ダンスミュージックとか言い出して、そういうアーティストを発掘とかって言い出すっていうのが一番の望みですね。そうすると、シーンができるわけだし。僕らだけでやってるよりも、いろんなところがやったら、もっと重層的なシーンになると思うので。それが願いですね。どんどんまねされたい。

沖田 - そうですね。

平林 - ウェブにも記載してるんですけど、第2期はプロデューサーを募集していく予定です。そういう人と、例えばコライトをしていったりとか。そういう動きが、もともと自分が、すごいやりたかったことで。自分が担当させていただいたアーティストの方々も、実際にスタジオで奏者の方とかプロデューサーの人とぶつかり合ったり。その生まれていくグルーヴみたいなのが、急にアーティストが新たな発見をしたり、成長させたりする瞬間を見させていただいて。そこの引き合わせだったり、活性化していきたいと思ってます。

姉川 - 色々言いましたが、基本はおっきい会場で思いっ切り歌ってみたいって人を探しています。音楽好きで、自信ある人はどんどん応募してほしいなって思ってます。

平林 - ウェブのメッセージにも書いてるんですけど、やっぱり、夢中にさせてくれる人、お互いにというか、自分がすごくいろいろ学びたいし、そこから何かを得て人生の糧にしていきたいって思ってるので。何か歌いたいことがあるけど、こういうことがやりたいんだっていう、そういうものがある方にぜひ、今回応募していただいて、一緒にお仕事させてくださいって感じです。

沖田 - 資質と才能は違うっていうことを言いたくて。初めてバット振ったときに、なんかいいスイングができちゃう人っているんですよ。それは資質なんです。資質はあるんだけど、残念なことに野球に興味がないんですよ。でも、才能っていうのは、最初にバット振ったときに全然いけてないんだけど、なんか棒振るの、すっげえ楽しいなって夢中になれることなんですよ。うまくできちゃう人を探してるわけじゃありませんよ、明けても暮れても音楽のことを考えちゃう人を待ってますよっていうことですね。

Info

<Keep in Touch>

Keep in Touch はソニー・ミュージックレーベルズ/EPIC Records Japanによるダンス・クラブミュージック、R&Bにフォーカスしたプロジェクトです。
クリエイティビティとスキル、そして感性を中心に据えてアーティストとともに普遍性と耐久性のある楽曲制作とプロデュースを行います。


Keep in Touch Official Website: https://www.k-i-t.net

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