【イベントレポート】『City Connection』|クリエイティビティが交錯する刺激的な一夜
Manhattan Portageが主催する、都市型音楽プロジェクト『City Connection』。昨年は代官山UNITの3フロアに渡って開催され大盛況を収めた同イベントは、本格的始動を予定していた今年、コロナ渦によって延期が繰り返され、DOMMUNEにて5時間の生配信という形で先月開催。配信限定である今回の『City Connection』に、幸運にも現場に参加することが出来たFNMNLでは、熱気あふれる5時間の模様を写真とレポートでお届けする。
文:山本輝洋
撮影:YUUKI HARADA
オープンを飾るのはオカモトレイジのDJセット。メロウなソウルからボ・ガンボス、BOOWYといったクラシックな日本のロック、はたまた2ステップやトラップ、Billie Elishや藤井 風といった国内外の最新ポップチューンまで、彼の持ち味である横断的な選曲がこれから展開される長い夜への期待を高めてゆく。
Ovallのライブは昨年リリースのアルバム『Ovall』収録の“Stargazer”からスタート。続けて“Desert Flower”、“Slow Motion Town”と同作からの楽曲を披露してゆく。今回はOvallのオリジナルメンバーであるShingo Suzuki、mabanua、関口シンゴの3人に加え、キーボードに別所和洋、村岡夏彦の2人を加えたツインキーボードの5人体制でのライブ。アルバム『Ovall』のレコーディングやツアーにも参加した2人と共に紡ぎ出す緻密なグルーヴは、緊張感と高揚感を共に感じさせるものだ。
“Come Together”ではmabanuaがボーカルを披露。改めて、ドラムを叩きながら歌うという技術の高度さに驚嘆させられる。その後の“Dark Gold”、“Triangular Pyramid”と『Ovall』からの楽曲を続け様にプレイ。ライブ初披露の楽曲も含まれた、貴重なセットとなった。
MCでは『City Connection』を主催するManhattan Portageのアイテムを紹介する粋な一幕も。「Manhattan Portage持ってると気分上がりますよ」と語り、 “Winter Lights”、そしてラストチューンとなる"Rush Current"を披露した。
Ovallのパフォーマンスの余韻に浸る間もなく登場したのは環ROY。アルバム『Anyways』をリリースした当日のライブとあり、観客の多くが大きな期待を寄せるムードが伝わってきた。
ユーモラスなエピソードを織り込んだフリースタイルを経て一曲目に披露されたのは“泉中央駅”。続けて“Protect You”、“Fidget”とフロアを縦横無尽に駆け巡りながら、カオスと秩序が同居した世界を展開してゆく。続けて前作『なぎ』から“On & On”、“フルコトブミ”を披露。再び新作『Anyways』から“Rothko”、“Flowers”、“はじまりを知る”と、環ROY自身が手掛けたビートをDOMMUNEのサウンドシステムで体感しつつ、彼のエネルギッシュなパフォーマンスを存分に堪能することが出来た。
続けて、ソファーとテーブルを用意した、まるで自宅のリビングのようなセットにAAAMYYYが登場。ギターとサンプラー、ラップトップのみを用いたシンプルな構成で、リラックスしたパフォーマンスを披露した。
1曲目の“SKYSCRAPER”はシンセベースのサウンドが印象的な、エレクトロな楽曲。続く”MABOROSI“、“DAYS”はライブならではの、オーガニックなギターのサウンドを基調としたアレンジで披露された。AAAMYYY自身も「本当に家みたいですね」と語るように、終始ゆるやかなムードが漂う彼女のライブセット。Shin Sakiuraとの“このまま夢で”やOKAMOTO’Sのオカモトショウをフィーチャーした“LOOP”などのコラボ曲や、リリースされたばかりのシンセポップチューン“Leeloo”も披露される豪華な内容となった。
「コロナになってから実家に一度も帰ってませんが、家族のことを歌った曲をやります」との言葉に続き、披露されたのは人気曲“HOME”。AAAMYYYの歌声とエモーショナルなメロディに、心が洗われるようなパフォーマンスであった。
ライブアクト3組が終了すると、ShioriyBradshawがDJブースに登場。AAAMYYYが作り出したレイドバックな雰囲気を引き継ぐように、Yves Tumorの“Romanticist”からDJセットをスタートした。メロウなスロウジャム中心の選曲から徐々にアッパーな楽曲へとつないでゆき、Flying LotusとDenzel Curryのコラボチューン”Black Balloons Reprise“といったフロアバンガーを投下し会場を盛り上げる。その後もヘビーな楽曲とメロウなトラックを巧みに行き来しながら展開を作り、メロディアスなダンスホールやアフロビートにシフト。その後ミックスは深く沈み込むような没入感のあるテクノへと移り変わり、Randomerのディープなトラックから、続くstarRoにバトンを渡した。
続くstarRoもLAビートとレゲエやジャングル、民族音楽やR&Bを巧みにミックスし、彼ならではの世界を作り出す変態的なDJでフロアをロックしていた。やがてディープハウスを経由してバイレファンキやレゲトンに至るなど、一切予想のつかない刺激的なセットを披露。ラストチューンとなったFriday Night Plansの“All The Dots“と共に、あっという間の5時間は幕を閉じた。
コロナ渦で配信イベントが増加する中、ライブ配信のパイオニアであるDOMMUNEに舞台を移した今回の『City Connection』。「都会に生きる全ての人たちの日常に彩りを」というテーマ通り、各出演アーティスト毎のアプローチで、観る者の視野や想像力を広げてくれるような、そんな一夜であった。